メルセデス・F1 W08 EQ Power+

メルセデス・F1 W08 EQ Power+ (Mercedes F1 W08 EQ Power+) は、メルセデス2017年のF1世界選手権参戦用に開発したフォーミュラ1カーである。

メルセデス・F1 W08 EQ Power+
Lewis Hamilton 2017 Malaysia FP2.jpg
ルイス・ハミルトンがドライブするF1 W08 EQ Power+
2017年マレーシアグランプリ
カテゴリー F1
コンストラクター メルセデス
デザイナー アルド・コスタ
(エンジニアリングディレクター)
ジェフリー・ウィリス
(テクノロジーディレクター)
ジェイムズ・アリソン
(テクニカルディレクター)
先代 メルセデス・F1 W07 Hybrid
後継 メルセデス・F1 W09 EQ Power+
主要諸元
エンジン メルセデス M08 EQ Power+
1.6L V6ターボ
タイヤ ピレリ
主要成績
チーム メルセデスAMGペトロナス・モータースポーツ
ドライバー イギリスの旗 ルイス・ハミルトン
フィンランドの旗 バルテリ・ボッタス
出走時期 2017年
コンストラクターズタイトル 1 (2017年)
ドライバーズタイトル 1 (2017年)
通算獲得ポイント 668
初戦 2017年オーストラリアGP
初勝利 2017年中国GP
最終戦 2017年アブダビGP
出走優勝表彰台ポールFラップ
20(40台)1226159
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この年からシャシーおよびパワーユニットの名称に、将来のすべてのメルセデスAMGハイブリッドモデルの技術ラベルとなる「EQ Power+」が付けられることになった[1]

概要編集

 
バルセロナで行われたプレシーズンテストでのF1 W08 EQ Power+(ドライバーはバルテリ・ボッタス)。この年、各チームで採用された「Tウイング」が装着されている。

2017年2月22日にティザー画像が公開され[2]、翌23日シルバーストン・サーキットでシェイクダウンを行ったのち正式公開された[3]

ホイールベースは3960mmと全10チームで最も長く[4]、突起物のないフロントノーズが採用され、シャークフィンが非常に短いのが特徴となっているが[3]、シャークフィンについてはその後のプレシーズンテストで他チームが採用している長めのものも使用し、その後ろで独立した水平翼(Tウイング)もテストしている[5]。この「Tウイング」は他のチームにも採用された[6]。さらにそのTウイングを二重にした「ダブルTウイング」もテストされた[6]。また、シャークフィンをチムニーダクト化したものもテストされている[7]

フロントサスペンションの構成が独特で、ホイール側はアップライト本体から上に飛び出したパーツにアッパーアームがジョイントする。空力的にロワアームのマウント位置を高くして、上下アームの間隔を維持するため、アッパーアームの位置も高くなった[8]。この設計は同年のトロ・ロッソ STR12でも採用されているが、「完全なる偶然」だという[9]

レギュレーション変更により解禁されたバージボードエリアは複雑な多重構造になっており、シーズン中にマイナーチェンジが続けられた。第5戦スペインGPでは大掛かりな空力アップデートを実施し、従来よりも細いフロントノーズの下にひれのような大型のターニングベインが装着された[10]

2014年にFRIC(前後相関)サスペンションが禁止されてから、メルセデスは合法的な油圧制御サスペンションを開発し、パディ・ロウいわく「複雑かつ広範囲にわたる非線形的な変位[11]」で細やかに車体姿勢を調整していた。しかし、2016年末にフェラーリがこの「トリックサスペンション」の使用について国際自動車連盟 (FIA) に質問し、FIAは完全な合法ではないと判断して、シーズン開幕前にメルセデスとレッドブルにデザインの変更を命じた[12]

他を圧倒し続けていた2014年から2016年と比べ、2017年はコースやタイヤに合わせたマシンセッティングの難しさがあり[13][14]モナコシンガポールといった低速コースを苦手とした。チームはシーズン前半戦は解決策が見つけられず、W08を気まぐれな「ディーヴァ(歌姫)」と形容した。苦戦の原因として指摘されたのは、マシンの超過重量[15]と、ロングホイールベース設計であった。メルセデスは車体のレーキ角を水平に近いぐらいに緩やかにして車高が一定になるようデザインしており、これによって車高の変化が小さい中速及び高速コースでは安定したダウンフォースが得られるが、低速コースでは車高の変化が大きいためパフォーマンスを発揮しにくいのでは、というものである[4]。しかし、チーム首脳はロングホイールベース原因説を否定している[16]

