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UH-X

陸上自衛隊の次期多用途ヘリコプター。
SUBARU宇都宮製作所にて、初飛行を目前にするUH-X試作機
 
明野駐屯地に向かうXUH-2

UH-X(ユーエイチエックス)は、Utility Helicopter-Xの略称で陸上自衛隊次期多用途ヘリコプター導入計画である。紆余曲折を経て2015年(平成27年)7月17日に富士重工業(現・SUBARU)とベル・ヘリコプターベル 412EPIをベースとした共同開発機の412EPXが選定された。2021年(令和3年)から20年かけて1機12億円で150機調達する[1]

供試機(プロトタイプ)は、2019年2月28日、XUH-2として領収、3月8日明野駐屯地に搬入された[2]

目次

UH-1H・J後継機編集

 
UH-1J

現在の陸上自衛隊はUH-1HおよびJを採用している。UH-1Hは、ベル・エアクラフトが開発した多用途ヘリコプターで、2014年現在運用中のUH-1JはUH-1Hを富士重工業が独自に改良したものである。しかし、単発であるUH-1H・Jでは洋上などを飛行する際の安定性が不十分であり、航続距離も不足していることからUH-60Jとの併用を前提とした新しい双発多用途ヘリの導入が検討された。その結果、以下の要求が盛り込まれた。

  • 高温・高標高領域での超低空飛行性能
  • 長距離洋上飛行時の安定性
  • (UH-1H・Jと比較して)速度および航続距離性能の大幅な向上
  • UH-1Jと同等以下の価格(1機当たり12億円程度を想定)[3]

既存の多用途ヘリに該当する機種がないことから防衛省は国産開発を決定し、以下の案が候補として挙がった。

  • 国産のOH-1をベースとした改造機
  • UH-1J双発型

両者の比較検討の結果、OH-1改造案の採用が決定され、2012年3月に防衛省は、OH-1をベースに「新多用途ヘリコプター」を開発することを正式に決定し川崎重工業に発注した[4]。開発費用は7年間で280億円、140機生産の場合1機約10億円を見込んでいた[5][6]

白紙化編集

しかし、2012年9月、防衛省と関連企業は次期多用途ヘリコプターの開発・納入計画を巡る談合が行われていた疑いが強まったとして、東京地方検察庁特別捜査部の家宅捜索を受けた[7]ことが判明した。その後、防衛省は同談合疑惑に関与した佐官級幹部に対する告発状を同地検特捜部に提出した[8]

特捜部はその後の調べで容疑に関与した幹部自衛官が川崎重工に対し競争相手(富士重工業)の内部資料を漏洩させるなどの事実をつきとめ、容疑者も任意の事情聴取に対しこれらの事実を認めたことから、官製談合防止法違反罪で刑事処分するとしていたが[9]、最終的に2名は略式起訴に留まった[10]。今回の事件と自由民主党への政権交代の影響を受けて開発計画そのものの白紙化も含めた再検討が行われ[11]2013年1月11日にUH-X開発計画の白紙化と川崎重工との契約解除が決定された[12]

防衛省は2013年7月30日、同談合に関与した職員に対する懲戒処分[13]を行うとともに、翌日には川崎重工に対する2ヶ月間の指名停止措置を行うことを発表した[14]

国際共同開発編集

2014年4月29日、防衛省は、UH-Xとして民間機の転用を検討していることが報じられた[15]。これは2014年4月1日に武器輸出三原則に代わって制定された防衛装備移転三原則の影響もあるとされている。

2014年6月11日には、UH-Xに3つの国際企業連合が名乗りを上げていることが明らかになった。防衛省が主導する計画ながら、輸出を含め自衛隊以外の用途を視野に開発する初のケースとなる[3]。防衛省は、自衛隊専用に開発した場合に比べ、量産効果で価格を抑えることが可能になるとしており、関係者の1人は「基本的に民間に市場があるものを軍用機にカスタマイズする。売れ筋であれば価格も安定する」と話している[3]

提案企業と機種は以下のとおり。

当初三井物産アグスタ・ウェストランドと組みAW169英語版を輸入し富士重工業が陸自向けに仕様変更する形での提案を検討したが、最終的に防衛省への提案は行われなかった。

候補機の比較編集

X9編集

機体
  • エアバスが計画している4.5トンヘリコプターX9をベースとする。X9は2012年8月にユーロコプター社のルッツ・ベルトリンクCEOにより発表されたBK117やEC145の後継となる機体で初飛行は2019年、運用開始は2022年を予定している[19]。X9はBK117のコンセプトを踏襲して、胴体後部にクラムシェルドアを備え、規模を拡大した形の機体になると見られており、開発コストは10億ユーロと見積もられている[20]
メリット
  • 新型機であるため性能の陳腐化の可能性が少ない。
デメリット
  • 原型とするX9はまだ初飛行していない。

ベル 412EPI編集

 
海上保安庁のベル412EP
機体
  • ベル 412はベル 205(UH-1D/Hの民生機)を双発化したベル 212をベースにエンジンをPT6T-3Dに換装し、メインローターの枚数を4枚に増やした改良型であり、EPIはその最新モデルである。
メリット
デメリット
  • 基本設計が古く将来の発展性に疑問が残る。

