ボケ (植物)
ボケ(木瓜[3]、学名: Chaenomeles speciosa)[4]は、バラ科ボケ属の落葉低木。日本に自生するボケは、クサボケといわれる同属の植物。
ボケ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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満開のボケの花(2007年4月13日)
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分類(APG III) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Chaenomeles speciosa (Sweet) Nakai (1929)[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
flowering quince |
名称
編集果実が瓜に似ており、木になる瓜で「木瓜(もけ)」とよばれたものが「ぼけ」に転訛(てんか)したとも[5]、「木瓜(ぼっくわ)」から「ぼけ」に転訛したとも言われる。『本草和名』(918年)には、果実の漢名を木瓜(もくか)、和名を毛介(もけ)として登場する[5]。
学名のspeciosaは、「美しい」「華やか」、Chaenomelesは「chaino(大きく裂けた)+melon(リンゴ)」が語源。中国植物名(漢名)は、貼梗海堂(ちょうきょうかいどう)[6]。
分布・生育地
編集原産地は中国大陸で、日本へは古く平安時代に渡来し、観賞用に栽培された帰化植物である[7][8]。本州から四国、九州にかけて庭に植栽されているが、一部は野生化している[8]。温暖地でよく育ち、北海道南部では種類が限定される。木瓜の名所としては、鎌倉市の九品寺が知られる。
江戸時代には、小石川養生所にボケが植えられ漢方薬として使われていた。大正時代に、埼玉県の安行 (川口市)と新潟市の小合を中心としたブームが起こり、東洋錦[9]や日月星[10]などが作出された[11]。
形態・生態
編集落葉の低木で[7]、樹高は1 - 2メートル (m) [5]。株立ちになり茎は叢生してよく枝分かれし[7][3]、若枝は褐色の毛があり、古くなると灰黒色。樹皮は灰色や灰褐色で皮目があり、縦に浅く裂け、小枝は刺となっている[5][3]。
葉は長楕円形から楕円形で互生する[7]。葉身は長さ5 - 9センチメートル (cm) で、鋭頭でまれに鈍頭、基部はくさび形で細鋭鋸歯縁[7]。葉の付け根に腎臓形の托葉がつく[7]。
花は3 - 4月に葉が芽吹くよりも先に、ふっくらした朱色の5弁花を咲かせる[5][7]。短枝の脇に数個つき、径2.5 - 3.5 cm。様々な品種があり、花色は淡紅、緋紅、白と紅の斑、白などがあり、雄性花と雌性花がある[7]。秋に結実する果実は楕円形で、直径は約3 - 10 cmほどになる[5][7][8]。7 - 8月ごろに熟して[8]、果皮は黄色味を帯びて落果する[7]。
冬芽は互生し、葉芽は三角形、花芽は球形で仮頂芽は葉芽であることが多く、クサボケよりも大きい[3]。
同類種に栽培種で中国産のカリン、野生種で日本産のクサボケがある[5][7]。
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花(緋紅)
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花(白と紅の斑)
栽培
編集庭園樹としてよく利用され、添景樹として花を観賞する目的で植栽される。花材や、鉢植えにして盆栽にも用いられ、園芸品種も多い[7][8]。好陽性で土壌を選ばず、排水性が良く、やや乾燥地を好む[7]。繁殖は実生、挿し木、株分けで行われる[7]。実生は果実を割って種を取り出し、洗って床蒔きする[7]。挿し木と株分けは、春の芽吹き前に行う[7]。移植は容易だが、大気汚染・潮害にはさほど強くない。
利用
編集果実にはクエン酸、酒石酸、リンゴ酸などの有機酸類と果糖が含まれていて、有機酸類には制菌作用があるとされ、腸内が酸性化するほど多く内服すると、細菌は弱アルカリ性(pH7以上)で繁殖するため増殖を止める働きがあるといわれる[5]。また、有機酸類には鉄分の吸収促進に役立つとも考えられている[5]。
果実は木瓜(もっか)と称される生薬になり、8 - 9月ごろの落果する前の青い未熟果実を採取して、水洗い後に輪切りにしたものを天日乾燥して調製される[5][6][7]。補血、強壮、疲労回復、咳止め、食あたりのほか、筋肉のひきつり(腓返り)、暑気あたりに効用があるといわれ、乾燥果実1日量5 - 10グラムを水200 - 600 ccにて半量になるまで煎じて、3回に分けて服用する用法が知られている[6][7]。ただし、胃腸に熱があるときは禁忌とされる[6]。
香りのよい果実を使って、果実酒やジャムにも利用される。ボケ酒と呼ばれる果実酒にすることもあり、果実の2 - 3倍量のホワイトリカーまたは35度の焼酎に漬け込んで、冷暗所に半年から1年置いて作られる[5][7]。果実酒にも咳やのどの痛み、疲労回復、滋養保健、低血圧、不眠症などの薬効があるといわれ、就寝前に盃1杯ほど服用される[5][8]。
クサボケ
編集クサボケ(草木瓜[3]、学名: Chaenomeles japonica、英: Japanese quince)は、バラ科ボケ属の一つ。落葉低木[12]。ボケの野生種で、山野や川の土堤、陽当たりのよい草むらなどに生える[3][13]。和名の由来は全体に小型のため草に見立てられて名付けられた[5]。別名でシドミ[12][13]、ジナシとも呼ばれる。白花のものを白花草ボケと呼ぶ場合もある。矮性の園芸品種が「長寿梅」と呼ばれ盆栽にされている。
本州の関東地方以西、四国、九州に分布し、山野の日当たりの良い斜面などに生える[12]。自生するボケ属は、クサボケ一種だけである[12]。
樹高30 - 100センチメートル (cm) ほど[12]。幹は地面を這うか斜上する[3]。樹皮は灰褐色で、皮目があり滑らかで小枝が変化した棘がまばらにあり、若い枝には粗い毛が生えている[3][13]。実や枝も小振り。葉縁に細かい鋸歯がある[12]。
