ルパン三世 the Last Job
『ルパン三世 the Last Job』(ルパンさんせい ザ・ラスト・ジョブ)は、モンキー・パンチ原作のアニメ『ルパン三世』のテレビスペシャルシリーズ第21作。2010年2月12日に日本テレビ系の『金曜特別ロードショー』にて放送された。視聴率は17.6%。
概要編集
ほぼ同時期に稼動を開始したパチンコ機『CRルパン三世 徳川の秘宝を追え』や季刊雑誌『ルパン三世officialマガジン』で掲載された漫画と、本作の登場キャラクターがリンクするという、シリーズ初の試みがなされた作品である。
本作では次元はガラケーを使ってテレビ番組を視聴していたりなど、本作はルパンらの携帯電話の使用頻度が比較的高い。 また、本作より五ェ門はルパンや次元に先行して携帯電話の機種変更をしており、スマートフォン(iPhone 3GSに酷似)を使用している。不二子から電話(テレビ電話)がかかってきた際、次元は「お前、携帯変えたのか」と発言していた。スマホの描写も写実的で、テレビ電話で五ェ門が本体を縦から横にした際に画面も横に向く、という描写がなされた。
オープニングではテレビスペシャルのテーマ曲として最も多く使用されていた「ルパン三世のテーマ'89」が、クロスオーバー作品『ルパン三世VS名探偵コナン』を除けば『EPISODE:0 ファーストコンタクト』以来8年ぶりに使用された。
テレビスペシャルとしては、石川五ェ門役を井上真樹夫、峰不二子役を増山江威子、銭形警部役を納谷悟朗[1]が務めた最後の作品となった。また、テレビ第2シリーズ以来33年にわたってシリーズの録音監督を務めてきた加藤敏も、本作を最後に降板した。
あらすじ編集
ルパン、次元、五エ門の3人はドイツのプローラに潜入し、かつて日本がナチス・ドイツと同盟を結んでいた当時に友好の証としてアドルフ・ヒトラーへ提供された「地獄如来像」を盗み出す計画を実行。大規模な警備をものともせずに像を盗み出し、銭形の追跡から逃れようとしていた途中、像を狙うモルガーナの戦闘ヘリに襲撃される。ヘリのミサイル攻撃からルパンは辛くも逃げ切るが、銭形は爆炎に巻き込まれてしまい、煙の中から彼のトレードマークの帽子だけが転がり出てきた。
後日、銭形の葬儀がしめやかに行われた。ルパンたちは自分たちなりの方法で銭形の冥福を祈り、再び動き出す。地獄如来像は、本来のターゲットに至るまでの鍵の一つでしかなかったのである。一方、インターポールの女性捜査官でありながら風魔忍者の血を引く神楽坂飛鳥も、自らの目的を達成するために動き出す。
モルガーナは、フリードリッヒ博物館にある「北条影虎の宝刀」を狙っていた。ルパンと飛鳥の攻撃を退けたモルガーナは宝刀を奪い、飛鳥と同じく風魔の血を引く部下の女忍者・摩耶の力で六角の石を手に入れた。しかし、飛鳥はモルガーナの研究所に犬の虎太郎と共に忍び込み、六角の石を盗み逃走する。モルガーナの部下たちの襲撃を受けるが、ルパンたちの介入もあり、その場を振り切る。
飛鳥は変装して逃避行をしていたが、モルガーナの部下・ラブレスに見つかり襲われる。そこにバイクに乗って現れたルパンに飛び乗り、更に大型バスを奪ったラブレスとの壮絶なカーチェイスを繰り広げる。追跡を振り切ったのもつかの間、「六角の石」はモルガーナとグルになっていた不二子に奪われてしまう。この時から、ルパンと飛鳥は共に行動することになる。
ルパンと飛鳥は再びモルガーナの研究所に変装して忍び込み、「六角の石」を盗もうとするがバレてしまい、モルガーナは石を持って逃走。しかし、石に隠された本来のターゲットのありかを示すデータをコピーすることには成功する。
そのデータを調べた結果、本来のターゲットは古代ローマのヴェスヴィオ火山の付近にあることが判明。そこでルパンと飛鳥は隠された謎を解き、本来のターゲットである「風神」を見つける。風神が置いてある円盤には「風神は神の子エルフによって目覚める」と書かれており、ルパンはそれを解放する鍵が飛鳥ではないかと推測する。少々のハプニングはあったものの風神を手に入れるが、途中でモルガーナの部下たちの襲撃に遭う。これを何とか振り切るが、飛鳥がモルガーナに連れ去られてしまう。
