避妊

妊娠を防ぐ方法

避妊(ひにん、英語: birth control, contraception)とは、なんらかの手段を用いて、性交後の受精もしくは受精卵着床を妨げて、妊娠を避けることの総称である。

人間は生殖のためだけでなく、愛情表現としても性交(セックス)を行う。人間の性交の目的は、性器の結合や射精オーガズムなどの官能的快楽の欲求を満たすためだけに行う場合が、最も多いとされている。[要出典]ただ、倫理的・経済的・社会的理由から無制限な妊娠・出産は負担が多いため、妊娠を避けながら性交を行う手段として、「避妊」が必要とされている。

避妊は様々な方法があり、それぞれ程度の差はあるが、不妊手術[1]による恒久的とされる避妊法でも、わずかながら妊娠の可能性は残る。

避妊そのものは、世界各地で古くから行われているが、第二次世界大戦以前の日本においては避妊の知識は少なく、確実性も低かった。ようやく戦後に普及し始め、教育機関では性教育の一環として避妊を教える所もあるが、これには賛否両論がある。[要出典]

アフリカなどでは、児童就労を目的とした出産や医療の進歩、戦争や部族間抗争の減少の一方で、避妊知識や避妊具の普及が遅れているため、人口の急激な増加の原因のひとつになっているとされる。また、アフリカではもともと貧困家庭が多く、避妊具が高価であり、その普及を遅らせている要因の一つになっている。

パールインデックス(PI)編集

前述のとおり、完全な避妊法は存在しないが、よく議論されるのが「避妊の効果」である。その避妊の効果を示す一般的な指標が、パールインデックスPI、パール指数)である。パールインデックスとは、ある避妊法を1年間用いた場合に、避妊に失敗する確率(厳密な定義ではないが、妊娠する確率ともいえる)を示すものである。名称は、アメリカ合衆国の生物学者、生物遺伝学者のレイモンド・パール(Raymond Pearl)の名前にちなむ。

例えば、ある避妊法のパールインデックスが3の場合、その避妊法のみを1年間使った女性のうち3%の人数が妊娠するということになる。避妊をしなかった場合のパールインデックスは85程度といわれている。これは、避妊をまったくしなかった(もしくは妊娠を望んでいる)カップルの女性が1年後に妊娠している率が85%程度であることを示す。

PIの計算法編集

PIは「100人の女性が1年間避妊」または「10人の女性が10年間避妊」した場合の「100女性年」を用いて算出される。PIはあくまで避妊方法を数値化し、各々の避妊効果を比較するための数値であり、避妊効果自体を算出するものではない。

PIの算出には3つの数値が必要である。

  • 何ヶ月間避妊検証が行われたか、または避妊中の月経回数。
  • 妊娠回数。
  • 検証完了理由(妊娠が0、その他が1。下記Bを参照)。

PIの算出には2つの方法がある。

  • 妊娠回数を避妊検証の合計月で割り、1200を掛ける。
  • 妊娠回数を月経回数で割り、1300を掛ける(1300を掛けるのは月経の平均的期間が28日間、年間13回ほどだからである)。

一般的に検証結果には2つのPIが表示される。

  • (A)実使用例:すべての妊娠回数と検証期間が含まれる。
  • (B)完璧使用例:検証中避妊方法を誤り、妊娠してしまった例は除外して計算。

PIの信憑性編集

統計的にPIは0 - 100の間ではあるものの、科学的に「実験失敗」の確率を含めるとPIはパーセントで表せない数値であることがわかる。避妊方法の検証に参加した女性達が皆1か月目で妊娠してしまったら、PIは1200 - 1300のパーフェクトな数値となってしまう。これはPIがパーセントで表すPearl Rate(パール率)からそうでないPearl Index(パール指数)と呼ばれるようになった由来でもある。

また避妊実験を行う被験者の国柄、人種、年齢、学歴などにより避妊失敗率は激変し、PIにも大きく影響する。もちろん健康的で妊娠しやすいカップルから妊娠し、不健康で不妊性のカップルは避妊しなくても妊娠できないこと、避妊道具は使用方法を練習するほど効果が上がることなどは数値化されていない。さらには避妊方法への不満、妊娠願望、避妊方法の副作用、後日検証に現れない被験者などはPIに反映することができない。

だからといってPIに信憑性がなくなるわけではない。科学的根拠にだけ基づいた指数であることを踏まえた上で避妊検証実験の状況を勘案して、PIをどれだけ重視すべきかを検討すべきである。

避妊方法編集

避妊具の使用編集

コンドーム編集

コンドームはラテックスポリウレタンの薄膜をサック状にした避妊具で、に挿入する前に勃起した状態のペニスにかぶせて使用する。避妊具の中で最も一般的に使用される避妊具である(PI:3% - 14%程度)。確実な避妊のためには勃起直後に装着することがすすめられる。また、勃起したペニスの大きさに適応したコンドームを使用しないと、行為中にコンドームが外れる可能性があるため、自身(パートナー)の勃起したペニスの大きさを測定して、大きさに応じたコンドームを使用しなければならない。

勃起時のペニスの参考サイズは、コンドームを参照のこと。ペニスの太さにあわせて多様なサイズが用意されており、SSやLLは店頭になくともネットで気軽に購入できる。効果を確実にするために、適切なサイズのコンドームを選択することが望まれる。

通常、単にコンドームと言うと男性が装着する避妊具を指すが、女性器に装着する女性用コンドームも市販されている。

ペッサリー編集

 
ペッサリーの装着位置

避妊用のペッサリーは膣より挿入するゴム状の避妊具で、本来は子宮の位置を直すための道具である。子宮口にかぶせるように指で挿入し、通常はゼリーと併用するが、現在では殆ど使われていない。精子が膣内に入っても子宮に達せず避妊することができる。装着状態が見えないため正しく装着するのが難しい。装着方法については指導が必要であり、避妊の確率もあまり高くなく(PI:6 - 20程度)最近ではあまり使用されない。また、人によって適したサイズ・形状などが異なるため、薬局などでは販売されておらず入手するためには、産婦人科の診察を受ける必要がある。ペッサリーは避妊の目的以外にも、膀胱脱や子宮下垂、子宮脱の矯正にも使用される。

