ジブチ保障基地
中国人民解放軍駐ジブチ保障基地(ちゅうごくじんみんかいほうぐんちゅうジブチほしょうきち、中国語: 中国人民解放军驻吉布提保障基地)は、 「アフリカの角」ジブチにある中国人民解放軍海軍の基地。
中国人民解放軍駐ジブチ保障基地[1] | |
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中国人民解放军驻吉布提保障基地 | |
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面積 | 0.5平方キロメートル (0.2 sq mi) |
施設情報 | |
所有者 | ![]() |
運営者 | ![]() |
一般公開 | なし |
歴史 | |
使用期間 | 2017年8月1日 | - 現在
駐屯情報 | |
現指揮官 | 梁阳 海军大校(海軍上級大佐) |
ジブチ保障基地 | |||||||
繁体字 | 中國人民解放軍駐吉布提保障基地 | ||||||
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簡体字 | 中国人民解放军驻吉布提保障基地 | ||||||
文字通りの意味 | Chinese People's Liberation Army Support Base in Djibouti | ||||||
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概要編集
中国人民解放軍初の海外基地であり、USドルにして5億9000万ドルの費用で建設された [2]。この軍事施設の完成によって、アフリカの角とインド洋における中華人民共和国の影響力を大幅に増大させると予想されている[3][4][5]。
ジブチは、スエズ運河への入り口にあたり、北西側に紅海、南西側にアデン湾と隔てるバブ・エル・マンデブ海峡に位置する戦略的重要な地域である。
中国人民解放軍海軍はこの基地を拠点にソマリア沖での海賊対策任務を行っており、真珠の首飾り戦略のキーストーンの一つとみられている。
この基地は、ジブチ市の西に位置し、中国が開発を行っているドラレ港にある。 なお、ジブチ市の南部には、ジブチ国際空港に並ぶようにして、アメリカ軍 キャンプ・レモニエ[8]、フランス空軍 ジブチ第188空軍基地[9]があり、日本も自衛隊の拠点を置いている[10][11]。
歴史編集
2015年頃、イスマイル・オマル・ゲレ政権のときに、中国がジブチで戦略的基盤を構築するための交渉を始めたとされる[12]。2016年1月に交渉が終了し、中国とジブチは海軍施設の建設について「合意した」と発表した[13][14]。
中国航海の日[15]の2017年7月11日、人民解放軍海軍は南海艦隊司令部のある中国広東省湛江市の湛江港で新基地開設記念式典を行い[16][17]、中国人民解放軍建軍記念日である2017年8月1日に正式に基地が開設された[18][19]。最初の実弾演習は2017年9月22日に実施[6][20]。
2018年5月頃、中国は基地に長さ330m以上の大桟橋の建設を開始した[21]。
任務編集
中国は、この基地は主にアデン湾で活動する中国軍の後方支援、およびアフリカでの平和維持活動と人道支援活動のために使用すると主張している[3][22]。また、公海での海賊行為を防止する中国海軍の行動を強化するためのものだとしている[3][5][23][24]。
基地の面積は0.5平方キロメートル(0.2平方マイル)で、約400人の人員が配置されている[25][26] 。基地には、管制塔を備えた400mの滑走路がある[27]。また、人民解放軍ジブチ病院もある[28]。
他のジブチ駐留外国軍との軋轢編集
アメリカの基地に近接した中国の基地の存在は、安全保障上対立する両国にとって政治的緊張を生み出した。
アメリカは2014年にロシアの基地を締め出し、キャンプ・レモニエを10億ドルかけて拡張工事を開始した。アメリカ政府当局者は、ジブチがそのちょうど2年後に中国の基地を承認したことで「神経質」になった[5]。ジブチのイスマイル・オマル・ゲレ大統領は、アメリカが中国の基地に「固執」し過ぎていると主張し、アメリカは中国の作戦を妨害していると「絶えず」不満を述べた。彼はまた、日本はアメリカよりもさらに中国に対して心配していると述べた。 また、中国を「絶えずスパイ」しなければ、西側諸国は中国と国内に「同居」しても問題ないと述べた[26]。
日本についても中国軍は、海上自衛隊が中国海軍の艦艇が基地に停泊している間にダイバーを派遣し、中国側に発見されて追い出されたと主張した[6][29][30]。
アメリカ合衆国国防総省は2018年、中国軍基地上空を飛行しているパイロットに対するレーザー攻撃の事例を報告する航空情報を発表した[31]。 これに対し中華人民共和国国防部は、アメリカ国防総省の発表を「事実ではない」と主張し、アメリカ側に「勝手な憶測を発表しないように」求めた[32]。
関連項目編集
- 他のジブチ駐留外国軍についてはジブチ国際空港に隣接する軍事施設も参照
- ジブチ国防軍 - 中国製装備も取り入れている。
脚注編集
- ^ 英訳を日本語訳すると、「ジブチの中国人民解放軍支援基地」となる。また、中国語から直訳した場合は大使館のように「在ジブチ中国人民解放軍支援拠点」ともとれる。
