ZERO (吉川晃司のアルバム)

ZERO』(ゼロ)は、日本のシンガーソングライターである吉川晃司の1作目のライブ・アルバム

ZERO
吉川晃司ライブ・アルバム
リリース
録音
ジャンル
時間
レーベル 東芝EMI/イーストワールド
チャート最高順位
吉川晃司 アルバム 年表
beat goes on
(1988年)
ZERO
(1988年)
FAVORITE SOUNDS ...1988
(1988年)
EANコード
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ZERO -KIKKAWA KOJI HI-VISION LIVE WORLD '88
吉川晃司ライブ・ビデオ
リリース
録音
ジャンル
時間
レーベル 東芝EMI
吉川晃司 映像作品 年表
DRASTIC MODERN TIME TOUR TOKYO 8 DAYS LIVE
(1987年)
ZERO -KIKKAWA KOJI HI-VISION LIVE WORLD '88
(1988年)
VOICE OF MOON
(1991年)
EANコード
吉川晃司関連の映像作品 年表
『DRASTIC MODERN TIME TOUR TOKYO 8 DAYS LIVE』
(1987年)
ZERO -KIKKAWA KOJI HI-VISION LIVE WORLD '88
(1988年)
BE MY BABY
(1989年)
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1988年6月25日東芝EMIのイーストワールドレーベルからリリースされた。SMSレコードからの移籍第一弾としてベスト・アルバム『beat goes on』(1988年)からおよそ2か月ぶりにリリースされた作品である。

同年5月6日および5月9日に開催された単独公演「武道館スペシャル "BACK TO ZERO"」の模様を収録しており、同年9月10日には『ZERO -KIKKAWA KOJI HI-VISION LIVE WORLD '88』のタイトルでライブ・ビデオもリリースされた。ライブ・ビデオとしては『DRASTIC MODERN TIME TOUR TOKYO 8 DAYS LIVE』(1987年)以来およそ1年半ぶりのリリースとなった。当日演奏された全26曲の内、アルバムには15曲、ビデオには11曲が収録されており、1986年以降にリリースされた楽曲を中心に選曲されている。

アルバムはオリコンアルバムチャートにおいて最高位第5位となった。同公演終了後に吉川は活動休止宣言を行い1年程度の活動休止期間を設けることとなった。同年12月10日には元BOØWY所属のギタリストであった布袋寅泰とともに音楽ユニットであるCOMPLEXを結成するという発表を行った[4]

背景 編集

芸能事務所である渡辺プロダクションからの独立を望んでいた吉川晃司は、事務所社長である渡辺晋からの「インターナショナルで通用する映画を作りたいと思っている。その映画に出たら、独立させてやるから」という言葉を受け、映画『シャタラー』(1987年)撮影終了後に最後の恩返しが済んだと判断し独立することとなった[5]。しかし周囲の人間は社長と吉川との間で取り交わされた約束を知らず、一番最初に事務所を退所したことから吉川は周囲から「不義理者と思われたかも知れない」と述べ、また後日社長から直接許可を得たことを周囲に説明して事なきを得たとも述べている[6]。同時期に友人であった布袋寅泰が所属していたBOØWYから脱退すると聞かされた吉川は、布袋とともに活動する方向性を検討するも、契約上の問題から1年間は活動できないためその後に始動させる予定となった[7]

1988年2月3日にはシングル「プリティ・デイト」、4月21日にはベストアルバム『beat goes on』をリリース[8]。結果としてこの2作がSMSレコード所属時代最後のシングルおよびアルバムとなった。同年5月6日および5月9日には日本武道館において単独公演「武道館スペシャル "BACK TO ZERO"」を実施[8]。同公演を以って吉川は渡辺プロダクションから事務所を独立させることになった[8]。事務所からの独立は当時から遡ること4年前から検討していたことであり、退所の理由は自身が望む方向性と事務所の体制が全く異なっていたことであると吉川は述べている[8]。吉川は渡辺プロダクションを戦艦大和に例えた上で、「造りはでかいんだけど、弾も底をつきそうな状態で、パワーもない」と指摘、「自分で運転できる巡洋艦のほうが、小回りもきくし、スピードも速い」と述べている[8]。事務所退所については「やめるまでいろいろ苦労もあったけど、やめた瞬間は、解放感と、これで一歩踏み出したなって実感がありました」と述べている[9]

録音 編集

ライヴでの燃焼感っていうのは、自分自身より高いレヴェルに自分を置ける気がするっていうか、憧れに手が届きそうに思えるところだな。ステージであれだけの熱がもらえるわけだから、すごくパワーがつくよ。
吉川晃司,
月刊カドカワ 1993年3月号[10]

1988年5月6日および5月9日に日本武道館にて開催された「武道館スペシャル "BACK TO ZERO"」の模様を収録している。当日演奏された全26曲の内[11]、ライブ・アルバムには15曲、ライブ・ビデオには11曲が収録された。アルバムおよびビデオともに未収録となったのは「ZERO」、「MODERN TIME」、「にくまれそうなNEWフェイス」、「スリルなモナリザ」、「雨上がりの非常階段」、「BIG BAD BABY BASTARD」、「キャンドルの瞳」の7曲となっている。

