リベンジポルノ
この記事は英語版の対応するページを翻訳することにより充実させることができます。(2020年12月) 翻訳前に重要な指示を読むには右にある[表示]をクリックしてください。
|
リベンジポルノあるいは復讐ポルノ(ふくしゅうポルノ)とは、離婚した元配偶者や別れた元交際相手が、相手から拒否されたことの仕返しに、相手の裸の写真や動画など、相手が公開するつもりのない私的な性的画像を無断でネットの掲示板などに公開する行為のこと[1]。カメラ機能・ビデオ機能が付いた多機能携帯電話(スマートフォン)が普及したことで個々人が撮影と投稿を手軽に行える環境となっていることも、リベンジポルノ問題を潜在的に起こしやすくする要因の一つとなっている[2]。
法律による取締の強化編集
日本編集
2016年3月17日、警視庁は2015年に全国で寄せられた相談の数や割合について初めて公表した[3][4]。それによると、相談者の内20代が最も割合が多く、その9割は女性だった。
2021年に警察が受理したリベンジポルノに関係する被害相談は1628件(前年比3.7%増)で、リベンジポルノ被害防止法が施行された2014年以降で最多だった[5]。摘発した事件はのべ289件(前年比18%増)で、罪種別では、リベンジポルノ防止法と児童買春・児童ポルノ禁止法違反がそれぞれ47件で脅迫が40件などであった。
- 被害者の性別は、「女性」が1432件(88%)
- 被害者の年代は、「20代以下」が1076件(66.1%)
- 相談内容は、「画像を所持されている、撮影された」が582件(35.7%)、「画像を公表すると脅された」が580件(35.6%)、「画像を公表された」が329件(32.5%)など(複数回答可)
- 加害者との関係は、「交際相手・元交際相手」が821件(50.4%)、「ネット上だけの知人友人」が326件(20.0%)など
問題化編集
2013年10月8日に三鷹ストーカー殺人事件があり、加害者の男性が元恋人である被害女性のプライベートの写真および映像をウェブサイトを通じて拡散させたことで問題となった。谷垣禎一法務大臣は同年10月23日の参議院予算委員会で、「現行法で対応ができる」とし、新しく規制をかけることには慎重な姿勢を示した[6]。2013年時点では、現行法でリベンジポルノはわいせつ物頒布等の罪、被害者が生存している場合[注釈 1]は名誉毀損罪、ストーカー規制法違反のほか、18歳未満であれば児童ポルノ禁止法などで、基本的に対処できるとしている[7]。しかし、リベンジポルノに対する新たな法律が成立すれば、リベンジポルノが処罰しやすくなるとされる[8]。
注目されるようになったのは上記の事件がきっかけであったが、それ以前にも2006年に山梨県警が摘発した者に児童ポルノ公然陳列と名誉毀損で執行猶予付きの懲役刑が科せられるなど、問題自体は存在していた[2]。
上記の事件が発端となり、同様の事件が増加していることから、2013年時点では法による罰則を求める声も存在した[9][10]。
リベンジポルノ防止法の制定編集
2014年(平成26年)2月13日、自民党は、リベンジポルノ問題に関する特命委員会を政務調査会に設置した[11][12]。同年10月にリベンジポルノ被害防止法案の骨子を固め[13]、公明党及び野党にも賛同を呼びかけて、第187回国会に議員立法として提出する方針を示した[14]。
同年11月18日、「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」(リベンジポルノ防止法)の法案は、自民党、民主党・無所属クラブ、維新の党、公明党、次世代の党、みんなの党、日本共産党、生活の党、社会民主党・市民連合の各会派共同により提案されて衆議院総務委員会及び衆議院本会議、参議院総務委員会で可決され、翌11月19日に参議院本会議で全会一致により可決・成立した(施行は同年11月27日)[15]。
2015年(平成27年)3月には同法違反の容疑による初めての逮捕者が出て[16]、同年5月以降には、同法違反による有罪判決が相次いでいる[17][18][19]。
アメリカ合衆国編集
ニュージャージー州では2004年からゴシップとして広がることを防ぐため、無許可で性的な写真や録音・録画を散布することを禁じている[20]。
カリフォルニア州では2013年10月1日に施行されたリベンジ・ポルノ非合法化法により、嫌がらせ目的で個人的な写真・映像を流出させたとして有罪になれば、最高で禁錮6カ月か最高1000ドルの罰金刑の対象となる[21]。同法によれば、合意の上で撮影された写真でも写った人の同意なく投稿されれば違法とみなされる。つまりカップルで一緒に撮影した写真を、別れた後に相手の同意を得ずに投稿するのも違法ということになる。一方で流出者と撮影者が同一人物でない限りこの法律は適用されないという制限がある[22]。
