ワールド・イン・ユニオン
「ワールド・イン・ユニオン」 (World In Union) は、ワールドラグビーが主催するラグビーワールドカップのテーマ曲である。第2回大会ワールドカップ1991から公式に開会式でも使われている。第10回2023年フランス大会では公式発表が無く、開会式では使用されず、閉会式の前などに会場でBGMが流れた。
概要
編集原曲はグスターヴ・ホルストの組曲『惑星』第4曲「木星-快楽をもたらすもの」の中間部、 [Andante Maestoso] をもとにした賛歌「サクステッド」で、チャーリー・スカーベック(Charlie Skarbek)が新たに独自の歌詞をつけている。
「サクステッド」が4分の3拍子に対して、「ワールド・イン・ユニオン」は4分の4拍子に改められている。
「ワールド・イン・ユニオン」とは、「団結する世界」を意味する。また、ラグビーユニオンを象徴する題名となっないる。
歌詞は、「すべて国々が結びついて、ひとつの世界になるという、大きな夢が私にはある。人々が、信条や肌の色など垣根を越えて、ひとつに集まる。勝っても負けても引き分けても、みんなの心に勝者が宿る。運命をつかもうと努力するなら、新しい時代がひらけ、世界の国々が互いに結びついて、ひとつのゆるぎない世界になる」などという内容になっている[1]。
第2回大会となるワールドカップ1991から、テーマソングとして使われたのが最初である。このときはニュージーランドのソプラノ歌手キリ・テ・カナワによって歌われている[2]。同年にワールドラグビーによって本作は公認され、ラグビーワールドカップのテーマ曲の扱いを受けるようになった。曲調は、大会ごとにアレンジされている。
歴代歌唱者
編集本作は、第2回大会にあたるワールドカップ1991イングランド大会から使用されている。それぞれの大会ごとにアレンジや歌手が異なる公式曲が作られる。2015年大会のように開会式でもその歌手が歌唱する[3]が、開会式の演出によっては後述のように別の歌手になることがある。
本来の歌詞は英語であるが、ワールドカップ2011(ニュージーランド大会)でのマオリ語バージョン[4]など、他の言語によるものもあわせて制作されることがある。この大会の歌唱者はヘイリー・ウィステンラだが、開会式での歌唱パフォーマンスはマオリ族の血をひくアーティスト、リア・ホール(Ria Hall)が英語で行った[5]。
ワールドカップ2019(日本大会)の公式歌唱は、いきものがかりのメインボーカル吉岡聖恵が担当したが[6]、開会式での歌唱はNHK東京児童合唱団が行った[7][8][9]。J SPORTSでのワールドカップ2019年大会および2023年大会の中継番組では、吉岡聖恵バージョンのインストゥルメンタルが使われている。吉岡聖恵バージョンは、彼女のファーストソロカバーアルバム『うたいろ』(2018年10月24日発売)に収録されている。
また、ワールドカップ2019のイギリス国内向けテレビ中継放送を行ったITVは、オーソドックスな編曲による公式の吉岡聖恵バージョン[10]を使わず、和楽器を多用し日本情緒を凝らした編曲でエミリ・サンデー(Emeli Sandé)が歌ったものを独自に制作し、番組で使用した[11][12]。
ワールドカップ2023(フランス大会)においては、公式には発表が無く、2023年9月8日の開会式でも「ワールド・イン・ユニオン」の歌唱パフォーマンスや曲使用が無かった[13]。3位決定戦の表彰式ではBGMとして使用。閉会式でもパフォーマンスが無く、決勝戦の終了後から閉会式の開始までの間に、会場BGMとして何度かリピート再生された(歌唱者不明)。
南アフリカでは、PJパワーズ(PJ Powers)とDJコーシャー(DJ Cosher)がワールドカップ2023開幕1週間前の2023年9月1日にアフリカ情緒のあるリミックス曲をリリースし[14]、さらにンドロヴ青年合唱団(Ndlovu Youth Choir)も9月7日にリリースした[15][16]。
ラグビーワールドカップ 公式歌唱者
編集回 | 大会 | 歌唱者 | 備考 |
---|---|---|---|
第2回 | 1991年イングランド大会 | キリ・テ・カナワ | [2] |
第3回 | 1995年南アフリカ大会 | レディスミス・ブラック・マンバーゾとPJパワーズ | [17][18] |
第4回 | 1999年ウェールズ大会 | シャーリー・バッシー とブリン・ターフェル[19] | [20] |
第5回 | 2003年オーストラリア大会 | ユナイテッド・カラーズ・オブ・サウンド(United Colours Of Sound)[21][22] | [23][24] |
第6回 | 2007年フランス大会 | オール・スターズ(※) | [25] |
第7回 | 2011年ニュージーランド大会 | ヘイリー・ウェステンラ | [26][27] |
第8回 | 2015年イングランド大会 | 開会式: ローラ・ライト[3]、
英国内での放送番組: パロマ・フェイス(Paloma Faith)[28][29][30] |
|
第9回 | 2019年日本大会 | 吉岡聖恵 | [10][6][31] |
第10回 | 2023年フランス大会 | 公式発表無し |
(※)2007年フランス大会「オール・スターズ」参加アーティストは、以下の19組[32]
- ロベルト・アラーニャ - フランス
- ブリン・ターフェル - ウェールズ
- キャサリン・ジェンキンス - ウェールズ
- アレッド・ジョーンズ - ウェールズ
- エリン・マナハン・トーマス(Elin Manahan Thomas) - ウェールズ
- レスリー・ギャレット(Lesley Garrett) - イングランド
- オール・エンジェルス(All Angels) - イングランド
- ラッセル・ワトソン - イングランド
- ブレイク - イングランド
- ジョナサン・アンセル(Jonathan Ansell) - イングランド
- ニッキー・スペンス(Nicky Spence) - スコットランド