虎太郎のおかげで、何とか風神を盗まれずに済んだルパンたちが風神に秘められた仕掛けを調べていたところ、五エ門の携帯に不二子から「風神を持ってきて」との連絡が入る。彼らが北西の基地に向かっていることを知ったルパンたちはヘリでその場に向かう。また、仮死状態から生き返った銭形警部もルパンたちの行先をつきとめ、そこに向かっていた。
全ての人物が基地に集結したとき、風神に隠された秘密が明らかになる。
ゲストキャラクター編集
- 神楽坂飛鳥
- 声 - 平野綾
- 本作のゲストヒロイン。東洋テレビのリポーターだが、実はルパンに対する潜入捜査に従事していたインターポール捜査官であり、銭形の部下でもあったが、彼女の真の正体は忍者の一族・風魔の末裔であるくノ一でもある[2]。
- 口笛で犬笛の音(人間の耳には聞こえない)を出すことができ、その音で飼い犬の虎太郎を操る。
- 冷静であるべき忍でありながらも性格は非常に感情的で、行き当たりばったりな勇み足にばかり出ており、ルパンたちに「邪魔をするな」と言いながらも彼に協力し、結果的には自身がルパンたちの足を引っ張ってしまう。当初はルパンのことを全く信用していなかったが、最後には「あの人たちは絶対に諦めない」とルパンたちを信頼するようになった。
- モルガーナに地獄如来像が盗まれることを危惧して、先に盗むようルパンに依頼し、ルパンと共に「風神」を見つけるものの、モルガーナに捕まってしまい、「風神」を起動する鍵が飛鳥本人の声だと考えたモルガーナによって拷問を受けるがルパンたちに助けられる。モルガーナとの決着後は銭形と共に再びルパン逮捕に向かう。
- 「ルパン三世officialマガジン」に掲載された漫画『風魔VSルパン お宝争奪大作戦!』では、モルガーナ率いる風魔忍者から恵比寿像を守るために登場、ルパンたちにも最後まで正体を隠し、局アナという表の顔だけ明かしていた。年齢は25歳だが不二子に会ったとき、実年齢よりも若く見られるため、「黒い組織に出来損なったクスリでも飲まされたのか」と疑われていた。
- 後に同誌に掲載された漫画版『the Last Job』では正体をルパンに見破られ、「風神」をモルガーナに渡さないためにルパンと共闘。アニメ版と異なり風魔の再興などは全く考えていないが、再興を強く願う摩耶とは対立している。また、銭形の部下という描写もほとんどなくルパンを捕まえようとすることもなかった。戦闘力もかなり高く「五ェ門もビックリの剣さばき」とルパンに評され、犬笛の音は普通に人間に聞こえる。性格もかなり異なり、より明るく活発でありながらモルガーナの油断を誘うなど知的で冷静、アニメ版のように先走った行動もしない。
- なお、摩耶との関係はアニメでは姉貴分という存在であったが、漫画版では「姉さん」か「摩耶姉さん」と言っていることや、ルパンに「姉が一人います」と話しているなど、姉妹であることがわかる。
- 虎太郎
- 飛鳥の飼っている忍犬。
- 飛鳥の口笛(犬笛)に従って動く他、飛鳥には信頼を寄せており、彼女に危害を加えるものは容赦しない上、やたらと人の尻に噛み付く癖があり、作中では主にルパンがその犠牲となっており、銭形も一度だけ噛まれ、不二子も噛まれていないが舐められたことがある。
- モルガーナの行動を的確に妨害することからその度に「犬が!」と毒突かれていたが、劇中終盤において捕えられた飛鳥や摩耶に向けて吠えたのがきっかけで、皮肉にもモルガーナを完全に想定していなかった形で助けることになってしまった(虎太郎(あるいは風魔の忍犬)の遠吠えがブラックホールを発動させる鍵であった)。
- 摩耶
- 声 - 朴璐美
- モルガーナに従うくノ一で風魔一族の末裔。