子宮内避妊用具(IUD)編集

子宮内避妊用具にはリング状・ループ状・コイル状など様々な形がある。これを病院において子宮内に挿入しておくと体機能としての異物排除機能が働き、受精卵の着床を妨げることで妊娠を防ぐ。避妊の確率はあまり高くなかったが近年の改良により避妊の確率は高くなっているとされる。日本では単純タイプに加え、銅付加タイプ(PI:0.6 - 0.8程度)が認められている。Intra-uterine (Contraceptive) Deviceの頭文字をとってIUD(あるいはIUCD)とも呼ばれる。日本ではリング状のものが早くから普及したため「避妊リング」と呼ばれることも多い。月経が終了してから4、5日の間に装着する。副作用として月経の出血量増加や期間延長、下腹痛、不正性器出血が起きる場合がある。ある製品では総症例1,047例中602例(57.5%)に使用に関係する副作用が認められ、主な副作用としては月経異常269件)(25.7%)、過多月経136件(13.0%)、月経中間期出血120件(11.5%)、腹痛116件(11.1%)、疼痛111件(10.6%)、白帯下108件(10.3%)等であった[2]。また、IUDが子宮から飛び出してくる滑脱、子宮の壁を突き破る穿孔、骨盤内炎症性疾患(PID)、挿入後の子宮や卵管感染などの有害事象がある。誰でも使用できるわけではなく、先天性心疾患又は心臓弁膜症の患者には慎重な使用が求められる。また使用ができないケースとしては通常、出血性素因のある女性や診断の確定していない異常性器出血のある人、妊娠のしたことのない人や子宮外妊娠をしたことがある人、貧血を伴う過多月経のある人、性感染症や性器感染症のある人、頸管炎又は腟炎の患者や産婦人科領域外であっても重篤な疾患のある患者、先天性・後天性の子宮形体異常のある女性などがある。また普通の妊娠は防げても、子宮外妊娠は防げない。また、定期検診と数年に一度の取替えが必要である。

ミレーナ編集

 
子宮内避妊システム「ミレーナ」

挿入方法、形状はIUDと同じだが、中央の部分から黄体ホルモン女性ホルモンの一種)が持続的に子宮内に放出されるのが特徴であることから、「レボノルゲストレル放出子宮内避妊システム」と呼ばれることとなった。黄体ホルモンは子宮頸管(子宮の入り口)の粘膜を変化させ精子の侵入を防ぎ、また子宮内膜の増殖を抑制し、受精卵着床を防ぐ作用がある。それに伴う倫理的問題は子宮内避妊用具(IUD)と同じである。ミレーナは1970年代に開発が始まり1990年にフィンランドで初めて承認・発売された。月経が終了してから4、5日の間に装着する。ただし使い続けていると無月経になる可能性もあるが、除去すれば直ぐに月経が戻り妊娠可能となる。使い始めてから数ヶ月の間は子宮内膜への刺激などで月経時以外にも少量の出血が続く場合もあり、出産経験の無い人は子宮口が開いていないため挿入時に痛むこともある。過多月経の女性には推奨できないIUDと異なり、ミレーナでは月経時の出血量が軽減される。また、IUDと同様に子宮から飛び出してくる滑脱、子宮の壁を突き破る穿孔のリスクがある。

他の副作用としては、総症例482例中428例(88.8%)に副作用が認められ、主な副作用は月経異常(過長月経,月経周期異常等)379例 (78.6%)、卵巣嚢胞61例(12.7%)、除去後の消退出血57例 (11.8%)、月経中間期出血48例(10.0%)、腹痛38例(7.9%) 等[3]。誰でも使用できるわけではなく、性器癌及びその疑いのある人、黄体ホルモン依存性腫瘍及びその疑いのある人、診断の確定していない異常性器出血のある人、先天性・後天性の子宮の形態異常(子宮腔の変形を来しているような子宮筋腫を含む)、性感染症になったことがある又は性器感染症のある人、頸管炎又は腟炎の患者、再発性又は現在PIDの患者、子宮外妊娠や分娩後子宮内膜炎又は感染性流産になったことのある人、重篤な肝障害又は肝腫瘍の患者、妊婦又は妊娠している可能性のある女性には使用できない。また、先天性心疾患又は心臓弁膜症の患者、糖尿病患者、肝障害のある患者には副作用があるため、慎重な使用が求められる。使い始めてから数ヶ月の間は子宮内膜への刺激などで月経時以外にも少量の出血が続く場合もあり、出産経験の無い人は子宮口が開いていないため挿入時に痛むこともある。IUDと同様、定期的な検診と数年に一度の取替えが必要である。

薬品の使用編集

ピル(避妊用ピル)編集

内服用の避妊用女性ホルモン剤のこと。経口避妊薬(OC)とも呼ばれる。

ピルを女性が服用することにより、人工的に排卵終了後の黄体期と同様な内分泌状態を持続させることで排卵を停止させる。正しく服用した場合の避妊の確率はそれなりにある(PI:0.1-5程度)。避妊以外にも生理時期の調整や月経困難症(生理に伴う重い症状)の緩和、子宮内膜症の治療などに使われる。一方で人により血栓症、肥満などの副作用が出る場合もあるので入手には医療機関の受診が必要である。

副作用としては、体重の増加(肥満)、偏頭痛吐き気嘔吐、イライラ、性欲減退、むくみ膣炎肝機能障害、長期服用による発癌性などの可能性が指摘されている。子宮筋腫糖尿病を悪化させる可能性もある。ピルの主要な副作用としては血栓症があげられる。

ピルは、血栓が起こるリスクを3 - 5倍引き上げるとされ、イギリスでは10年間に104人が血栓症で死亡した。日本でも医薬品の安全を管理する独立行政法人の集計などによると、2008年 - 2013年上半期に、日本で使用されたピルに関して、血の固まりが血管をふさぐ血栓の重症例361件が副作用として報告されていた。その中で死亡例は11件あり10代1人、20代2人、30代4人、40代1人、50代2人、不明1人だった[4]