2017年シーズン編集

 
カナダGPでワン・ツー・フィニッシュ
 
イギリスGPでシーズン3度目のグランドスラムを達成したルイス・ハミルトン

ドライバーは同チーム5年目を迎えるルイス・ハミルトンと、引退したニコ・ロズベルグの後任となったバルテリ・ボッタス

開幕戦オーストラリアGPではハミルトンがポールポジションを取りながらも、レースで逆転を許してフェラーリセバスチャン・ベッテルに敗れた。第2戦中国GPでハミルトンがグランドスラム[17]を飾ってシーズン初優勝を果たした。バーレーンGPでボッタスが初のポールポジションを獲得し、フロントローを独占したにも関わらずベッテルに優勝を奪われた。続く第4戦ロシアGPでは逆にフェラーリにフロントローを独占されたが、好スタートを切ったボッタスが初優勝を飾った。

第7戦カナダGPでハミルトンがシーズン2度目のグランドスラムを達成し、今シーズン初のワン・ツー・フィニッシュを飾ってからはフェラーリよりも優位に立てるようになり、オーストリアGPではボッタスが初のポール・トゥ・ウィンで2勝目をあげ、イギリスGPではハミルトンが再びグランドスラムで勝ち、ワン・ツー・フィニッシュも達成した。ハミルトンはベルギーGPイタリアGPでもポール・トゥ・ウィンを記録(イタリアGPではシーズン3回目のワン・ツー・フィニッシュも達成)し、ドライバーズランキングでもベッテルを抜いてトップに立った。シンガポールGPの予選ではフェラーリやレッドブルにも遅れを取ったが、決勝では序盤のマックス・フェルスタッペンとフェラーリ勢のアクシデントに助けられハミルトンが3連勝となった。日本GPでハミルトンがポール・トゥ・ウィンを飾り、シンガポールGP以降アクシデントやマシントラブルにより失速したフェラーリ勢に決定的な差を付け、アメリカGPもハミルトンがポール・トゥ・ウィンで勝ち、4年連続のコンストラクターズチャンピオンを獲得、次のメキシコGPでハミルトンの2年ぶり4度目のドライバーズチャンピオンも決定した。ブラジルGPはボッタスがポールポジションを獲得するも2位、ハミルトンは予選でクラッシュを喫しピットレーンスタートとなったが、驚異的な追い上げで4位となった。最終戦アブダビGPはボッタスがハミルトンを抑えポール・トゥ・ウィンを飾った。

速さのみならず、ハミルトンが全戦入賞、ボッタスもリタイア1回のみと非常に高い信頼性も兼ね備えていてこれが、終盤戦にトラブルが続出しレースを落とすことの多かったフェラーリとの明暗を分けた。

スペック編集

[18]

シャシー編集

トランスミッション編集

サイズ編集

  • 全長 5,700mm
  • 全幅 2,000mm
  • 全高 950mm
  • 重量 728kg(冷却水、潤滑油、ドライバーを含む)

パワーユニット構成編集

  • 型式 メルセデス M08 EQ Power+
  • 重量 145kg
  • パワーユニット構成 内燃機関/エンジン(ICE)、モーター・ジェネレーター・ユニット・キネティック(MGU-K)、モーター・ジェネレーター・ユニット・ヒート(MGU-H)、ターボチャージャー(TC)、エナジーストア(ES)、電子制御(CE)

パワーユニット編集

  • ドライバーあたりの年間使用可能数 4基
  • 排気量 1,600cc
  • 気筒数・角度 V型6気筒・90度
  • バルブ数 24
  • 最高回転数 15,000rpm(レギュレーションで規定)
  • 最大燃料流量 100kg/h(10,500rpm以上)
  • 燃料噴射方式 高圧縮直噴(1つの噴射機/シリンダーあたり最大500バール
  • 過給機 同軸単段コンプレッサー、排気タービン
  • エキゾーストタービン最大回転数 125,000rpm
  • 出力 1000bhp

ERS(エネルギー回生装置)編集

  • 構成 モーター・ジェネレーター・ユニットによるハイブリッド・エネルギー回生
  • エナジーストア リチウムイオンバッテリー(規定重量の20kg)
  • 最大エネルギー蓄積量 4MJ(1周あたり)
  • MGU-K
    • 最高回転数 50,000rpm
    • 最大出力 120kW(161bhp
    • エネルギー回収 2MJ(1周あたり)
    • エネルギー放出 4MJ(1周あたり)
  • MGU-H
    • 回転数 125,000rpm
    • 最大出力 無制限
    • 最大エネルギー回生 無制限(1周あたり)
    • 最大エネルギー放出量 無制限(1周あたり)
  • 燃料 ペトロナス Primax
  • 潤滑油 ペトロナス Syntium

