メインメニューを開く

重北軽南

台湾の南北格差

重北軽南(じゅうほくけいなん、繁体字: 重北輕南)は主に台湾南部をはじめとし、中南部や東部、離島部の市民が(中華民国の)中央政府に対し富の再分配や公共事業政策が長年不均衡、不公平で少数派への配慮を欠いてきたことで生じた国内の南北格差(北高南低)を訴えるために使われる用語[1][2][3][4][5][6]南北失衡(南北不均衡)、あるいは南北經濟差距(南北経済格差)とも称される[5][7]

重北軽南
各種表記
繁体字 重北輕南
簡体字 重北轻南
拼音 Zhòng běi qīng nán
通用拼音 Jhòng běi cīng nán
注音符号 ㄅㄟ ㄓㄨㄥ ㄑㄧㄥ ㄋㄢ
ラテン字 Chung pei ching nan
発音: チョンベイ チンナン
日本語漢音読み じゅうほくけいなん
英文 North–South divide in Taiwan
テンプレートを表示

台湾では1980年代から現在に至る政治改革に伴って著しい重北軽南現象の存在が指摘され、国内の政治、経済、文化、教育、医療[8]の発展の成果は概ね台北市や北部が享受していて、その他の地方ではそれらに比して少ないものとなっている。そして地方政府の財源が中央政府の補助金債務に依存する割合が高まり[9]、地方の自主財源不足を招いていることが様々な統計研究で明らかになっている[10]:185中国でも比較的発展している沿岸部内で北京政府との関係で類似性がみられる[10]:185

1980年から2012年における台湾北部県市の総人口増加数が368万人なのに対し、中部県市では114万人、南部県市では86万人にとどまり、長期的な趨勢は南部の人口増加は中部より低く、中部は北部よりも低いことを示し、首都である台北市との距離によって相関関係が認められる。この現象は、中央政府の整備する国土開発計画や産業分布の結果とも無関係ではない[11]

台湾での南北経済格差の背景には中国国民党による長きに渡る重北軽南政策の影響がある[6][3]中国大陸での学術研究では馬英九政権がかつて重北軽南を転換すべく推進した政策、公共事業は南部の経済発展にある程度寄与したものの多くの事業が頓挫、先送りされたことで、「重北軽南」は引き続き反対派と産業界の非難を招く結果となっている[3]:85-86[4][5]

目次

歴史編集

「重北軽南」という語句は2つの意味合いを軸に展開されている。一方は民間由来での「重北軽南論」。他方は政治家由来の「南北差異論」である。前者は台湾南部の市民が中央政府による富の再分配が長きに渡り北部偏重で不公平感が放置されてきたこと、後者は初期の政治家が市民を出身ごとに選別するために創造したもの[6]

経済編集

民間において「重北軽南」なる用語が使われてきたのは清朝末から日本統治時代にかけて台北が政治経済の中心地となったことが遠因であり[6]、さらに決定的な要因としては1957年台北市直轄市に昇格以降、市の財政が他市に比して優勢となったことである。この趨勢は他県市と台北市の財源格差をもたらした[6]

1980年代の台湾の産業構造の変化とともに、従来は南北分散に近かった労働力の流動が北部への片方向の集中と変遷したこと、それによる様々な因果関係を巡って市民の論議は継続している[6]高雄市の人口が2017年夏に台中市に抜かれ国内3位となったことについて高雄市長陳菊は「半世紀にわたる『北重軽南』政策がもたらした不均衡な国土発展によるもの」としている[12]

政治編集

「南北差異論」は中国国民党(国民党)の党内において省籍における闘争があったことに起因する[6]。国民党内には「非台湾省人」を主流派として構成されたグループの「新国民党連線中国語版」(現新党の前身)があり、自身や支持者の外省人としての特徴を希薄化させたり自集団と党主流派の「省籍差異」を「(台湾における)地域差異」を包含するものへと変遷させることを試み、従来の外省人とそれに対比される本省人の話題を「『台北都市圏の中産階級』と『中南部郷村選出の市民』」で置き換えることを推進してきた[6]