発癌性に関しては、国際がん研究機関によるIARC発がん性リスク一覧で、「経口避妊薬の常用」に関して「Group1 ヒトに対する発癌性が認められる」と評価されている。また、喫煙を伴うと心臓・循環器系への副作用が高まるため、ピルを服用するなら喫煙をしないことが望ましい。

ピルを服用できない場合としては、乳がん子宮体がん子宮頸がん子宮筋腫の患者及び疑いのある人、原因不明の出血や血栓症を起こしたことがあるがある人及び肺塞栓症冠動脈疾患・血栓症静脈炎・脳血管障害の患者やこれらの病気にこれまでにかかったことがある、その疑いのある人、片頭痛の患者、糖尿病患者、高血圧の人、35歳以上で1日15本以上のタバコを吸う人、コレステロール値や中性脂肪の高い人、腎臓肝臓に病気のある人、以前妊娠した時に持続的なかゆみまたは黄疸や妊娠ヘルペスの症状が出たことのある人。

また肥満や40歳以上の人、子宮筋腫のある人などには慎重な投与が求められる。かつては中用量ピルが用いられていたが、副作用のリスクの低減を目的として低用量ピル、超低用量ピルが開発された。

日本でのピルの承認は、他先進国と比較して酷く遅れ、ピルの発見から40年間の年月を必要とした(アメリカ合衆国では1960年代に認可されている)。日本では、まず最初に治療目的の中用量ピルが最初に認可されたが、避妊を目的としたものではなく、副作用も強かった。1998年やっと避妊目的の低用量ピルが認可された。2010年に超低用量ピルが月経困難症の治療薬として認可されたが、避妊用としては低用量ピルが主流になっている。

インプラント編集

プロゲステロンを含有した徐放性のスティックを女性の上腕の皮下に埋没させ、長期間にわたって避妊効果を発揮させるもの[5]。処置は局所麻酔で簡便に実施できる。アメリカでは1回の挿入によって3年間の避妊効果が得られる。避妊効果もピルより高い。3年後あるいは妊娠を望む時は切開してスティックを取り出す必要があるのが欠点であり、挿入時よりも手間がかかる[5]。日本では未認可。

皮膚パッチ剤編集

エブラ (EVRA) 避妊パッチなど。エストロゲンとプロゲステロンを含有したパッチ剤を女性の皮膚に貼ることによって避妊効果を発揮する[5]。1枚のパッチ剤で1週間の避妊が出来る[5]。日本では未認可であるが、個人の責任で自己使用できる避妊薬なので[6]個人輸入されている。

注射剤編集

プロゲステロンを皮下ないし筋肉注射する避妊法[5]。3か月毎の注射が必要[5]。注射の中止によって、半分の女性が半年以内に生殖能力を回復するが、最長1年かかる場合もあるとされる[5]。日本では未認可。

殺精子剤編集

精子を殺す作用のある薬剤を性交の一定時間前に膣内に挿入し、避妊を行う。ピルのような全身の副作用がなく、女性自身の手で避妊できるという利点がある。欠点は錠剤やフィルム状の製品は膣内奥に留置するのにコツが必要であり、溶解するのに時間が掛かるので、初心者では失敗しやすく、避妊の確率はあまり高くない(PI:6-26程度)。そのため、他の避妊方法との併用が好ましい。また、性交後に薬剤が流れ出て下着やシーツが汚れやすいという欠点や、薬剤によるアレルギーで外陰部炎を起こすケースもある。スポンジ以外の製品は、1回の射精につき1つ使用する必要があり、2回目以降の射精では追加投与が必要である。

日本では2015年に全て販売終了となっている。認可はされているので、世界からの個人輸入で取り寄せることは可能。

以下の5種類のタイプが存在する。

錠剤
溶けるのに時間がかかり即効性でなく、行為の後に流れ出た薬剤で下着やシーツを汚しやすいのが欠点。反面携帯に便利という利点もある。薬剤は膣液で絶えず希釈され体外に流出することもあるので射精のたびに追加使用する必要がある。国内ではかつてエーザイからメンフェゴールを主成分とする「ネオサンプーン ループ錠」が製造販売されていたが、原料の入手難により2011年3月に製造終了した。トローチ状のリング形状をした白色の錠剤であり、膣の奥に入れると膣液で溶解・発泡して効果を発揮する仕組みであった。アメリカでは半固形の坐薬状の形状のものが「Encare」(エンケア)の商品名で販売されている(エンケアの主成分はノノキシノール-9)。
ゼリー
海外ではペッサリーに塗布して使用する薬剤や、アプリケーターで膣内に注入する製品が販売されている。使用直後から効果発揮するのが利点であるが、アプリケーターが必要であり、使用後に洗浄などの手間隙が必要なのが欠点。充填済みの使い捨てアプリケーター形式の製品も海外では販売されている。アプリケーターに充填してから使用する商品では、アプリケーターは再使用するために使用後に洗浄が必要である。日本ではかつてFPゼリー:発売/日本家族計画協会(製造/第一薬品産業株式会社)が販売されていた。FPゼリーの成分ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルであったが、発売中止されている。アメリカではOrtho(Ortho Options Vaginal Contraceptive Jelly)やOptions Conceptrolという製品が販売されている。
フィルム
3cm四方の半透明のフィルム状の薬剤を折りたたんで膣の奥に留置し、膣液で溶解して効果を発揮するもの。携帯に便利であるが折りたたんだ薬剤を膣の奥に留置するのが難しいという欠点がある。錠剤と同じく即効性ではない。日本ではマイルーラという製品が販売されていたが、外陰部の刺激症状のトラブル報告などもあり、2001年3月に販売中止された。マイルーラの成分もFPゼリーと同じく、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルである。アメリカでは同じ成分の「VCF」という製品が販売されている(VCF Dissolving Vaginal Contraceptive Films)。
スポンジ
殺精子剤を染み込ませたポリウレタン製のスポンジを膣円蓋に留置して避妊するもの。精子を物理的・化学的に阻止する。妊娠阻止率は89% - 91%でアメリカの「トゥデイ・スポンジ」(Today Sponge) が代表的商品。24時間効果が持続するのが特徴で2回目以降の射精に対しても追加で使用する必要は無い。性交渉の後6時間は膣内にスポンジを留置する必要がある。最大留置時間は30時間とされている。スポンジは使用前に水を含ませてから膣内に挿入する。タンポンの使用経験が無い女性には正しい位置にスポンジを留置するのは難しいとされ、使用を避けるべきと説明書には勧告されている。スポンジには子宮頚部にフィットするように凹部が設けられており、また取り出すときに指を引っ掛けやすいようにバンドが取り付けられている。スポンジの硬さは膣組織と同じ硬さに設定されており、性交時の男性側の違和感を緩和する工夫がなされている。1995年に製造元の設備劣化のために販売中止となり、在庫を巡って騒ぎになった。映画『となりのサインフェルド』では、主人公がスポンジを愛用していたが製造中止によって手持ちが少なくなり、使う相手を厳選するというエピソードが紹介されている[7]。2005年に製造権利を買い取った新興企業アレンデール・ファーマスーティカルズ社から再発売された[8][9]
フォーム
殺精子剤を泡状にしたもの。スプレー缶に充填されており、使用前にアプリケーターに泡状の殺精子剤を充填し、アプリケーターを膣内に挿入して注入する。特徴はゼリーとほぼ同じで即効性。アプリケーターは再使用するために使用後に洗浄が必要である。2000年代までアメリカで流通していたが、その後発売中止となっている。

