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バウ・ミュージカル[1]二人だけの戦場』(ふたりだけのせんじょう)は、宝塚歌劇団雪組[1]で上演された舞台作品[1]。2幕[1]。「夢」を売る宝塚歌劇団において、「民族問題」や「戦争」を真っ向から取り扱った意欲作。法廷劇を交えての斬新な舞台進行も、内外から注目を浴びた。作・演出は正塚晴彦[1]

一路真輝花總まりのコンビお披露目公演。

公演期間と公演場所編集

あらすじ編集

ヨーロッパの片隅に存する某連邦国家で、軍事裁判が開廷されている。被告の名はティエリー・シンクレア、罪状は上官殺害。名家出身の品行方正な青年士官であり、職務に忠実な軍人でもあった彼が、何故上官殺害の罪を犯したのか。

この裁判を去ること数年前、シンクレアは親友クリフォード(演:轟悠)ら同期生とともに、士官学校を卒業する。シンクレアとクリフォードは、独立の気運渦巻くルコスタ州・クロイツェル基地への赴任が決定していた。任地を選べない没落貴族の三男坊であるクリフォードと違い、理想に燃え、自らクロイツェルへの配属を志願したというシンクレアに、クリフォードは呆れ返る。卒業の夜、繰り出した酒場で、シンクレアはジプシーの美しい踊り子に目を引かれる。そして、彼女が一緒に踊っていた青年と共に、酔った軍人3名に絡まれているところを目撃し、助けてやる。娘の名はライラ(花總まり)といい、一緒にいた青年は彼女の兄(アルヴァ=演:和央ようか)だった。

後日、シンクレアはライラに落とした首飾りを届けてやる。ジプシーのキャンプに現れたシンクレアに、ライラは驚く。中枢民族の人間、まして士官であるシンクレアが、ジプシーの寝ぐらに足を踏み入れるなど、普通では考えられない。異民族である自分達への優しさや理解を感じ、かすかにシンクレアに心を開くライラ。シンクレアは彼女に、ライラ達の故郷であるルコスタへの赴任予定を告げる。互いに再会を予感しながら、別れる二人。ほどなくして、シンクレアは不安顔のクリフォードとともに、意気揚々とクロイツェル基地へ着任する。

クロイツェル基地の長官・ハウザー(演:古代みず希)は、地元民族であるジプシーに対し宥和政策をとっており、ジプシーの首長的存在であるシュトロゼック(演:汝鳥怜)とも個人的な親交を深めている。長官に連れられていったシュトロゼックの自宅で、シンクレアはライラと出くわす。彼女はシュトロゼックの娘だったのだ。ライラに案内され、シンクレアはジプシー達が暮らす集落を案内される。彼らと直接触れ合うことで、シンクレアは民族の違いの小ささ・無意味さを実感する。故郷を愛し、日々の暮らしを愛する心に、民族の違いなどどこにもありはしなかった。 ジプシー達と打ち解けたシンクレアは、彼らの祭りに参加する。ルコスタには悲しい伝説があった。遠い昔、ジプシー民族の娘が、侵略軍を差し向けてきたスルタンの息子と恋に落ち、駆け落ちした先で、二人もろともにスルタンに射殺されたのである。祭りの夜には、その伝説にちなみ、男と女が対になって、集落中が朝まで踊り明かす。ライラと踊ったシンクレアは、一目見たときから募らせていた想いを、ライラに打ち明ける。ライラは民族の違いを理由に戸惑うが、自らの気持ちを偽りきれず、彼の想いを受け入れる。しかし、そんな二人を引き裂くかのように、銃声が轟き、和やかな祭りの夜は一転する。

銃声の正体は、地元のジプシー青年が構成するテロ集団による、基地の襲撃であった。ここ最近沈黙を保っていたジプシーの過激派が、にわかに行動に出たことで、旅興行から帰郷して間もないアルヴァに疑いの目が向けられる。現に、アルヴァにはテロ行為の前科があり、しかも祭りの夜から失踪していた。軍でアルヴァの容疑を知ったシンクレアは、ライラに彼の行方を尋ねるが、ライラはやはりシンクレアも他の軍人と同じように、ジプシーだからといって兄を疑うのかと激昂する。しかし、カフェの女主人・エルサ(演:小乙女幸)に諭され、互いの立場を弁えながら愛を育む道を選ぶ。エルサもまた、基地の軍人・ラシュモア軍曹(演:葛城七穂)と身分違いを乗り越えての恋仲にあった。

基地と地元民族との緊張は解けないまま、シンクレアは相変わらずエルサのカフェに通っている。夜、基地への帰路を急ぐシンクレアは、思いがけずアルヴァに呼び止められる。アルヴァは、先の襲撃は初めから彼に罪を着せるために仕組まれたものだと告白する。数年前までは過激派に属していたアルヴァだったが、父・シュトロゼックの説得により、基地との宥和派に転じていた。過激派の襲撃は、連邦制の維持に尽力するシュトロゼック父子と基地との断絶を図ることが一番の目的だったのだ。真実を知って愕然とするシンクレアに、アルヴァはライラと共にルコスタを逃れるよう勧める。もはや基地と地元民族との衝突は避けらない。そうなれば、一番悲しむのは故郷と恋人が争うことになるライラである。しかし、シンクレアは軍人として、逃亡を選ぶことはできなかった。

この時勢にあってなお、ジプシー達の溜まり場であるエルサのカフェに通いつめ、シュトロゼック一家と緊密な関係をとり続けるシンクレアに、クリフォードは自重しろと詰め寄る。独立戦争になれば、ジプシー達とは敵味方になるのだ。シンクレアは親友の忠告をはねつけるが、クリフォードの予感は的中した。連邦制の象徴であった大統領の死去を契機に、ルコスタは遂に独立する。一つの州が独立すれば、他州もこれに倣い、次々と独立を表明しかねない。連邦制瓦解の危機に、クロイツェル基地は騒然となる。しかし、ハウザーには一つの勝算があった……。

スタッフ編集

出演者一覧編集

※氏名の後ろに「宝塚」、「東京」、「名古屋」の文字がなければ全公演共通。

主な配役編集

  • ティエリー・シンクレア:一路真輝[1]
  • ライラ:花總まり[1]
  • クリフォード・テリジェン:轟悠[1]
  • シュトロゼック:汝鳥伶[1]
  • ハウザー大佐:古代みず希[1]
  • クェイト少佐:泉つかさ[1]
  • アルヴァ:和央ようか[1]

脚注編集

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at au av aw ax ay az ba bb bc bd be bf bg bh 90年史 2004, p. 30.
  2. ^ a b c 90年史 2004, p. 36.

参考文献編集

  • 編集:森照実春馬誉貴子相井美由紀山本久美子、執筆:國眼隆一『宝塚歌劇90年史 すみれの花歳月を重ねて』宝塚歌劇団、2004年4月20日。ISBN 4-484-04601-6