男たちの挽歌』(おとこたちのばんか、中国語: 英雄本色、英題:A Better Tomorrow)は、1986年制作の香港映画。監督はジョン・ウー、主演のチョウ・ユンファはこの作品が出世作となった。

男たちの挽歌
英雄本色
監督 ジョン・ウー
脚本 ジョン・ウー
製作 ウォン・カーマン
製作総指揮 ツイ・ハーク
出演者 チョウ・ユンファ
ティ・ロン
レスリー・チャン
エミリー・チュウ
レイ・チーホン
ケネス・ツァン
音楽 ジョセフ・クー
撮影 ウォン・ウィンハン
公開 香港の旗 1986年8月2日
日本の旗 1987年4月25日
上映時間 95分
製作国 香港の旗 イギリス領香港
言語 広東語
次作 男たちの挽歌 II
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インド、韓国、中国などでリメイクされている。

概要 編集

それまでコメディ映画やカンフー映画が主流だった香港映画界に、香港ノワール英雄式血灑中国語版)とも呼ばれる新しい流れを作った記念碑的な作品である。

かつて「映画の黄金時代」と言われた時期に日本で量産された娯楽映画(とりわけ、昭和30年代を中心に一世を風靡した日活のアクション映画、および昭和40年代から50年代にかけて一時代を築いた東映ヤクザ映画)を彷彿とさせる内容、激しいガンアクションや火薬を大量に用いた爆発シーンは話題を呼び、香港のみならずアジア各国でも大ヒットした。また、スローモーションを多用した銃撃戦は、サム・ペキンパーの『ワイルドバンチ』の影響を強く受けたと言われている。さらにセルジオ・レオーネ深作欣二からも多大な影響を受けていることは有名である。逆にこの作品が後世の映像作家に与えた影響も大きく、『マトリックス』シリーズのウォシャウスキー姉妹も「日本のアニメとジョン・ウーのファンだ」と公言している。

この人気により、『男たちの挽歌 II』『アゲイン/明日への誓い』とシリーズは計3本製作された。他にも『狼 男たちの挽歌・最終章』『ハード・ボイルド 新・男たちの挽歌』といった作品もあるが、これらは監督と主演が同じだけでシリーズとは関連性がなく、日本で独自に同じタイトルがつけられたものである。しかし、ツイ・ハーク、ジョン・ウーの2人とも「男たちの…」という邦題を気に入っているという。

第6回香港電影金像奨最優秀作品賞・最優秀主演男優賞(チョウ・ユンファ)、第23回金馬奨最優秀監督賞を受賞している。

制作へのきっかけ 編集

香港映画界で独自の路線を貫き通したことでジョン・ウーティ・ロンが台湾に追われることになり、不遇の生活を送っていたところ、友人であるツイ・ハークが「もう一度、香港で映画を作ろう」と台湾に出向いて香港映画界に復活させたことが本作の制作のきっかけとなった(そのエピソードは、冒頭の出所したホーを警部が迎えに行く場面に引用されている)。なお、当時ジョン・ウーが在籍していたのはゴールデン・ハーベスト社で、『ソルジャー・ドッグス』の暴力描写が問題となり干されることになったという。

ストーリー 編集

香港。ホーは三合会の幹部であることを学生である実弟・キットに隠しながら面倒を見ていた。闘病中であるホーの父がホーを呼び出し、キットが警察官を志望していることを伝え、足を洗うよう懇願する。最後の仕事と決めた台湾での偽札取り引き現場は、何者かの密告によって警察に押さえられ、ホーは居合わせた弟分のシンを逃がして自分だけが罪をかぶる。偽札取り引きが不成立に終わったことで、ホーの父が制裁のために射殺される。このことでキットは尊敬する兄が三合会の組員であることを知る。ホーのもうひとりの弟分で、ホーと親しいマークが怒り、単身で報復に向かうが、返り討ちに遭って、歩行の自由が利かない体になる。

3年後、ホーは出所して香港に戻る。再会したキットは刑事となっていたが、兄の前科のために組織犯罪の捜査を外され、出世の道を絶たれていた。キットは父親の死の責任をなじって兄を殴り飛ばし、絶交を言い渡す。ホーは弟との和解を目指し、出所時に紹介された前科者ばかりのタクシー会社に就職し、堅気となって穏やかに暮らすことを決意する。

三合会は罪を免れたシンが実権を握り、マークは彼のお抱え運転手に落ちぶれていた。やがて、シンは失った誇りを取り戻したいマークの焦りに乗じ、ホーと2人で危険な麻薬取り引きの仕事をまかせようとする。呼び出されたホーは決然と断るが、そのためにマークは激しい暴行を受け、タクシー会社も組員たちに破壊される。ホーは傷が癒えたマークとともにシンの事務所に忍び込み、偽札の原版を盗み出して、キットに引き渡す。

