小玉ダム(こだまダム)は、福島県いわき市二級河川夏井川水系小玉川(こだまがわ)に建設されたダム。高さ102メートルの重力式コンクリートダムで、洪水調節不特定利水上水道工業用水道発電を目的とする、福島県営多目的ダムである。ダム人造湖)の名はこだま湖(こだまこ)という。

小玉ダム
小玉ダム
左岸所在地 福島県いわき市小川町高萩
位置
小玉ダムの位置(日本内)
小玉ダム
北緯37度07分24秒 東経140度49分39秒 / 北緯37.12333度 東経140.82750度 / 37.12333; 140.82750
河川 夏井川水系小玉川
ダム湖 こだま湖
ダム諸元
ダム型式 重力式コンクリートダム
堤高 102 m
堤頂長 280 m
堤体積 570,000
流域面積 67.8 km²
湛水面積 48 ha
総貯水容量 13,930,000 m³
有効貯水容量 12,230,000 m³
利用目的 洪水調節不特定利水上水道
工業用水道発電
事業主体 福島県
電気事業者 東北電力
発電所名
(認可出力)
小玉川第一発電所 (2,800kW)
施工業者 大成建設鹿島建設加地和組
着手年/竣工年 1975年/1996年
出典 [1]
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小玉川第二発電所ダム
小玉川第二発電所ダム
所在地 福島県いわき市
位置
小玉ダムの位置(日本内)
小玉ダム
河川 夏井川水系小玉川
ダム諸元
ダム型式 重力式コンクリートダム
堤高 15.15 m
堤頂長 86.0 m
堤体積 5,200
流域面積 62.5 km²
総貯水容量 4,407,312 m³
有効貯水容量 3,258,923 m³
利用目的 発電
事業主体 東北電力
電気事業者 東北電力
発電所名
(認可出力)
小玉川第二発電所 (2,920kW)
施工業者 加藤組
着手年/竣工年 1934年/1935年
出典 [2]
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歴史 編集

阿武隈高地に端を発し、いわき市で太平洋に注ぐ夏井川のは、古くから農業用水や上水道用水として利用されており、また急な河川勾配を利用した水力発電所の建設も大正時代より行われてきた[3]。しかし、1973年昭和48年)・1978年(昭和53年)の渇水水不足が発生しており、さらに住宅地および工業団地の開発により上水道・工業用水道水への需要も高まっていた[4]。一方、急流のため洪水による水害の被害も多く、用地確保の問題から河道拡幅による対策を講じることが困難であったことから、ダムによる洪水調節が最適と判断され、夏井川総合開発事業の一環として支流の小玉川に小玉ダムが建設されることとなった[4]

小玉川は長さ20キロメートル流域面積72.6平方キロメートルで、阿武隈高地に端を発し、いわき市小川町中心市街地で夏井川へ合流している[5]。農業用水の水源となっているほか、2か所の水力発電所も建設されている[5]。かつての電力会社平電力によって1931年(昭和6年)に小玉川第一発電所が、1935年(昭和10年)にはその上流で小玉川第二発電所がそれぞれ運転を開始し、現在はいずれも東北電力に継承されている[6][7][8]。建設する小玉ダムは計画高水流量900立方メートル毎秒のうち680立方メートル毎秒を調節するほか、不特定利水容量を確保して既存の用水路の取水を安定化させるとともに、河川環境の保全を図る[9]。また、いわき市向けに上水道用水として日量1万5,000立方メートル、好間工業団地向けに工業用水として日量1万1,000立方メートルの取水を可能にする[9]。小玉川第一発電所は小玉ダムから最大3.89立方メートル毎秒の水を取り入れ、最大2,800キロワット、年間688万3,000キロワット時電力量を発生する[9]。小玉ダムの貯水容量に発電用水は配分されておらず、あくまでも小玉ダムからの利水放流を活用する水力発電所という位置づけである[9]

小玉ダム建設に向けての予備調査は1972年(昭和47年)に、実施調査は1975年(昭和50年)に開始された[10]。用地取得ならびに補償に関しては1981年(昭和56年)に着手し、1983年(昭和58年)にダム建設を採択、同年度末にダム上下流地域との補償交渉が妥結した[10]。工事はまず1984年(昭和59年)に市道の付替に着手し、1987年(昭和62年)に着工した仮排水路が1989年平成元年)3月に竣工[10]。同年8月には漁業権への補償が妥結となり、同年10月にダム本体工事が着工[10]。同年12月よりダム基礎掘削を開始し、1991年(平成3年)4月から1994年(平成6年)にかけてコンクリート打設を行い、1996年(平成8年)にダム本体工事竣工、1997年(平成9年)3月24日に竣工式が執り行われた[10]。試験湛水は1995年(平成7年)11月から開始し、1997年5月にサーチャージ水位に到達[10]。その後水位を常時満水位まで低下させ、同年7月の完了検査を経て、同年8月1日より小玉ダムの供用が開始された[10]。総事業費は353億[5]