- トミー・フレミング(Tommy Fleming) - アイルランド
- ヘイリー・ウェステンラ - ニュージーランド
- ウィル・マーティン(Will Martin) - ニュージーランド
- テン・テノールズ(The Ten Tenors) - オーストラリア
- ダニエレ・デ・ニエーゼ(Danielle de Niese) - オーストラリア
- デボラ・フレイザー(Deborah Fraser) - 南アフリカ共和国
- ヴィットリオ・グリゴーロ - イタリア
- ライアンダン(RyanDan) - カナダ
ワールドカップ開会式のみでの歌唱
編集- デボラ・チータム(Deborah Cheetham) - オーストラリア、2003年大会開会式で歌唱[33]
- ホセ・クーラ - アルゼンチン、2003年大会開会式で歌唱[34]
- リア・ホール(Ria Hall)[35] - ニュージーランド、2011年大会開会式で歌唱[36]
- NHK東京児童合唱団 - 2019年日本大会開会式[37][38]
そのほかの歌唱者
編集ラグビー以外での使用
編集歌詞のテーマ性から、平和を願う意図などでラグビーと関係ない場面でも歌われる。2020年以降は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、世界への応援メッセージ曲としても使われている。また、さまざまな歌手がカバー曲として歌唱している。
以下は、その一部である。
- ソウェト・ゴスペル・クワイア(Soweto Gospel Choir) - 南アフリカ共和国(2008年)[40][41]
- リディアン・ロバーツ - ウェールズ(2015年)[42]
- カマール(Kamahl) - オーストラリア(2019年)[43]
- マリーシャ・ウォーレス (Marisha Wallace) - アメリカ合衆国(2020年)[44]
- The Old Joes' Choir - (2020年)[45]
- 岡本知高 - 日本(2021年)[46][47]
映画『インビクタス/負けざる者たち』
編集ラグビーワールドカップ1995を題材にした2009年製作の映画『インビクタス/負けざる者たち』でも使用されている。
決勝戦のシーンではレディスミス・ブラック・マンバーゾとPJ Powersによる1995年大会の公式曲[17][48]が流れ、エンドクレジットではOvertoneとYollandi Nortjieによる新収録バージョン[39]が流れる。後者は映画のサウンドトラックに収録されている[39]。
脚注
編集- ^ “世界中に響け! 『WORLD IN UNION(ワールド・イン・ユニオン)』 - ラグビーリパブリック” (2019年9月20日). 2023年2月11日閲覧。
- ^ a b (日本語) Kiri Te Kanawa - 'World In Union' Music Video 2023年2月9日閲覧。
- ^ a b (日本語) Laura Wright - World In Union - Rugby World Cup 2015 Opening Ceremony 2023年2月9日閲覧。
- ^ (日本語) HAYLEY WESTENRA 'in maori' - World In Union 2023年2月9日閲覧。
- ^ (日本語) Ria Hall performs the RWC Anthem "World In Union" at RWC 2011 Opening Ceremony (HQ) 2023年2月9日閲覧。
- ^ a b ““ラグビーワールドカップ2019”オフィシャルソング『World In Union』歌唱決定!日本人史上初!! | 吉岡 聖恵 | ソニーミュージックオフィシャルサイト”. 吉岡 聖恵 | Sony Music. 2023年2月9日閲覧。
- ^ Rugby World Cup 2019 opening ceremony. ワールドラグビー. 20 September 2019. 該当時間: 12:45. 2019年11月6日閲覧。
- ^ “2019年度の活動”. NHK東京児童合唱団. 2020年1月22日閲覧。
- ^ “いきものがかり・吉岡聖恵 ラグビーW杯公式ソング“消えた”生歌 当日会場にいたのに”. 東京スポーツ. (2019年11月10日)
- ^ a b (日本語) 【ラグビーワールドカップ】この感動は一生に一度だ / オフィシャルソング 『World In Union』 / 吉岡聖恵(いきものがかり) 2023年2月9日閲覧。
- ^ a b Burnton, Simon (2019年9月20日). “Fuji hogs the horizon as ITV fails to park stereotypes but passes World Cup test” (英語). The Guardian. ISSN 0261-3077 2023年2月9日閲覧。
- ^ a b (日本語) World In Union 2023年2月9日閲覧。
- ^ aldorn (2023年9月8日). “World in Union 2023 or official album?”. r/rugbyunion. 2023年9月11日閲覧。
- ^ (日本語) World in Union (Remix) 2023年9月11日閲覧。
- ^ (日本語) World In Union 2023年9月11日閲覧。
- ^ Baxter, Jenni (2023年9月7日). “Ndlovu Youth Choir to release special Rugby World Cup anthem” (英語). SAPeople - Worldwide South African News. 2023年9月11日閲覧。
- ^ a b (日本語) Rugby World Cup , South Africa 1995, ITV Sport Titles 2023年2月9日閲覧。