花期は4 - 5月で、しばしば葉よりも早く開花する[12]。花の直径が25ミリメートル (mm) ほどの赤朱色の一重咲きがかたまってつくのがふつうであるが、まれに白花や八重咲きもある[12]。雄花と両性花があり、花弁は5個で雄しべが多数つき、両性花の花柱は5個ある[12]。
果期は10月[12]。果実は直径3 cmの球形で黄色く熟し[12]、ボケやカリン同様に良い香りを放ち、未熟な果実を果実酒の材料にする[13]。また果実にボケ同様の薬効があり、日本産の意で和木瓜(わもっか)と称される生薬となり、木瓜(もっか)と同様に利用される[5][6][7]。果実酒はクサボケ酒と呼ばれ、果実の3倍量の焼酎に漬け込まれて作られる[5]。減少傾向にある。
冬芽は互生し、葉芽は三角形、花芽は球形で仮頂芽は葉芽であることが多い[3]。
脚注
編集- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Chaenomeles speciosa ボケ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月31日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Chaenomeles lagenaria ボケ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月31日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 166.
- ^ ウメにちょっと似ている花。トゲがあるので注意。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 田中孝治 1995, p. 159.
- ^ a b c d e 貝津好孝 1995, p. 171.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 馬場篤 1996, p. 104.
- ^ a b c d e f 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 31.
- ^ “東洋錦(トウヨウニシキ)”. 新潟市秋葉区役所 (2022年10月21日). 2024年5月25日閲覧。
- ^ “日月星(ジツゲツセイ)”. 新潟市秋葉区役所 (2022年10月21日). 2024年5月25日閲覧。
- ^ “ボケってどんな花?”. 新潟市秋葉区役所 (2022年10月25日). 2024年5月25日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k 西田尚道監修 学習研究社編 2009, p. 10.
- ^ a b c d 長谷川哲雄 2014, p. 35.
参考文献
編集- 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、166頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
- 貝津好孝『日本の薬草』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年7月20日、171頁。ISBN 4-09-208016-6。
- 田中孝治『効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法』講談社〈ベストライフ〉、1995年2月15日、159頁。ISBN 4-06-195372-9。
- 西田尚道監修 学習研究社編『日本の樹木』 5巻、学習研究社〈増補改訂 ベストフィールド図鑑〉、2009年8月4日、10頁。ISBN 978-4-05-403844-8。
- 長谷川哲雄『森のさんぽ図鑑』築地書館、2014年3月10日、35頁。ISBN 978-4-8067-1473-6。
- 馬場篤『薬草500種-栽培から効用まで』大貫茂(写真)、誠文堂新光社、1996年9月27日、104頁。ISBN 4-416-49618-4。
- 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、31頁。ISBN 4-522-21557-6。
- 林将之『葉で見わける樹木 増補改訂版』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、2010年、62-63頁。ISBN 978-4-09-208023-2。
- 茂木透写真『樹に咲く花 離弁花1』高橋秀男・勝山輝男監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2000年、645頁。ISBN 4-635-07003-4。
関連項目
編集外部リンク
編集- "Chaenomeles speciosa (Sweet) Nakai" (英語). Integrated Taxonomic Information System. 2013年4月5日閲覧。
- "Chaenomeles speciosa (Sweet) Nakai". Germplasm Resources Information Network (GRIN). Agricultural Research Service (ARS), United States Department of Agriculture (USDA). 2013年4月5日閲覧。
- "Chaenomeles speciosa". National Center for Biotechnology Information(NCBI) (英語).
- “日本ボケ協会(公式HP)”. 2013年4月5日閲覧。
- 山本純士. “木瓜(ボケ)”. 季節の花300. 2013年4月5日閲覧。
- ボケ:かのんの植物図鑑 - ウェイバックマシン(2007年7月18日アーカイブ分)
- ボケとは|育て方がわかる植物図鑑|みんなの趣味の園芸(NHK出版)