カタパルト英語: Aircraft catapult)は、艦艇(現代では主に航空母艦)などから航空機を射出するための機械である。また宇宙船やロボットなどを射出する装置もカタパルトと呼ばれる。射出機(しゃしゅつき)とも呼ばれる。また、地上から滑走路を使わずに離陸する場合に使われる、動力つきの発射台もカタパルトと呼ばれ、世界初の動力有人機ライトフライヤー号も、杭打ちやぐらカウンターウエイトの組み合わせで機体を撃ち出すカタパルトを用いて飛行に成功している。

カタパルトを使い2機同時に発進するF/A-18C

艦上での運用編集

水上戦闘艦での採用から航空母艦への導入編集

航空機の発達とともに、これを軍艦に搭載することが試みられるようになった。まず射弾観測、後には敵潜水艦への警戒のために気球が搭載されるようになったが、軽航空機である気球は構造的に脆弱で、また特に曳航時には揺れが激しく観測員が酔ってしまうという問題があった。また悪天候時には避雷針のように働いてしまい、落雷を受けて母艦にも被害を生じることがあった[1]

続いて、戦闘艦に滑走台を設けて陸上機を発進させることも試みられたが、この場合は着艦させることはできないため、作戦終了後は地上基地に帰還する必要があり、あくまで暫定的な措置にすぎなかった。このことから、水上機が搭載されるようになった。当初は発進・揚収ともに洋上で行っていたが、作戦行動中の艦を停止させて航空機の発着作業を行うことは望ましくなく、せめて発進だけでも航行中に行えるように、カタパルトの搭載が検討されるようになった[1]

1915年、アメリカ海軍は装甲巡洋艦ノースカロライナ」にカタパルトを設置したのを皮切りに、巡洋艦へのカタパルト装備を開始した。この当時は水上機自体の強度が弱く、外洋作戦で用いることが難しいと判断されて、1917年に一度は運用を中止したものの、まもなく航空機の発達を受けて再注目されるようになり、1922年より戦艦および巡洋艦へのカタパルト設置が再開された[1]

一方、航空母艦では、当初はまだ航空機が軽かったため、艦上機自身が飛行甲板上を滑走して得た力と、母艦が風上に突進することで生じる力とをあわせた合成風力だけでも、十分に発艦することができた。その後、1920年代中盤には航空機の重量が増して、航空母艦でも発艦を補助する手段が求められるようになっており、カタパルトが用いられるようになった[2]

イギリス海軍では2代目「アーク・ロイヤル」、アメリカ海軍では「レンジャー」より装備されてその実用性を立証した。一方、大日本帝国海軍でも艦発促進装置として開発を進め、空母の多くに後日装備余地を確保していたものの、装備化には至らなかった[3]

油圧式から蒸気式への移行編集

従来のカタパルトは油圧式が主流だったが、出力向上に限度があり、航空機の大型化に対応できるような強力なものは極めて大掛かりで構造が複雑なものとなった。この問題に対して、イギリスでは蒸気式カタパルトを開発して「アーク・ロイヤル」で装備化した。またその技術提供を受けたアメリカ海軍でもフォレスタル級より装備化し、既存の艦でも逐次に換装した[4]。また艦上機のジェット化が進むと、その排気による甲板への影響が無視できなくなったことから、カタパルトやスキージャンプなどのスタートポイント直後には、起倒式のスクリーン(ジェット・ブラスト・ディフレクター)が設置されるようになった[5]

なお、初期のカタパルトでは、シャトルと航空機の接続のためにブライドル・ワイヤーと呼ばれる鋼索を使用していた。これは機体の胴体下面などに設置されたフックと、カタパルトのシャトルとをワイヤーロープでつなぎ、機体を引っ張って射出する方式である。このワイヤーは射出と同時に機体から分離するため、当初は発艦ごとの使い捨てだったが、のちには回収して再利用することになった。そのために、カタパルト延長線上の飛行甲板前縁斜め下方に角のように突き出した構造(ホーン)が設けられ、ブライドル・レトリーバーと呼ばれた。しかし後には、艦上機の主脚にカタパルトのシャトルと直接接続できる機構を備えるようになり、ブライドル・ワイヤーが不要となったため、このような新世代機が増えるにつれて、ブライドル・レトリーバーも撤去されていった[6]

その後、21世紀に入ると、リニアモーターを用いた電磁式カタパルトが開発され、アメリカ海軍ではジェラルド・R・フォード級から装備化された[7]。これは出力的には従来の蒸気式カタパルトと同程度ながら、機体の特性にあわせて加速度を調整できることから機体への荷重を軽減でき、また小型軽量化および整備性の向上も実現された[8]

陸上での運用編集

ベトナム戦争時にアメリカ海兵隊が設置したチュライ飛行場 (Chu Lai Air Baseでは、作戦機をJATOにより離陸させてアレスティング・ギア(MOREST)により着陸させる運用を行っていたが、後に舗装滑走路が完成するまでの暫定措置としてカタパルトが設置され、陸上ながらCATOBAR運用が行われた[9]

また後に無人航空機が発達すると、これを発進させるためにカタパルトが用いられる場合も増えてきた。これらはトラックに搭載するなど可搬式としたものであり、また機体規模によっては、バンジーコード式のような簡易的なものも用いられる[10]

脚注編集

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出典編集

  1. ^ a b c 大塚 2012.
  2. ^ Green 2015, p. 57.
  3. ^ 福井 2008, pp. 258-259.
  4. ^ 福井 2008, pp. 144-150.
  5. ^ 福井 2008, 第八章 航空母艦の特殊装置.
  6. ^ 立花 1984.
  7. ^ 大塚 2014, pp. 170-174.
  8. ^ 岡部 2016.
  9. ^ 松崎 2012.
  10. ^ Novakovic et al. 2016.

参考文献編集

  • Green, Michael (2015). Aircraft Carriers of the United States Navy. Pen and Sword. ISBN 9781473854680 
  • Novakovic, Zoran; Vasic, Zoran; Ilic, Ivana; Medar, Nikola (2016). “Integration of tactical - medium range UAV and catapult launch system”. Scientific Technical Review 66 (4): 22-28. doi:10.5937/STR1604022N. 
  • 大塚, 好古「水上戦闘艦と航空機 : 搭載・運用の歩み (特集 航空機搭載水上戦闘艦)」『世界の艦船』第758号、海人社、2012年4月、 75-81頁、 NAID 40019207439
  • 大塚, 好古「アメリカ航空母艦史」『世界の艦船』第807号、海人社、2014年11月、 1-207頁、 NAID 40020238934
  • 岡部, いさく「米新型CVN「フォード」のすべて」『世界の艦船』第850号、海人社、2016年12月、 92-95頁、 NAID 40020996922
  • 立花, 正照「現代空母のメカニズムと運用法 (特集・現代の空母)」『世界の艦船』第331号、海人社、1984年1月、 84-93頁。
  • 福井, 静夫『世界空母物語』光人社〈福井静夫著作集〉、2008年。ISBN 978-4769813934
  • 松崎, 豊一「U.S.Skyhawk in Action」『ダグラス A-4スカイホーク』文林堂〈世界の傑作機No.150〉、2012年、86-101頁。ISBN 978-4893192073

関連項目編集

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