アメリカではリベンジポルノサイトをビジネスとして経営し、被害者が写真の削除を求めると法外な金額を請求するケースが存在する[21]。しかし2014年1月23日、リベンジポルノサイト「Is Anyone Up?」の経営者が、違法な手段でのわいせつ画像の入手、購入経路の意図的隠蔽、画像のウェブサイトへの掲載という理由で逮捕され[23]、禁固18年が言い渡された[24]。
欧州連合編集
欧州連合(EU)では個人情報保護の意識が強く、「忘れられる権利」として、インターネット上の個人情報削除が義務づけられている[25]。
韓国編集
2013年に「性暴力犯罪の処罰等に関する特例法(性暴力特別法)」が改正される以前は、これを処罰する条項がなかったので「同意を得た裸の写真は無罪」と判決するしかなかった。 そのため、デートDVやストーキングなどに裸の写真や性的な動画が強迫の道具として使われ、それによって被害が長期化される事例が多かった。改正された性暴力特別法では「第1項[注釈 2]の撮影が撮影当時には撮影対象の意思に反しない場合にも、事後にその意思に反して撮影物を頒布·販売·賃貸·提供し、又は公然と陳列·上映した者は、3年以下の懲役若しくは500万ウォン以下の罰金に処する。」という条項が追加された。
各業界の対応編集
検索エンジン最大手のGoogleはリベンジポルノ画像の世界的問題化を背景に自社の検索エンジンの表示からリベンジポルノ画像を削除すると発表。被害者の申し立てに応じ検索結果に表示されないようにする処置を行う。法に明文化されず事実上規制されてない地域でも申し立てを受け付け削除する方針を示した[26]。
また、FacebookやTwitter等のSNSサイトにおいても利用規約でリベンジポルノの掲載を禁止し、被害者の申し立てに応じ削除を始める等対応が広がっている[27][28]。 警察庁では法改正後、対策として依頼された場合は断固断ること、脅迫されたり画像を掲載されたりした場合は警察などへ相談することを対策として提示している[29]。
リベンジポルノ等の違法情報の通報を受け削除・警察への通報を行う窓口が開設されている[30]。
警察以外の通報窓口編集
日本国内ではセーファーインターネット協会が一般からの通報を受け積極的に該当プロバイダに削除要請を行っている。
リベンジポルノを題材とした作品編集
脚注編集
注釈編集
出典編集
- ^ 園田寿「刑事立法の動き リベンジポルノ防止法について」『刑事法ジャーナル』第44巻、成文堂、2015年8月、 47-56頁、 NAID 40020511600)。
- ^ a b “【ネットろんだん】リベンジポルノ 「恨み」の拡散、スマホで加速”. 産経ニュース. (2013年11月8日). オリジナルの2016年5月31日時点におけるアーカイブ。 2016年5月31日閲覧。
- ^ “リベンジポルノ、相談1143件 未成年者も2割”. 朝日新聞. (2016年3月17日). オリジナルの2016年3月22日時点におけるアーカイブ。 2016年3月22日閲覧。
- ^ “「リベンジポルノ」被害相談、15年は1143件 初の年間集計”. 日本経済新聞. (2016年3月17日). オリジナルの2016年3月17日時点におけるアーカイブ。 2016年3月17日閲覧。
- ^ “リベンジポルノ相談、5年連続で最多 加害者「ネット上の知人」急増”. 朝日新聞. (2022年3月3日) 2022年4月15日閲覧。
- ^ “「リベンジポルノ、現行法で対応できる」谷垣法相”. The Huffington Post. (2013年10月24日). オリジナルの2013年11月6日時点におけるアーカイブ。 2013年11月6日閲覧。
- ^ 弁護士ドットコム (2013年10月21日). “「リベンジポルノ」法は必要か?”. The Huffington Post. オリジナルの2013年12月14日時点におけるアーカイブ。 2013年11月6日閲覧。
- ^ “元恋人への嫌がらせ「リベンジポルノ」 自民党「被害防止法案」で何が変わるの?”. 弁護士ドットコムニュース (2014年10月17日). 2016年3月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年10月20日閲覧。
- ^ 猪谷千香 (2013年10月14日). “リベンジポルノやプライバシーのネット拡散をどう止める? - 表現の自由か、法規制か”. The Huffington Post. オリジナルの2016年11月10日時点におけるアーカイブ。 2013年11月6日閲覧。
- ^ “米国ではリベンジポルノ規制あり 日本も乗り出すべきと識者”. 週刊ポスト. (2013年10月14日). オリジナルの2016年11月10日時点におけるアーカイブ。 2013年11月6日閲覧。
