ルカルカン[1]学名Llukalkan)は、アルゼンチン上部白亜系から産出したアベリサウルス科に属する獣脚類恐竜。2021年時点でタイプ種のルカルカン・アリオクラニアヌスLlukalkan aliocranianus)のみが知られている。近縁属種には見られない窪みが中耳に確認されており、低い周波数の音波を聴き取ることができたと推測されている。

ルカルカン
生息年代: 中生代後期白亜紀カンパニアン期, 86–83 Ma
地質時代
後期白亜紀カンパニアン
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 竜盤目 Saurischia
亜目 : 獣脚亜目 Theropoda
下目 : ケラトサウルス下目 Ceratosauria
上科 : アベリサウルス上科 Abelisauroidea
: アベリサウルス科 Abelisauridae
: ルカルカン属 Llukalkan
学名
Llukalkan Gianechini et al., 2021
  • Llukalkan aliocranianus
    Gianechini et al., 2021

発見と命名 編集

ルカルカンのホロタイプ標本は、アルゼンチンのパタゴニア地方のリオネグロ州ネウケン州に分布する、約8000万年前にあたる上部白亜系のバホデラカルパ累層英語版から発見された。発見地は同じくアベリサウルス科に属するヴィアヴェナトル英語版が2016年に発見された場所からわずか700メートルの地点であった。記載論文は2021年3月に『Journal of Vertebrate Paleontology』誌に記載された[2]

属名は現地の言語であるマプチェ語で「恐怖を与える者」を意味し、種小名は後述する頭蓋骨の形状に基づいてラテン語で「珍しい頭蓋骨」を意味する[1]

特徴 編集

ルカルカンはヴィアヴェナトルに酷似するが、体躯がより小型である点や、静脈の通る頭骨の孔が大きく、また上後頭骨のクレストから広く離れている点などで異なる。また、中耳には後方に含気性の小さな孔があり、これは他のアベリサウルス科には見られない本属の固有派生形質である[3]。この窪みは音の伝わる空間の拡張に寄与し、低い周波数の音を増幅する働きがあったと推測されている[1]。このことから、他のアベリサウルス科に比べてワニのような鋭い聴覚を有し[3]、捕食動物として優れていたのではないかと考えられている[2]

分類 編集

Gianechini et al. ではルカルカンはFurileusauria (enという系統群内で派生的アベリサウルス科に位置付けられている。以下にクラドグラムを示す[4]

アベリサウルス科

クリプトプス

ルゴプス

マジュンガサウルス亜科英語版

ブラキロストラ英語版

ゼノタルソサウルス

ダハロケリー英語版

ラヒオリサウルス英語版

イロケレシア

エクリキシナトサウルス英語版

スコルピオヴェナトル

Furileusauria

ピクノネモサウルス英語版

クイルメサウルス

ヴィアヴェナトル英語版

ルカルカン

カルノタウルス

アベリサウルス亜科英語版

アウカサウルス

アベリサウルス

出典 編集

  1. ^ a b c 石倉徹也「新種の肉食恐竜は「恐怖を与える者」 南米で化石発見」『朝日新聞』、2021年4月11日。2021年5月2日閲覧。
  2. ^ a b Jeremy Blum「新種の恐竜がアルゼンチンで発見される。その名も「恐怖をもたらすもの」」『ハフポスト』ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン株式会社、2021年4月2日。2021年5月2日閲覧。
  3. ^ a b Taylor & Francis Group (2021年3月30日). “The 'one who causes fear' - new meat-eating predator discovered”. ScienceDaily. https://www.sciencedaily.com/releases/2021/03/210330210956.htm 2021年3月31日閲覧。 
  4. ^ Gianechini, Federico A.; Méndez, Ariel H.; Filippi, Leonardo S.; Paulina-Carabajal, Ariana; Juárez-Valieri, Rubén D.; Garrido, Alberto C. (2021). “A New Furileusaurian Abelisaurid from La Invernada (Upper Cretaceous, Santonian, Bajo De La Carpa Formation), Northern Patagonia, Argentina.”. Journal of Vertebrate Paleontology: e1877151. doi:10.1080/02724634.2020.1877151.