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巷説百物語』(こうせつひゃくものがたり)は、角川書店から刊行されている京極夏彦の妖怪時代小説集。「巷説百物語シリーズ」の第1作目。1997年より角川書店が発行する妖怪マガジン『』創刊号より作品の連載が開始され、1999年の第伍号まで連載されたものを収録している。

巷説百物語
著者 京極夏彦
発行日 1999年9月2日
発行元 角川書店
ジャンル 妖怪時代小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 四六判
ページ数 511
次作 続巷説百物語
コード ISBN 4-04-873163-7
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巷説百物語シリーズ > 巷説百物語

目次

概要編集

舞台は江戸時代、御行の又市が率いる小悪党一味が公には裁けない事件を金銭で請け負い、妖怪の伝承を利用した仕掛けを駆使して解決するという物語。主要登場人物は同一だが、各章が内容的に独立した物語であり短編集の様な形式になっている。

主な登場人物編集

主要登場人物は巷説百物語シリーズを参照。

小豆洗い編集

時は春。越後の山奥にある枝折峠の川岸の山小屋の中、夜半になっても静まる気配のない悪天の長い夜に、百物語が始まる。(『怪』第零号 掲載)

登場人物編集

円海
旅の僧侶。大雨にあい、又市にいざなわれて山小屋を訪れる。
伍兵ヱ
山小屋の主人。老いさらばえた、干からびたような、痩せた小さな男。漆喰の染みの如くに小屋の中の風景に定着している。
おぎん
傀儡師、山猫廻し。りくという姉が嫁に行く前に山猫に魅入られた百物語を話す。
備中屋徳右衛門
江戸は日本橋雑穀問屋を営んでいるという。以前の自分は守銭奴で、少々知恵の足りな弥助だけを可愛がっており、番頭の辰五郎の嫉妬を買って弥助が殺されてしまって以来、店の中で小豆洗いの怪事が起きたという百物語を話す。

白蔵主編集

甲斐の国・夢山の狐杜にやってきた弥作は、おぎんと出会い、宝塔寺に役人が捕り物に入ったと聞くが、そのまま気を失ってしまう。(『怪』第壱号 掲載)

登場人物編集

弥作
上州の生まれ。10年前に甲州に流れてきた元狩人で、5年前まで狐杜の周辺で狐を釣って生計を立てていた。登和という思い人がいる。
伊蔵 (茶枳尼の伊蔵)
5年ほど前まで江戸大阪を荒らしまわっていた盗賊。宝塔寺に潜伏していたところを役人に捕まったらしい。
普賢和尚
宝塔寺の住職。普賢は通称で、本名は白玄。人格者だったが、つい最近亡くなったという。

舞首編集

伊豆国の巴が淵の辺りに棲みついた、鬼虎の悪五郎と呼ばれる男を巡っておこる争い。しかしそれには意外な顛末が待っていた。(『怪』第弐号 掲載)

登場人物編集

悪五郎 (鬼虎の悪五郎)
巴が淵の近くに住む荒くれ者。人並み外れた大力で、恐ろしい形相。博打好きで女癖が悪く、目を付けたものをさらっていくという。
小三太 (黒達磨の小三太)
田舎侠客。鬼虎に賭場を破壊され、子分も重傷を負わされたため、鬼虎の命を狙っている。おぎんに唆され、又重の命も取り、金と名声を手に入れようとする。
石川 又重郎 (首切りの又重)
駿州浪人の剣客で人斬りを生業とする無頼。飯屋の主に娘を鬼虎から取り返すように依頼される。
田所 十内
徒目付韮山の代官所の監査のため、お忍びで伊豆にやってきている。

芝右衛門狸編集

淡路の国。芝右衛門の孫娘が惨殺された。気落ちする芝右衛門の前にが現れ、心を通わすうちに冗談で人に化けてやって来いと語る。翌日、その狸だと名乗る老人がやってくる。(『怪』第参号 掲載)

登場人物編集

芝右衛門
淡路の比較的豊かな農民。金壺眼の善く笑う好々爺で、頭は辛うじて髷が結えるという程につるりと禿げ上がっている。まじめで温厚な性格のため「芝殿」と呼ばれ人々に親しまれていた。孫娘のていが、村はずれに掛かった人形浄瑠璃の最中何者かに殺害される。そんな時、庭にやってきた狸と心を交わすようになる。
芝右衛門狸
堂ノ浦に住む130歳の老狸だと名乗る老人。様々なことに通じ、特に芝居が好きで、大阪あたりでは芝居もん狸と呼ばれているらしい。
市村 松之輔
人形遣い。徳州公の覚えも禧き人形浄瑠璃の市村座の座長。阿波国徳島藩主の家臣、淡州支配にして洲本城城代の稲田九郎兵衛の命により、さる身分の高い侍とその一行の身を預かることになる。
藤左衛門
身分の高い若侍のお付の初老の武士。あざが絶えず、疲れ切っている。若侍が狸の物の怪に悩まされているといい、松之輔に正体を暴くように頼む。
足立 勘兵衛
探査役の役人。稲田九郎兵衛の命で芝右衛門狸の噂の真相を探りに来た。秋も深まる10月半ば、徳島藩主である蜂須賀公も訪れた松之輔一座の人形浄瑠璃の最中に信じられぬ事件が起きる。

