海賊版
画像提供依頼:海賊版陳列の例(Wikipediaが海賊版にならないよう)の画像提供をお願いします。(2011年7月) |
海賊版は、法律上の権利を無視して諸権利を有しない者により権利者に無断で発売または流通される非合法商品である。海賊盤、ブートレグ、ブートレッグ (Bootleg)、ブート版、ブート盤、盗賊版とも呼ばれる。
概説編集
海賊版は、著作権(一般には複製権)などの権利を無視して製造・流通される違法、非合法な製品。すなわち、著作権者の許諾を得ずに無断で制作・製造され不当に販売されることから、製作者(個人・法人・組織・集団などの形態は問わない)や販売者(一般的には「販売店」や「取扱店」など)に全利益が分配されてしまう。
その結果、著作権使用料が著作権者に支払われず、アーティストの印税もそれを受け取るべき演奏者や歌手に支払われることがない。また、CDやレコードなどの製品化(商品化)する権利を有するレーベル会社などの利益も直接、間接的に損なう結果となる。また、マイクロソフト製品など、社会インフラの運用に広く使われているコンピューターソフトウェアの違法コピーが横行すると、著作権者に不利益を与えるだけでなく、更新プログラムの提供や運用技術者の育成が困難になることで、インフラを維持できなくなり、市民生活に多大な不利益をもたらすことにもつながる。こうした被害を防ぐ目的で、ライセンス認証などの違法コピー防止技術が開発されている。
こうした非合法商品が発売される背景として、単に非合法製作者の営利目的の他、当該地域において合法的にコンテンツが販売されていないことや合法コンテンツが粗雑な内容であるなど合法ビジネス上の失敗もある。
海賊版を意味する英語のブートレグ (bootleg) の本来の意味は「密造酒」または「密売酒」である。これは、かつて密造酒を入れたスキットルをブーツに忍ばせて扱ったことに由来する(「boot」+「leg」)。なお、海賊版(海賊盤)の正規の表現は、パイレーツ・エディション (pirated edition) である。単なる物真似・模倣や、偽物一般の表現としては「コピーキャット (copycat)」と呼ばれる。それらの中には海外で著作権者の許可を得て正規品として発売したケースもある。
日本語では、レコードやCDなど音楽関連に限り、「海賊盤」という表記が使われることが多いが、これは、レコード盤のイメージから来る日本の音楽業界固有の表現である。
レコード・CD編集
レコードやCDの海賊版はその性質から分類すると、いわゆる「ブートレグ」と「パイレート盤」「カウンターフィット盤」の3種類に分けることができる。
- 「ブートレグ」とはアーティストの未発表音源やライブ音源(「個人の内密な録音」か「権利者側の正式録音物の無断流用」かは問わない)などを権利者側の未承諾のまま違法にプレス(製作)した物。古い放送用音源や、日本では放送されなかった海外でのTVやラジオ音源の無断製品化も含む。
- 「パイレート盤」とは、正規に発表されたアルバムの内容をそのまま、あるいは主に曲単位で独自に編集するなどの形で、コピー(製作)した物。ベストアルバムのような形で、台湾等で単曲全集という名称で作られている(単曲全集の存在が確認されているアーティストとしてはYMO、ピチカートファイブ、aiko、丹下桜等)。ジャケット写真はほとんどの単曲全集において単にシングルジャケットを並べてあるだけというのが特徴である。
- 「カウンターフィット盤」とは、正規盤の内容、装丁をそのままコピーして、正規盤に似せて製造した複製品。廃盤で正規盤が入手困難になったものの複製品などがある(日本では、レコード、CDの他、正式発売されたビデオテープや写真集に対する海賊版などは、この範疇がほとんど)。
この分類は、主に音楽にされるが、ビデオやコンピューターソフトなど、音楽でなくても分類できる。
また、レコード主流の時代における「プライヴェート盤」の多く(注:元来は「海賊盤」の意味は無く、他者の権利下の音源を不当利益取得目的で製品化する場合にあてはまる)や、CD化してからの「コレクターズCD」(注:限定盤のような収集目的が前提で製作された正式盤などにも広い意味ではこれに該当するものがある、とする見解もある)と呼ばれるもののほとんど大部分は「海賊盤」だが、それ以外も含めこれら3種類の「海賊盤」のいずれかに属することが多い。
