クリーブランド級軽巡洋艦

クリーブランド級軽巡洋艦(クリーブランドきゅう けいじゅんようかん、英語: Cleveland-class light cruiser) は、アメリカ海軍軽巡洋艦の艦級。改良型のファーゴ(CL-106)以降を含む資料も存在する。

クリーブランド級軽巡洋艦
CL-55 USS Cleveland
CL-55 USS Cleveland
基本情報
艦種 軽巡洋艦
命名基準 都市名
就役期間 1942年-1979年
計画数 52隻
建造数 27隻[注 1]
前級 アトランタ級
ブルックリン級
次級 ファーゴ級
要目 ([1]
基準排水量 11,130-11,734 l.t[注 2]
(11,309-11,922 t)
満載排水量 13,897-14,144 l.t[注 3]
(14,120-14,371t)
全長 185.93 m
最大幅 20.12 m
吃水 7.62 m
ボイラー 水管ボイラー×4缶
主機 GE式ギヤード蒸気タービン×4基
推進器 スクリュープロペラ×4軸
出力 100,000 shp
最大速力 33kn
航続距離 11,000海里 / 15kn巡航
乗員 916名-1,252名
兵装
表記しているのは一例であり、実際は年代や艦ごとに異なる。
装甲
  • 舷側:3.5-5in (89-127mm)
  • 甲板:2in (51mm)
  • 船内隔壁:5in (127mm)
  • 砲塔前面:6.5in (165mm)
  • 砲塔後面:1.5in (38mm)
  • 砲塔上面:3in (76mm)
  • 搭載機 4機
    その他 カタパルト×2基
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    来歴 編集

    1937年1月1日ロンドン海軍軍縮条約失効に伴い、列強各国に課せられていた巡洋艦の保有制限は解除された。同時にワシントン海軍軍縮条約も失効したことから、各国は一斉に海軍軍備の拡張に乗り出しており、1938年5月には、アメリカでも第2次ヴィンソン海軍法と通称される一大海軍拡張計画が議会を通過した。同計画には10,000トン型軽巡洋艦が盛り込まれていたが、これによって建造されたのが本級である[2]

    設計 編集

    当初は基準排水量8,000トン、6インチ両用砲 連装5基搭載というアトランタ級の拡大型として計画されたものの、搭載砲の開発が間に合わなかったことから、ブルックリン級軽巡洋艦後期型(セント・ルイス級)の船体設計を踏襲することとされた[3]

    主砲としては、セント・ルイス級と同じくMk.16 47口径6インチ砲を3連装砲塔に配して搭載した。ただしセント・ルイス級では、前甲板3基・後甲板2基の計15門搭載であったのに対し、本級では前後甲板に2基ずつに削減された。その一方で、Mk.12 38口径5インチ両用砲は12門(連装6基; セント・ルイス級では連装4基)に増備され、また56口径40mm機銃など高角機銃も多数を搭載するなど、対空砲火力は大幅に強化された[4]

    配備 編集

    まず1940年度計画で4隻の建造が決定され、その後さらに1941年度計画で32隻、1942年度計画で16隻の建造が追加されたことから、合計52隻という大量建造が計画されることとなった[2]

    その後、3隻は建造中止され、また13隻は発展型(ファーゴ級)に、9隻は軽空母インディペンデンス級)に設計変更されて建造されたことから、本級として完成したのは27隻であった[2]

