ノーカントリー
『ノーカントリー』(原題: No Country for Old Men)は、2007年製作のアメリカ映画。コーエン兄弟製作のスリラー映画。
ノーカントリー | |
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No Country for Old Men | |
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監督 |
ジョエル・コーエン イーサン・コーエン |
脚本 |
ジョエル・コーエン イーサン・コーエン |
原作 |
コーマック・マッカーシー 『血と暴力の国』 |
製作 |
スコット・ルーディン ジョエル・コーエン イーサン・コーエン |
製作総指揮 |
ロバート・グラフ マーク・ロイバル |
出演者 |
トミー・リー・ジョーンズ ハビエル・バルデム ジョシュ・ブローリン |
音楽 | カーター・バーウェル |
撮影 | ロジャー・ディーキンス |
編集 | ロデリック・ジェインズ |
製作会社 |
ミラマックス パラマウント・ヴァンテージ スコット・ルーディン・プロダクションズ マイク・ゾス・プロダクションズ |
配給 |
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公開 |
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上映時間 | 122分 |
製作国 |
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言語 | 英語 |
製作費 | $30,000,000 |
興行収入 | $171,627,166[1] |
概要編集
2005年に発表されたコーマック・マッカーシーの小説『血と暴力の国』(原題: No Country for Old Men、扶桑社ミステリー文庫)の映画化作品。原題はウィリアム・バトラー・イェイツの詩「Sailing to Byzantium」の第1句が引用されている。
第60回カンヌ国際映画祭、第32回トロント国際映画祭などで先行上映された後、2007年11月9日にアメリカの一部の映画館で限定公開された。同年11月21日に全米公開され、アメリカとカナダで約7400万ドル、それ以外の国で約8700万ドルの興行収入を挙げた[1]。コーエン兄弟制作映画としては、2003年に公開された『ディボース・ショウ』を上回るヒット作となった。
2007年度の第80回アカデミー賞で8部門にノミネートされ、作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞の計4冠を受賞。その他にも受賞多数(受賞した映画賞の一覧は下部に掲載)。日本でも2008年度のキネマ旬報外国語映画ベスト・テン第1位を獲得した。
ストーリー編集
舞台は1980年のアメリカ合衆国テキサス州西部。凶悪化する犯罪を憂える保安官エド・トム・ベル(トミー・リー・ジョーンズ)の語りを背景に、殺し屋アントン・シガー(ハビエル・バルデム)が保安官の拘束を脱して殺人・窃盗を行うシーンから物語が始まる。
一方そのころ、銃を持ってプロングホーンを撃ちに行ったベトナム帰還兵ルウェリン・モス(ジョシュ・ブローリン)は偶然に殺人現場に遭遇する。状況からすると麻薬取引がスムーズに進まず、途中で銃撃戦に発展したらしく見える。死体の転がる中を歩くモスは、麻薬を積んだトラックの運転席に重傷を負って座っているメキシコ人を発見する。モスは幾つか質問をするが、彼は「アグア」(スペイン語で「水」の意)と言うのみ。モスはその場を立ち去る。そこから少し離れた木陰にあった男の死体のそばで、モスは札束の詰まったブリーフケースを発見し、危険と思いながらもこれを自宅に持ち帰る[2]。
その夜、運転席で苦しんでいた男のことが気にかかったモスは水を持って現場に戻るが、戻って来たギャングたちに発見されてしまう。モスは現場から逃走、ギャングの追跡を一旦逃れたものの、現場に置き去りにした車から身元が割れ、モスは金の発見を請け負ったシガーに追われる身となる。
危険を感じたモスは妻カーラ・ジーン(ケリー・マクドナルド)をバスに乗せて実家に帰し、自身はモーテルに潜伏する。しかし金の入ったブリーフケースには発信器が隠されており、シガーはそれを頼りにモスの滞在するモーテルを発見する。シガーがメキシコ系の別の追っ手と交戦中、モスはからくも逃走する。