- ^ Zhou, Laura (2017年4月17日). “How a Chinese investment boom is changing the face of Djibouti”. South China Morning Post. オリジナルの2017年5月18日時点におけるアーカイブ。 . "レストランから車で約30分西に走ったところに、中国が資金援助した5億9000万米ドルの多目的港のほこりっぽい建設現場近くで密かに中国軍基地が形を整えつつある"
- ^ a b c Paice, Edward (2017年5月30日). “Djibouti Wins Jackpot – Renting Out Desert for Military Bases”. The Cipher Brief 2017年5月30日閲覧。
- ^ Huneke, Douglas (2017年4月19日). “The Ghost of Zheng He: China’s Naval Base in Djibouti”. University of California, Berkeley. オリジナルの2017年5月18日時点におけるアーカイブ。
- ^ a b c Jacobs, Andrew; Perlez, Jane (2017年2月25日). “U.S. Wary of Its New Neighbor in Djibouti: A Chinese Naval Base”. The New York Times 2017年5月17日閲覧。
- ^ a b c Chan, Minnie (2017年9月25日). “Live-fire show of force by troops from China’s first overseas military base”. South China Morning Post. オリジナルの2017年9月26日時点におけるアーカイブ。 2017年9月25日閲覧。
- ^ 「大校」は日本語で「大佐」(旧日本海軍では「だいさ」と読む)にあたる。自衛隊で言えば1等海佐。
- ^ “Remote U.S. base at core of secret operations”. Washington Post. (2012年10月26日) 2015年4月5日閲覧。
- ^ “Les forces françaises stationnées à Djibouti”. www.defense.gouv.fr. 2017年1月14日閲覧。
- ^ 「防衛省、ジブチの自衛隊拠点を来年度拡張 基地建設の中国に対抗」『Newsweek日本版』。2017年4月26日閲覧。
- ^ Pieper, Dietmar (2018年2月8日). “Geopolitical Laboratory: How Djibouti Became China's Gateway To Africa”. Spiegel Online
- ^ Agence France-Presse (2015年5月9日). “China 'negotiates military base' in Djibouti”. Al Jazeera. オリジナルの2017年5月18日時点におけるアーカイブ。 2017年5月17日閲覧. "2017年5月17日取得 。(AFP=アルジャジーラ)中国とジブチの戦略港への中国軍基地建設を交渉していると大統領は述べた。…「議論は進行中です」とイスマイル・オマル・ゲレ大統領。ジブチでのインタビューで、中国の存在は「歓迎」されると述べていた。"
- ^ Chappell, Bill (2016年1月21日). “China Reaches Deal To Build Military Outpost In Djibouti”. NPR. オリジナルの2017年5月18日時点におけるアーカイブ。 . "数ヶ月の間暗示されていた取引が終わり、中国はアフリカ初の海外軍事施設であると思われるものを、アフリカの角にある国ジブチに建設する計画を進めている。この前哨基地は、中国海軍の海賊対策任務を強化することを目的としているとされる。…彼は、中国とジブチが施設の建設に関して「合意に達した」と付け加えた。これは中国当局者が昨年秋に公に語った計画だ。"
- ^ “Foreign Ministry Spokesperson Hong Lei's Regular Press Conference on January 21, 2016”. 中華人民共和国外交部. (2016年1月21日). オリジナルの2017年5月18日時点におけるアーカイブ。 . "中国とジブチは互いに協議し、ジブチに兵站施設を建設することで合意に達しました。これにより、中国軍は護衛任務をよりよく遂行し、地域の平和と安定に新たな貢献をすることができます。"
- ^ 明代に鄭和が宝船艦隊とともにアフリカに向けて出港した日
- ^ Gao, Charlotte (July 12, 2017). “China Officially Sets Up Its First Overseas Base in Djibouti”. The Diplomat. オリジナルのJuly 12, 2017時点におけるアーカイブ。 . "(新華社)7月11日早朝、中国海軍は南部の広東省湛江港で記念式典を開催した。中国の人民解放軍海軍(PLAN)の司令官、沈金龍は「ジブチ基地開設を命じ、艦隊に軍旗を授与する」と訓示し、先遣隊に出発を命じた。その後、輸送艦は出港した。"
- ^ “China sets up base in Djibouti”. 新華社通信. (2017年7月11日). オリジナルの2017年7月12日時点におけるアーカイブ。 . "中国軍人を乗せた輸送艦は、火曜日に広東省湛江を出発し、ジブチに支援基地を設置した"