かつて、イタリアなどのヨーロッパの数ヵ国では「ハーフオフィシャル」という形態の作品も多数製作され、本来は海賊版と同等とも言うべきライヴ音源やスタジオ未発表音源などが日本の一部CD、レコード販売店でも通常の輸入盤の販売価格に近い金額で売られていた。現在は「ハーフオフィシャル」はほとんど存在しない。
かつて日本では著作隣接権の保護期間が20年だったため、CDが普及した1980年代半ばから1990年前半にかけて、海外ミュージシャンの日本独自の編集盤CDが直接ミュージシャン側と契約締結をしない複数のレコード会社から合法的に多量に出回った。中には正式CDがリリースされていたにもかかわらず、「別ミックス盤」などと銘打って既発売の正式レコード盤からCD化されたものもあった。ポール・マッカートニーは、表向きは音質等に対する批判であったが、海賊盤である「カウンターフィット盤」の取り締まりはもちろん、合法的な独自編集盤にさえも言及したと思われる正式コメントを1987年に出し、日本政府に要請した。当時から、レンタル用のレコード、CD、ビデオについての論議があったが、そういったことも含めて、現在は著作権も世界並みの基準に変えられてきている。
日本のアーティストに関しては、東南アジア等で製造された海賊盤が発行され続けてきている。
人気の出たものについては、さらにその海賊盤を基にした海賊盤が作られることがある。当然ながら海賊盤に携わる各段階での著作権の主張は不可能である。
コンピュータが普及してからはCD-Rとしての製作やジャケットのカラーコピーが簡単になった。レコードやオーディオテープやビデオテープの通常のダビングはノイズも増加するが、特にCDなどのデジタル製品のダビングの場合は、デジタルコピーでなくとも比較的音質の劣化が少ない。よって、2000年代半ばには既発売の正式盤の不当コピー対策としてコピーコントロールCD(CCCD)が推進された経緯がある。
映画・ビデオ・書籍編集
音楽に関してはビデオやDVDでのライヴ演奏やスタジオ録音風景などの海賊版(DVDに関しては「海賊盤」も使う)も出回っている。その品質は全般的に正規品より劣る例が多く、TV番組のビデオソフト類に関しては放送を録画したのをそのままマスターに流用しただけという例も珍しくなく、中には正規版が発売される前に映画館で隠し撮りしたとされる映画版ソフト類まで存在するほどである。また、編集技術も粗雑な出来なものも多いので、消費者にとっても値段につられてこのような粗悪品を掴まされるリスクも大きく、ネットオークションでも海賊盤の疑いが強い出品物が多く確認される。
ウルトラセブンのオリジナルが数回目の再放送をした時点(1970年代初頭)で、その第12話が被爆者側からと言われる抗議により欠番となり、裏でテレシネされたものが徐々に出回っていった。当時は家庭用ビデオが出始めた時代であったため、画像や音質の悪い何度もコピーが繰り返された「海賊版ビデオ」がその後もファンやマニアの中で出回っていた。しかし、この英語バージョンが1990年代半ばから後半にかけて何度かアメリカ合衆国で放送され、そのコピーが日本へ逆輸入され、現在も「海賊版」として出回っている(詳細はスペル星人の項を参照)。
北米市場などでは、日本のアニメコンテンツなどの海賊行為を繰り返す人々には、金銭目的ではない別の理由があるという。コンテンツ内容の提供のされ方などがその理由に挙げられており、ファンサブに劣る翻訳の質の悪さであったり、コンテンツが数ヶ月もの間遅れて提供されることなど、それらを不満に感じるユーザー間で多くの海賊行為が行われている。またコピーガードなどによりモバイル機器で持ち歩けない利便性の悪さなども理由の一つとされている[1]。
コンテンツ自体がほとんど提供されていない国などもあり、そのような国ではファイル共有サイトを介してコンテンツの海賊行為が行われており、ビジネス上の失敗の裏返しである場合もある。
