JR東日本GV-E197系気動車

東日本旅客鉄道の事業用気動車
GV-E197系から転送)

GV-E197系気動車(GV-E197けいきどうしゃ)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の事業用気動車

JR東日本GV-E197系気動車
TS01編成(2022年5月28日 赤羽駅
基本情報
運用者 東日本旅客鉄道
製造所 新潟トランシス
製造年 2021年 - [1]
製造数 44両(予定)
運用開始 2024年4月2日
投入先 ぐんま車両センター
主要諸元
編成 6両編成(牽引車2両+ホッパ車4両)
軌間 1,067 mm
最高運転速度 100 km/h
起動加速度 1.5 km/h/s
減速度(常用) 3.6 km/h/s(常用最大)
編成定員 非営業車両(事業用車)
自重 58.0 t(Mzc)
23.5 t(Tz:量産先行車)
23.3 t(Tz:量産車)
編成重量 210 t
車体長 21,600 mm(Mzc)
15,700 mm(Tz)
全幅 2,800mm(Mzc)
2,749mm(Tz)
車体高 3,410 mm(Mzc)
2,900 mm(Tz)
床面高さ 1,145 mm(Mzc)
1,130 mm(Tz)
車体 ステンレス
台車 軸梁式ボルスタレス台車(Mzcのみ)
DT87形(Mzc)
TR274形(Tz)
動力伝達方式 電気式
機関 DMF15HZD-G形直噴式直列6気筒ディーゼルエンジン×2
機関出力 450 PS
発電機 強制通風形誘導電動機 DM115A形×2
主電動機 強制通風形誘導電動機 MT82形×4
主電動機出力 110 kW
歯車比 7.07
制御方式 コンバータ+VVVFインバータ制御方式
保安装置 ATS-PATS-Ps
EB装置
列車防護無線装置
電子閉塞装置
備考 Tz車(ホッパ車)積載容量:18 m3
出典:交友社『鉄道ファン 2021年8月号』
『鉄道ファン 2024年1月号』
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概要 編集

JR東日本ではこれまで、在来線における砕石バラスト)の輸送並びに散布には、国鉄から承継した機関車DD51形DE10形など)と事業用貨車ホッパ車ホキ800形)を用いていたが、いずれの車両も老朽化が進んできたことから投入が計画されたものである[1][2]。砕石輸送だけでなく、入換作業及び回送列車の牽引作業(牽引車)としての利用も想定されている[1][2]

気動車方式を採用することにより、電化・非電化区間を問わず走行が可能になっている。また、気動車方式にすることによって、機関車・貨車特有のメンテナンス方法や運転操縦を廃し、効率的なメンテナンスが可能となるほか、編成の両端に運転台を有するため、機関車の入換作業が不要となるとしている[1]

資材運搬を目的とした事業用車両の気動車化は、JR東日本自社開発では初となり[注 1]、鉄道ジャーナリストの松沼猛は、旅客列車の電車化・気動車化が行われた中で、利用目的が限定的で動力車操縦免許が同一でも運転操作の異なる機関車を淘汰させる流れの一環ではないかと推察している[3]

主回路(主変換装置)は三菱電機が担当しているほか[4]、専用のブレーキ制御装置を同社が開発している[5]

構造 編集

砕石輸送用の6両編成は制御機器やエンジン、主回路などを搭載した動力車GV-E197形(Mzc)を編成両端に2両連結し、中間に砕石輸送用のホッパ車GV-E196形(Tz)を4両連結する。

GV-E197形 編集

両運転台構造の動力車で、基本的な車体構造は同時期に導入が発表された片運転台構造のE493系電車と同一である。編成のほか、単独や重連などでの運用にも対応している。

車体 編集

GV-E197形の車体前面部分は踏切事故対策としてJR東日本の新系列車両で広く採用されているFRP製の衝撃吸収構造とし、事業用車両や警戒色をあらわす黄色にコーポレートカラーであるグリーンとブラックの帯がデザインされている。車体側面は台枠を除いて軽量ステンレス構体を採用し、ステンレスの地色に対し量産先行車であるTS01編成のみ前面の帯を全周して装飾されているが、量産車であるTS02編成以降は車体側面の装飾が省略されている[6]

