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近藤 誠(こんどう まこと、1948年10月24日 - )は、日本医師慶應義塾の中高一貫、医学部を経ての放射線治療の専門家となり、元慶應義塾大学医学部専任講師。現在は近藤誠がん研究所の所長である[1]。1980年代に乳房温存療法を日本で提唱した第一人者、1996年の『患者よ、 がんと闘うな』はベストセラーとなり近藤の名を一般に広め[2]、その他『医師に殺されない47の心得』など[3]。基本的に「がんは放置」という現代医療の価値観を揺るがす方針を提示しており、2012年には文化的業績に対し菊池寛賞を受賞、他方でこの放置療法について批判も寄せられている[4]

こんどう まこと
近藤 誠
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生誕 (1948-10-24) 1948年10月24日(70歳)
日本の旗 日本・東京都
国籍 日本の旗 日本
出身校 慶應義塾中等部・高等部
慶應義塾大学医学部
職業 医師
活動期間 1973 -
肩書き 近藤誠がん研究所所長
受賞 菊池寛賞(2012年)
公式サイト 近藤誠がん研究所・セカンドオピニオン外来

目次

来歴編集

1948年、東京都開業医の家に生まれる。1964年慶應義塾中等部卒業、1967年慶應義塾高等学校卒業。1973年慶應義塾大学医学部を首席で卒業、同・放射線科に入局し同年医師国家試験合格[1]

米国ECFMG (Educational Commission for Foreign Medical Graduates) 取得。学部時代はボート部と茶道部に所属。医学部の同級生と学生結婚をしており、在学中に子供が誕生した[5]

1976年、慶應義塾大学医学部放射線科助手に就任[1]。1979年からアメリカ合衆国に留学しロスアラモス国立研究所パイ中間子治療施設で勤務するが、この粒子線治療には見切りをつけ翌1980年に帰国[1]、「各種心疾患例におけるタリウム-201心筋イメージング」で慶應義塾大学医学博士の学位を修得。国立東京第二病院(現国立病院機構東京医療センター核医学センターを経て、1983年に慶應義塾大学医学部専任講師に就任。

1988年に慶應義塾大学専任講師の肩書きで「乳ガンは切らずに治る」を『文藝春秋』に寄稿[1]。乳房温存療法を日本で最初に提唱したことで著名となる[2]。その後、1996年に『患者よ、 がんと闘うな』を出版しベストセラーとなる[2]。文藝春秋から出版された『がん放置療法のすすめ 患者150の証言』や『医師に殺されない47の心得』といったベストセラーがある[3]

2013年近藤誠がん研究所セカンドオピニオン外来を設立。2014年3月慶應義塾大学定年退職[1]のセカンドオピニオン外来を専門とし、独自理論による著書を通じて外科手術・化学療法・放射線療法を批判している。

受賞歴は2012年に第60回菊池寛賞を受賞、この賞は文化的業績が称えられたもので[4]文藝春秋読者賞など。

主張編集

  • 以前は[いつ?]縮小手術を薦めていた。
  • 手術抗がん剤で治るという医師らを批判
  • 「がんもどき」は悪化しないので放置しても良く、治らないがんは発症時に生命予後が決まっているため放置して静かに死を迎えるべきだと主張。
  • ワクチンに対しても批判的な立場を取る。2018年に『ワクチン副作用の恐怖』を出版。

批評編集

1986年まではFirst Authorとして放射線治療に関する論文を投稿、その後はLast Authorとして乳癌に関する論文を複数所有。独自理論に関する論文はなく、一般向けでのみ展開主張している。

近藤が支持される背景には、過剰な医療処置によって苦しんだ人も多いということがある[3]。過剰な投薬が命を縮めるという近藤の主張に対しては、少なくない医師の同意も得られる[4]。『医者に殺されない47の心得』の反響として読者葉書は7000通を超え、その内容からは患者の気持ちを尊重した医療への疑問や後悔の気持ちが寄せられている[6]。名古屋市大薬学部教授の粂和彦は、患者の生活が後回しにされているという近藤による批判が受け入れられやすい社会になってきたとする[6]

経済雑誌の『東洋経済』に掲載の虎の門病院の高野利実の見解では、近藤は独自の「がんもどき理論」を提唱し、外科手術・化学療法・放射線療法に警鐘を鳴らし「放置」も提案している。抗がん剤はダメだと思考停止しており、2000年ごろと比べて全否定的になってきたという[7]

