MTUフリードリヒスハーフェン

MTU 956から転送)

MTUフリードリヒスハーフェン(MTU Friedrichshafen)とは、ドイツフリードリヒスハーフェンを本拠とし、大型ディーゼルエンジンの製造・販売・アフターサービスを業務とする企業である。ロールス・ロイス・グループのロールス・ロイス・パワーシステムズの子会社である。

MTU Friedrichshafen GmbH
種類 有限会社 (ドイツ) (GmbH)
本社所在地 ドイツの旗 ドイツ
バーデン=ヴュルテンベルク州フリードリヒスハーフェン
設立 1909年
業種 製造業
事業内容 大型ディーゼルエンジンの製造・販売・アフターサービス。
代表者 Andreas Schell, CEO
主要株主 ロールス・ロイス・ホールディングス
外部リンク http://www.mtu-online.com/mtu/company/
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概要 編集

MTUとはドイツ語のMotoren- und Turbinen-Union、すなわち「エンジン及びタービン連合」の頭文字を表す。

製造するエンジンは鉄道車両用、船舶用、軍用車両用、農業機械用、鉱業用、建設機械用、産業用などである。エンジン製造の他に、動力系の自動制御システムも手掛ける。

歴史 編集

設立 編集

ツェッペリン飛行船の開発者として知られるフェルディナント・フォン・ツェッペリンが、自身のための近代的な自動車を設計したヴィルヘルム・マイバッハの提案を受け入れて設立したLuftfahrzeug-Motorenbau(ルフトファールツォイク・モトーレンバウ、直訳すれば「航空機エンジン製造」)がルーツである。起業の目的は航空機エンジンの製造であるが、その技術をベースに自動車や船舶のためのエンジン開発も視野に入れていた。設立は1909年3月23日、ドイツのビーティッヒハイム=ビッシンゲンにおいてであった。初めて製造されたエンジンはヴィルヘルムの息子、カール・マイバッハが設計したものであった。

1912年、フリードリヒスハーフェンに移転し、第一次世界大戦後の1918年、マイバッハ・モトーレンバウ・フリードリヒスハーフェンと改称し、マイバッハの名の下に 自動車用エンジンの製造を開始した。同時に、アルファベットのMを重ねて三角形にした新たな企業ロゴを採用した。このロゴは意匠を変えて現在も使用されている。

ダイムラー・ベンツ傘下に 編集

1960年、ダイムラー・ベンツにより買収された。1963年、ダイムラー・ベンツはメルセデス・ベンツ・モトーレンバウ・フリードリヒスハーフェンを設立し、大型エンジン製造の機能をポルシェ・ディーゼルから引き継いだフリードリヒスハーフェンの別の工場に移転した。

1966年、マイバッハ・モトーレンバウとメルセデス・ベンツ・モトーレンバウはダイムラー・ベンツの大型エンジン部門として組織を統合し、マイバッハ・メルセデス・ベンツ・モトーレンバウとなった。

1969年7月11日、ダイムラー・ベンツとMANはフリードリヒスハーフェンとミュンヘンにMTUを設立。マイバッハ・メルセデス・ベンツ・モトーレンバウなどの事業は整理され、MTUフリードリヒスハーフェンが1000馬力から1万馬力の高速ディーゼルエンジンを、MTUミュンヘン(現MTUエアロ・エンジンズ)がより高度なエンジンの製造と開発を行うこととした。

1994年9月、MTUフリードリヒスハーフェンはデトロイトディーゼルとの協業を開始した。デトロイトディーゼルはゼネラルモーターズのディーゼルエンジン製造部門が分社化されていた企業である。

ダイムラー・クライスラー傘下からトグナム傘下に 編集

1998年、ダイムラー・ベンツがクライスラーを買収してダイムラー・クライスラーとなり、2000年にはダイムラー・クライスラーがデトロイトディーゼルを買収。傘下にエンジン製造部門を2社抱えることとなった。

2005年12月、ダイムラー・クライスラーは経営を自動車製造に集中するために、MTUフリードリヒスハーフェンとデトロイトディーゼルが製造するエンジンのうちオフ・ハイウェイ部門(民生自動車用途以外の大型ディーゼルエンジン)を、プライベート・エクイティ・ファンドEQTパートナーズEQT Partners)に売却した。MTUフリードリヒスハーフェンは存続し、MTUフリードリヒスハーフェンとデトロイトディーゼルの大型ディーゼルの製造を継承した。