生理的変化を利用した避妊編集

オギノ式編集

女性の月経周期に基いて、妊娠可能な期間を計算・予測し、その期間の性行為においては避妊をするが、その期間以外では避妊をおこなわず、膣内射精しても妊娠しないとされる。周期法とも呼ぶ。簡便な方法であるが、排卵の乱れなどで予測を失敗して妊娠してしまう可能性もある(PI:9程度)。不妊治療のため日本人産婦人科医・荻野久作が発見した、月経周期に関する「荻野学説」が避妊法に応用されたものである。

なお、荻野本人は自分の学説が避妊法として利用されることについては、より確実な避妊法が存在するゆえ、中絶の増加につながるとして大いに反対していた。「女の身体には1日たりとも『安全日』などありはしない」「迷惑だ。むしろ不妊治療に役立つ学説だ」と主張しつづけた。

カトリック教会の教学上(人のいのちを育む家庭のいしずえとして、夫婦の本来の性のあり方を守るため)、排卵法(ビリングス・メソッド)と共に認められている、受胎調節法(自然な家族計画)のひとつである。

基礎体温法編集

女性の月経の周期のうち、基礎体温を計測して低温相から高温相に変わった日(排卵日)を知り、それから4日目以降に性行為を行う方法(PI:3程度)。毎日規則正しい生活を続け、かつ定時に基礎体温を測りつづける必要がある。

長期授乳編集

妊娠可能年齢の女性には、母体が必要なエネルギーを脂肪として蓄えないと妊娠可能とはならない生理的メカニズムがある[10]。女性の正常な妊娠には平均的に27,000カロリーのエネルギーを必要とし、出産後に体重に対する脂肪の割合が20から25パーセント程度の水準まで脂肪を蓄えないと排卵が再開されない。嬰児への授乳は1日に約1000カロリーを必要とするため、授乳によって子育てを行う環境では排卵の再開が遅くなる。動物性蛋白質を主な栄養源とし、日常的に移動する狩猟採集民サン族の女性は、授乳期間を長くすることで意図的に妊娠間隔を4年以上に伸ばすことを可能としている[10]

その他の方法編集

この他、子宮頚管粘液の状態で排卵日を確認する頚管粘液法もある(PI:2程度としているが、詳しく検証されているかなど不明である)。

外科的手法編集

不妊手術編集

不妊手術 (sterilization) とは卵管、または精管を外科手術によって縛り(結紮)、卵子や精子の通過を止めることによって避妊する方法である。卵管の結紮には、経腹または経膣による腹腔鏡手術が必要となるために、帝王切開術と同時に行われることがある。精管結紮術は、外来で局所麻酔のみで簡単に実施出来るが、結紮した精管が再癒合しやすいために術後に精液中に精子が検出されなくなるか確認が必要である。また既に精嚢に貯留している精子が無くなるまでは受精能力を失っておらず、術後にただちに不妊になる訳ではない。一度これら手術を行ってしまうと妊娠のためには再度手術を行わねばならないが、再手術の難易度は高く人工授精が必要になる場合もある。妊娠を強く望まない夫婦や、妊娠することで女性の母体や胎児に対して深刻な問題が起きる可能性がある場合などに用いられる(PI:男性0.10% - 0.15%程度、女性0.5%程度)。子宮全摘についても、子宮筋腫や子宮内膜症などの合併症の程度によっては、避妊目的を含めて実施されることもある。

膣外射精編集

性交時に射精の寸前に陰茎を膣から抜いて膣外に射精を行うこと。アダルトビデオなどで頻繁に描写されるため、避妊法として認識されている場合も少なくないが、抜き取ることに必ず成功するとは限らない上、精子は射精時の精液だけでなく、前段階で分泌されるカウパー腺液中にも僅かに存在する場合があるため確率の高い避妊法とは言えず通常は避妊法としてカウントされない(PIは4-19程度)。性交後にビデなど水などを使用して洗い流すことも精子が子宮に入って洗浄されなければ効果がないため、通常は避妊法としてカウントされない。

性行為の制限編集

性交を伴わない性行為で、ペッティングと呼ばれている。以下もペッティングの中に含まれる。

オーラルセックス
男性器を女性器へ挿入することなく、女性が手や口を使い射精させる性行為。
肛門性交
男性器を膣の代わりに肛門へ挿入し射精する性行為。膣へ挿入していないので通常妊娠することはないが、膣と肛門が近いため肛門への精液が膣に流れ出ることによる妊娠がありうる(その他の問題については「アナルセックス」の項を参照)。

緊急避妊編集

避妊に失敗した可能性がある、強姦などによって望まぬ妊娠の可能性に直面した場合などは、性交後に内服して妊娠を回避する緊急避妊薬が使用されている。アフターピル、モーニングアフターピル、エマージェンシーピル、EC(Emergency Contraception)など呼ばれる。