車内に可搬式の機器などを搭載するため、車両全長を営業用車両と同等の21,600mmとし、扉は有効開口幅1,300mmの貨物用側引戸と2,500mmの機器搬入口が両側に一対ずつ、有効開口幅2,000mmの機器搬入口が片側に設けられている[7]

前面灯具類はLEDとし、前照灯は上部と腰部に2灯ずつ設置され、尾灯は上部に2灯となっている[6]。なお、0番台のみ保守用車専用の列車防護装置発光機(黄色・赤色が1灯ずつ)と制動灯(黄色2灯)が設けられている。

側窓は量産先行車では両側に開閉可能な二段窓が計5ヶ所設けられていたが、量産車では計3ヶ所に省略された。

車内に走行機器や主電動機のブロアーが搭載され、通気性の向上を目的にルーバーが多数設けられることから、フレームや台枠などの強化を施している[6]。床下機器の塗色は灰色に統一されており、濃灰で統一されるE493系とは異なる。

機器・仕様 編集

編成単位の運用のみならず、単独または重連のほか異車種との連結も考慮し、自動連結器密着連結器の双頭型連結器を車両前面に搭載し、電車・客車などとの協調運転を可能にするためのブレーキシステム等を備えている。車両情報管理装置はMON30を採用。

保守用車として必要な特殊機能を備え「保守用車モード」での起動が可能な0番台(1 - 4)、「保守用車モード」非搭載の100番台(101 - 110)、「保守用車モード」非搭載で自動ブレーキ車両による牽引に対応するための可搬式読替装置を搭載できる仕様の200番台(201・202)が存在する[6]

最高運転速度は100km/hとし、起動加速度は1.5km/h/s、最高運転速度からの常用最大ブレーキの減速度は3.6km/h/s。

GV-E196形 編集

砕石輸送用のホッパ車。TS01 - TS07編成の中間に4両が連結される。

国鉄ホキ800形貨車の構造を基本に設計されており、GV-E197形と協調運転を行うためのブレーキ制御装置や油圧発生ユニットのほか、散布口周辺に線間散布用のコンベヤ装置と砕石散布用の軌間内自動散布機能を新たに搭載している[8]。積載量はホキ800形と同等の30t、18㎥とした。車体は普通鋼製で塗色は灰色単色、連結器は密着連結器を採用している[6]

最高運転速度、起動加速度、減速度共にGV-E197形と同一である。

形式 編集

以下の2形式からなり、2両の動力車GV-E197形でホッパ車であるGV-E196形4両を挟んだ6両編成が組成される[1]

GV-E197形 (Mzc)
牽引用の電気式気動車[9]。非貫通運転台を有する両運転台構造となる。0番台のほか、100番台と200番台が存在する[6]
GV-E196形 (Tz)
砕石輸送用のホッパ車[9]

運用 編集

2021年1月、量産先行車となるTS01編成が新潟トランシスから高崎車両センター(現・ぐんま車両センター)に回送された[10]。2021年3月には、高崎線高崎駅 - 本庄駅間で試運転を行い、同年4月に性能試験のため郡山総合車両センターに回送された。その後仙山線中央本線、2022年には羽越本線東北本線でも試運転を行っている。

2023年には量産車の投入が開始された。ホッパ車を含む6両編成6本(TS02 - TS07編成)の他、非電化区間の車両の入換作業回送列車の牽引への使用を目的に、ホッパ車のない牽引車2両(TS08編成)を別途新造する予定である[1][11]

2024年4月2日より水郡線西金駅の砕石積込み場から水戸・千葉支社管内などへの砕石輸送を、同月9日から吾妻線小野上駅からの砕石輸送を開始し、これまでのDE10形ディーゼル機関車およびホキ800形貨車の運用を置き換えた[12]