2006年7月、EQTはトグナムグループ(Tognum)を設立し、MTUフリードリヒスハーフェンはその最大の子会社となった。

ロールス・ロイス傘下へ 編集

2011年3月9日、ダイムラー及びロールス・ロイス・ホールディングスジョイントベンチャーとして設立されたエンジン・ホールディングGmbHは、トグナムに対し共同で33億ユーロでの買収を提案した。提案期限の6月1日、エンジン・ホールディングGmbHはトグナムの58.35%の株を取得した。8月に株式保有率が95%となる。

2013年3月、エンジン・ホールディングGmbHはトグナムの株を100%確保し完全子会社化した。そして中速ディーゼルやガス・エンジンを得意とするロールス・ロイス・グループのベルゲン・エンジンズをトグナム・グループに移した。

2014年1月、エンジン・ホールディングGmbHはロールス・ロイス・パワーシステムズ・ホールディングGmbHに名称を変更した。トグナムはロールス・ロイス・パワーシステムズAGに名称を変更し、MTUフリードリヒスハーフェン、ベルゲン・エンジンズ、ロランジュなどの子会社は事業を継続した。

2014年8月、ロールス・ロイス・ホールディングスはロールス・ロイス・パワーシステムズのダイムラーの持ち分を買い取り、ロールス・ロイス・パワーシステムズを完全子会社化した。

MTUの舶用エンジンと採用例 編集

高速ディーゼル 編集

1600シリーズ(ボア122mm/ストローク150mm) 編集

  • 直列型6気筒
  • V型8気筒
  • V型10気筒
  • V型12気筒

183シリーズ ×(ボア130mm/ストローク142mm) 編集

S60シリーズ(ボア133mm/ストローク168mm) 編集

  • 直列型6気筒

2000-00/01シリーズ(ボア130mm/ストローク150mm) 編集

2000-02/03/04シリーズ(ボア135mm/ストローク156mm) 編集

331シリーズ ×(ボア165mm/ストローク155mm) 編集

396シリーズ(ボア165mm/ストローク185mm) 編集

4000-00/01シリーズ(ボア165mm/ストローク190mm) 編集

4000-02/03シリーズ(ボア170mm/ストローク190mm) 編集

493シリーズ ×(ボア175mm/ストローク205mm) 編集

538シリーズ ×(ボア185mm/ストローク200mm) 編集

595シリーズ ×(ボア190mm/ストローク210mm) 編集

652シリーズ ×(ボア190mm/ストローク300mm) 編集

956シリーズ ×(ボア230mm/ストローク230mm) 編集

1163シリーズ(ボア230mm/ストローク280mm) 編集

8000シリーズ(ボア265mm/ストローク315mm) 編集

※製品とシリンダー寸法は資料[1]を参照した。採用艦船は資料[2]を参照した。

× 印の製品シリーズは、MTUフリードリヒスハーフェンにおける生産終了品。

日本におけるMTU製品 編集

1998年より富永物産が販売・サービスの代理店契約を結び、日本国内での事業展開を開始。2001年にはMTU Japanが設立され、 海上保安庁や建機メーカーなどに製品を納入してきた。また、それらの動きとは別に、総合商社の丸紅防衛省にそれぞれMTU製品の購入を働きかけてきたが、2008年11月17日にMTUと丸紅が合弁事業を開始することに合意[3]2009年1月、MTU JapanをMTU-Marubeniに改称し、総代理店となった。

1962年三菱重工業DD91形ディーゼル機関車を試作し、日本国有鉄道がそれを試用した。その結果を踏まえて1966年から量産されたのがDD54形である。この形式にはライセンス生産のMD870形V型16気筒エンジン(国鉄形式はDMP86Z)が1基搭載された。

JR貨物は、DF200形ディーゼル機関車のうち初期(1992年以降)に製造した車両にMTU製12V396TE14型エンジンを2基搭載している。この396シリーズエンジンはMTUのベストセラーモデルで、1万基を超える数が製造されている。

2019年ダイハツディーゼルがライセンス契約を締結した[4]

脚注 編集

  1. ^ Pounder's Marine Diesel Engines and Gas Turbines, 8th edition” (英語). 2017年3月30日閲覧。
  2. ^ Stephen Saunders (2015). IHS Jane's Fighting Ships 2015-2016. IHS Jane's Information Group. ISBN 978-0710631435 
  3. ^ MTU社製ディーゼルエンジンの国内合弁販売事業に関する合弁契約書締結の件 - 丸紅株式会社 ニュースリリース 2008年11月18日
  4. ^ ダイハツディーゼルの新たな取組みについて”. ダイハツディーゼル (2019年5月27日). 2022年5月14日閲覧。

関連項目 編集

外部リンク 編集