無人の家で発見された手記

無人の家で発見された手記』(むじんのいえではっけんされたしゅき、原題:: Notebook Found in a Deserted House)は、アメリカ合衆国のホラー小説家ロバート・ブロックによる短編ホラー小説。クトゥルフ神話の1つで、『ウィアード・テールズ』1951年3月号に掲載された。神話から遠ざかっていたブロックが、『尖塔の影』に続いて手がけた復帰作品である。

主人公は12歳の少年であり、邦訳も子供の視点・思考・言葉遣いとなっている。東雅夫は『クトゥルー神話事典』にて、「少年の一人称独白体という、神話作品としては珍しいスタイルで書かれている。サスペンスを盛り上げる手腕には、後年のスリラー作家としての才能の片鱗が示されているといえよう」と解説している。[1]

アメリカインディアンの土俗信仰と、ヨーロッパのドルイドと、クトゥルフ神話のシュブ=ニグラス信仰を融合して作品に仕上げている。シュブ=ニグラスに加えて、ショゴスの作品でもあるが、名前通りにショゴスとは言い切れず、特殊な扱いとなっている。作中で「ショゴス」と呼ばれている怪物を原型に、後にクトゥルフ神話TRPGにて「(シュブ=ニグラスの)黒い仔山羊」が誕生する。

ブライアン・ラムレイは、少年時代にこの作品を読んだことがきっかけでクトゥルフ神話に傾倒し[2]、後に作家となった。

あらすじ編集

ルーズフォードの丘には呪われた伝説があり、住人が姿を消して二度と戻って来ないこともある土地であった。ウィリー・オズボーンは、祖母を亡くし、ルーズフォードの丘に住むおじのフレッド夫妻に引き取られる。1年が経過し、10月になると、ウィリーは「しょごす」と聞こえるような謎の怪音や、悪臭を感じるようになる。また「山羊の蹄」のような、粘液と悪臭を帯びた巨大な足跡も見つける。ウィリーは悪夢に魘されるようになり、夢にはその怪物が姿を持って現れる。ウィリーは神話の本から、ヨーロッパのドルイドを連想する。インディアンの伝承で「白い神が海からやってきた」とされている話は「舟に乗ってきた白人ドルイド」という説を受けて、ウィリーはドルイドが樹木の霊を呼び出して生贄を捧げているのではないかという推測に至る。

10月25日の雷雨の日、親戚のオズボーンが泊まりに来ると聞いて、フレッドおじさんが馬車で駅まで迎えに行く。だが待っても戻らず、夜に無人の馬車が帰ってくる。翌日には馬も死んでしまう。ルーシーおばさんは、逃げ出すための荷造りをするが、姿を消す。さらに井戸の水が緑色の粘性あるものに変わる。

木曜日、10月31日ハロウィンの日、家にオズボーンがやって来る。初対面の彼は「25日は仕事で来れなかった、電報も駅止めで届いていなかったのだろう」と語る。ウィリーはこの家から逃げようと訴えるが、オズボーンは大人の言い分で引き留める。ウィリーはオズボーンを偽物と見抜き、振り切って、郵便屋のじいさんと逃げ出す。しかし馬車の行く手を木の化物が遮り、馬車は事故を起こし、ウィリーは投げ出される。

途方に暮れたウィリーは、牛を殺して祭壇に捧げる、不気味なサバトの光景を目撃する。ウィリーは逃げ回るが、家に戻ってきてしまう。ウィリーは家に入り、板と釘でドアや窓を封鎖する。オズボーンの声が聞こえ、しかも複数人の気配を感じ取る。ウィリーは手記を記録し「井戸や祭壇を調べてください」と書き残す。何かが家を揺さぶり、ウィリーの手記が途切れる。

最終的に、無人の家で手記が発見される。

主な登場人物・用語編集

  • ウィリー・オズボーン(ぼく) - 語り手。12歳の少年。両親を亡くして祖母と2人で暮らしていた。学校に行ったことがない。本作は全編彼のモノローグで語られる。
  • 祖母(おばあちゃん) - ウィリーに、魔の物と関わりを持たないよう忠告する。1年前に死去。
  • フレッド(おじさん) - 髭の長い痩身の男性。ルーズフォードの丘で農家をしている。
  • ルーシー(おばさん) - 感じのよい中年女性。ウィリーの読書を助ける。
  • オズボーン - おばさんの弟。ウィリーとは面識がない。予定日には来ず、ハロウィンの日に都会風の男性がやって来たが、偽物である。
  • キャップ・プリチェット(じいさん) - 郵便配達員。定期的に、木曜の午後にやって来る。
  • 怪物 - 樹木に形容され、蹄のある足とロープをより合わせたような胴体を持つ。シュブ=ニグラスと関連ある存在らしいが、詳細不明。作中ではショゴスと呼ばれる。
  • メヒタベル・オズボーン - オズボーン家の先祖。セイレムで魔女の疑いをかけられて処刑された。
  • 「井戸」 - フレット宅には新旧2つの井戸があり、古い井戸は緑色に腐った水のため使い物にならない。後に新しい井戸の水も変質する。井戸が門であり、地の底には異界がありショゴスなどが棲息していることが示唆されている。
  • 「門」 - 物体の門ではなく、異次元への門。

収録編集

関連項目編集

  • ショゴス - ラヴクラフトが創造したクリーチャー。変幻自在の細胞を持つ。本作の怪物と同名。

脚注編集

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注釈編集

出典編集

  1. ^ 東雅夫『クトゥルー神話事典』(第四版、2013年、学研)364、365ページ。
  2. ^ 東雅夫『クトゥルー神話事典』(第四版、2013年、学研)506ページ。