- 五エ門と互角に渡り合うほどの剣の腕前を持つが、実は飛鳥の姉貴分であり、モルガーナに仕えるふりをして飛鳥に情報を流したりと手助けしていたが不二子のせいでバレて捕まってしまい、飛鳥と共に拷問を受けるが、ルパンたちに助けられる。モルガーナとの決着後は五エ門に頼んで「風神」を破壊してもらい、風魔の使命から解放される。
- 「ルパン三世officialマガジン」に掲載された漫画版では、風魔の再興を願うあまりに飛鳥とも対立している。最終決戦では五エ門と対峙するも、不二子によって剣が抜けないように細工され、その隙をついた五エ門の峰打ちによって気絶させられる。
- モルガーナ
- 声 - 津嘉山正種
- 「風神」を手中に収めるべく、昔ながらの忍びの技と短機関銃や攻撃ヘリなどといったハイテク兵器を駆使する忍者軍団を率いて暗躍する仮面の男。
- 名前からルパンはイタリア人と推測し、彼自身は服の袖にグレネード・ピストルや短機関銃などの武器を隠し持っており、それらを駆使して戦う。また、変装や攻撃ヘリの操縦もできる。
- 「モルガーナ」とはかつてローマに存在した科学者たちによって結成された秘密結社の名前であり、彼の仮面の下の素顔にはその秘密結社の紋章が彫られ、彼の先祖は「風神」を開発したが、弾圧から逃れて日本へ渡った者たちによって隠されてしまう。その後、「モルガーナ」のメンバーが日本へ渡ったが「風神」を見つけることはできなかったため[3]、必ず取り返そうと画策する。終盤にて飛鳥を人質に「風神」を取り戻して起動にも成功するが、最期はルパンの機転でブラックホールに吸い込まれる。
- 「ルパン三世officialマガジン」に掲載された漫画『風魔VSルパン お宝争奪大作戦!』では風魔忍者軍団を操るとともに、マイケル・F・モルガン局長としてICPOも動かしていた。
- なお、モルガーナを演じた津嘉山はテレビスペシャル24作のうち4作で敵のボス役を演じており、これは最多記録である。
- アンドレ・マクシム
- 声 - 玄田哲章
- モルガーナが雇った殺し屋。
- 次元とは過去に因縁があり、顔の傷は次元との勝負の末に付いた物である事が明かれている。極めて頑丈なプロテクターに身を包み、巨大なヨーヨーのような武器を操るが、これらは拳銃弾では大したダメージを与えられないばかりか、次元の松葉杖型対物ライフルの弾を弾き返すほどの代物であり、巨大ヨーヨーに適切な角度から撃ち込んだ時ですら表面を少し凹ませただけであった。
- 終盤で次元と決着を付けようと襲うが、投げつけたヨーヨーにジェットパックをつけられた上に、そのまま飛ばされて行方不明となる。
- 本編に先駆けて「ルパン三世officialマガジン」に掲載された漫画『ルパン三世M 消えた王家の証のありか』では、クーデターを仕掛けた軍部に雇われた傭兵として登場。ヨーヨー[4]とナイフを武器に使う。ターゲットであるトニ王子を狙っていたところ、王家の証を盗むために一人その国に潜入していた次元と対立することになる。
- 漫画版ではヨーヨーを五ェ門にあっさり真っ二つにされ、撥ね返されたヨーヨーを喰らって倒された。
- レイモンド・ラブレス
- 声 - 藤原啓治
- モルガーナが雇った殺し屋。
- 飛鳥を上回る体術の使い手で、伸縮自在の鋭い指先を駆使して戦う。終盤でルパンとの一騎討ちで善戦するが、ルパンを後ろからマシンガンで銃撃しようとした部下たちの攻撃をルパンが寸前で避けたため、正面から銃撃を食らって蜂の巣にされて死亡した。
- 漫画版ではモルガーナが倒された際に部下と共に退却した。
- ヤコペッティ局長
- 声 - 永田博丈
- 銭形や飛鳥の上司。
- 銭形の能力を高く評価しており、自分の姿に変装したモルガーナに「北条影虎の宝刀」を奪われてしまった上、パゾリーニとレオーネがルパン逮捕に失敗した際には「銭形君ならもっと執念深く追いかけたはずだ」と愚痴をこぼしていた。
