夕陽のギャングたち
『夕陽のギャングたち』(伊題:Giù la testa、英題:Duck, You Sucker)は、1971年製作のイタリア・スペイン・アメリカ合作の映画。監督はセルジオ・レオーネ。本作品と同じくレオーネの監督作品である『ウエスタン』と『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』を併せて、前期の「ドル箱三部作」と対比して「ワンス・アポン・ア・タイム三部作」と呼ぶこともある。
夕陽のギャングたち | |
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Giù la testa Duck, You Sucker | |
監督 | セルジオ・レオーネ |
脚本 |
ルチアノ・ヴィンセンツォーニ セルジオ・レオーネ セルジオ・ドナティ |
製作 | フルビオ・モルセッラ |
出演者 |
ロッド・スタイガー ジェームズ・コバーン ロモロ・ヴァリ |
音楽 | エンニオ・モリコーネ |
撮影 | ジュゼッペ・ルゾリーニ |
配給 | ユナイテッド・アーティスツ |
公開 |
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上映時間 | 157分 |
製作国 |
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言語 |
イタリア語 スペイン語 英語 |
概要編集
レオーネは『夕陽のギャングたち』の製作に最初から深く関わってきたが、あくまで脚本の執筆など裏方の仕事のみに徹し、自身で監督するつもりはなかったとされる。当初レオーネは本作品の監督としてピーター・ボグダノヴィッチや、レオーネ作品で長く助監督を務めてきたジャンカルロ・サンティを考えていたが、主演のロッド・スタイガーとジェームズ・コバーンがレオーネが監督しない限り降板すると言い張ったため、止む無くレオーネ本人が監督することになった[1]。
配役の混乱、監督の変更など多くの困難を乗り越えて完成した『夕陽のギャングたち』だが、これまでの「ドル箱三部作」や前作の『ウエスタン』と比べて本作品は興行的には失敗、以後レオーネは次の監督作品で遺作でもある『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(1984年公開)まで10年以上に渡り雌伏することになる。
公開当時からしばしばレオーネの他の監督作品に埋もれて省みられることの少なかった本作品だが、近年DVDが発売されるなど再評価の機運が高まってきている。
ストーリー編集
この節にあるあらすじは作品内容に比して不十分です。 |
舞台は革命の混乱の最中にあるメキシコ。山賊一家の頭目フアン・ミランダと元IRAの闘士であるジョン・マロリーが出会うところから物語は始まる。爆発物のエキスパートであるジョンを仲間に引き入れて、かねてからの夢だったメサ・ヴェルデの国立銀行を襲撃しようとするフアン。最初はてんで相手にしていなかったジョンだが、革命計画を成就する手立てとして、フアンの計画に協力するふりをする。ジョンの助力を得て意気揚々と銀行を襲撃するフアンとその一味だが、そこには現金の代わりに、現政権に反抗する政治犯が収容されていた。ジョンに騙され、心ならずも革命の英雄となってしまったフアンはジョンとともに革命の渦に巻き込まれ、その代償としてすべてを喪うはめになる。
キャスト編集
役名 | 俳優 | 日本語吹替 | |
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TBS版 | ソフト版 | ||
ファン・ミランダ | ロッド・スタイガー | 富田耕生 | |
ジョン・マロリー | ジェームズ・コバーン | 小林清志 | |
ビィエガ医師 | ロモロ・ヴァリ | 大木民夫 | |
ルイス大佐 | アントワーヌ・ドミンゴ | 若本規夫 | |
ハイメ | フランコ・グラジオーシ | 寺島幹夫 | 後藤哲夫 |
ニーノ | 広瀬正志 | ||
ファンの息子 | 星野充昭 | ||
サンテルナ将軍 | リック・バッタリア | 千田光男 | |
アデリータ | マリア・モンティ | 渡辺美佐 | |
馬車護衛 | 宝亀克寿 |
- ソフト版 - 2002年製作。
タイトルについて編集
本作品は多くの異称があることでも知られる。当初レオーネは『Once Upon a Time... the Revolution』というタイトルを考えていたが、ベルナルド・ベルトルッチの『革命前夜』(英題:Before the Revolution)と紛らわしかったため断念した[4]。次にレオーネは映画中でしばしば使われる台詞である『Duck, You Sucker』にタイトルを変更するように主張した。レオーネ本人はこの台詞をアメリカで頻繁に使われる言い回しだと(アメリカ人俳優のジェームズ・コバーンとロッド・スタイガーがそのような言い回しを聞いたことがないと反対したにも関わらず)思い込んでいたと言われている[5]。本作品の興行収入が冴えなかったのは、映画の重厚な雰囲気にそぐわないこの軽薄なタイトルの所為だったとも指摘されている。映画公開数ヵ月後に、低調な興行成績を危惧した製作会社によって、ジェームズ・コバーンの演じる革命家が爆発物のプロであることから『A Fistful of Dynamite』にタイトルを再変更された[6]。映画公開後のタイトル変更という異例の事態を迎えた『夕陽のギャングたち』だが、元々イギリスでは『A Fistful of Dynamite』のタイトルで公開されていたため、当初の予想よりも混乱は少なかったという。
現在北米でリリースされているDVDでは『Duck, You Sucker』と『A Fistful of Dynamite』の両方が併記されている。
トリビア編集
- レオーネは当初イーライ・ウォラックにフアン・ミランダ役のオファーを出したが、ウォラックは既に他の作品に関わっていたので辞退、止む無くロッド・スタイガーがフアン・ミランダを演じることになった。ウォラックはその後翻意しレオーネに出演する意思が有ることを伝えたが、既にスタイガーがオファーを受けた後であり、またスタジオもより知名度のあるスタイガーを望んだため結局ウォラックは出演できなかった[5]。
- レオーネは当初ジョン・マロリー役にクリント・イーストウッドかジェイソン・ロバーズを考えていたといわれる。
- ジョン・マロリー役のオファーを出されたものの、出演に気が進まなかったジェームズ・コバーンを、彼の友人でありかつてレオーネ作品に出演したことのあるヘンリー・フォンダが説得した。
脚注編集
- ^ Sergio Donati Remembers "Duck You Sucker"(『夕陽のギャングたち』の脚本家セルジオ・ドナティへのインタビュー、The Sergio Leone Anthology収録)
- ^ “小林清志インタビュー”. 吹替の帝王. 2016年11月9日閲覧。
- ^ “超絶ポイント11”. 株式会社スティングレイ. 2020年7月23日閲覧。
- ^ “AKA... MANY OTHER NAMES”(The Sergio Leone Anthology付録の小冊子より)
- ^ a b The Myth of Revolution - Sir Christopher Frayling Discusses Sergio Leone(レオーネの伝記作家クリストファー・フレイリングによる映画の解説、The Sergio Leone Anthorogy収録)
- ^ Restoration Italian Style(MGMの技術監督ジョン・カークによる映画の解説、The Sergio Leone Anthology収録)