次に潜んだホテルの部屋で発信器の存在に気づいたモスは、これを逆手に取ってシガーを返り討ちにしようとするが、激しい銃撃戦の末どちらも重傷を負う。シガーが傷の治療に時間を取られているうち、モスは国境を越えてメキシコに到達、現地の病院に入院する。
入院中のモスに面会に来たのは、賞金稼ぎのカーソン・ウェルズ(ウディ・ハレルソン)だった。ウェルズは麻薬ディーラーから金の奪還を命じられており、金と引き換えにモスの命を守るという交換条件を出すが、モスはこれを拒絶。その後米国内のホテルに戻ってきたウェルズはシガーに殺害される。その時ウェルズの部屋に電話をかけてきたのはモスであった。シガーは電話を取り、二人の会話が初めて実現する。モスが自分の手で金を持ってくること、そうすればカーラに手出しはしないと約束するシガーだが、モスはこれも拒否し会話は終わる。
米国に戻ってきたモスはカーラに電話し、彼女の母親ともどもエルパソのモーテルで落ち合うよう打ち合わせる。モスに会うために保安官のベルもエルパソに向かうが、モーテルに到着する直前にモスは殺害され金は消えていた。
後日、ベルは元保安官だった叔父と会って引退の意思を話す。時代の流れに伴って凶悪化する犯罪がその原因だが、叔父はこの地域はもともと暴力的な土地であり、一個人の働きで状況が変化するようなものではないと説き、ベルをたしなめる。
母親の葬儀から帰ってきたカーラは家の中で待ち伏せていたシガーと対面する。シガーはモスと交わした会話に基づいて彼女を殺害しなければならないと説明するが、気を変えコイントスでカーラが勝てば命を助けると言い出す。表か裏か。彼女の答えは「賭けない」であった。その後、カーラの家を出たシガーは車で走り去ろうというところで交通事故に遭う。左腕を骨折し、頭部から流血しつつも、警察が到着する前に姿をくらまそうとする。
物語は、ベルが妻に昨夜観た夢の話をしている場面で幕となる。
キャスト編集
※括弧内は日本語吹き替え
- エド・トム・ベル保安官 - トミー・リー・ジョーンズ(菅生隆之)
- アントン・シガー - ハビエル・バルデム(谷昌樹)
- ルウェリン・モス - ジョシュ・ブローリン(谷口節)
- ベトナム帰還兵[3]。
- カーソン・ウェルズ - ウディ・ハレルソン(乃村健次)
- カーラ・ジーン・モス - ケリー・マクドナルド(小林沙苗)
- ウェンデル保安官助手 - ギャレット・ディラハント(加瀬康之)
- ロレッタ・ベル - テス・ハーパー(小幡あけみ)
- エリス - バリー・コービン(大塚周夫)
- ガソリンスタンド店主 - ジーン・ジョーンズ
- ウェルズの雇い主 - スティーヴン・ルート
スタッフ編集
- 監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
- 製作総指揮:ロバート・グラフ、マーク・ロイバル
- 製作:スコット・ルーディン、ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
- 脚本:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
- 音楽:カーター・バーウェル
- 撮影:ロジャー・ディーキンス
- 編集:ロデリック・ジェインズ
- 衣装デザイン:メアリー・ゾフレス
- 視覚効果:ルーマ・ピクチャーズ
- 製作会社:ミラマックス、パラマウント・ヴァンテージ、スコット・ルーディン・プロダクションズ、マイク・ゾス・プロダクションズ
- 日本配給:パラマウント ジャパン、ショウゲート
作品解説編集
コーエン兄弟は本作品を、自分たちが監督した映画の中で飛びぬけて暴力的な作品だと語っている[4]。
撮影編集
コーエン兄弟は映画の撮影を2006年5月23日に開始、主にテキサス州やニューメキシコ州を中心にロケーション撮影が行われた[5]。
反響・評価編集
ハビエル・バルデム演じる冷酷無比な殺人鬼が齎す(もたらす)圧倒的な暴力描写が話題になった。批評家たちからも絶賛を受け、コーエン兄弟の監督としての名声をより確固たるものにした。[要出典]
主な受賞編集
2007年編集
- ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞:作品賞、アンサンブルキャスト賞、脚色賞
- ワシントンDC映画批評家協会賞:作品賞、監督賞、助演男優賞、アンサンブル演技賞
- ニューヨーク映画批評家協会賞:作品賞、監督賞、助演男優賞、脚本賞
- ニューヨーク映画批評家オンライン賞:助演男優賞