- ^ “リベンジポルノ取締が言論規制に波及?”. ライブドアニュース (2014年3月9日). 2016年11月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年11月10日閲覧。
- ^ 佐々木伸「リベンジポルノ取締が言論規制に波及?」『JIJICO』、マイベストプロ、2014年3月9日、2015年5月1日閲覧。
- ^ “元恋人への嫌がらせ「リベンジポルノ」 自民党「被害防止法案」で何が変わるの?”. 弁護士ドットコム (2014年10月17日). 2016年11月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年10月21日閲覧。
- ^ “リベンジポルノに懲役3年以下の罰則 自民、法案提出へ”. 日本経済新聞. (2014年10月12日). オリジナルの2016年3月4日時点におけるアーカイブ。 2015年8月12日閲覧。
- ^ “議案名「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律案」の審議経過情報”. 衆議院 (2014年). 2015年9月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年8月12日閲覧。
- ^ “ツイッターに元交際相手の裸写真…リベンジポルノ法違反容疑で男を再逮捕 ネットでの適用は全国初”. 産経ニュース. (2015年3月11日). オリジナルの2016年3月4日時点におけるアーカイブ。 2015年8月12日閲覧。
- ^ “「リベンジポルノ」男に実刑判決 名古屋地裁”. 中日新聞. (2015年5月12日). オリジナルの2015年6月22日時点におけるアーカイブ。 2015年6月22日閲覧。
- ^ “リベンジポルノで有罪判決 初逮捕の福島の男に”. 共同通信. (2015年5月25日). オリジナルの2015年6月22日時点におけるアーカイブ。 2015年6月22日閲覧。
- ^ “リベンジポルノで男に猶予判決 保護観察付き、横浜地裁”. 共同通信. (2015年6月12日). オリジナルの2015年6月22日時点におけるアーカイブ。 2015年6月22日閲覧。
- ^ The Editorial Board (2013年10月12日). “Fighting Back Against Revenge Porn” (英語). The New York Times (New York) 2016年5月31日閲覧。
- ^ a b “「復讐のポルノ」を非合法化、米カリフォルニア州 - AFP=時事”. AFPBB. (2013年10月3日). オリジナルの2016年3月6日時点におけるアーカイブ。 2013年10月23日閲覧。
- ^ “元恋人による「リベンジ・ポルノ」に法規制の動き 米” (日本語). CNN. (2013年8月30日). オリジナルの2016年4月8日時点におけるアーカイブ。 2016年6月1日閲覧。
- ^ “米リベンジポルノサイトの創設者が逮捕 “新しい社会危機”に対する日本の法改正は?”. NewSphere. (2014年1月29日). オリジナルの2014年3月12日時点におけるアーカイブ。 2014年3月12日閲覧。
- ^ “リベンジポルノ問題 米ではサイト運営者にも重い代償 被害者1万人で禁錮18年判決の男性も”. 産経ニュース. (2015年5月28日). オリジナルの2016年3月4日時点におけるアーカイブ。 2016年3月4日閲覧。
- ^ “女高生殺人で注目“リベンジポルノ”への米欧の対応”. PRESIDENT Online. (2013年11月8日). オリジナルの2016年4月9日時点におけるアーカイブ。 2013年11月15日閲覧。
- ^ “グーグル、リベンジポルノ画像削除へ 検索結果から”. 産経新聞. (2015年6月20日). オリジナルの2016年3月4日時点におけるアーカイブ。 2015年6月20日閲覧。
- ^ “米フェイスブック、リベンジポルノ禁止を明示”. 産経新聞. (2015年3月17日). オリジナルの2015年3月30日時点におけるアーカイブ。 2015年6月20日閲覧。
- ^ “Twitter、リベンジポルノなど嫌がらせ対策でポリシーを改定”. ITmediaニュース (2015年3月21日). 2015年3月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年6月20日閲覧。
- ^ 警察庁. “プライベートな性的画像を勝手に公表することは犯罪です!!”. 2016年6月1日閲覧。
- ^ “一般社団法人セーフライントップページ”. 一般社団法人セーフライン. 2015年8月28日閲覧。
- ^ “映画「リベンジポルノ」公式サイト”. 2014年12月15日閲覧。