中国などでは海賊版が横行しており、OVA作品も標的になりつつある(特に、漫画などの付録のオリジナルアニメDVD(OAD))。
音楽作品としては、ビートルズの全映画作品中唯一正式発売されていない『レット・イット・ビー』が海賊版業者のターゲットとされていたが、これも2003年の時点で正式リリースが決定した。その他、ビートルズの映画作品以外の映像作品に関しては海賊版対策も含め『日本公演』『エド・サリヴァン・ショー』出演時の作品など次々に映像化されている。
映画やライヴ映像のビデオなどでもコピーガード付の製品が普及した。DVDは通常の専用機材では基本的にコピー不可能。
海賊版のビデオ作品にもコピーガードをつけたり、コピーガードごとコピーした製品が出回った例もあった。
日本国内取締り例としては、2005年初頭、各種映画を個人的に無断コピーしたDVDを、安価販売していた露店商が逮捕された。その後も、逮捕された例は後を絶たない。
当然ながら「書籍」や「写真集」などにも「海賊版」は存在しうる。例として宮沢りえの1991年の写真集『Santa-Fe』の海賊版が、当初、東南アジア一帯で出回ったことがあった。
海賊版ビデオソフトをレンタルビデオ店に売り歩く業者はカバン屋と呼ばれる。
また、インターネットの普及に伴い、テレビの放送番組を録画したものを、放送局、制作プロダクションなどの著作権者に無断でYouTubeなどの動画共有サイトに投稿する視聴者(ネット海賊版)も多くおり、一部の深夜アニメでは作品に無断アップロードをしないように呼びかける啓発字幕を出している他、日本民間放送連盟加盟局でも2015年2月からゴールデン・プライムタイムと原則として15分以上放送される深夜番組番組を対象に「番組をインターネットに許諾なく公開することは違法です。」とした啓発字幕を放送している[2]。
コンピュータソフトウェア編集
コンピュータソフトウェアに関しては、近年はブロードバンドの普及により、WinMXやWinnyなどを用いた、不正コピーソフトウェアの交換等が往々にして行われている。
2011年、IDCによる世界116カ国を対象に実施した「第9回BSA世界ソフトウェア違法コピー調査」で日本は違法コピー率は前年比1ポイント増の21%となりPCソフト違法コピー率ランキングにおいて、米国、ルクセンブルクについで3位となった。前年の同率1位から下降した。 日本の損害額は18.75億USドル(約1,500億円)に上り、前年と同じくワースト10位になった。
ワーストランキングでは上からジンバブエ、グルジア、リビア、バングラデシュ、モルドバでありこの五カ国の違法コピー率は90%以上である。違法コピー率の世界平均は42%たが、調査対象国の半数で62%以上を示しているという。 損害額の合計は約634億ドル(約5兆745億円)で、調査開始時の2倍以上に増加している[3]。
また、秋葉原や新宿などの繁華街で最新ソフトと称しパソコンソフトやゲームソフトの不正コピー商品を外国人が路上販売している。「大阪日本橋」でも露天販売している所が存在し、暴力団の資金源の一部になっている。販売されているソフトは大抵、名作が多い。 1980年代には、パソコン用ソフトウェアのレンタル店も存在していた[4]。
また、Yahoo! オークションを初めとするインターネットオークションサイトにて、不正コピー商品を販売する業者も多く、中には出品ページにて正規品かの様に偽って販売する業者や、不正コピー品を販売する業者も数多く存在する。
また近年[いつ?]はスパム (メール)にて、安売りソフトと称して不正コピー商品を宣伝する業者も多い。
その一方で、カジュアルコピーや組織内不正コピーと呼ばれる、友達同士や会社や学校の中などで、違法行為であるとは知らず、あるいは非商用だからいいと著作権法を曲解して、コピー行為をしている事例は昔から多く、大きな問題とされている。