インフォームド・コンセントを日本に広めた一人に近藤は数えられるが、日本医科大学武蔵小杉病院の腫瘍内科教授の勝俣範之によれば、近藤の広めたのは責任逃れのためのインフォームドコンセントで、近藤の持論を説明した後に患者が自己決定するという性質で、そうではなく各治療のメリットデメリットをもっと説明し患者の価値観を踏まえて共に決定しないといけない[3]。勝俣には『医療否定本の嘘』といった著作があり、近藤の主張を否定している立場である[3]

著書『抗がん剤は効かない』では

図10-1は日本人男性の胃がん統計です。近年発見数が急増しているのは、高齢者にまで内視鏡検査をするようになった影響と考えられる。他方胃がん死亡数は横ばい傾向です。早期発見理論が正しいとすると、検診で発見される胃がん総数が増えれば胃がん死亡数は減ってしかるべきです。ところが死亡数は変わらない。とすれば、胃がんのうち近年増加した部分は「もどき」であるはずです。 — 『抗がん剤は効かない』 p228.

としているが、これは誤りであり、実際には日本人の胃癌の年齢調整死亡率は男女とも低下の一途をたどっている[8][9](年齢調整とするのは、長生きしただけ疾病罹患リスクが上がるため)。

胃癌については、他にも手術を否定した著述があるが、欧米の標準的手術(D1郭清[10])、日本のD2郭清、化学療法を検討すると、日本の手術療法は決して悪い成績を残していない[要出典]

2014年現在では、近藤誠が「胃がん検診の際の放射線ががん発症率を高める」として検診を勧めない点などは時代遅れの主張となっている日本の手術療法は決して悪い成績を残していない[要出典]

2001年に呉共済病院の上村直実医師によりヘリコバクター・ピロリ菌発癌が証明される[11]。それまで胃がん検診により一万人に一人が検診被曝による胃癌と言われていた。また胃癌X線検診(胃透視)による死亡率低下は認められており、胃がん検診はエビデンスに基いている[12]

近藤誠は乳癌検診にも否定的な論調を取る。しかし、1960年代〜1980年代に実施された複数のランダム化試験により、コクラン・データベースでも、マンモグラフィによる乳癌検診が乳癌死亡率を低下させることが認められている[13]。この検査には議論がある。

近藤誠は2014年の「週刊文春Web」[14]で主張している。

#がん検診は有効ではない。
  1. がん治療のツールとして、手術や抗がん剤は無意味である。
  2. がんに早期発見・早期治療のメリットはない。

科学的根拠に基づくがん検診では、利益と不利益のバランスがどうかについては、がんの種類と検査方法の組み合わせの内、推奨される場合と不利益の方が上回る場合とがもう少し細かくまとめられている[15]。とはいえ、医療現場では経営側の方針で不適切な検査が実施されることもある[16]