1970年代よりYuzpe(ヤッペ)法と呼ばれる緊急避妊は欧米で実施されており、日本でも「医師の判断と責任」によって緊急避妊法としてホルモン配合剤を転用した避妊が行われていた。これらは効果が低く副作用の強い中容量ピルを使ったものであった。1999年に副作用が少なく効果が高いレボノルゲストレル錠が "NorLevo" としてフランスで正式に商品化された。WHOもレボノルゲストレルの導入を後押ししたが、ピルと同様に日本では導入が遅れ2011年2月23日に緊急避妊薬ノルレボRとして承認された(アジアで認可していないのは日本と北朝鮮だけであった)。

性交後72時間以内に内服する必要がある。レボノルゲストレルは、排卵抑制作用により避妊効果を示すことが示唆され,その他に受精阻害作用及び受精卵着床阻害作用も関与する可能性が考えられており、そのことに倫理的な批判も存在する。日本国内ではノルレボ錠として流通している[11]。医療機関によって処方される。現在では、直接対面ではなく、コロナ影響化によりオンライン診療及びオンライン処方で研修を受けた医師と薬剤師が処方することが可能となっている。産婦人科だけではなく総合病院が脳神経外科や眼科医師も処方可能リストに名を連ねている[12]

海外では市販する国が多いが本邦では、厚労省が2019年7月にオンライン診療による処方を部分的に解禁する指針を策定したものの、処方を産婦人科医らに限るとしてその入手のハードルが高いとの問題がある。「意図しない妊娠のリスクを抱えた全ての女性は緊急避妊薬にアクセスする権利がある」とする世界保健機関(WHO)勧告に逆行している[13]。経口妊娠中絶薬はすべての先進国、それに発展途上国の多くでも認可されている。2000年ごろからは広く世界で普及し、現在、アメリカ、イギリス、スウェーデン、オーストラリア、タイ、台湾、インドなど65カ国以上で認可され、WHOの必須医薬品に指定されている[14]。中国では1988年に、チュニジアは2001年に、アルメニアは2007年に認可された。[15]
厚生労働省の医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議では、経口避妊薬の市販化について審議されたが、アメリカなどの緊急避妊ピルを常時使用している環境と比較した性教育の不十分さや薬剤師の知識不足による誤解などを懸念することを産婦人科医会医師などが反対理由として表明している[16]。アメリカでは大学区校内の自動販売機でこの薬が購入できる一方、日本において人工妊娠中絶は病気でなく自費診療で相場は15万円前後であるため、緊急避妊薬が容易に手に入るような環境が広まると、結果として産婦人科医の人工妊娠中絶の件数減少により収入が減る可能を医師が懸念する可能性を指摘する意見もある[17]
アメリカでは2013年より年齢制限などなく誰でも処方箋なしで「プランB」と呼ばれる緊急避妊の購入が可能となった[18]。しかしジャーナル紙の調査では、アメリカ食品医薬品局FDAの決定にも関わらず、10代の若者の覆面調査では薬局で容易に緊急避妊薬を入手できたのは28%のみにとどまり、3%が氏名などの個人情報を確認されたと問題視されている。またDr. Ian Bishop医学博士はこの薬は中絶を引き起こさず排卵を遅らせる機能があるが、誤解が利用の議論を生んでいると指摘している[19]。またアメリカでは高水準の10代の出産に憂慮し、米国小児科学会は10代の妊娠を減らすための1つの公衆衛生戦略として定期的なカウンセリングを奨励し、EC処方箋を進める方針を持ち、ノルレボ錠(EC)の投与の前には使用前に身体検査や妊娠検査は必要ないとしている。またEC使用後3週間以内に期間がない場合は、自宅または診療所での妊娠検査を推奨している[20]緊急避妊薬はイギリスでは2001年に処方箋なしで購入できる薬局薬として承認されているが、薬剤師との相談を要するため訓練を受けた薬剤師の不在や在庫不十分のため調査では5人に1人が薬を入手できなかった。法の要件ではないその場で飲むことや身分の証明を求められた事例もあった。このため一般販売用医薬品に切り替えるべきとの見解がある[21]。オーストラリアでは薬剤師に緊急避妊を求める女性が購入前に、性的暴行または性感染症の症状があるかどうかを宣言するように求める問診に記述するように誤って指導されることが問題視されている。ニューサウスウェールズ州家族計画のメディカルディレクターであるデボラベイトソン博士はプライベートな質問が個室ではない場所で行われることで女性に恥をかかせ、購入を思いとどまらせる可能性を懸念し、また緊急避妊薬は「非常に安全な」薬であり、世界の一部の地域のスーパーマーケットや自動販売機でさえ調剤されたと付け加えている[22]。ドイツでは、有効成分レボノルゲストレルまたはウリプリスタル酢酸塩を含む独自の医薬品が、処方箋なしで緊急避妊薬として利用できる。既存の妊娠が疑われる場合は、活性物質ウリプリスタルアセテート(UPA)は禁忌としているが、発覚していないものを含めた既存の妊娠の場合でも1.5mgのレボノルゲストレルの単回投与は問題ではないとしている[23]。日本では緊急避妊薬の処方箋なしの薬局販売に反対する理由として「次も使えばいいや」という安易な考えに流されることを懸念することが挙げられている[24]が、2000年12月からブリティッシュコロンビア州では、薬剤師が処方箋なしで緊急避妊薬が提供されているがその調査ではECの繰り返し使用は、ユーザーのわずか2.1%のが研究期間中に3回以上緊急避妊を受けている状況で稀だった[25]。また、WHOの見解では懸念される子宮外妊娠は、以前は緊急避妊薬使用に対する禁忌と考えられていたが、55,666人の女性事例のうち5件子宮外妊娠しか報告されていないので、ECは安全であると考えることができるとされている[26]