また、家庭用ゲーム機ではROMにバイパス(通常はいわゆるMODチップと呼ばれる、PICマイコンにクラック用のプログラムを書き込んだものを使用したり、ゲーム機にパラレルバス端子がついている物は、そこからクラック用のプログラムを流し込んだりする手法が取られる)などを取り付けて、不正コピーを検査するシステムをスキップさせたり、コピーソフトを読み込ませる前に、特殊なソフトウェアを読み込ませて、コピーチェックを迂回したりする行為も見受けられ、1999年(平成11年)10月1日から日本ではこの手の商品の販売は不正競争防止法・著作権法などで禁止されている。
コンピューターソフトウェアの場合、不正コピー品の正式な用語としては、パイレーツ版であるが、オリジナルの単純な模倣品・複製品はデッドコピーと呼ばれ、オリジナルを土台に異なるブランドに改変したものをパイレーツ版として区別する場合が多い。
また海賊版は、パイレーツ版やデッドコピー版の中でも、コピープロテクションをクラックした版を特に指す場合に使われる事が多い。前述の音楽の領域での基準で言えば、ゲームソフトウェアのデータ(大抵はプログラム以外)を独自に改変した、いわゆるMOD版やハック版も海賊版に該当するはずだが、これらは通常は海賊版とは別ものとして扱われることが多い。
中国ではWindows 7をはじめとするOSや、各種ソフトウェアの海賊版が氾濫し、そのプリインストール機も数多く流通しているなど、正規品の販売に多大な影響(損害)を与えている(産経ビズ)。
法的取締り現状について編集
この節は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。Wikipedia:法律に関する免責事項もお読みください。 |
日本では、これらの不法的な「製作や販売」に対して、法的には取り締まることが可能ではあるが、国内アーティストの新作の編集盤を販売した以外(特に洋楽では)取り締まられ、処罰されたという例がほとんど無かった。
しかし、1990年代に西新宿にあった海賊版取り扱い店が取り締まられた例があった。事の真偽は別としてその前後を通じても、日本で海賊盤の大手販売店が取り締まられた例はほとんど無いが、前例が生じたことにより法的にはいつでも取り締まり可能とも言える。
なお、カウンターフィット盤に関しては、著作権法違反に加え、商標法・不正競争防止法にも違反することとなり、その分罪も重くなる。
諸外国では厳しい国も多く、知的財産権保護に積極的なアメリカ合衆国では、海賊盤(海賊版)を店頭に置くだけで処罰の対象となる。2000年代前半に、ビートルズの音源テープを大量に持ち出した、ビートルズの海賊盤専門業者(海賊盤の製作業者)が現行犯逮捕され、実質上関連レーベルも含めて消滅した。
なお、2010年時点での著作権法他諸法では、購入する側は違法ではないが[1]、民事上の請求を回避しているわけではなく、損害賠償命令ないし破棄命令が出されることがある。輸入の際に、税関で発見された場合、関税法第69条の11第2項により、没収・破棄となることがある。
歴史背景等編集
最も初期の海賊版は、個人レベルでクラシックなどのコンサートを秘密裏に録音し、個人的に所有していたものを仲間内に配布したりしていたことが起源とされる。海賊版をポピュラーなものにした最初の事例は、1969年の夏、アメリカ・カリフォルニア州のレコード店に現れたボブ・ディランの未発表マテリアル集のレコードだと言われている。それはジャケットもレーベルも真っ白だったことから、"The Great White Wonder"と呼ばれた。初回プレスの8,000枚は完売し、さらに40,000枚のコピーが出回ったと言われる。
その2ヵ月後、ローリング・ストーンズのコンサートを収録した『Liver Than You'll Ever Be』がリリースされた。これは1969年のオークランド・コロシアムでのコンサートを収録したもので、真っ白なジャケットにゴム印でタイトルがスタンプされていた。このリリースが正規盤『Get Yer Ya-Ya's Out!』のリリースを促すこととなった。
これと前後してリリースされたビートルズの未発表アルバム『GET BACK』を収録した『KUM BACK』は爆発的なセールスを示し、ヒットチャートにランクインするのではとの憶測を呼ぶほど売れたらしい。[独自研究?]