- パゾリーニ警部
- 声 - 後藤哲夫
- 銭形や飛鳥の同僚。
- 銭形の後任としてルパン逮捕の任に就くが、銭形がモルガーナの基地に向かった際には同行せずICPO本部に残った。
- レオーネ刑事
- 声 - 三上哲
- 銭形や飛鳥の同僚。
- 銭形の後任としてルパン逮捕の任に就くが、銭形がモルガーナの基地に向かった際にはパゾリーニの命令で銭形に同行し、モルガーナとの決着が付いた後は銭形や飛鳥と共にルパン逮捕に向かう。
- ベッカー班長
- 声 - 蓮池龍三
- 地獄如来像を運搬していたドイツの対テロ部隊のリーダー。
- しかし、その正体はルパンの変装だった。
- 大野雄二
- テレビスペシャル『ルパン三世 炎の記憶〜TOKYO CRISIS〜』などと同様、今作でも大野雄二本人がキーボード奏者として登場している(台詞は無い)。
声の出演編集
スタッフ編集
- 原作 - モンキー・パンチ(MPワークス、双葉社/ルパン三世officialマガジン刊)
- 監督・絵コンテ - アミノテツロ
- 企画 - 今村司、前田伸一郎
- 演出 - 大庭秀昭、鎌仲史陽、羽毛田朋樹
- 脚本 - 大川俊道
- キャラクターデザイン・総作画監督 - 平山智
- 作画監督 - 八崎健二、今木宏明、相馬満、鈴木信一、吉川真一、松田芳明
- 美術監督 - 飯島由樹子
- 色彩設計 - 菊地和子
- 撮影監督 - 野口龍生
- 編集 - 佐野由里子
- 音楽 - 大野雄二
- 音楽監督 - 鈴木清司
- 録音監督 - 加藤敏
- 音響効果 - 倉橋静男、山谷尚人(サウンドボックス)
- 音響制作 - 東北新社
- 音響制作担当 - 大野拓也
- 制作担当 - 綿引圭
- 音楽プロデューサー - 山田慎也、澤藤弘一
- アシスタントプロデューサー - 青木隆介(TMS)、小林三紀子(日テレ)、進藤友博(日テレ)
- プロデューサー - 中谷敏夫(日テレ)、尾﨑穏通(TMS)
- オリジナルサウンドトラック - 「LUPIN THE THIRD the Last Job」
- 制作協力 - アンサースタジオ
- フォント協力 - フォントワークス株式会社
- 協力 - HEIWA
- 企画・制作 - 日テレ
- 製作・著作 - トムス・エンタテインメント
主題歌編集
- エンディングテーマ「笑う太陽」
- 作詞・唄 - 中納良恵 / 作曲 - 大野雄二
漫画版編集
ACTION COMICS ORIGINAL「ルパン三世officialマガジン」の2009年秋号と2010年冬号に、漫画版が掲載された。
- 『風魔VSルパン お宝争奪大作戦!』
- 早川ナオヤによる漫画版。2009年秋号掲載。モルガーナ率いる風魔忍者と徳川の秘宝を狙って戦う内容で、モルガーナや飛鳥などの一部のキャラクターは、この回で出会っている。
- 『the Last Job』
- 早川ナオヤによる漫画版。2010年冬号掲載。内容はテレビスペシャルとほとんど一緒だが、『風魔VSルパン お宝争奪大作戦!』で出合ったキャラクターとは再会という形になっている。また、一部設定もテレビ放送と異なる。銭形は登場しない。
- 『ルパン三世M 消えた王家の証のありか』
- 深山幸男による漫画版。2008年秋号掲載。次元大介とアンドレ・マクシムの因縁を描いた作品。
早川ナオヤによる2作は後に「ルパン三世H」1巻に収録されて単行本で発売された。
- ルパン三世H (1)
- 双葉社・アクションコミックス / 2010年10月12日 初版 / ISBN 978-4575838213
脚注編集
外部リンク編集
- ルパン三世 the Last Job - 金曜ロードショー(2010年2月12日放送分)
日本テレビ系 金曜ロードショー(2010年2月12日) | ||
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