2020年コロナ禍において、若い女性の自殺者が増えており30代以下の女性の8月の自殺者数は193人と前年8月に比べ74%も増加しとくに10代では去年の倍となっている[27]。ところで、2016年までの2年間で、産後1年までに自殺した妊産婦調査での死亡例は全国で少なくとも102人であり、妊娠中や産後1年未満に死亡した妊産を調べたところ、自殺が死亡原因の1位となっている。妊産婦は子育てへの不安や生活環境の変化から、精神的に不安定になりやすいとされる[28]。加えて、産婦人科医の調査では10代の妊娠(分娩希望)の場合も妊娠中自殺願望を持った患者は全体の15.6%であり、7.2%は自殺を試みている。一般の性感染症患者、緊急避妊薬処方患者は、デートDV 被害者や性虐待被害者の場合が多く、自殺願望が認められると報告されている。また中絶後の患者が人口妊娠後遺症(PAS)に悩んでいるケースは76.2%であり,48.3%が自殺願望を持ち12.2%が実際自殺を試みている状況にある。このことから、若年層の妊娠は分娩希望の場合でも精神不安に陥りやすいこと、また年齢に関わらず緊急避妊薬を求める女性は性被害者が多く、中絶処置をした患者についてはその後思い悩み自殺企画が多いことが読み取れる[29]。若すぎる妊娠や、望まない妊娠は自殺のリスクを高め、出産後0日の嬰児殺害にもつながっている。海外では後述の緊急避妊薬でその妊娠の多くが容易に回避できる状況にあるが、日本国内では実現しておらず結果として女性が望まない妊娠・出産の負担を負うことになり日本国内の女性に対し憲法に定める法の下の平等生存権が危ぶまれるものとなっている。

厚生労働省の医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議では、委員16名中女性は3名であり[30]、審議の場では検討会委員12人のうち女性はただ1人だけであった[31]。セルフメディケーションのスイッチOTC化の承認状況一覧では女性固有の問題である膣カンジダ症の承認に25年以上かかる一方、発毛剤では6年という短期間で承認されている[32][33]。また男性の勃起不全治療薬バイアグラは半年で承認されたにもかかわらず、経口避妊薬の認可には日本は世界でももっとも遅いといえる44年の年月がかかっている[34]。承認過程で激しいジェンダーバイアスがかかっている恐れがある。

2020年10月、内閣府の第5次男女共同参画基本計画素案には、「避妊をしなかった、又は、避妊手段が適切かつ十分でなかった結果、予期せぬ妊娠の可能性が生じた女性の求めに応じて、緊急避妊薬に関する専門の研修を受けた薬剤師が十分な説明の上で対面で服用させることを条件に、処方箋なしに緊急避妊薬を利用できるよう検討する。」という文言が盛り込まれた[35]。これに対する緊急避妊薬に対する日本医師会猪口雄二副会長の会見では、薬局でなく産婦人科で取り扱われる緊急避妊薬のアクセスの悪さが指摘されていることを述べ、専門の研修を受けた薬剤師が十分な説明の上で対面で服用させるとの同調査会の提言には同意を示している[36]。2020年10月、日本産婦人科医会(木下勝之会長)は知識不足である女性が気軽に薬局で購入できる状況になることを憂慮し、まだ早いとの意見を述べている[37]

日本では女性の9人に1人が人工妊娠中絶を経験しているとの統計があり[38]、平成30年度件数は出生数92万[39]に対し人工中絶件数は16万を超える[40]。三大疾病と比較し心疾患での死亡数が年間約20万例よりやや少ないが、脳血管障害での108165人の死亡者数よりも多い[41] [42]2020年10月現在、市民団体が、緊急避妊薬を医師の処方箋がなくても薬局で購入できるよう求めることに賛同する10万7000人分の署名を厚生労働省に提出した[43]が、その処方箋なしでの薬局販売は2017年の厚生労働省の「処方箋医薬品」から、「要指導・一般用医薬品」への転用に関する評価検討会議で、緊急避妊薬の市販化について審議の場において性教育そのものが、日本はまだヨーロッパアメリカからかなり遅れていることも理由として承認が否決されている。パブリックコメントは「今は時期尚早で否ですという形でパブコメを行うということ」という前提で行われ、[44]寄せられた意見は全部で348件、賛成が320件、反対はわずか28件だったにも関わらず、国民の意思が反映されない決着となった[45]

スイッチOTC検討会の委員、鈴木邦彦・日本医師会常任理事は、望まない妊娠を減らしたいという考え方そのものに反対ではないとしつつも、審議会の議論について、医師の関与の必要性、緊急避妊薬への国民の理解度、販売体制の問題が示され、とてもOTCにできないという結論であり、反対意見ばかりで賛成は誰もいなかったとの見解を示している[46]。ちなみに医師向けサイトで行われた現場の産婦人科医師のアンケート(n=124)では47%が反対よりの意見を表明しているが、27%がどちらでもないことを表明している。また60代男性医師は、基本的には個人の選択に任せるべき、妊娠反応薬の時も産婦人科医会は反対していたことを述べている[47]。産婦人科医の有志9人による5月の産婦人科医に緊急アンケート(n=559)では、6割以上がアフターピルの市販化とオンライン処方のいずれも肯定している。ただし主催者の医師は緊急避妊薬のオンライン診療が解禁になった場合も性暴力被害者に限定されたり、オンライン診療を行っている産婦人科医を探すならば今よりアクセスしやすいかと疑問を呈している[48]
2019年に行われたオンライン診療指針見直し検討会では、ささえあい医療人権センターCOML理事長 山口育子構成員が、産婦人科受診に抵抗を感じる女性が多いため、その受診に精神的な負担のあるときもオンライン診療を可能とすべきと述べ、諸外国では薬局で緊急避妊薬を購入できるところもある補足した。それに対し、「『精神的負担のあるとき』との表現はあまりに広すぎだと牽制し、諸外国と日本の文化が異なることを掲げ、対象が無制限に広がってはいけないとの指摘も多数でた(今村聡構成員:日本医師会副会長、黒木春郎構成員:医療法人社団嗣業の会理事長・日本オンライン診療研究会会長ら)[49]。傍聴者からは検討委員のひとりで日本医師会副会長の今村聡氏は検討会で「(緊急避妊薬へのアクセスが)無制限に広がってしまうのも困るという思いがあります。」というWHO勧告に逆行する趣旨の発言に疑問を呈されている[50]。2020年10月、日本産婦人科医会(木下勝之会長)は知識不足である女性が気軽に薬局で購入できる状況になることを憂慮し、まだ早いとの意見を述べている[51]。昔に比べ女性医師が増加しているが、産婦人科医会の執行理事40名中女性比率は4名に留まり、2018年に明らかになった医学部入試における女性差別問題により多くの女性が能力ではなく性別により医師になる機会すら与えられなかった[52]ことが会への見解に影響している可能性がある。
厚生労働省の医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議では、委員16名中女性は3名であり[53]、審議の場では検討会委員12人のうち女性はただ1人だけであった[54]。セルフメディケーションのスイッチOTC化の承認状況一覧では女性固有の問題である膣カンジダ症の承認に25年以上かかる一方、発毛剤では6年という短期間で承認されている[55][56]。承認過程で激しいジェンダーバイアスがかかっている恐れがある。なお、ノルレボ錠は国内の第Ⅲ相臨床試験において、性交後72時間以内にノルレボを1回経口投与した結果、解析対象例63例のうち、妊娠例は1例で、妊娠阻止率は81.0%であった[57]。全ての妊娠が防げるわけではなく、性交後72時間を超えて本剤を服用した場合には63%であり、妊娠阻止率が減弱する傾向がみられた[58]。なお、銅付加子宮内避妊器具IUDは避妊をしなかった性行為の後、5日以内に子宮内に挿入すると、緊急避妊の方法としてほぼ100%の効果があり、希望があれば長期的な避妊手段として入れたままにしておくことも可能である[59]