- ボストン映画批評家協会賞:作品賞、助演男優賞
- シカゴ映画批評家協会賞:作品賞、監督賞、脚色賞、助演男優賞)
- サンフランシスコ映画批評家協会賞:監督賞
- サテライト賞:作品賞(ドラマ部門)、監督賞
- サウスイースタン映画批評家協会賞:作品賞、監督賞、脚色賞、助演男優賞
- ダラス・フォートワース映画批評家協会賞:作品賞、監督賞、助演男優賞
- オースティン映画批評家協会賞:助演男優賞、脚色賞
- サンディエゴ映画批評家協会賞:作品賞、助演男優賞、撮影賞、アンサンブル演技賞
- フェニックス映画批評家協会賞:作品賞、監督賞、助演男優賞、アンサンブル演技賞、撮影賞、脚色賞
- トロント映画批評家協会賞:作品賞、監督賞、助演男優賞、脚本賞
- ラスヴェガス映画批評家協会賞:作品賞、監督賞、助演男優賞
- フロリダ映画批評家協会賞:作品賞、監督賞、助演男優賞、撮影賞
- ユタ映画批評家協会賞:作品賞、監督賞、助演男優賞、脚本賞
- セントルイス映画批評家協会賞:作品賞、監督賞
- デトロイト映画批評家協会賞:作品賞、監督賞、助演男優賞
- オクラホマ映画批評家協会賞:作品賞、監督賞、助演男優賞
2008年編集
- ヒューストン映画批評家協会賞:作品賞、助演男優賞、名誉テキサス人賞
- カンザスシティ映画批評家協会賞:助演男優賞、脚色賞
- 放送映画批評家協会賞:作品賞、監督賞、助演男優賞
- オンライン映画批評家協会賞:作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞、撮影賞、編集賞
- USCスクリプター賞:脚色賞
- ゴールデングローブ賞:助演男優賞、脚本賞
- セントラルオハイオ映画批評家賞:作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞
- アイオワ映画批評家協会賞:作品賞、監督賞、助演男優賞
- 全米監督協会賞:監督賞
- ノーステキサス映画批評家賞:監督賞、助演男優賞、撮影賞
- 全米映画俳優組合賞:助演男優賞、アンサンブル演技賞
- アメリカ製作者組合賞:長編映画賞
- ロンドン映画批評家協会賞:作品賞、英国助演女優賞
- オンライン映画&テレビジョン協会賞:助演男優賞、アンサンブル演技賞、脚色賞、編集賞
- アメリカ脚本家組合賞:脚色賞
- 英国アカデミー賞:監督賞、助演男優賞、撮影賞
- アカデミー賞:作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞
2009年編集
- 映画館大賞「映画館スタッフが選ぶ、2008年に最もスクリーンで輝いた映画」第9位
2016年編集
脚注編集
- ^ a b “No Country for Old Men (2007)” (英語). Box Office Mojo. 2011年2月25日閲覧。
- ^ ノーカントリー (2007) - シネマトゥデイ
- ^ “コーエン兄弟の新作が3冠!ナショナル・ボード・オブ・レビュー発表”. 映画.com (株式会社エイガ・ドット・コム). (2007年12月7日) 2020年9月4日閲覧。
- ^ The Making of No Country for Old Men(『ノーカントリー』製作の模様を扱ったドキュメンタリー、ミラマックス版DVD収録)
- ^ コーエン兄弟のファンサイトyouknow-forkids.comによる映画の紹介[1](参照:2009年4月1日)
- ^ “The 21st Century’s 100 greatest films”. BBC. (2016年8月23日) 2019年1月16日閲覧。
外部リンク編集
- No Country For Old Men - Official Site - Miramax(英語)
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- ノーカントリー - allcinema
- ノーカントリー - KINENOTE
- No Country for Old Men - オールムービー(英語)
- No Country for Old Men - インターネット・ムービー・データベース(英語)
- ノーカントリー インタビュー:ジョエル&イーサン・コーエン監督、メインキャスト インタビュー - 映画com.
- 直撃インタビュー!アカデミー賞有力『ノーカントリー』のハビエルは「おかっぱのヅラに涙目だった!」 - シネマトゥデイ