著書編集

  • 『がん最前線に異状あり 偽りのときに終りを』広済堂出版 1988 「「がん」ほどつき合いやすい病気はない」講談社+α文庫
  • 『乳ガン治療・あなたの選択 乳房温存療法のすべて』三省堂 1990
  • 『患者と語るガンの再発・転移』三省堂 1994
  • 『がん治療「常識」のウソ』朝日新聞社 1994
  • 『抗がん剤の副作用がわかる本』三省堂 1994
  • 『それでもがん検診うけますか 専門医が教える本当の話』ネスコ 1994 のち文春文庫
  • 『がんは切ればなおるのか』新潮社 1995 のち文庫
  • 『ぼくがうけたいがん治療 信じる医療から考える医療へ』さいろ社 1995 「安心できるがん治療法 「治療死」しないために」講談社+α文庫
  • 『患者よ、がんと闘うな』文芸春秋 1996 のち文庫
  • 『「治るがん」と「治らないがん」 医者が隠している「がん治療」の現実』講談社+α文庫 1998
  • 『なぜ、ぼくはがん治療医になったのか』新潮社 1998
  • 『乳がんを忘れるための本 乳房温存療法がよくわかる』ネスコ 1999 のち文春文庫
  • 『ぼくがすすめるがん治療』文藝春秋 1999 のち文庫
  • 『医原病 「医療信仰」が病気をつくりだしている』講談社+α新書 2000
  • 『本音で語る!よくない治療ダメな医者』三天書房 2000 「よくない治療、ダメな医者から逃れるヒント」講談社+α文庫
  • 『成人病の真実』文藝春秋 2002 のち文庫
  • 『大学病院が患者を死なせるとき 私が慶応大学医学部をやめない理由』講談社+α文庫 2003
  • 『がん治療総決算』文藝春秋 2004 のち文庫
  • 『新・抗がん剤の副作用がわかる本』三省堂 2004
  • 『大病院「手術名医」の嘘』講談社+α文庫 2004
  • 『データで見る抗がん剤のやめ方始め方』三省堂 2004
  • 『名医の「有害な治療」「死を早める手術」 患者が知らない医の本音』だいわ文庫 2008
  • 『あなたの癌は、がんもどき』梧桐書院 2010
  • 『抗がん剤は効かない』文藝春秋 2011 『抗がん剤だけはやめなさい』文春文庫
  • 『放射線被ばくCT検査でがんになる』亜紀書房 2011
  • 『医者に殺されない47の心得 医療と薬を遠ざけて、元気に、長生きする方法』アスコム 2012
  • 『がん放置療法のすすめ 患者150人の証言』文春新書 2012
  • 『「余命3カ月」のウソ』ベスト新書、2013
  • 『がん治療で殺されない七つの秘訣』文藝春秋、2013 『何度でも言うがんとは決して闘うな』文春文庫
  • 『免疫療法に近づくな 長生きするなら「免疫力」より「抵抗力」』亜紀書房 2013
  • 『「がんもどき」で早死にする人、「本物のがん」で長生きする人』幻冬舎 2013
  • 『これでもがん治療を続けますか』文春新書 2014
  • 『近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか?』光文社新書 2014
  • 『がんより怖いがん治療』小学館 2014
  • 『もう、だまされない!近藤誠の「女性の医学」』集英社 2015
  • 『クスリに殺されない47の心得 体のチカラがよみがえる近藤流「断薬」のススメ』アスコム 2015
  • 『日本は世界一の「医療被曝」大国』集英社新書 2015
  • 『近藤誠のリビングノート ガンを安らかに迎えるための読むセカンドオピニオン』光文社 2015
  • 『近藤誠の家庭の医学』求龍堂 2015
  • 『がん治療の95%は間違い』幻冬舎新書 2015
  • 『がん患者よ、近藤誠を疑え ベストオピニオンを得るための45のアンサー』日本文芸社 2016
  • 『しあわせに死ぬために 56の言葉』双葉社 2016
  • 『ワクチン副作用の恐怖』文藝春秋 2017
  • 『あなたが知っている健康常識では早死にする! 秘蔵データが示す健康寿命の延ばし方』徳間書店 2017
  • 『がん患者自立学』晶文社 2017
  • 『近藤誠がやっているがんにならない30の習慣』宝島社 2017
  • 『健康診断は受けてはいけない』文春新書 2017

共編著編集

  • 『がん専門医よ、真実を語れ』編著 文芸春秋 1997 のち文庫
  • 『「がんと闘うな」論争集 患者・医者関係を見直すために』編著 日本アクセル・シュプリンガー出版 1997
  • 『わたしが決める乳ガン治療 乳ガン体験者と医師からのアドバイス』イデアフォー共著 三天書房 1997
  • 『「治らないがん」はどうしたらいいのか』編著 日本アクセル・シュプリンガー出版 1999
  • 『乳がん あなたの答えがみつかる本 よくわかる!最適な乳房温存療法』イデアフォー共著 双葉社 2002
  • 『医療ミス 被害者から学ぶ解決策』清水とよ子共著 講談社 2003
  • 『再発・転移の話をしよう』イデアフォー共著 三省堂 2003
  • 『死に方のヒント 満足のいく「生き方」を享受するために』ひろさちや共著 日本文芸社 2003
    • 『がん患者よ、医療地獄の犠牲になるな 迫りくる終末期をいかに人間らしく生き遂げるか』パンドラ新書
  • 『どうせ死ぬなら「がん」がいい』中村仁一共著 宝島社新書 2012
  • 『「がん治療」のウソ』小野寺時夫ほか共著 宝島社新書 2014
  • 『野垂れ死にの覚悟』曽野綾子共著 ベストセラーズ 2014
  • 『ねこバカいぬバカ』養老孟司共著 小学館 2015
  • 『先生、医者代減らすと寿命が延びるって本当ですか? 飲んではいけないクスリ、受けると危ない治療がわかる!』倉田真由美共著 小学館 2015
  • 『世界一ラクな「がん治療」』萬田緑平共著 小学館 2016
  • 『がんは治療か、放置か究極対決』林和彦共著 毎日新聞出版 2016
  • 『がんを忘れたら、「余命」が延びました! 健診、抗がん剤、手術に効果なし』高橋三千綱共著 ビジネス社 2017

