新境川(しんさかいがわ)は、木曽川水系一級河川岐阜県各務原市を流れる。北派川を経て木曽川に合流し、国土交通省の分類では木曽川の2次支川にあたる[1][2]

新境川
境川放水路の水を流す北派川(木曽川合流部)
水系 一級水系 木曽川
種別 一級河川
水源 各務原市各務野自然遺産の森付近など
河口・合流先 木曽川笠松町・各務原市)
流域 岐阜県
地図
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岐阜市周辺主要河川の位置関係図
木曽川上流改修工事前後の河道比較。青線部が拡幅・線形改善などが行われた箇所、緑線部が新規開削箇所、赤線部が廃川など。
新境川に咲く百十郎桜2009年平成21年)4月撮影)
各務野自然遺産の森にある、新境川の源流の1つとなる湧き水
各務野自然遺産の森にある、新境川の源流の1つとなる湧き水

概要 編集

各務原市各務野自然遺産の森付近などを水源とし[3]、各務原市北部の田園地帯を西に、西部の市街地を南に流れる。最下流部では木曽川の右岸堤防内に入り、北派川河川敷(高水敷)を西に流れ[4]、各務原市川島笠田町と岐阜県羽島郡笠松町円城寺の境付近で木曽川本流に合流する。

各務原市那加東野町・蘇原大島町付近で境川と分岐し、境川は岐阜市などを経由して長良川に合流する。新境川の分岐点から北派川までは、境川の放水路として人工的に開削された区間であり、境川放水路(さかいがわほうすいろ)とも呼ばれる。元々は上流から長良川へ流れる1本の「境川」だったが、現在は境川上流部だった部分と境川放水路を1つの「新境川」とし、境川は新境川の派川として位置づけられている[5][1][2]

境川放水路の区間は、本来の土地の高低に逆らって低地から南の各務原台地に向かって開削されている。概ねJR高山本線より北は低地に堤防が築かれた区間で、「新境川堤・百十郎桜」などのいわゆる桜堤の区間である。一方、概ね高山本線から国道21号那加バイパスまでは、台地を切り込んだ区間であり、谷になっている。那加バイパス付近から南は再び低地の堤防区間となる。境川に流れ込む三井川と三井山付近で立体交差する。

各務原市大佐野町付近の中屋大橋を過ぎると、新境川は木曽川上流改修工事以前の木曽川右岸堤防内に入る。この区間は現在木曽川分流の北派川の位置づけられており、新境川を管理する岐阜県および北派川を管理する国土交通省は河川管理上「新境川は北派川に合流する」と定義しており[5][1][2]、岐阜県と国土交通省の管理境界柱が中屋大橋の北1メートル地点に設置されているが[注釈 1]、木曽川から北派川への分岐部は出水時以外は水が流れ込まない越流堤となっている。そのため実態としては新境川は北派川へと合流せずに北派川河川敷内を流れており、平時は水は流れていない北派川河川敷には公園などが整備されており、河川敷にある自然共生研究センターの実験河川などは新境川の水が引き込まれている[6][7]。そのため河川管理上「北派川」とされている区間は「北派川」とされることもあれば[8][9]、必要に応じて「新境川」と説明や表記されることもある[4]。以下は、各種地図における河川名記載の比較。

境川放水路区間 北派川区間 該当媒体
新境川 北派川
新境川
(南派川の記載あり)
新境川
(南派川の記載なし)

歴史 編集

境川は古木曽川の本流であり[10]1586年天正14年)で木曽川の本流が現在の河道に移った後もたびたび洪水が発生していた。旧河川敷は水田などに転用されたが、明治以降は上流部の乱伐や台地開発によって容易に出水していた。加えて各務原台地の北側や南側の一部は水はけが悪く悪水が生じており、農業の障害になっていた[11]。こうしたことから、現在の各務原市蘇原大島町から各務原市下中屋町を開削して木曽川(北派川)に合流する放水路を造ることで、境川の治水と悪水の排水を行う計画が立案される[12]

境川放水路の整備は1922年(大正10年)から始まった木曽川上流改修工事と並行して進められ、1928年(昭和3年)から始まり1930年(昭和5年)に完成した[12]。なお、北派川は1925年(大正13年)12月から1929年(昭和4年)にかけて行われた、川島周辺で乱流した木曽川の河道整理を行う上流改修の工事の中で越流堤が建造されており[13]、境川放水路が完成した時点ですでに平時には水が流れない状態であった。

