ローランド・エメリッヒ

ローランド・エメリッヒRoland Emmerich, 1955年11月10日 - )は、アメリカ合衆国で活動するドイツ人映画監督映画プロデューサー脚本家SFアクション等の娯楽色の強い作品を発表し続けていることで広く知られる監督である。妹のウーテ・エメリッヒも映画プロデューサーとして活動しており、ローランドの作品の多くでプロデューサーとして関与している。

ローランド・エメリッヒ
Roland Emmerich
Roland Emmerich
インデペンデンス・デイ: リサージェンス』ジャパン・プレミアに出席するエメリッヒ(2016年)
生年月日 (1955-11-10) 1955年11月10日(62歳)
出生地 西ドイツの旗 西ドイツ
Flag of Baden-Württemberg.svg バーデン=ヴュルテンベルク州 シュトゥットガルト
国籍 ドイツの旗 ドイツ
職業 映画監督脚本家映画プロデューサー
主な作品
インデペンデンス・デイ
インデペンデンス・デイ: リサージェンス
デイ・アフター・トゥモロー

またゲイであることを公表しており、LGBT関連事業への寄付等も行っている[1]

目次

来歴編集

生い立ち編集

1955年にシュトゥットガルトで生まれ、ジンデルフィンゲンで幼少期を過ごした[2]。父ハンスはガーデニング機器の製造会社を経営する富裕層であり、エメリッヒは父と共にヨーロッパ・北米に旅行に行くことが多かった[3]。10代のころから絵画彫刻を学び、シュトゥットガルト芸術大学を卒業する。

ドイツでの活動編集

1977年にミュンヘン映画テレビ・アカデミー英語版に進学し、プロダクション・デザインを学ぶ[3][4]。しかし、同年に公開された『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』を観た後に映画監督コースに転籍する[3][5]。1981年に卒業作品として『スペースノア』を製作し、同作は1984年に第34回ベルリン国際映画祭のオープニング作品として上映された[4]

1985年に妹ウーテ・エメリッヒと共同で映画製作会社セントロポリス・エンタテインメントセントロポリス・フィルム・プロダクション(現:セントロポリス・エンタテインメント英語版)を設立し、同年に『デビル・ドール英語版』を製作する[3]。1987年に『ゴースト・チェイス英語版』、1990年に『MOON44』を製作した。これらの作品はドイツ及び周辺国でしか公開されず、エメリッヒは広範囲の市場を開拓するため従来採用していたドイツ式の撮影スタイルを放棄した[3][6]

ハリウッドでの活動編集

1990年代編集

プロデューサーのマリオ・カサールは新作映画「Isobar」を製作するため、監督としてエメリッヒをハリウッドに招いた[7]。エメリッヒは『MOON44』に出演したディーン・デヴリンを共同脚本家・プロデューサーとしてパートナーを組み、2000年まで共に映画を製作した[6]。1992年にアンドリュー・デイヴィスに代わり監督として起用された『ユニバーサル・ソルジャー』でハリウッドデビューを果たした。公開後、ユニバーサル・ソルジャーシリーズ英語版は2012年まで続編映画・テレビシリーズが製作された。

1994年に『スターゲイト』を製作し、公開初週の興行収入ランキングで第1位となった[8]。同作は映画業界関係者が予想したよりも高い興行収入を記録し、成功を収めた[6][9]。1996年に公開された『インデペンデンス・デイ』は公開1週で1億ドルの興行収入を記録し、世界的にも高い興行収入を記録するなど大ヒットした[10][11][12][13]。1997年から1998年にかけて、テレビシリーズ『The Visitor』を製作し、フォックス放送で放送された。

1998年には『GODZILLA』の監督を務めた。同作は公開前から大規模なプロモーションを展開し、興行収入3億9,700万ドルを記録する成功を収めた[14]。しかし、批評家やゴジラシリーズのファンからは酷評され、第19回ゴールデンラズベリー賞において2部門を受賞した他、Rotten Tomatoesでは16%の支持率となっている[15]

2000年代編集

 
インタビューを受けるカッチャ・リーマン、ローランド・エメリッヒ、マルコ・クロイツパイントナー英語版(2007年)