出演、その他出版物編集

TBS中居正広の金曜日のスマたちへ異端の医師スペシャル」(2014年)出演

1994年、東京都杉並区在住の渡辺容子(当時40歳)が右乳房にしこりを感じ近藤の診療を受診。2010年、渡辺は癌の全身転移により近藤から余命1年の宣告を受ける。2012年2月、骨転移が原因の激痛に見舞われ1か月後、豊島病院緩和ケア病棟で死去。死亡宣告からの1年は「いのちを楽しむ-容子とがんの2年間」ドキュメンタリー映画が制作された[17][18]

また2003年には、ロシア語翻訳者の米原万里卵巣癌の診断を受け、転移の疑いがあると診断されるも外科手術による摘出、抗がん剤投与、放射線治療を拒否。セカンド・オピニオンで近藤の指示(治療を行わずに放置)を仰ぎ実践。3年後、2006年冬頃に抗がん剤治療へ切替る。同年5月、自宅にて死去、享年56。闘病の経緯は米原の著書「打ちのめされるようなすごい本[19]」に掲載されている。

ビッグコミック』(小学館)2014年22号より連載されている漫画作品『医者を見たら死神と思え』(原作:よこみぞ邦彦、作画:はしもとみつお)では監修を務める。また同号では表紙イラストに近藤が登場した。

翻訳編集

  • ジェローム・グループマン『セカンド・オピニオン 患者よ、一人の医者で安心するな!』平岡諦共監訳 PHP研究所 2001

関連書籍編集

  • 『近藤誠の「がん理論」徹底検証 「がんは放置していい」は本当か?』、別冊宝島(No.2425)、2016年、ISBN 978-4-8002-5006-3

出典編集

  1. ^ a b c d e f 経歴 近藤誠がん研究所セカンドオピニオン外来 2019年1月閲覧
  2. ^ a b c 近藤誠「がんは治るか」『医学哲学 医学倫理』第17巻0、1999年、 244-256頁、 doi:10.24504/itetsu.17.0_244
  3. ^ a b c d e 勝俣範之 (2016年4月12日). “近藤理論を放置してはいけない”. 日経メディカル. 2016年6月12日閲覧。
  4. ^ a b c 三輪晴美 (2015年11月17日). “<記者の目>がん治療法巡る論争”. 毎日新聞. https://mainichi.jp/articles/20151117/org/00m/040/003000c 2019年1月30日閲覧。 
  5. ^ 「慶応大学医学部専任講師 近藤誠(現代の肖像)」『AERA』2012年7月19日号、朝日新聞社、2004年7月12日。
  6. ^ a b “「医者に殺されない47の心得」反響から”. 読売新聞. (2013年10月17日). https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20131017-OYTEW52075/ 2019年1月30日閲覧。 
  7. ^ 高野利実 (2016年5月10日). “近藤誠氏の「抗がん剤全否定」は間違っている 「がん患者放置」は、あまりに無責任だ”. 東洋経済. 2016年7月22日閲覧。
  8. ^ http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/site.html
  9. ^ 年次推移がん情報サービス
  10. ^ McCulloch P, et al: Gastrectomy with extended lymphadenectomy for primary treatment of gastric cancer. Br J Surg 92: 5-13, 2005.
  11. ^ Uemura N, et al. Helicobacter pylori Infection and the Development of Gastric Cancer. N Engl J Med 2001; 345:784-789 DOI: 10.1056/NEJMoa001999
  12. ^ がん検診ガイドライン 胃がん 科学的根拠に基づくがん検診推進のページ
  13. ^ Cochrane Database Syst Rev 2013; 6:CD001877.pub5
  14. ^ http://shukan.bunshun.jp/articles/-/3497 2014年1月6日
  15. ^ がん検診ガイドライン 推奨のまとめ 科学的根拠に基づくがん検診推進のページ
  16. ^ 河内敏康、藤野基文 (2018年1月7日). “不適切な画像検査:撮影増は病院利益 被ばくリスク考慮を”. 毎日新聞. https://mainichi.jp/articles/20180107/k00/00e/040/170000c 2019年1月30日閲覧。 
  17. ^ 「自ら考え、決める」貫く がん患者の記録映画 各地で上映 2013年10月17日 東京新聞
  18. ^ 「いのちを楽しむ-容子とがんの2年間」ホームページ
  19. ^ 株式会社文藝春秋、2006年10月刊(2009年、文春文庫収録)ISBN 9784163684000 (ISBN 9784167671044)

関連項目編集

  • 内海聡 - 内科医、現代医療の多くを否定している。
  • 船瀬俊介 - 医療、環境問題を専門とする陰謀論者
  • 丸山千里 - 皮膚科医、丸山ワクチンの開発者
  • 逸見政孝 - アナウンサー、司会者 闘病生活の様子が、その死後癌治療のあり方に一石を投じた