    同型艦一覧
    艦番号 艦名 起工 就役 退役 備考
    CL-55 クリーブランド
    USS Cleveland
    1940年
    7月
    1942年
    6月
    1947年
    2月
    CL-56 コロンビア
    USS Columbia
    1940年
    8月
    1942年
    7月
    1946年
    11月
    CL-57 モントピリア
    USS Montpelier
    1940年
    12月
    1942年
    9月
    1947年
    1月
    CL-58 デンバー
    USS Denver
    1940年
    12月
    1942年
    10月
    1947年
    2月
    CL-59 アムステルダム
    USS Amsterdam
    1941年
    5月
    1943年1月
    CVL-22「インディペンデンス」として就役。
    CL-60 サンタフェ
    USS Santa Fe
    1941年
    6月
    1942年
    11月
    1946年
    10月
    CL-61 タラハシー
    USS Tallahassee
    1941年
    6月
    1943年2月
    CVL-23「プリンストン」として就役。
    CL-62 バーミングハム
    USS Birmingham
    1941年
    2月
    1943年
    1月
    1947年
    1月
    CL-63 モービル
    USS Mobile
    1941年
    4月
    1943年
    3月
    1947年
    5月
    CL-64 ヴィンセンス
    USS Vincennes
    1942年
    3月
    1944年
    1月
    1946年
    9月
    CL-65 パサデナ
    USS Pasadena
    1943年
    2月
    1944年
    6月
    1950年
    1月
    CL-66 スプリングフィールド
    USS Springfield
    1943年
    2月
    1944年
    9月
    1974年
    5月
    1960年7月
    プロビデンス級ミサイル巡洋艦2番艦(CLG-7)として再就役。
    CL-67 トピカ
    USS Topeka
    1943年
    4月
    1944年
    12月
    1969年
    6月
    1960年3月
    プロビデンス級ミサイル巡洋艦3番艦(CLG-8)として再就役。
    CL-76 ニュー・ヘヴン
    USS New Haven
    1941年
    8月
    1943年3月
    CVL-24「ベロー・ウッド」として就役。
    CL-77 ハンチントン
    USS Huntington
    1941年
    11月
    1943年5月
    CVL-25「カウペンス」として就役。
    CL-78 デイトン
    USS Dayton
    1941年
    12月
    1943年6月
    CVL-26「モンテレー」として就役。
    CL-79 ウィルミントン
    USS Wilmington
    1942年
    3月
    1943年7月
    CVL-28「カボット」として就役。
    CL-80 ビロクシ
    USS Biloxi
    1941年
    7月
    1943年
    8月
    1946年
    8月
    CL-81 ヒューストン
    USS Houston
    1943年
    6月(進水)
    1943年
    12月
    1947年
    12月
    CL-82 プロビデンス
    USS Providence
    1943年
    7月
    1945年
    5月
    1973年
    8月
    1959年9月
    プロビデンス級ミサイル巡洋艦1番艦(CLG-6)として再就役。
    CL-83 マンチェスター
    USS Manchester
    1944年
    9月
    1946年
    10月
    1956年
    6月
    CL-84 バッファロー
    USS Buffalo
    1940年12月
    未起工のまま建造計画中止。
    CL-85 ファーゴ
    USS Fargo
    1943年8月
    CVL-27「ラングレー」として就役。
    CL-86 ヴィックスバーグ
    USS Vicksburg
    1942年
    10月
    1944年
    6月
    1947年
    6月
    CL-87 ダルース
    USS Duluth
    1942年
    11月
    1944年
    9月
    1949年
    6月
    CL-88 ニューアーク
    USS Newark
    ※予定
    1940年12月
    未着手のまま建造計画中止。
    CL-89 マイアミ
    USS Miami
    1941年
    8月
    1943年
    12月
    1947年
    6月
    CL-90 アストリア
    USS Astoria
    1941年
    9月
    1944年
    5月
    1949年
    7月
    CL-91 オクラホマシティ
    USS Oklahoma City
    1942年
    12月
    1944年
    12月
    1979年
    12月
    1960年9月
    ガルベストン級ミサイル巡洋艦3番艦(CLG-5)として再就役。
    CL-92 リトルロック
    USS Little Rock
    1943年
    3月
    1945年
    6月
    1976年
    5月
    1960年6月
    ガルベストン級ミサイル巡洋艦2番艦(CLG-4)として再就役。
    CL-93 ガルベストン
    USS Galveston
    1945年
    4月(進水)
    1958年
    5月
    1970年
    5月
    1958年5月
    ガルベストン級ミサイル巡洋艦1番艦(CLG-3)として再就役。
    CL-94 ヤングズタウン
    USS Youngstown
    1944年
    9月
    1945年8月に建造中止、スクラップ。
    CL-99 バッファロー
    USS Buffalo
    1942年
    8月
    1943年11月
    CVL-29「バターン」として就役。
    CL-100 ニューアーク
    USS Newark
    1942年
    10月
    1943年11月
    CVL-30「サン・ジャシント」として就役。
    CL-101 アムステルダム
    USS Amsterdam
    1943年
    3月
    1945年
    1月
    1947年
    6月
    CL-102 ポーツマス
    USS Portsmouth
    1943年
    6月
    1945年
    6月
    1949年
    6月
    CL-103 ウィルクスバリ
    USS Wilkes-Barre
    1942年
    12月
    1944年
    7月
    1947年
    10月
    CL-104 アトランタ
    USS Atlanta
    1943年
    1月
    1944年
    12月
    1970年
    4月
    CL-105 デイトン
    USS Dayton
    1943年
    3月
    1945年
    1月
    1949年
    3月