編成表 編集

ぐんま車両センターに、0番台が2編成12両、100番台が5編成18両、200番台が1編成2両、合計8編成44両が配置される予定[6]

GV-E197系気動車 編成表
 
← 東京
高崎 →
新製配置日
編成番号 形式 GV-E197形
(Mzc)
GV-E196形
(Tz)
GV-E196形
(Tz)
GV-E196形
(Tz)
GV-E196形
(Tz)
GV-E197形
(Mzc)
搭載機器 DM•MC•CP•DE DM•MC•CP•DE
TS01 2 4 3 2 1 1 2021年1月25日
TS02 4 8 7 6 5 3 2023年7月5日
TS03 102 12 11 10 9 101 2023年9月5日
TS04 104 16 15 14 13 103 2023年10月25日
TS05 106 20 19 18 17 105 2023年11月28日
TS06 108 24 23 22 21 107 2024年1月16日
TS07 110 28 27 26 25 109
TS08(予定) 202 201
  • DM:主発電機、MC:主制御装置、CP:電動空気圧縮機、DE:ディーゼルエンジン
  • GV-E196形は砕石輸送車、GV-E197形は単独走行、重連等が可能、100番台及び200番台は保守用車モードなし、200番台は牽引用[6]

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ レール運搬用車両のキヤE195系JR東海開発車両の改良型。

出典 編集

  1. ^ a b c d e f 新型砕石輸送気動車および事業用電車の投入について』(PDF)(プレスリリース)東日本旅客鉄道、2021年1月19日。 オリジナルの2021年6月24日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20210624201125/https://www.jreast.co.jp/press/2020/20210119_ho01.pdf2021年7月3日閲覧 
  2. ^ a b 『鉄道ファン』通巻724号、p.74。
  3. ^ 松沼 猛 (2021年1月31日). “客を乗せない「事業用車両」に訪れた大変革時代 「機関車と貨車」から電車・気動車に置き換えへ”. 東洋経済オンライン. 2021年7月3日閲覧。
  4. ^ 「東日本旅客鉄道(株)の事業用電気式気動車向け主変換装置」 三菱電機技報 2022年1月号 カラートピックス (PDF)
  5. ^ 「東日本旅客鉄道(株)の新型事業用車両向けブレーキシステム」 三菱電機技報 2022年1月号 一般論文 (PDF)
  6. ^ a b c d e f g h 『鉄道ファン』通巻753号、pp.60•61。
  7. ^ 『鉄道ファン』交友社、2024年1月1日、159,160頁。 
  8. ^ 『鉄道ファン』通巻724号、p.75。
  9. ^ a b 『鉄道ファン』通巻724号、pp.74・77。
  10. ^ GV-E197系が甲種輸送される|鉄道ニュース|2021年1月21日掲載|鉄道ファン・railf.jp”. 鉄道ファン・railf.jp. 2021年7月4日閲覧。
  11. ^ 新型砕石輸送気動車および事業用電車の量産車新造について』(PDF)(プレスリリース)東日本旅客鉄道、2022年5月13日https://www.jreast.co.jp/press/2022/20220513_ho04.pdf2022年5月13日閲覧 
  12. ^ 新型砕石輸送気動車で水郡線の砕石輸送を開始します』(PDF)(プレスリリース)東日本旅客鉄道、2024年3月15日https://www.jreast.co.jp/press/2023/mito/20240315_mt03.pdf2024年3月15日閲覧 

参考文献 編集

  • 安在恵一郎、吉場裕一(東日本旅客鉄道鉄道事業本部運輸車両部車両技術センター)「GV-E197系事業用電気式気動車」『鉄道ファン』第61巻第8号(通巻724号)、交友社、2021年8月1日、74-76、177-178頁、OCLC 61102288 

関連項目 編集

外部リンク 編集