以降、海賊版は広く一般的に知られるようになり、ロック、中でも当時三大アーティスト(ローリング・ストーンズ、ボブ・ディラン、ビートルズ)と呼ばれたアーティストを中心とした海賊版が隆盛を極めていった。
製品の種類編集
BOØWYはライブやデモ音源が数多く出回っている。X JAPANは高校生の頃のライブも含めコンスタントに海賊版が出回った物やLOUDNESSの海外ツアーの音源を収めた物が出回った他、JASRAC登録された海賊版(X JAPANのIndies of X Rose & Blood)が無許可で登場した稀な例と言える。
また、単独のアルバムで代表的な海賊盤はビーチ・ボーイズの未発売に終わった『スマイル』関係も多い。
更に、かつてマニアからターゲットとされていたのは、
- ジェフ・ベックのバンドであったベック・ボガート・アンド・アピス(B.B.C.)のセカンドアルバム予定となるはずだった音源集(1曲のみ正式発売)。
- エリック・クラプトンの『デレク・アンド・ドミノス』のセカンドアルバム予定曲で、現在は5曲が正式発売され、この未発表曲はほとんど無いとされる。
- ボストンの正式サードアルバム『サード・ステージ』以前に本来のサードアルバムとなるはずだった作品群。
- プリンスが1987年の正式リリース直前に発売中止した『ブラック・アルバム』(1994年に正式発表済み)。
- ローリング・ストーンズの各段階での未発表曲集など。
などが挙げられる。
媒体の変化編集
アナログレコードの時代はアメリカ合衆国でのプレスが主流であったが、CD時代になると取締りの緩さから日本製の海賊版CDがコレクターの注目を集めている。建前上はヨーロッパ製などとして販売しているが、主に東京都新宿区西新宿七丁目(旧・柏木一丁目、旧・百人町一丁目)の小滝橋通り界隈に多数存在するコレクターズCD店が製造、販売している。
海賊盤のCD化に際して、レコード時代には決して登場しなかった高音質のライヴ音源やスタジオでのリハーサル音源が登場した。そのことからも、ミュージシャン側のスタッフや録音テープを保管しているスタジオ関係者内にも、海賊版業者側から内密に金銭を授受されるなどして、こういった不法音源製作に関与しているとしか思えない状態が予測されている。ファンが録音した新旧ライブ音源をBitTorrentなどで業者が入手し、販売されるケースも増えてきている。
実際、レッド・ツェッペリンがドラマーのジョン・ボーナムの死後にリリースした未発表曲集アルバム『コーダ』の製作の段階で、ジミー・ペイジが「録音テープの確認をしたところ紛失したテープがあったが、期限の関係でその1曲を外さざるをえなくなった。その後、紛失したテープは元の位置に戻っていて、同曲はその10年以上後にリリースした『ボックスセット 2』に収録されることとなった」とインタビューで述べていて、明らかに内部の関係者やスタッフ内に犯人がいることをほのめかしていた。
パソコンの普及やソフトウェアの進化・低価格化に伴い、個人でもCDを製造する事が容易になり、CD-RやDVD-R(いわゆるR盤と呼ばれるもの)での販売も多くなってきており、プロとアマチュアの境界線はなくなりつつある。中には個人製作だったものをコピーして売りさばく業者も存在し、逆に業者が製作したものをコピーし、オークションなどで堂々と販売している者もいる。ただしR盤は耐久性の問題に加え、ノイズ混入や音飛びなど初期不良が見られるものも少なくなく、外見もチープに見えるため、明らかにコレクターズアイテムとしての魅力は乏しいといえる。それゆえにオフィシャルCDと同じように工場生産のプレス盤に拘るコレクターは多い。
また、メディアはアナログレコードからCDに変遷したようにDVDへとその主流は移行しつつあるほか、オンラインでのダウンロードによる海賊版も増加している。