- ^ Blanchard, Ben (2017年8月1日). “China formally opens first overseas military base in Djibouti”. ロイター 2017年8月1日閲覧. "(新華社=ロイター)中国は火曜日にアフリカの角にあるジブチで、人民解放軍の90周年の記念日に最初の海外軍事基地を正式開設し、その旗揚式を行った。"
- ^ “China's first overseas military base opens in Djibouti”. Ecns.cn (2017年8月2日). 2020年2月29日閲覧。
- ^ Headley, Tyler (December 4, 2018). “China’s Djibouti Base: A One Year Update”. The Diplomat. オリジナルのDecember 6, 2018時点におけるアーカイブ。 . "2017年8月1日の基地開設から1か月半後に実弾演習が行われた。"
- ^ Binnie, Jeremy (2018年5月23日). “China building pier at Djibouti base”. Jane's Information Group
- ^ Li, Ruohan (2018年7月5日). “Investors feel more ‘assured, confident’ by presence of China’s base in Djibouti”. Global Times. オリジナルの2018年7月5日時点におけるアーカイブ。 . "中国は、基地は原則、軍事拠点としてではなく、人道的活動および平和維持活動の支援拠点として機能することを強調している。"
- ^ “PLA's first overseas base in Djibouti”. China Military Online. (2016年4月12日). オリジナルの2017年5月18日時点におけるアーカイブ。 2017年5月17日閲覧。
- ^ Huang, Kristen (2017年5月13日). “Chinese defence adviser says Djibouti naval facility is a much-needed ‘military base’”. South China Morning Post. オリジナルの2017年5月14日時点におけるアーカイブ。 . "中国は、世界で最も混雑する水路の密集する海域でロジスティックサポート(兵站)と呼ばれるものを提供するために、ジブチに海軍基地を建設している。中華人民共和国国防部は、昨年の声明で、施設は主に海賊対策、人道支援、平和維持活動のための補給目的のためであると述べた。"
- ^ Lin, Jeffrey; Singe, P.W. (July 13, 2017). “China just deployed to its first overseas base”. Popular Science . "およそ0.5平方キロメートルの基地には、すぐに約1000人の大隊規模の人員が配置されると報告されている。"
- ^ a b Soudan, François (2017年4月4日). “Personne d’autre que les Chinois n’offre un partenariat à long terme à Djibouti” (フランス語). Jeune Afrique
- ^ Bhat, Vinayak (2017年9月27日). “China’s mega fortress in Djibouti could be model for its bases in Pakistan”. Printline Media Pvt. Ltd
- ^ Liu, Wenping; Su, Zhihong. “Chinese naval doctors carry on “Bright Eyes Operation” in Djibouti”. China Military(中国人民解放軍)
- ^ Lo, Kinling (2017年8月2日). “Japanese frogmen approached Chinese warship at Djibouti, state media say”. South China Morning Post 2017年9月25日閲覧。
- ^ 西見由章 (2017年8月3日). “日中、ジブチで「軍事摩擦」 中国紙、海自艦を非難「潜水員が違法に接近、警告し追い払った」”. 産経ニュース (北京: 株式会社産業経済新聞社 / 株式会社産経デジタル) 2022年9月18日閲覧。
- ^ Zhen, Liu (2018年5月2日). “US warns airmen to beware of laser attacks near China’s military base in Djibouti”. South China Morning Post . "アメリカ軍は、ジブチの中国軍基地からわずか750メートル(2,400フィート)の空域で「高出力レーザーを含む」複数のイベントがあったことを、後にアメリカ連邦航空局のWebサイトを参照した航空関係者に通知した"
- ^ Nebehay, Stephanie. “U.S. warns on Russia's new space weapons”. Reuters