ユニバーサル・メディア・ディスク
ユニバーサル・メディア・ディスク(Universal Media Disc、UMD) は、ソニーが開発した光ディスクの規格。事実上、携帯型ゲーム機のPlayStation Portable(PSP)専用メディアである。
ユニバーサル・メディア・ディスク UMD | |
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![]() ![]() ユニバーサル・メディア・ディスク | |
メディアの種類 | 光ディスク |
記録容量 | 1.8GB(片面2層) |
コーデック |
映像 MPEG-4 AVC/H.264 音声 ATRAC3plus Linear PCM |
読み込み速度 | 10Mbps |
読み取り方法 | 660nm赤色レーザー |
策定 | ソニー |
主な用途 | PSP用ゲーム、映像、音楽ソフト |
ディスクの直径 | 60mm(2.4inch) |
大きさ | 65×64×4.2 mm |
上位規格 | なし |
下位規格 | なし |
関連規格 | DVD |
DVD-ROMとほぼ同等の短期間でリピート生産出来て、初回1,000枚からリピートは100枚からの少ロットでの生産が可能である。生産コストはDVD並みで、1枚あたりおよそ250円とされている。
仕様 編集
ソニーが1992年に販売開始した音楽記録媒体のミニディスク(MD)と略称が似ているが、MDの上位メディアでは無く互換性は無い。またMDとは形状も異なる。
2005年6月21日にスイスのジュネーブを本拠地として設置されている国際標準化機関・Ecma InternationalでUMDの物理フォーマットがECMA-365として承認された[1][2]。
構造 編集
直径60mm(2.4インチ)のポリカーボネート製でCLV方式の光ディスクがカートリッジに収められ、2層で約1.8GBの容量を持つ。ディスク自体の厚さは0.6mm(CD・DVDなどの半分)で、中央の0.3mmの部分に記録層がある。
ディスクがカートリッジに収められているMDやMOが備えている保護シャッターは無く、記録面がむき出しになっている為、指紋や埃などで傷が付着しないよう取り扱う必要がある。
記録方式 編集
ディスクは片面2層を使って波長660 nmの赤色半導体レーザーで読み取る。記録方式には、PSPのゲームを記録する「PSP Game」、ATRAC3plus形式の音声を記録する「UMD Audio」、MPEG-4 AVC形式の動画を記録する「UMD Video」が存在する。
UMD Videoの内、音楽作品を収録するものは「UMD MUSIC」(ユーエムディー・ミュージック)、その他の映像作品を収録するものを「UMD VIDEO」(ユーエムディー・ビデオ)と呼ぶ。つまりUMD Videoという規格の中に「UMD MUSIC」と「UMD VIDEO」のサブジャンルが存在する。
- UMD VIDEO
- UMDに映像コンテンツを収録したディスクで、DVDと同様チャプター、メニュー画面があり音声、字幕も複数記録できる。
- この規格を利用したゲームにUMDPGもあるが、大半がPC用アダルトゲームの移植で占められている。
- UMD MUSIC
- UMDに音楽ビデオコンテンツを収録したディスクで音声はATRAC3plus等があり、UMD MUSICによってはコーデック、ビットレートを選択して再生することが出来る。
転送レートは10Mbps。
保護機能 編集
ディスクに固有IDを持たせる128ビットAESによるコンテンツ著作権保護などのセキュリティ技術が導入されている。
またUMD VideoにはDVD-Videoと類似したリージョンコードが設けられており、本体と異なるリージョンのタイトルは再生出来ない。なおゲームソフトにもリージョンコードが設定されているが、特別なプロテクトは施されていない為にコードに関係無く外国版のゲームを起動・プレイが可能である。
コード | 地域 |
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0 | 制限なし |
1 | 米国、カナダ、米国領域、ラテンアメリカ |
2 | EU、日本、近東、南アフリカ、エジプト、グリーンランド、仏国領域 |
3 | 韓国、台湾、香港、フィリピン、インドネシア、マレーシア、シンガポール |
4 | オーストラリア、ニュージーランド、太平洋諸島 |
5 | ロシア、東ヨーロッパ、パキスタン、インド、アフリカ、北朝鮮、モンゴル |
6 | 中国本土 |
現状 編集
ゲームソフトとしては2016年まで各ゲーム会社より販売された。
ゲームだけでなくUMD Videoによる映画・アニメなどの映像ソフトも一部の家電量販店で販売された。しかし、
- 再生出来る機器がPSP(PSP-1000/2000/3000型)しか無く、2009年11月に発売された派生機のPlayStation Portable go、2011年12月に発売されたPSPの次世代型携帯ゲーム機であるPlayStation VitaにはUMDドライブは搭載されなかった。
- 動画を再生出来るデジタルメディアプレーヤーを搭載するポータブル機器の低価格化およびSDメモリーカード等のフラッシュメモリの大容量・低価格化によって、2012年時点で8GBのSDHCメモリーカードが1,000円程度にまで値下がりし、UMDは容量とコストにおいて優位性が無くなった。
- アメリカの大手映画会社系列ではソニーグループ傘下のソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント作品が積極的にUMDのビデオ作品を発売した程度であり、それ以外の映画会社はUMDの発売は消極的でBlu-ray DiscやDVDの発売を主力としていた。
等の理由により、UMDによる映像ソフト市場は既に終息している。2010年12月発売の『バイオハザードIV アフターライフ』がUMD Videoにおける最後の作品だった。
ただし、『ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン』はスクウェア・エニックスの完全自社製作作品ということで映像作品ながらコンピューターゲーム専門店にも流通したり、ゲーム雑誌にも積極的に記事を掲載したりしたことでUMD Videoの作品では一番の売り上げを記録し、ゲーム以外で唯一本作のUMD版が「アルティメットヒッツ」(PSP専用タイトルとしての扱い)のラインナップに入っていた。
また記録型UMDに関してはハリウッドなどの強い要請もあり、著作権保護の観点等を理由に規格化はされなかった。リーダ・ライタもソフト開発側を含め提供はされていない。
脚注 編集
- ^ 『UMD™「ユニバーサル・メディア・ディスク」国際標準化機関Ecma Internationalで標準規格承認』(プレスリリース)ソニーコンピュータエンタテインメント、2005年6月21日 。2022年2月3日閲覧。
- ^ “Data interchange on 60 mm read-only ODC - Capacity: 1,8 Gbytes (UMD™)”. Ecma International (2005年6月). 2022年2月3日閲覧。
関連項目 編集
- ソニーDADCジャパン(現:ソニー・ミュージックソリューションズ) - かつて日本における生産拠点だった。
- データインストール - UMDの読み込みの遅さを改善するために導入された技術(カプコンは「メディアインストール」と呼称。)。