2000年にアメリカ独立戦争を描いた『パトリオット』を製作する。同作はエメリッヒが脚本に関与しなかった4作品の一つ(他の3作品は『ユニバーサル・ソルジャー』『もうひとりのシェイクスピア』『ホワイトハウス・ダウン』)であり、批評家から好意的な評価を受けており、エメリッヒ作品では最も多くレビューされた作品となった[16][17][18]。エメリッヒはデヴリンに代わりハラルド・クローサーと新たな製作パートナーを組み、2004年に『デイ・アフター・トゥモロー』を製作し、地球温暖化によって引き起こされる氷河期の到来と自然災害の恐怖を描いた。同作は世界興行収入5億4,400万ドルの成功を収め、これ以降エメリッヒはパニック映画の第一人者として知られるようになる[19]。また、同作公開後にドイツに拠点を置く映画製作会社リールマシーンを設立した。

2008年に『紀元前1万年』を製作し、先史時代の戦士の活躍を描いた。同作は興行的には成功したが批評家からは酷評され、「2008年のワースト映画」及び「歴代エメリッヒ映画のワースト作品」と見なされている[20]。この後、エメリッヒは『ミクロの決死圏』のリメイク作品の監督に起用されたが[21]、企画は開発地獄英語版に陥り頓挫している。2009年にはマヤ文明の予言による「世界の終焉」が世界的な一大センセーションを巻き起こし、これに乗る形でマヤ文明の予言を基に『2012』を製作した[22][23]

2010年代編集

2011年に『もうひとりのシェイクスピア』を製作し、シェイクスピア別人説を題材にオックスフォード伯エドワード・ド・ヴィアーを描いた[24]。エメリッヒは同作について、「映画は歴史スリラーになります。それは、エリザベス1世の後継問題と称賛を求める人々の苦闘を描いたからです。テューダー朝を守る人々とロバート・セシルの一派、その間にいる女王。その物語を通じて、私たちはオックスフォード伯が書き上げた劇が"ウィリアム・シェイクスピア"のラベルが貼られる過程を見ることになります」と語っている[25]。2013年に『ホワイトハウス・ダウン』を製作し、武装集団に占拠されたホワイトハウスの混乱を描いた。2016年には『インデペンデンス・デイ』の続編となる『インデペンデンス・デイ: リサージェンス』を製作した。

人物編集

 
『インデペンデンス・デイ: リサージェンス』ジャパン・プレミアに出席するローランド・エメリッヒ、藤原竜也リアム・ヘムズワース(2016年)

エメリッヒはロサンゼルスニューヨークロンドンシュトゥットガルトに自宅を所有している[3][26][27][28][29]。彼は自宅に「奇抜な」装飾を施すことを好み[29]、稀少なハリウッドの記念品、独裁者の肖像画や共産主義者の人形、第二次世界大戦時の軍事品を飾っている[3][28]。収集したコレクションの中には、イエス・キリストが磔にされた姿が描かれたキャサリン・ハムネットスタイルのTシャツ[29]ウェールズ公妃ダイアナに似た女性が性行為をする姿が描かれたアリソン・ジャクソン英語版の作品[27][30]、自分の死亡記事を読んで笑うヨハネ・パウロ2世の彫刻[27][30]、同性愛のポーズをとるマフムード・アフマディーネジャードのイメージ写真[29]が含まれている。

ゲイであることを公表しており[1]、またアメリカの進歩主義勢力英語版を資金援助している[31]。2006年にはゲイ映画やレズ映画を保存するキャンペーンに15万ドル寄付し、アウトフェスタ英語版の歴史上最も高額な寄付となった[32]。2007年にはLGBTコミュニティーのため、ロサンゼルスの自宅でヒラリー・クリントンへの資金援助パーティーを開催した[28]

他の監督と比較して、限られた製作費を超過せずに撮影をこなすなどマネジメント能力が高く、映画業界から重宝されている[4][6]スタントマンアカデミー賞で評価されるための運動を支持しており、地球温暖化問題にも取り組んでいる[33][34]。また、複数の著名人と共に第三世界女性の権利向上を推進する団体1秒フィルム英語版を設立している[35]