海賊版が正規品に与える影響について編集
2015年にEUが行った調査ではオンライン海賊版が正規品に与える影響は映画を除いてほとんどなかった、これは統計学的に意味があると言える根拠が見いだせなかった事を意味する。映画では新作人気作品で顕著な影響があり10作品の内4作品が海賊版で、旧作品は10作品の内2作品が海賊版で見られていると記された。売上では5%の影響が見られる[5]。
この調査は36万ユーロが使用されたが2年もの間発表されずドイツ海賊党所属欧州議員のジュリア・レダの開示により明らかになった[6]。
対策編集
アーティスト個別の対策編集
こういった海賊版の違法リリースに対抗するミュージシャンも現れた。以下はその一例。
ミュージシャン | 対策 |
---|---|
ポール・マッカートニー | ウイングスの1975年~1976年の音源がワンステージまるごと流出したため、販売価格が高くなるのを承知で『USAライヴ』(オーバー・アメリカ)として3枚組レコードとして発売された。また、ポールはその後もウイングスの1979年のイギリスツアー以外の大きなライヴツアーのほとんどをライヴアルバムとしてCD発売してきた。 |
グレイトフル・デッド | 観客のライヴ音源の無償テープ交換を認め、会場の中には録音のためのスペースも確保されているという(そのため、音源の個人的売買は、一切認めていない)。 |
フランク・ザッパ | 「ビート・ザ・ブート」と銘打ってブートレガーのリリースした海賊版を内容、装丁そのままにオリジナルテープを用いてリリースした。現在もザッパの遺族によって、未発表のライヴ音源の正規発売事業が続けられている。 |
キング・クリムゾン | 「The King Crimson Collectors' Club」などに代表されるように、既に海賊版化されている多くのライヴ音源を正規盤として販売している。 |
ドアーズ | WEBでの通販専門で未発表ライブ盤を販売。 |
ジミ・ヘンドリックス | WEBでの通販専門で未発表ライブ盤を販売。 |
エマーソン・レイク・アンド・パーマー | 未発表だった「展覧会の絵」を含む2枚組海賊盤アルバムを回収し、ミュージシャン側で録音してあった音源を公式にライブ・アルバムとしてリリースした。 |
放送用音源編集
かつて英国放送協会(BBC)で放送された音源が正式盤CDとしてリリースされている(例:ビートルズ、ヤードバーズ、ジミ・ヘンドリックス、レッド・ツェッペリン等)。また、MTVのアンプラグドライヴやキング・ビスケット・ライブ(例:カンサス、エマーソン・レイク・アンド・パーマー等)などのライブ・ステージが正式盤ライヴCDとしてリリースされている。
公式海賊盤編集
「公式海賊版(OFFICIAL BOOTLEG)」などといった名称でリリースされた音源。音質や企画、曲目に対して正式リリースに問題がある場合でも「海賊盤対策の為に製作/販売」といったニュアンスでミュージシャン側から改めてリリースされている。
ミュージシャン | 事例 |
---|---|
ビートルズ | かつては未発表曲集やリハーサルなども注目されていたが、『ザ・ビートルズ・アンソロジー』の1〜3や2017年以降のオリジナル・アルバムの記念エディション(未発表テイクを収録したディスクが付属)がリリースされたことに加え、元メンバーも参加して確保と取締りが強化されたために、ライヴ音源以外はひとまず解決された。 |
ボブ・ディラン | 海賊盤として有名だった『ロイヤル・アルバート・ホール』や『ハロウィーン・コンサート』などを完全な形で公式リリースするなど、1991年より未発表曲・未発表ライブ音源をまとめた『ブートレッグ・シリーズ』を発表。2019年現在、第15集までリリースされ、今後も継続予定。 |