- ^ (日本語) World in Union 2023年2月9日閲覧。
- ^ (日本語) Hayley - World In Union at IRB Awards.wmv 2023年2月12日閲覧。
- ^ (日本語) Shirley Bassey and Bryn Terfel “World In Union” 1999 [HD-Remastered TV Audio] 2023年2月9日閲覧。
- ^ (日本語) UNITED COLOURS OF SOUND - THE WORLD IN UNION 2023年2月12日閲覧。
- ^ “United Colours of Sound | SecondHandSongs”. secondhandsongs.com. 2023年2月13日閲覧。
- ^ (日本語) World In Union ver.2003 2023年2月9日閲覧。
- ^ (日本語) World in Union 2003 2023年2月12日閲覧。
- ^ (日本語) Various Artists - World in Union 2023年2月9日閲覧。
- ^ (日本語) World In Union 2011 - Hayley Westenra (ITV 'Loose Women') 2023年2月9日閲覧。
- ^ (日本語) World In Union (English) 2023年2月11日閲覧。
- ^ a b (日本語) Paloma Faith - World In Union Rugby World Cup 2015 Official Song 2023年9月11日閲覧。
- ^ a b “In defence of the Paloma Faith version of World In Union (sort of)” (英語). Rugby World (2023年8月29日). 2023年9月11日閲覧。
- ^ a b “Rugby World Cup: fans petition ITV to replace 'truly awful' Paloma Faith theme music” (英語). The Telegraph (2015年9月24日). 2023年9月11日閲覧。
- ^ (日本語) Yoshioka Kiyoe - World in Union [With Lyrics] 2023年2月11日閲覧。
- ^ “Gustav Holst, Charlie Skarbek, Roberto Alagna, Bryn Terfel, Katherine Jenkins, Russell Watson, Hayley Westenra, Lesley Garrett, Aled Jones, All Angels, Vittorio Grigolo, Jonathan Ansell, Will Martin, RyanDan, BLAKE, Elin Manahan Thomas, Tommy Flemming, Nicky Spence, The Ten Tenors, Deborah & Danielle de Niese - World In Union - All Stars Lyrics | Musixmatch”. www.musixmatch.com. 2023年2月11日閲覧。
- ^ “Dazzling ceremony opens World Cup” (英語). (2003年10月10日) 2023年2月11日閲覧。
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- ^ (日本語) Ria Hall performs the RWC Anthem "World In Union" at RWC 2011 Opening Ceremony (HQ) 2023年2月11日閲覧。
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- ^ “2019年 | NHK東京児童合唱団”. nji-tokyo.jp (2022年6月7日). 2023年9月11日閲覧。
- ^ “NHK東京児童合唱団 創立70周年記念 第51回定期演奏会”. サニーけあサポート. 2023年9月11日閲覧。
- ^ a b c (日本語) World in Union '95 2023年2月9日閲覧。
- ^ (日本語) Soweto Gospel Choir - Live at the NMT - World in Union 2023年2月12日閲覧。
- ^ (日本語) World In Union 2023年2月11日閲覧。
- ^ (日本語) World In Union (2015 Rugby World Cup Theme) 2023年2月12日閲覧。
- ^ (日本語) The World in Union 2023年2月11日閲覧。
- ^ (日本語) World in Union 2023年2月11日閲覧。
- ^ (日本語) World In Union | The Old Joes' Choir (Virtual Choir while in Self Isolation & Social Distancing) 2023年2月12日閲覧。
- ^ Inc, TOMOTAKA OKAMOTO,Horipro. “ディスコグラフィー | ソプラニスタ 岡本知高 オフィシャルサイト”. www.okamototomotaka.com. 2023年2月11日閲覧。
- ^ (日本語) 岡本知高 - World in union 2023年2月11日閲覧。
- ^ (英語) Ladysmith Black Mambazo - World In Union '95 2023年2月11日閲覧。
関連項目
編集- サクステッド (音楽)
- 我は汝に誓う、我が祖国よ
- Jupiter (平原綾香の曲) - この曲も「木星」の中間部から取り上げられ、吉元由美が詞をつけた。
- インビクタス/負けざる者たち