決定編集

 
2016年の国際航空宇宙展において展示されたUH-Xの40%スケールモデル
新多用途ヘリコプター(UH-X)

防衛省では、2015年(平成27年)度予算案にUH-Xの開発費として10億円を計上して業者選定を進め、2015年2月25日に、企画競争参加希望者募集要項を公示した。提案書は6月2日までに締め切られた[21]

2015年7月15日、ベル412EPIが選定されたことが発表された[22][23]。今後、2018年3月30日までにヘリコプター1式が納入されることとなっている[21]。理由としては、選定基準で重視された国際共同開発の管理体制の面が影響しているとされている[1]

2015年8月25日フィナンシャル・タイムズ紙がエアバスが開発受注競争に敗れたことを受け、防衛省に説明を求める考えを明らかとし、防衛省を相手取った訴訟を視野に入れていると伝えた。ただし、この件に関してエアバスの広報担当者は、そうした段階にはまだ至っていないと回答した[24]航空自衛隊の初等練習機T-3が更新される際にも類似した事態が発生している(T-7を参照)。

412EPIをベースとしたSUBARUとベルによる共同開発の民間機『SUBARU ベル 412EPX』にコックピットの改良、ヘリコプター映像伝送装置(ヘリテレ)または赤外線監視装置を搭載するなどの改造を行う予定である[25]。412EPXはドライラン能力(メイン・トランスミッション内の潤滑油が抜けた状態でも飛行可能な能力)を向上させ、トランスミッションの出力向上、総重量の増加、機体の耐久性の改善などを実施予定。また、SUBARUの金属表面加工技術や高効率の生産技術なども利用される。

ベルではベル412をカナダケベック州で生産しているが、UH-Xは自衛隊向けであるため日本国内で製造される[26][27]

2018年12月25日、初飛行[28][29]

参考文献・脚注編集

参考文献編集

  • 航空ファン 2014年9月号 P.70 - P.73 UH-X選定の行方を占う 小野正春 文林堂

脚注編集

  1. ^ a b 防衛省、陸自の次期ヘリ開発に富士重と米ベルを選定
  2. ^ 陸上自衛隊航空学校・明野駐屯地. “明野写真館”. 2019年5月1日閲覧。
  3. ^ a b c 自衛隊の次期ヘリ開発、川重・エアバスなど3連合が名乗り=関係筋
  4. ^ “新多用途ヘリコプター(UH-X)を受注”. 川崎重工公式サイト. (2012年3月28日). http://www.khi.co.jp/news/detail/20120328_2.html 
  5. ^ “東京新聞:多用途ヘリ 川重に決定 防衛省”. 東京新聞. (2012年3月7日). https://archive.is/613OW 
  6. ^ “川崎重工、防衛省から陸上自衛隊向けの新多用途ヘリコプター(UH-X)を受注”. 日経プレスリリース. (2012年3月28日). http://web.archive.org/web/20120511222120/http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=306296&lindID=4 
  7. ^ 佐官級幹部が漏洩か、川崎重工などに入札情報(MSN産経、2012/9/6閲覧)
  8. ^ 防衛省が告発状提出、次期多用途ヘリコプター開発不正疑惑(MSN産経、2012/10/5閲覧)
  9. ^ 富士重工の内部資料手渡す、防衛省幹部来週にも刑事処分(MSN産経、2012/12/15、2012/12/17閲覧)
  10. ^ 2等陸佐2人を略式起訴 防衛ヘリ談合で東京地検 「利益供与なく悪質性低い」
  11. ^ 次世代ヘリ白紙化も、尖閣防衛に影響
  12. ^ 陸自ヘリ開発「白紙」 官製談合事件で小野寺防衛相 MSN
  13. ^ 陸上自衛隊新多用途ヘリコプターの企業選定に係る事案に関する懲戒処分について(防衛省報道資料)
  14. ^ 川崎重工業株式会社に対する指名停止の措置について(防衛省報道資料)
  15. ^ 防衛省、UH-X新規国内開発を断念か?
  16. ^ Jウイング 2015年 4月号 p.95-96
  17. ^ Airbus Offers X4 For Japanese Army UH-X
  18. ^ Airbus Pitched All-New ‘UH-X’ for Japan, and Hasn’t Given Up
  19. ^ Eurocopter Developing a Number of New Helicopters
  20. ^ Eurocopter plant neuen Hubschrauber
  21. ^ a b 防衛省、陸自UH-X提案募集要項を公示
  22. ^ UH-X、ベル412EPI発展型に ガリソンCEOに聞く
  23. ^ 陸上自衛隊新多用途ヘリコプター(UH-X)の開発事業者決定について
  24. ^ エアバス、陸自ヘリ受注失敗で防衛省に説明要求
  25. ^ Jウイング 2015年10月号 P6-7
  26. ^ 富士重工業、陸上自衛隊向け新多用途ヘリコプターUH-Xの開発で契約
  27. ^ Bell, FHI To Raise 412 Maximum Weight For UH-X
  28. ^ SUBARU 陸上自衛隊新多用途ヘリコプター試作機の飛行試験を開始 - 株式会社SUBARUニュースリリース 2018年12月25日
  29. ^ 陸上自衛隊新多用途ヘリコプターの飛行試験について - 防衛装備庁>お知らせ>報道資料 2018/12/25

参考項目編集

外部リンク編集