    運用史 編集

    本級のクリーブランド、コロンビア、モントピーリア、デンバーは水上戦闘部隊の手駒が切れかかっていた時期の1943年11月2日ブーゲンビル島攻略支援に第39任務部隊の主力として投入された。日本海軍は天候不良とアメリカ軍に察知されたため逆上陸作戦を中止していたが、第39任務部隊の撃滅を目指し、エンプレス・オーガスタ湾に突入してきた。クリーブランド級4隻は悪天候の中、レーダー射撃を有効に利用して日本連合襲撃部隊に打撃と混乱を与え、川内初風を撃沈した。体勢を整えた日本海軍はデンバーと駆逐艦2隻を損傷させたが、煙幕を張って回頭したアメリカ艦隊を撃破、撃沈したものだと誤認して退却した。重巡洋艦2隻、軽巡洋艦2隻、駆逐艦11隻の有力な艦隊に対してクリーブランド級4隻、駆逐艦8隻という劣勢状況下で1隻の沈没なく日本海軍を撃退したことから当級の優秀さが窺える。ソロモン近海の制海権はアメリカ海軍が堅持し、この海戦の約一週間後にはギルバート・マーシャル攻略が開始された。

    順次、竣工したクリーブランド級は空母機動部隊の護衛や上陸戦の火力支援(艦砲射撃)などに従事し、アメリカ海軍の反攻を影から支えた。

    戦後、1959年から1974年にかけて大半の艦はスクラップとして解体されたが、一部の艦は艦対空ミサイル・システムを搭載してミサイル巡洋艦に改装された。スプリングフィールド、トピカ、プロビデンスはテリア・システムを搭載してプロビデンス級ミサイル巡洋艦、オクラホマシティ、リトルロック、ガルベストンはタロス・システムを搭載してガルベストン級ミサイル巡洋艦に改装されて、1970年代まで現役に留まることとなった。また、ヴィンセンス、ウィルクスバリー、アトランタの3隻は実験艦、標的艦として使用、処分された。

    画像 編集

    脚注 編集

    注釈 編集

    1. ^ 軽空母への改装が9隻、ファーゴ級として再発注されたものが13隻。
    2. ^ The Worlds Warships 3rd Edition (1965年) では10,500l.t (10,668t)と表記。
    3. ^ The Worlds Warships 3rd Edition (1965年) では13,755l.t (13,976t) と表記。

    出典 編集

    1. ^ CL-89 USS Miami – Booklet of General Plans, 1946
      USS Cleveland (CL 55)
      CLEVELAND light cruisers (1942-1958)
      USS CLEVELAND (CL 55)
      The Worlds Warships 3rd Edition
    2. ^ a b c 青木栄一「アメリカ巡洋艦建造の歩み」『世界の艦船』第464号、海人社、1993年4月、129-137頁。 
    3. ^ 石橋孝夫「アメリカ巡洋艦の技術的特徴」『世界の艦船』第464号、海人社、1993年4月、138-147頁。 
    4. ^ 梅野和夫「アメリカ巡洋艦史」『世界の艦船』第464号、海人社、1993年4月、13-126頁。 

    外部リンク 編集