塩の長司編集

四玉の徳次郎は、塩谷長次郎と名乗って興行していた。そしてお蝶という、信州で拾った記憶をなくしている娘の素性を探るように又市に依頼する。徳次郎は本物の塩谷長司の情報を手に入れていたのだ。そして五月半ば、馬飼長者の屋敷で怪異が起こり始める。(『怪』第四号 掲載)

登場人物編集

お蝶
五年前に信州の旅籠の下働きだった所を徳次郎が拾った娘。今年で十八か十九になる。幼いころの記憶がなく、長次郎の娘のおさんだという疑いが生まれる。
長次郎 (塩屋長司)
加賀の国は小塩ヶ浦の馬飼長者二代目。二十年ばかり前にこの地に流れ着いた馬喰だった。入り婿で、元の名は乙松とも弥蔵とも伝えられる。人前にめったに顔を出すことがない。勤勉で信心深いという良い噂と、悪食で馬を喰うという悪い噂が存在する。十二年前に三島の夜行一味に自分を除く先代長次郎、妻、そして当時六つばかりだった娘の一家全員を殺されている。
百鬼丸
三島の夜行一味という関東から北を縄張りにしていた凶賊の頭領。残忍で容赦がないという。
夜行丸
三島の夜行一味のもう一人の頭領。百鬼丸の双子の弟。馬の扱いに長けており、すばしこく山の斜面でも馬を乗りこなす。
平助
長次郎の屋敷の番頭。長次郎より十ばかり若い。十二年前は下男で、長次郎一家が惨殺されるのを見ていたが何もできなかったことを悔い、長次郎を全面的に支えることを心に誓った。

柳女編集

おぎんの幼馴染が、北品川宿の老舗旅籠に嫁入りが決まる。しかしそこの主人の妻が連続で死亡および失踪し、子供もなくなっているという。おぎんは真相を暴くように又市に頼む。(『怪』第伍号 掲載)

登場人物編集

柳屋吉兵衛
北品川宿の老舗旅籠「柳屋」の現主人で10代目。今年で40歳になる。初代・宗右衛門の代からあった柳の祠を10年前に打ち壊し、次々と宗旨を変える。これまでに4人の妻と3人の子をなくしている。
八重
おぎんの幼馴染。今年で25歳になる。茅場町の薬種問屋「須磨屋」の娘だったが、父の源次郎が八年前に死に、生活に困るようになる。職を転々とし、飯盛女をしていた時に吉兵衛に見初められ、彼の子を身ごもる。5人目の吉兵衛の妻となることが決まっている。
三五郎
柳屋の向かいの小さな旅籠・三次屋の若旦那。吉兵衛の幼馴染。人一倍臆病なのに野次馬。三好屋に逗留する百介に智慧を借りに行く。
お徳
10年前、柳の下の祠を吉兵衛が壊した頃に子供の信坊が事故死する。暫くして錯乱からの自害をしたという。
お喜美
お徳の死の3年後に吉兵衛が入れた後添え。3年経ったが子が出来ず、何かを怖がって里に戻されたという。
おもん
お喜美との離縁から1年後に吉兵衛が迎えた妻。子供の庄太郎も生まれたが僅か3ヶ月で死んでしまう。子供を失って狂乱し、家を走り出て行方不明になったらしい。
お澄
その後に4度目となった妻。やはり子供を流して自らも命を落としたという。

帷子辻編集

1年ほど前より、京都・帷子辻に何度も女性の腐乱死体が現れる。夏も盛り、葉月の終わりに長崎にも用事のある靄船の林蔵は、又市に応援を頼み、事態の収拾を図る。しかし又市はあまり乗り気ではない。(書き下ろし)

登場人物編集

玉泉坊 (無動寺の玉泉坊)
僧形の大男。大津辺りを縄張りにした無頼漢で又市の古い仲間。荒事を担当していた。一文字狸こと一文字屋仁蔵の手の物の一人。
お龍 (横川のお龍)
都の花売り・白川女の装束をした上品な顔立ちの女。二年前から林蔵と組んで仕事をしている。変装の名人で、鬼気迫るほどの演技を見せる。
笹山 玄蕃
京都町奉行所与力。帷子辻に最初に捨てられていた女・さとの夫。
さと
笹山玄蕃の妻女。流行風邪をこじらせて他界した後、何者かによって屍体を攫われる。
志づの
祇園の杵の字家の芸妓。芸妓衆の中では地味な女だった。何者かに攫われ、さと同様に死後二ヶ月ほどしてから帷子辻に捨てられる。
とく
東山の料理渡世由岐屋の下女。帷子辻に捨てられた三番目の女。骸は更に損傷が激しかった。
お絹
花売りの白川女。真面目で世話好きだったが首を吊って自害したのち、何者かに屍体を攫われる。つい一昨日に帷子辻に捨てられていたが首に縄がそのままついていたという。

書誌情報編集

関連項目編集

外部リンク編集