「南北差異論」は本来は国民党内の政治闘争を提議するものとして出現したが、現在では国民党と民主進歩党(民進党)の2党による、主に選挙期間中に強調される政党間の闘争へと意味合いが変貌している。2000年以降は北藍南緑中国語版[註 1]という用語が登場し南部人と北部人の差異を広報する手段として用いられるようになった[6]

忘中編集

21世紀になってからは台湾高速鉄道高雄捷運の開業などで南部の交通インフラには一定の改善がみられたが、依然として台中市を中心とした中部での整備が遅れていることについて、台中市選出の時代力量所属立法委員洪慈庸2016年桃園空港偏重の航空政策を批判する際に[13]、市内の鉄道網整備を掲げていた台中市長林佳龍2017年に鉄道インフラの整備の遅れを批判する際にそれぞれ「重北軽南忘台中」と表現した[14]

域内人口趨勢の南北格差とその影響編集

 

[11]

不動産編集

北部の住宅価格が高騰しているのは中央政府による長期の「重北軽南」の経済政策に起因するという研究報告がなされている[15]

2014年刊行の文献では、雇用改善効果のある大型公共事業は中南部では長期に渡り不在であり、北部大都市圏への人口集中を招いた。多数の住民が競って北部に流入することで北部の不動産開発供給に限界をもたらし、かつ林口台地や台北盆地という地形的要因で居住可能地域が限られていたことで用地難を引き起こした[15][6]:52

地域別域内総生産の比較編集

  中華民国台湾)県市・地域別1人当たり域内総生産一覧(2016年[16]
順位 県市 NT$ US$ PPP 地域区分
1 台北市 990,292 30,699 65,539
2 新竹市 853,089 26,446 56,459
- 台北都市圏(北北基) 830,788 25,754 54,982
- 北北基桃都市圏 807,860 25,044 53,465
3 連江県 776,615 24,075 51,397 離島
4 新北市 733,776 22,747 48,562
5 桃園市 731,518 22,677 48,413
- 台湾全県市平均 727,098 22,540 48,120 -
6 台中市 724,905 22,472 47,975
7 新竹県 724,840 22,470 47,971
8 澎湖県 709,066 21,981 46,927 離島
9 嘉義市 709,033 21,980 46,925
10 基隆市 706,808 21,911 46,777
11 宜蘭県 700,034 21,701 46,329
12 花蓮県 693,292 21,492 45,883
13 高雄市 684,260 21,212 45,285
14 金門県 668,582 20,726 44,248 離島
15 苗栗県 657,292 20,376 43,500
16 台南市 643,743 19,956 42,604
17 台東県 623,485 19,328 41,263
18 彰化県 618,969 19,188 40,964
19 雲林県 607,776 18,841 40,223
20 屏東県 592,066 18,354 39,184
21 南投県 569,453 17,653 37,687
22 嘉義県 562,743 17,445 37,243