境川放水路の完成および工事犠牲者の慰霊の意味を込めて、地元出身の市川百十郎1931年(昭和6年)から翌年にかけて、新境川の堤防に約1,200本の吉野桜を寄付し植樹した。この桜は“百十郎桜”と呼ばれ、戦時中に燃料として殆どが伐採されたが、戦後に各務原市発足を機に改めてソメイヨシノが植樹され、1,000本程度まで復活した。この「新境川堤・百十郎桜」は日本さくら名所100選の一つである。

主な橋 編集

新境川・概略図
 
各務原市鵜沼北島付近
 
岐阜県道17号(坂井二号橋)
 
岐阜県道93号(馬出橋)
 
岐阜県道205号(山崎橋)
 
境川
 
岐阜県道93号(那加新橋)
 
岐阜県道93号(新那加橋)
 
日本さくら名所100選地碑
 
JR高山本線
 
名古屋鉄道各務原線
 
百十郎桜
 
国道21号(那加橋)
 
国道21号那加バイパス(境川橋)
 
岐阜県道95号(春日橋)
 
中屋大橋
 
北派川(以下、法令上は「北派川」)
 
岐阜県道93号岐阜県道180号もぐり橋
 
東海北陸自動車道木曽川北派川橋
 
木曽川
新境川(旧境川本流部分)
  • 新会本橋(岩坂グリーンロード)
  • 北島橋(かかみ・すえ通り)
  • 坂井二号橋(県道17号
  • 才撫橋(蘇原駅前通り)
  • 押廻橋
  • 東泉橋
  • 合渡橋
  • 市儀橋
  • 天王橋
  • 岡島橋
  • 大島橋
  • 馬出橋(県道93号
  • 山崎橋(県道205号
新境川(境川放水路)
  • 西島橋
  • 瑞穂橋
  • 那加新橋(県道93号)
  • 新那加橋(県道93号)
  • 花見橋
  • 吾妻橋(吾妻町通り)
  • 出会い橋
  • 那加橋(旧国道21号
  • 境川橋(国道21号那加バイパス
  • 清水橋(稲羽本通り)
  • 春日橋(県道95号
  • 中屋大橋
北派川

注釈 編集

  1. ^ 1928年(昭和3年)当時の境川放水路計画では、境川放水路の建設区間は各務原市下中屋町付近の中屋橋(愛知県道151号・岐阜県道114号一宮各務原線)付近までとされていた

脚注 編集

  1. ^ a b c 国土交通省中部地方整備局. “河川コード台帳(河川コード表編)” (PDF). 2022年11月3日閲覧。
  2. ^ a b c 国土交通省中部地方整備局. “河川コード台帳(河川模式図編)” (PDF). 2022年11月3日閲覧。
  3. ^ 各務野自然遺産の森”. 各務原市ホームページ. 各務原市 (2021年2月12日). 2022年11月3日閲覧。
  4. ^ a b 原田守啓ほか. “扇状地の中小河川における部分拡幅工法の有効性” (PDF). 2022年11月22日閲覧。
  5. ^ a b 岐阜県 (2021年4月1日). “河川調書” (PDF). 2022年10月7日閲覧。
  6. ^ 自然共生研究センター. “ARRCNEWS 20周年特別記念号(後半)” (PDF). 2022年11月22日閲覧。
  7. ^ 萓場祐一. “自然共生研究センターの概要と研究活動” (PDF). 2022年11月22日閲覧。
  8. ^ 木曽川の下流域でコクチバス初発見 岐阜・笠松町の北派川で1匹 | 岐阜新聞Web”. 木曽川の下流域でコクチバス初発見 岐阜・笠松町の北派川で1匹 | 岐阜新聞Web (2023年9月5日). 2023年10月24日閲覧。
  9. ^ コクチバス、木曽川下流で初確認 全域調査、駆除へ:中日新聞Web”. 中日新聞Web. 2023年10月24日閲覧。
  10. ^ 国土交通省 中部地方整備局. “KISSO vol.63” (PDF). 2022年7月28日閲覧。
  11. ^ 『各務原市史  通史編 近世・近代・現代』各務原市教育委員会、504-514頁。 
  12. ^ a b 荒田川公害と新荒田川の開削”. お話・岐阜の歴史. 2022年10月28日閲覧。
  13. ^ 国土交通省 中部地方整備局. “KISSO Vol.19” (PDF). 2022年11月30日閲覧。

外部リンク 編集