海外では30年以上前から使用され、安全な中絶・流産の方法としてWHOの必須医薬品にも指定されている経口中絶薬(ミフェプリストン、ミソプロストール)は日本では中絶や流産に対しての適応は許可されていない[60]『フランス・ジャポン・エコー』編集長レジス・アルノーからは、経口妊娠中絶薬はすべての先進国、それに発展途上国の多くでも認可され中国やウズベキスタンの女性も手に入れているにも関わらず厚生労働省は、経口妊娠中絶薬についてFDAの古い危険という、誤った見解の情報を発し続けてリンク切れを起こしている[61][62]、ことを指摘しており、認可されていない状況を憂いている[63]。厚生労働省は2018年、インターネットでインド製と表示された経口妊娠中絶薬を個人輸入し服用した20代の女性に、多量の出血やけいれん、腹痛などの健康被害が起きていたと発表し、個人輸入規制の強化を図った[64]。バイアグラが個人輸入による健康被害を生み、スピード承認の運びとなったことと対比的な動きとなっている。不妊治療中、流産の掻爬手術を麻酔なしに2回受けたバイオリニストは心身ともにつらい経験だったことを著作で語っている[65]

コロナ禍による影響を受けた若年層の妊娠不安増加を背景として緊急経口避妊薬の市販化への議論が高まったが、日本産婦人科医会の前田津紀夫副会長は「日本では若い女性に対する性教育、避妊も含めてちゃんと教育してあげられる場があまりにも少ない」「“じゃあ次も使えばいいや”という安易な考えに流れてしまうことを心配している」と2020年7月にNHKでコメントし、物議を醸しだした[66]。片や国内で認可されているノルレボは、売上ベースで年間11万個の販売に対し、日本国内の人工中絶は年間におよそ16万8千件(平成28年度・厚生労働省)で、1日にすると国内の中絶数は460件という結果から、緊急避妊薬にリーチできない人が多数であることを懸念し、性交後120時間(丸5日間)以内の服用で効果がある「ella(エラ)」というアフターピルを処方する医師もいる[67]

緊急避妊薬が処方されたクリニックではのべ1414人の女性の緊急避妊薬の処方についての処方状況を確認したところ、処方理由としては、コンドームが破れた・外れたが最多であり、次いでコンドームをつけなかったという理由が多かった[68]。日本において一般的であるコンドームの避妊による失敗を補う目的で女性が妊娠を回避するために受診している現状がある。

レボノルゲストレルを使用してはいけない場合は、本剤の成分に対する過敏症の既往がある場合、重篤な肝機能障害のある場合、妊婦[11]、その他肝障害・心疾患・腎疾患又はその既往歴のある場合にも慎重を要する[11]。また、重度の消化管障害あるいは消化管の吸収不良症候群がある場合,本剤の有効性が期待できないおそれがある[11]。副作用としては、消退出血(46.2%)、不正子宮出血(13.8%)、頭痛(12.3%)、悪心(9.2%)、倦怠感(7.7%)などがあり、その他にめまい、腹痛、嘔吐、下痢、乳房の痛み、月経遅延、月経過多、疲労などがある[11]。妊娠回避効果は100%ではなく、排卵日付近の性交渉ではレボノルゲストレルを使っても81% - 84%である[11]。その他の方法として少量のミフェプリストン(10mg程度)を使用する方法がある。ミフェプリストンが受精卵の着床を阻害するためと考えられていたが、その後の研究により卵巣からの排卵抑制効果によるものと判明している。

性交後72時間を過ぎた場合は、IUDやミレーナによって妊娠を阻止する。

日本においても、世界で承認されている、子宮内避妊システムの小さいものの利用、腕に入れるインプラント、皮膚に貼るシールの利用を含め「産む・産まない」の選択を女性自身が決める「リプロダクティブ・ヘルス・ライツの権利が尊重される必要がある[69]

カナダに拠点をおく非営利団体「ウィメン・オン・ウェブ(Women on Web)」はオンライン診療を通して日本人女性にも避妊薬・妊娠中絶薬を処方しており、メールは日本語でも可能である。厚労省によると、WoWを通じて処方を受ける場合には制度上「個人輸入」にあたり医薬品医療機器等法(薬機法)に基づき医師の診断書や指示書が必要になるが、国外の医師の処方せんもこの指示書にあたるため問題がないとされる。しかし、本人を含む、母体保護法指定医以外の人が中絶をした場合、刑法上の堕胎罪に当たる可能性があることも報道されている。この団体代表者レベッカ・ゴンパーツ医師は、社会権規約(ICESCR)に批准している日本政府には、避妊薬、その他の避妊方法、緊急避妊薬、中絶薬を含むWHOの必須医薬品を確保する義務があるため、日本の女性たちには中絶薬を使う権利を持ち中絶薬は安全であり世界中で使用されていると表明している[70]