レッド・ツェッペリン | 一通り未発表曲で使えそうなものはリリース済み。加えてジミー・ペイジが管理を強化したため、現在は小康状態。 |
キング・クリムゾン | ロバート・フリップが新旧ライヴ音源を順次リリースすることによって対策を講じている。 |
ディープ・パープル | 各段階でのライヴ音源を順次リリース。 |
ジミ・ヘンドリックス | 元バンドのメンバーも含めて音源管理に参加。必要音源を順次リリース。 |
本人による海賊版入手など編集
ミュージシャンの中にも海賊版CDマニアは多数おり、レッド・ツェッペリンのギタリストジミー・ペイジ[9]、キング・クリムゾンのギタリストロバート・フリップなどは来日の度に西新宿等の海賊版CD店を訪れている。その際、店側は彼らの大ファンであると同時に、違法行為をしている後ろめたさからか無料で彼らの海賊版CDやビデオをプレゼントしている。
なぜミュージシャンが海賊版CD店に行くかは、平たく言えば「海賊版潰し」である。自分が楽しむのと同時に海賊版を市場からなくす目的の他、自らの未発表音源・ライヴ音源の下調べと市場調査でもあると見られる。商業的観点から考えた場合、海賊版は消費者の欲している商品を制作側が発売しないことに起因する需給のミスマッチから産まれたいわば「妥協の産物」であるため、自身の海賊版を漁ることで流出音源を探し出すとともに需要を見極め、未発表音源・ライヴ音源の公式製品化を企図するものである。
ジミー・ペイジはヤードバーズ以前からの親友であるジェフ・ベックのバンドであったベック・ボガート・アンド・アピスの幻の第2弾アルバム(1曲のみ公式CD化)用の音源を海賊版CD店で半ば強引に入手した。来日するたびに大型の旅行鞄を携えて西新宿の海賊版CD店を訪れ、自分の関わったバンドの海賊盤CDを全て詰め込んで帰って行くと言われている。彼が去った後には商品がなくなり棚だけが残されているという伝説がある。また、ついでにボブ・マーリーの海賊盤CDも持ち去って行くと言われている。
元ディープ・パープル、後のレインボーのギタリスト、リッチー・ブラックモアなどは過去のライヴ音源については必ずしも否定せず自らも来日時などに購入しているのだが、スタジオなどの未発表音源に対しては批判的な姿勢を崩さない。
野球選手のランディ・ジョンソンはレッド・ツェッペリンの海賊版CDの収集家である。
関連項目編集
脚注編集
- ^ 米国のファンが日本アニメを「海賊」する理由
- ^ それ、違反です。~放送番組の違法配信撲滅キャンペーン~、「それ、違法です。~放送番組の違法配信撲滅キャンペーン~」専用ウェブサイトの開設について、「番組の無許諾ネット公開は違法です」。民放収録番組で2月23日からテロップ (AV watch)
- ^ 第9回BSA世界ソフトウェア違法コピー調査
- ^ 「パソコンソフトのレンタル訴訟が和解」 『月刊アスキー 1985年10月号』 、130頁、1985年10月1日。
- ^ Estimating displacement rates of copyrighted content in the EU Final Report
- ^ What the Commission found out about copyright infringement but ‘forgot’ to tell us
- ^ 「オンライン海賊版はコンテンツ売上にネガティブな影響を与えない」という報告書が存在するが欧州委員会は発表せず放置
- ^ 欧州委員会、海賊版は正規版の売り上げにほとんど影響しないという報告書を2年以上公表せず
- ^ 2008年1月27日ジミー・ペイジ来店