フィルモグラフィ編集

受賞・ノミネート編集

受賞年 作品 部門 結果
ゴールデンラズベリー賞
1997年 インデペンデンス・デイ ジョー・エスターハス記念/興行収入1億ドル以上作品限定最低脚本賞 ノミネート
1999年 GODZILLA 最低前日譚・リメイク・盗作・続編賞 受賞
最低監督賞 ノミネート
最低作品賞 ノミネート
最低脚本賞 ノミネート
2017年 インデペンデンス・デイ: リサージェンス 最低前日譚・リメイク・盗作・続編賞 ノミネート
最低監督賞 ノミネート
最低作品賞 ノミネート
最低脚本賞 ノミネート
ヒューゴー賞
1997年 インデペンデンス・デイ 映像部門 ノミネート
キッズ・チョイス・アワード
1997年英語版 インデペンデンス・デイ フェイバリット映画賞英語版 受賞
MTVムービー・アワード
1997年英語版 インデペンデンス・デイ 作品賞 ノミネート
ピープルズ・チョイス・アワード
1997年英語版 インデペンデンス・デイ フェイバリット・ドラマティック・モーション・ピクチャー 受賞
サターン賞
1997年英語版 インデペンデンス・デイ 監督賞 受賞
1999年英語版 GODZILLA ノミネート
ファンタジー映画賞 ノミネート
2005年 デイ・アフター・トゥモロー SF映画賞 ノミネート
2010年 2012 アクション/アドベンチャー映画賞 ノミネート
2017英語版 インデペンデンス・デイ: リサージェンス SF映画賞 ノミネート
ユニバース・リーダーズ・チョイス・アワード
1996年 インデペンデンス・デイ 監督賞 受賞