周辺 編集

JR磐越東線小川郷駅から小玉川に沿って上流へと進み、いわき市出身の作家草野心平文学館いわき市立草野心平記念文学館)を過ぎると、小玉ダムに至る。ダム周辺は広く開放されており、いくつかのゾーンごとに施設整備が行われている[11]。ダム左岸の管理所周辺は施設ゾーンとしてダムの案内看板記念碑広場公衆便所を配置し、高台は展望ゾーンとして整備された[11]。ダム天端を渡って右岸には散策ゾーンおよび歴史と文化のゾーンを設け、60メートル四方の巨大な壁画が作られた[11]。これは当地に伝わる鬼ヶ城山伝説にちなむもので、坂上田村麻呂が鬼退治をしたといわれており、デザイン公募で選ばれた兵庫県神戸市在住のスウェーデン人が担当した[12]。ダム湖の中ほどには左岸側にアスレチック遊具を配置したわんぱく遊びゾーンが、右岸側には炊事施設などを設けた野外活動ゾーンがある[11]。上流は親水ゾーンとなっており、小玉川第二発電所や古いダムの遺構が残る。

小玉ダムの上流には小玉川第二発電所の取水ダムがある。磐越自動車道いわき三和インターチェンジから福島県道66号小名浜小野線を北上し、小玉川を渡った先で右折すると小玉川第二発電所の取水ダムに至る。高さ15.15メートルの重力式コンクリートダムで[6]、東北電力の発電用ダムであるが、「ダム便覧」には掲載されていない[13]1934年(昭和9年)、平電力が工費57万2,000円(当時)をもって起工、1935年に竣工した[6]。幅6メートルのテンターゲート2門と排砂門を2門備える[6]。ダムに貯えた水は導水路を通じて小玉川第二発電所に送水され、最大2,920キロワットの電力を発生する[8]

中根大橋
小玉大橋
  • 全長:81.15m
  • 幅員:7.0m
  • 形式:下路式鋼曲弦トラス橋
  • 竣工:1990年
小川町西小川から高萩に跨がり、いわき市道明神平家ノ前線を通す。小玉ダム建設に伴い水没区間付替のために建設された。ダム景観に考慮され、曲弦トラス橋が2橋連なっている。小玉大橋の総工費は3億8100万円[15]

脚注 編集

  1. ^ 電気事業者・発電所名については「水力発電所データベース」より、その他は「ダム便覧」による(2013年4月21日閲覧)。
  2. ^ ダム名は仮称。座標は「ウォッちず」にて得た。電気事業者・発電所名については「水力発電所データベース」より、その他は「小玉川水力発電所工事概要」による(2013年4月21日閲覧)。
  3. ^ 「夏井川水系河川整備基本方針」1 - 2ページ。
  4. ^ a b 「夏井川水系 小玉ダム」2ページ。
  5. ^ a b c 「夏井川水系 小玉ダム」4ページ。
  6. ^ a b c d 「小玉川水力発電所工事概要」より(2013年4月21日閲覧)。
  7. ^ 水力発電所データベース 小玉川第一」2008年3月31日入力、2013年4月21日閲覧。
  8. ^ a b 水力発電所データベース 小玉川第二」2008年3月31日入力、2013年4月21日閲覧。
  9. ^ a b c d 「夏井川水系 小玉ダム」5ページ。
  10. ^ a b c d e f g 「夏井川水系 小玉ダム」15 - 16ページ。
  11. ^ a b c d 「夏井川水系 小玉ダム」13 - 14ページ。
  12. ^ 小玉ダム 周辺施設」より(2013年4月21日閲覧)。
  13. ^ ダム便覧 ダム名一覧[福島県]所在地順」、「ダム便覧 参考掲載ダム・堰」より(2013年4月21日閲覧)。
  14. ^ 平成29年度 定期点検・診断結果 - いわき市
  15. ^ 福島県の橋梁 平成4年度版 - 福島県土木部

参考文献 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集