避妊についての論争編集

避妊を強く非難する意見や逆に積極的に広めようとする意見があり、論争が続いている。

推進論編集

一方で避妊とは女性のみに妊娠という母体に負担を掛けることから解放して自由度を高め、男女が平等に性を謳歌することを可能とする手段とも言え、性的快楽を是としてあまり罪悪視しない人々の間には賛成する声も多い。[要出典]また発展途上国での人口調節に置いて、避妊の推奨は切実な問題となっており、1994年の国際人口開発会議(ICPD/カイロ会議)では、性は出産する時期と子どもの数、出産間隔を自由に決定でき、そのための情報と手段を得ることができるという、基本的権利「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」持っているという概念が国際的に提唱されている[71]。国際家族計画連盟(IPPF)事務局長ジル・グリアは第一子を出産する年齢を女性自身で決められるということが特に重要であるとしている[71]

反対論編集

避妊とは言うなれば生殖という生物学的な由来を捨て去り、完全に個人の快楽のための性行為を可能にする手段であると言える。性を建前上罪悪視する人々にとってはこれは「性行為を認めるべき唯一の理由(生殖)」が欠けたということであり、彼らは避妊を伴う性行為を否定している。宗教の熱心な信者にとって、避妊は性の本来のあり方に反するとされる。古来からカトリック教会では夫婦愛の姿として性を捉えており、避妊は本来の全人的な性のあり方に反し、結局は夫婦愛に陰を落とし、損なうものとして、罪とされる。一方、自然な受胎調節は認められており、人工的な器具などを使わない荻野久作博士による研究や、より最近ではビリングス博士夫妻による非常に有効な排卵法(ビリングス・メソッド)は、カトリック教会によって推奨されている。国民の大多数がカトリック教徒で、教会が影響力を持つアイルランドでは避妊は中絶と共に異端視されている。離婚は1990年代に合法化され、避妊具も普通の商店で売られるようになった[72]

宗教を理由とする以外の批判としては、緊急避妊やIUD、ミレーナの使用によって、受精卵の着床を阻止する作用があるため、これらは命(受精卵)を強制的に殺すこと、妊娠中絶(子おろし)であるとして非難する人々もいる。

フィクション作品上の避妊描写編集

ほとんどすべての小説、映画、ビデオその他の中の避妊の措置が当然なされるであろうと思われるいわゆる和姦描写において、その描写はリアリズムが標榜される場合においてさえ、意図的に回避される。このことを問題視する作家に姫野カオルコなどがいる[73]

脚注編集

[脚注の使い方]
  1. ^ 卵管結紮パイプカットなど
  2. ^ ノバT®380承認時
  3. ^ ミレーナ52mg添付文書
  4. ^ ピルの副作用、血栓に注意を 5年で11人死亡例 朝日新聞 2013年12月17日
  5. ^ a b c d e f g メルクマニュアル医学百科
  6. ^ 薬事法は自分で使用する分に限っては例外的に医薬品の個人輸入を認めているとされている。出典;[特集]生活改善薬大ブーム--生活改善薬大ブーム--インポ、薄毛の次は肥満に朗報!?1999年07月17日 週刊東洋経済 第5570号 118頁 - 123頁 6頁 写図表有 (全7,581字)
  7. ^ AP通信 2003年3月6日
  8. ^ L.A. TIMES 2005年4月23日
  9. ^ FDA、避妊用スポンジを再承認 米国製薬業界週報 2005年4月29日発行 第82号
  10. ^ a b マーヴィン・ハリス 『ヒトはなぜヒトを食べたか:生態人類学から見た文化の起源』 鈴木洋一訳 早川書房 1990年 ISBN 4-15-203461-0 pp.31-33.
  11. ^ a b c d e f ノルレボ錠の添付文書より
  12. ^ 緊急避妊に係る取組について”. 厚生労働省. 2021年2月1日閲覧。
  13. ^ 緊急避妊薬、入手の壁なお高く ネット処方解禁でも”. 日経電子版ヘルスUP (2019年10月7日). 2020年5月2日閲覧。
  14. ^ 未だに「かき出す中絶」が行われている日本の謎 英米では「消えた術式」がまだ主流に|date=2019-09-27”. PRESIDENTonine. 2020年5月2日閲覧。
  15. ^ 「妊娠中絶後進国」の日本女性に感じる哀れさ 「性と生殖の権利」について知っていますか?|date=2018-11-05”. 東洋経済onine. 2020年5月2日閲覧。
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  17. ^ ピルを出したがらない産婦人科医の屁理屈 "人工妊娠中絶"の収入減を懸念か”. PRESIDENT Online. 2020年5月2日閲覧。
  18. ^ “U.S. Drops Bid to Limit Sales of Morning-After Pill”. NY Times. https://www.nytimes.com/2013/06/11/us/in-reversal-obama-to-end-effort-to-restrict-morning-after-pill.html?emc=na&_r=0 2013年6月11日閲覧。 
  19. ^ “Pharmacies still blocking U.S. teens looking for emergency contraception”. HEALTHCARE & PHARMA. (2018年11月3日). https://www.reuters.com/article/us-health-teens-contraceptives-idUSKCN1N72DS 2020年11月17日閲覧。 
  20. ^ “[https://pediatrics.aappublications.org/content/144/6/e20193149 rom the American Academy of PediatricsPolicy Statement Emergency Contraception]”. APP news&journals Gateway (2019年12月). 2020年10月17日閲覧。
  21. ^ “Emergency contraception from the pharmacy 20 years on: a mystery shopper study”. BMAjournal. https://srh.bmj.com/content/early/2020/07/26/bmjsrh-2020-200648 2020年11月17日閲覧。 
  22. ^ “Some chemists wrongly telling women they must fill in form to access emergency contraception”. the guardian. https://www.theguardian.com/society/2020/apr/09/some-chemists-wrongly-telling-women-they-must-fill-in-form-to-access-emergency-contraception 2020年11月17日閲覧。 
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関連項目編集

外部リンク編集