2人は「原版を大金と引き換えに返す」としてシンを夜更けの埠頭に呼び出す。キットを通じて警察にその場所を伝え、組員たちを逮捕させる計略だった。3人は先手を打って隠れていた組員たちに取り囲まれ、ともに銃を手に応戦する。マークの犠牲と引き換えに三合会は全滅した。ホーはキットの持つ手錠を取り上げ、自分で自分にかける。

キャスト 編集

役名 俳優 日本語吹替
新ソフト版 旧ソフト版 TBS
マーク(李馬克) チョウ・ユンファ 磯部勉 相沢まさき 玄田哲章
ホー(宋子豪) ティ・ロン 堀勝之祐 大滝進矢 堀勝之祐
キット(宋子杰) レスリー・チャン 井上和彦 高木渉 関俊彦
ジャッキー エミリー・チュウ 中原麻衣 増田ゆき 玉川砂記子
シン(譚成) レイ・チーホン 堀内賢雄 成田剣 大塚芳忠
キン(堅叔) ケネス・ツァン 野島昭生 青山穣 広瀬正志
ホーの父(宋景文) ティエン・ファン中国語版 藤本譲
ユー社長 シー・イェンズ中国語版 佐々木敏 山野井仁 村松康雄
シンの手下 シン・フイオン中国語版 山野井仁
偽札技師 レウ・ミン中国語版 田原アルノ
香港警察・部長 カム・ヒン・イン中国語版 田中正彦 若本規夫
台湾警察・警部 ジョン・ウー 森田順平 山野井仁 納谷六朗
音楽学院の審査員 ツイ・ハーク 野島昭生
台湾黒社会のボス 王俠中国語版 飛田展男
日本語吹替演出 市来満 藤山房伸
日本語吹替翻訳 高橋結花 木原文子
  • 新ソフト版:2013年パラマウント発売の日本語吹替収録版BD&DVDに収録
  • 旧ソフト版:1999年カルチュア・パブリッシャーズ発売のDVDに収録
  • TBS版:初回放送1989年2月21日『火曜ロードショー

スタッフ 編集

主題歌 編集

「當年情」
作詞 - ジェームズ・ウォン、作曲・編曲 - ジョセフ・クー、歌 - レスリー・チャン

挿入歌 編集

「幾許風雨」
作詞 - 小美、作曲 - 秋世镐、歌 - :ロマン・タム :バーで12年前インドネシアで恥をかいた話をしているシーンで流れる曲
「免失志」
作詞 - 王秀英、作曲 - 陳宏、歌 - 陳小雲中国語版:楓林閣襲撃シーンで流れる曲
「明天會更好」
作詞 - 羅大佑張大春中国語版、許乃勝、李壽全中国語版邱復生中国語版シルヴィア・チャン詹宏志中国語版、作曲 - 羅大佑、編曲 - 陳志遠中国語版:英題「A BETTER TOMORROW」はこの曲の題名に由来する

リメイク 編集

インド版 編集

1994年に『Aatish: Feel the Fire』のタイトルで公開された。日本未公開。

韓国版 編集

男たちの挽歌
A BETTER TOMORROW
무적자
監督 ソン・ヘソン
脚本 キム・ヒョソク
イ・テッキョン
チェ・グンモ
キム・ヘゴン
製作総指揮 ジョン・ウー
テレンス・チャン
出演者 チュ・ジンモ
ソン・スンホン
チョ・ハンソン
キム・ガンウ
音楽 イ・ジェジン
撮影 カン・スンギ
製作会社 Fingerprint Pictures=Hong Kong Fortunester Entertainment=Zuzac
配給   東映
公開   2010年9月16日
  2011年2月19日
上映時間 125分
製作国   韓国
言語 韓国語
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男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW』(原題:무적자)は、2010年の韓国映画。

基本的なストーリーはオリジナルとほぼ同じであるが、主要人物が朝鮮民主主義人民共和国からの脱北者である。オリジナル以上に悲劇的な結末などリメイク版独自の展開が追加されている。

日本公開は2011年2月19日で、キャッチコピーは「最期に賭けたものは、「明日」。」。

ストーリー(韓国版) 編集

キャスト(韓国版) 編集

スタッフ(韓国版) 編集

中国版 編集

男たちの挽歌 REBORN
英雄本色2018
監督 ディン・シェン
脚本 ディン・シェン
ウー・ヤン
製作 チョウ・ミャオ
出演者 ワン・カイ
マー・ティエンユー
ダレン・ワン
撮影 ディン・ユー
配給   ハーク(DVDリリース)
公開   2018年1月18日
  2020年5月20日(DVDリリース)
上映時間 114分
製作国   中国
言語 普通話
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男たちの挽歌 REBORN』(原題:英雄本色2018)は、2018年の中国映画。

日本では劇場未公開で、2020年5月20日にDVDがリリースされた。

ストーリー(中国版) 編集

キャスト(中国版) 編集

スタッフ(中国版) 編集

  • 監督:ディン・シェン
  • 脚本:ディン・シェン、ウー・ヤン
  • プロデューサー:チョウ・ミャオ
  • 撮影:ディン・ユー

脚注 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集