脚注編集

  1. ^ a b Couch, Aaron (2013年6月25日). “Roland Emmerich: Independence Day 2 to Feature Gay Character”. The Hollywood Reporter. http://www.hollywoodreporter.com/heat-vision/roland-emmerich-independence-day-2-574512 2014年1月23日閲覧。 
  2. ^ Rebecca Ascher-Walsh (1995年8月22日). “Space Under Fire”. Entertainment Weekly. http://www.ew.com/ew/article/0,,293332_4,00.html 2008年7月8日閲覧。 
  3. ^ a b c d e f g Hilary Whiteman (2008年3月7日). “Roland Emmerich, the accidental director openly gay”. CNN. http://www.cnn.com/2008/SHOWBIZ/02/28/emmerich.history/index.html 2009年3月16日閲覧。 
  4. ^ a b c Hilary Whiteman (2008年3月10日). “Roland Emmerich: Making it big”. CNN. http://www.cnn.com/2008/SHOWBIZ/02/28/emmerich.director/index.html 2009年3月16日閲覧。 
  5. ^ The Force Is With Them: The Legacy of Star Wars Star Wars Original Trilogy DVD Box Set: Bonus Materials, [2004]
  6. ^ a b c d Richard Corliss (1996年7月8日). “The Invasion Has Begun”. TIME. http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,984815-5,00.html 2008年7月8日閲覧。 
  7. ^ Patrick Lee, Maria Virobik (2006年7月21日). “Devlin's Isobar Moves Forward”. Sci Fi Wire. オリジナル2007年9月3日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20070903164714/http://www.scifi.com/scifiwire/index.php?category=0&id=37195 2008年7月8日閲覧。 
  8. ^ Top Opening WEeekends by Month”. Box Office Mojo. 2009年3月16日閲覧。
  9. ^ Rebecca Ascher-Walsh (1995年7月28日). “Space Under Fire”. Entertainment Weekly. http://www.ew.com/ew/article/0,,293332,00.html 2008年7月8日閲覧。 
  10. ^ A.J. Jacobs (1996年7月19日). “The Day After”. Entertainment Weekly. http://www.ew.com/ew/article/0,,293427,00.html 2008年7月8日閲覧。 
  11. ^ Film History of the 1990s filmsite.org. Retrieved on July 8, 2008.
  12. ^ "Independence Day." Box Office Mojo. Retrieved on July 8, 2008.
  13. ^ "William Fay Bio." Archived 2012-02-18 at the Wayback Machine. www.10000bcmovie.com. Retrieved on March 4, 2008.
  14. ^ Godzilla (1998)”. Box Office Mojo. 2010年3月25日閲覧。
  15. ^ Godzilla (1998). [review]. Rotten Tomatoes. http://www.rottentomatoes.com/m/godzilla/ Accessed 7 June 2012.
  16. ^ The Patriot”. Metacritic. 2009年3月16日閲覧。
  17. ^ Roland Emmerich (search results)”. Metacritic. 2009年3月16日閲覧。
  18. ^ Roland Emmerich”. Rotten Tomatoes. 2009年3月16日閲覧。
  19. ^ 『デイ・アフター・トゥモロー』は大成功作だ!ローランド・エメリッヒ監督の素晴らしさを、その作品群から語る!”. シネマズ by 松竹 (2017年10月13日). 2018年5月27日閲覧。
  20. ^ Tomato Picker 2008 films with <10% "fresh" ratings”. Rotten Tomatoes. 2009年3月16日閲覧。
  21. ^ Fleming, Michael (2007年8月15日). “Emmerich to captain 'Voyage'”. Variety. http://www.variety.com/article/VR1117970307.html?categoryid=13&cs=1&query=fantastic+voyage 2007年8月15日閲覧。 
  22. ^ Fleming, Michael (2008年2月21日). “Sony buys Emmerich's '2012'”. Variety. オリジナル2008年9月29日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20080929150401/http://www.variety.com/article/VR1117981245.html?categoryid=13&cs=1&nid=2562 2008年2月21日閲覧。 
  23. ^ Pawlowski, Agnes (January 27, 2009). Apocalypse in 2012? Date spawns theories, film. http://www.cnn.com/2009/TECH/science/01/27/2012.maya.calendar.theories/ 2009年2月5日閲覧。. 
  24. ^ Coming Attractions
  25. ^ de Semlyen, Phil (2010年2月25日). “Roland Emmerich's Next Is 'Anonymous' About Shakespeare”. Empire Online (Bauer Consumer Media). http://www.empireonline.com/news/story.asp?NID=27133 2010年5月12日閲覧。 
  26. ^ Daniel Robert Epstein. “Roland Emmerich of The Day After Tomorrow (20th Century Fox) Interview”. UGO. オリジナル2009年1月7日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20090107212214/http://www.ugo.com/channels/filmTv/features/thedayaftertomorrow/rolandemmerich.asp 2009年3月16日閲覧。 
  27. ^ a b c “BRILLIANT OR BAD TASTE? Director Roland Emmerich's Knightsbridge Townhouse”. Cottage Industries. (2008年9月5日). http://www.ctcottageindustries.com/2008/09/brilliant-or-bad-taste-director-roland.html 2009年3月16日閲覧。 
  28. ^ a b c LGBT hold fundraiser for Sen. Hillary Rodham Clinton at Roland Emmerich's Hollywood Home”. 4seasons Photography (2007年7月22日). 2008年2月21日閲覧。
  29. ^ a b c d Kathryn Harris (2008年10月25日). “There's no manifesto”. The Guardian (London). https://www.theguardian.com/lifeandstyle/2008/oct/25/roland-emmerich 2009年3月16日閲覧。 
  30. ^ a b Hruska, Rachelle J. (2008年10月7日). “Roland Emmerich's Far From Conservative Style”. Guest of a Guest. http://guestofaguest.com/things-we-love/roland-emmerichs-far-from-conservative-style/ 2009年3月16日閲覧。 
  31. ^ “FUNDRACE 2008”. The Huffington Post. オリジナル2011年10月2日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20111002005634/http://fundrace.huffingtonpost.com/neighbors.php?type=name&lname=Emmerich&fname=Roland 2009年3月16日閲覧。 
  32. ^ “Hollywood director helps save gay and lesbian films”. The Advocate. (2006年1月25日). http://www.advocate.com/arts-entertainment/entertainment-news/2006/01/25/hollywood-director-helps-save-gay-and-lesbian-films 2007年3月28日閲覧。 
  33. ^ Thomas Chau (2004年5月27日). “INTERVIEW: Director Roland Emmerich on "The Day After Tomorrow"”. Cinema Confidential. http://www.cinecon.com/news.php?id=0405271 2009年3月16日閲覧。 
  34. ^ An interview with Roland Emmerich”. blackfilm.com (2004年5月1日). 2008年2月21日閲覧。
  35. ^ Roland Emmerich”. The 1 Second Film. 2008年2月21日閲覧。

外部リンク編集