この項目には、JIS X 0213:2004 で規定されている文字が含まれています(詳細)。

騸馬(せんば)とは去勢された牡馬のことである。

馬の去勢は、を家畜化した頃から行われていたとされている。遊牧社会では家畜としての馬の数を調整するために繁殖用の少数の馬を除いて牡馬には去勢が行われる。また、軍馬においても気性を抑えて扱いやすくする、敵に奪われても繁殖に使えなくする、発情期に興奮させないなどの理由で牡馬は去勢されていた。また競走馬から乗馬に転用される場合、元種牡馬も含めて去勢されることが通常である。

ただし、日本においては明治時代になるまで牡馬を去勢する習慣が存在しなかったとされる。

競馬における去勢編集

競馬界においては、気性を穏やかにし、競走において扱いやすくするため、繁殖的価値の認められない馬について育成段階、または競走馬として出走した後に去勢を行う。去勢し、騸馬となると、種牡馬になることができなくなる。そのため種牡馬や繁殖牝馬の選定競走として定められている競馬のクラシック競走などには出走できない取り決めをしている国も多い。牡馬は牝馬と異なり1年間に多頭数との交配が可能なため、種牡馬の需要頭数は競走馬に比べて少なく、種牡馬となる競走馬は全体の1%未満である。これにより、種牡馬選定期間が過ぎた4歳以上の牡馬は多くの国で去勢されるのが一般的である(G1競走勝ち馬や、凱旋門賞3着馬が去勢された例もある)。特に障害競走に出走する競走馬は競走の危険を減らす目的もあり、去勢が行われない馬は極めてまれである。

日本においては繁殖的価値の有無にかかわらず、現役競走馬にたいして去勢を行うことは少なく、気性難や馬っ気(牡馬の発情)などでレースや調教などに支障が出るような牡馬への「最終手段」として行われることが多い。中央競馬GI競走では、牝馬限定およびクラシック5競走を含む2〜3歳限定のすべてに出走できない制限(朝日杯フューチュリティステークス2004年以降)があるが、クラシックのトライアル競走では騸馬の出走を認めているものも存在する。一方馬齢・性別の制限がない競走には出走できる。(天皇賞2007年まで春秋とも出走不可)

海外では、競走馬としてデビュー前から去勢を施すことも一般的に行われている。特にアメリカでは実績のあるせん馬が多数存在しており、20世紀のアメリカ名馬100選のうち実に11頭[1]がせん馬である。

また、馬産の行われていない香港、シンガポールの牡馬の競走馬はほぼすべてが去勢され騸馬になっている。これらの国では主にオーストラリア、ニュージーランドから競走馬を輸入し、一部はヨーロッパから現役競走馬をトレードで獲得している。そのオーストラリア、ニュージーランドは馬産国でありながら、一部の良血馬以外の大部分の牡馬は去勢されるという、他の国々にはない特色を持っている。

なお、種牡馬を引退し功労馬として余生を過ごすことになった牡馬は、よほどのことがない限り去勢される[2]。現役競走馬時代、種牡馬時代共に優秀な成績を収めたサクラユタカオータイキシャトルも去勢されている。

著名な騙馬編集

漢字表記について編集

「騸」はJIS X 0208に収録されていないため、せん馬セン馬と書かれることも多い。騸馬の「騸」は馬へんに扇の旧字体U+9A38)である。「騸」はUnicodeJIS X 0212JIS X 0213に収録されている。「騙馬」(騙は馬へんに扁、騙す(だます)という言葉に使われている文字、はヘン)と書かれることもあるが、これは誤りである。

脚注編集

  1. ^ オーストラリア産のファーラップを含む
  2. ^ 気性が極めて温厚で、去勢する必要がなかったステートジャガーなど