参考文献編集

出版物編集

その他編集

註釈編集

出典編集

  1. ^ 陳水扁総統が「自由時報」のインタビューで政府の政策を語る2007-12-27,台北駐日経済文化代表処
  2. ^ (中国語)陈先才 (2016年5月17日). “台湾社会“三中”议题研究”. 首页- 厦门大学学术典藏库- Xiamen University Institutional Repository. 2017年12月23日閲覧。 “以南北差距为例,正是由于在国民党威权时期台湾当局重北轻南政策的推行,南部民众自认受到社会的不公正对待,与象征统治者和资本家的台北有着必然的矛盾情结。”
  3. ^ a b c 两岸关系和平发展的巩固与深化”. Google Books. 2017年12月17日閲覧。
  4. ^ a b (繁体字中国語)林富男:鬆綁管制,讓南台灣有感”. 南台灣觀光産業聯盟. 2017年12月23日閲覧。 “這種情況不但沒有改善,而且更顯嚴重。南台灣的觀光業者期盼,兩岸和平發展的進程,應重視南台灣民眾的意識。”
  5. ^ a b c (繁体字中国語)邱燕玲 (2010年10月2日). “南北區域經濟發展嚴重失衡…政府重北輕南 立院籲正視 - 政治”. 自由時報. 2017年12月23日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g h i j (繁体字中国語)李晏甄 (2011年1月). “台灣南北對立想像的興起”. 臺灣博碩士論文知識加值系統、国立政治大学. http://nccur.lib.nccu.edu.tw/retrieve/79597/401901.pdf 2017年12月23日閲覧。. 
  7. ^ (繁体字中国語)趙曉慧. “打破重北輕南 蔡英文:執政後3個月內 成立南台灣總統辦公室”. Yahoo奇摩新聞、鉅亨網. 2017年12月23日閲覧。 “打破重北輕南:民進黨2016年總統參選人蔡英文今(14)日到高雄參訪,她表示,希望能翻轉南部,變成下一個世代經濟發展的領頭羊,要擺脫「天龍國觀點」、「從台北看天下」,若能順利執政,將在3個月內成立南台灣總統辦公室,領導政府全力推動南部再生。 蔡英文表示,一旦民進黨重返執政,會將南北均衡發展,作為國土發展的首要政策;而且也將重新定位南台灣在國際分工的積極角色,至少有3個具體策略,可以用來發展南部的經濟。”
  8. ^ Chu, Tu-Bin; Liu, Tsai-Ching; Chen, Chin-Shyan; Tsai, Yi-Wen; Chiu, Wen-Ta (2005年9月2日). “Household out-of-pocket medical expenditures and national health insurance in Taiwan: income and regional inequality”. BMC Health Services Research (Springer Nature) 5 (1). doi:10.1186/1472-6963-5-60. ISSN 1472-6963. 
  9. ^ (繁体字中国語)調查看天下/當舉債成為地方政府重要財源…|天下雜誌”. 天下雜誌 (2015年7月28日). 2017年12月23日閲覧。
  10. ^ a b (繁体字中国語)全球傳播與國際焦點”. Google Books. 2017年12月23日閲覧。
  11. ^ a b 鄧瑞兆 (2014年6月26日). “高雄都會區產業發展與人口就業之研究”. Chung-Hua University Repository. 2017年12月17日閲覧。
  12. ^ (繁体字中国語)高雄人口掉到第三,陳菊:半世紀重北輕南,國土不均衡發展2017-08-04,風傳媒
  13. ^ (繁体字中国語)為了這件事 洪慈庸籲政府「別重北輕南,忘台中」2017-06-21,三立新聞網
  14. ^ (繁体字中国語)打破「重北輕南忘台中」,林佳龍要爭交通正義2017-04-19,風傳媒
  15. ^ a b (繁体字中国語)地政學訊”. 國立政治大學 (2014 年 1 月 11 日). 2017年12月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年12月17日閲覧。 “......然南北城鄉的租稅負擔更隱含租稅之不公平。舉例而言,根據本年 7、8 月份屏東市台北市高雄市內政部房屋實價登錄網站資料,相同樓高及類似區段的大樓產品,成交總價分別為 320 萬元、3,100萬元及 512 萬元,平均單價則分別為每 58,000 元、708,000 元及 134,000元,如以房屋稅占分算房屋賣價之租稅負擔率分別為 0.39%、0.35%及0.31%,看似負擔率相當,但加計該負擔之地價稅後,情形便大不相同,租稅負擔率分別為 0.29%、005%及0.17%,顯示屏東縣民同樣擁有大樓房屋之租稅負擔率竟高於台北市或高雄市居民 6 倍及 2 倍,此種扭曲的不公平稅制實有違量能課稅之基本財稅理論,也是財政當局尤應正視之處。造成北部房價高漲原因,不外乎政府長期重北輕南之經濟政策,人口高度集中都會區,南部鮮少重大建設提供就業機會,自然使得多數人去競逐供給有限的不動產,尤其土地資源不可增加及不能挪移的特性,更推波助瀾這股沛然莫之能禦的漲勢。”
  16. ^ (英語)[1] (IMF-WEO April 2017), PPP rate is NTD 15.11 per Int'l.dollar; according [2], the average exchange rate is NTD 32.258135 per US dollar (the average exchange rate of the year was 32.258135 NTD to 1 USD); GDP per capita figures in USD are retrieved from [3] and are published by National Statistics of Republic of China (Taiwan)[4].

関連項目編集

外部リンク編集