記録編集

No. ドライバー 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 ポイント ランキング
AUS
 
CHN
 
BHR
 
RUS
 
ESP
 
MON
 
CAN
 
AZE
 
AUT
 
GBR
 
HUN
 
BEL
 
ITA
 
SIN
 
MAL
 
JPN
 
USA
 
MEX
 
BRA
 
ABU
 
2017 44   ハミルトン 2 1 2 4 1 7 1 5 4 1 4 1 1 1 2 1 1 9 4 2 668 1位
77   ボッタス 3 6 3 1 Ret 4 2 2 1 2 3 5 2 3 5 4 5 2 2 1

関連項目編集

  • グランツーリスモSPORT - 2018年7月のアップデートで本車が追加された。実際のカラーリングを纏った通常仕様と、単色塗りのカラーバリエーション仕様(全10色)が収録されている。なお2019年10月現在、収録車種の中で唯一リバリーのカスタマイズができない車種となっている。キャンペーンモードの「GTリーグ」では本車限定のワンメイクレース「メルセデス AMG グランプリ」も収録されている。

脚注編集

[脚注の使い方]
  1. ^ ハミルトンとボッタスがW08を公式にお披露目”. espnf1.com (2017年2月23日). 2018年11月8日閲覧。
  2. ^ “メルセデスが新車のティーザー画像を公開”. espnf1.com. (2017年2月22日). http://ja.espnf1.com/mercedes/motorsport/story/232780.html 2018年11月8日閲覧。 
  3. ^ a b メルセデスF1、2017年型ニューマシン『W08』を発表”. AUTOSPORTweb (2017年2月22日). 2017年2月28日閲覧。
  4. ^ a b F1 Topic:低速コースを苦手とするメルセデス。彼らの本当の弱点とは”. AUTOSPORTweb (2017年9月28日). 2017年10月1日閲覧。
  5. ^ メルセデスW08:キープコンセプトと、新たな試みが融合した大本命【2017F1マシン分析】”. AUTOSPORTweb (2017年2月28日). 2017年2月28日閲覧。
  6. ^ a b メルセデス、“ダブルTウィング”をテスト”. F1-Gate.com (2017年2月28日). 2017年2月28日閲覧。
  7. ^ メルセデス W08:シャークフィンをチムニーダクト化”. F1-Gate.com (2017年3月2日). 2017年3月24日閲覧。
  8. ^ 【F1新車分析】メルセデスW08:タイトル防衛に抜かりなし、作り込んだディテールは必見”. AUTOSPORT Web (2017年3月14日). 2019年10月9日閲覧。
  9. ^ トロロッソF1、『W08』との類似に落胆。サインツJr.は「自信につながる」と前向き”. AUTOSPORT web (2017年2月27日). 2019年10月8日閲覧。
  10. ^ 【F1】メルセデス、スペインGPに大規模なアップデートを投入”. motorsport.com日本版 (2017年5月12日). 2019年10月8日閲覧。
  11. ^ 【解説】F1サスペンション論争を読み解く:フェラーリが封じ込めたい、メルセデス/レッドブルのシステム”. AUTOSPORT Web (2017年2月14日). 2019年10月8日閲覧。
  12. ^ F1トリックサスペンション問題:メルセデスとレッドブル、完全合法でないとの通達を受けデザインを変更”. AUTOSPORTweb (2017年3月23日). 2017年3月24日閲覧。
  13. ^ モナコで不調のメルセデス「W08はまるでプリマドンナ」”. motorsports.com (2017年5月28日). 2017年7月17日閲覧。
  14. ^ ハミルトン、今季のメルセデスF1マシンの難しさを認める。「暴れ馬のようだが嫌いではない」”. AUTOSPORTweb (2017年5月25日). 2017年7月17日閲覧。
  15. ^ F1スペインGPで勢力図は完全リセット、各チームが大規模アップグレードを投入”. AUTOSPORTweb (2017年5月9日). 2017年5月9日閲覧。
  16. ^ メルセデスF1ボス、2017年型W08の“ディーバ気質”を語る。「原因は空力面にある」”. AUTOSPORT Web (2017年11月17日). 2019年10月8日閲覧。
  17. ^ 優勝、ポールポジション、ファステストラップ、全周回トップ
  18. ^ F1 W08 EQ Power+”. mercedesamgf1.com. 2018年11月8日閲覧。