吉川はライブ演奏についてステージに立つことで相当な熱量が得られることから、自身をより高いレベルに昇華させられるとの自説を述べ、また聴衆に対してはライブ時で得たエネルギーが何かの役に立てば良いとも述べている[10]。吉川はライブによる影響を強要したくはないと述べた他、「夢に対してもう一歩勇気をもってくれたりとかっていうことでしかライヴをしたくない」とも述べている[10]。吉川は時折ライブの必要性を自問自答することがあると述べた上で、「その答えは要らないんじゃないかなって」とも述べており、日々の生活が質素であるが故に1年に1回でも「熱くなれる瞬間」を持つことが重用であり、吉川自身もライブ終了後は自宅に帰って現実に戻ることから「現実逃避だよね、結局。俺たちにとってライヴは、幸せな気持ちになれるっていうのがいちばんだな」と結論付けている[10]

リリースと活動休止 編集

移籍第一弾がライヴだったっていうのは、意図があったわけじゃないんだ。(中略)ただ、バンドをやる前にひとつの区切りとして一枚出しておこうっていうのはあった。
吉川晃司,
月刊カドカワ 1993年3月号[10]

ライブ・アルバムは1988年6月25日東芝EMIのイーストワールドレーベルから2枚組LPおよびCTCDの3形態でリリースされた。CD盤の初回購入特典として、武道館ライブの模様を収めたCDケースと同サイズの写真集が付属されていた。同写真集には吉川と親交のあった音楽評論家吉見佑子平山雄一の寄稿文も収載されている。アルバムはオリコンアルバムチャートにおいて、最高位第5位の登場週数10回で売り上げ枚数は6.7万枚となった[2]。5月9日の公演終了後から吉川はしばらく表立った活動を停止すると宣言、活動休止については元々1985年頃から検討していたことであり1987年から1988年に掛けて実施されたコンサートツアー「QUESTION ~Now thinking with pleasure~」の前に確定させていたという[12]。吉川は当時「もう…きっと、今までのアルバムの歌も絶対歌わないと思うよ」と発言を行い、さらに新たな所属事務所の設立とレコード会社の移籍を発表した[12]

CD盤はFar Eastern Tribe Recordsからリリースされた17枚目のアルバム『Double-edged sword』(2009年)の初回限定盤のDisc3として、またデジタル・リマスタリング盤として再リリースされた[13][14]。ライブ・ビデオは同年9月10日VHS、10月5日にLDにてリリースされた。後にユニバーサルミュージックからリリースされたDVD-BOXKIKKAWA KOJI 25th ANNIVERSARY LIVE FILM COLLECTION 『LIVE=LIFE』』(2009年)に収録される形でDVDにて再リリースされた[15]。ビデオのライブ映像自体は16:9で収録されているが、各メディアへは4:3の画角およびレターボックスで収録。DVDにおいてもスクイーズ収録はされなかった。音声はLDおよびDVD共にリニアPCMにて収録。

批評 編集

専門評論家によるレビュー
レビュー・スコア
出典評価
CDジャーナル否定的[16]

音楽情報サイト『CDジャーナル』ではライブ・アルバムの評価として、本作がベスト・アルバム的な選曲であることを指摘、また音源のみで吉川の姿が見えないことで興味が半減すると述べた他、選曲に関して「手堅いところでまとめすぎたのでは? という心配もなきにしもあらず」と評価した上でアーティストであることへのこだわりよりも「もっとハードなハンパなことやってほしい」と述べ否定的に評価した[16]

収録曲 編集

LP 編集

SIDE A
#タイトル作詞作曲編曲時間
1.A-LA-BA・LA-M-BA吉川晃司吉川晃司松本晃彦
2.HOT LIPS吉川晃司吉川晃司清水信之
3.ナーバス ビーナス吉川晃司吉川晃司後藤次利
4.すべてはこの夜に佐野元春佐野元春西平彰
合計時間:
B面
#タイトル作詞作曲編曲時間
1.RAIN-DANCEがきこえる安藤秀樹佐藤健後藤次利
2.サイケデリックHIP吉川晃司吉川晃司後藤次利
3.終わらないSun Set吉川晃司吉川晃司松本晃彦
4.Rainy Laneさがらよしあき麻生圭子佐藤健大村雅朗
合計時間:
C面
#タイトル作詞作曲編曲時間
1.Mis Fit安藤秀樹原田真二後藤次利
2.Little Darlin'吉川晃司吉川晃司清水信之
3.恋をしようぜ!!吉川晃司吉川晃司清水信之
4.モニカ三浦徳子NOBODY大村雅朗
合計時間:
D面
#タイトル作詞作曲編曲時間
1.Stranger in Paradise吉川晃司吉川晃司後藤次利
2.BACK TO ZERO吉川晃司吉川晃司清水信之
3.a day・good night安藤秀樹佐藤健大村雅朗
合計時間:

CT, CD 編集

  • CDブックレットに記載されたクレジットを参照[17]
SIDE 1
#タイトル作詞作曲編曲時間
1.A-LA-BA・LA-M-BA吉川晃司吉川晃司松本晃彦
2.HOT LIPS吉川晃司吉川晃司清水信之
3.ナーバス ビーナス吉川晃司吉川晃司後藤次利
4.すべてはこの夜に佐野元春佐野元春西平彰
5.RAIN-DANCEがきこえる安藤秀樹佐藤健後藤次利
6.サイケデリックHIP吉川晃司吉川晃司後藤次利
7.終わらないSun Set吉川晃司吉川晃司松本晃彦
8.Rainy Laneさがらよしあき・麻生圭子佐藤健大村雅朗
合計時間:
SIDE 2
#タイトル作詞作曲編曲時間
9.Mis Fit安藤秀樹原田真二後藤次利
10.Little Darlin'吉川晃司吉川晃司清水信之
11.恋をしようぜ!!吉川晃司吉川晃司清水信之
12.モニカ三浦徳子NOBODY大村雅朗
13.Stranger in Paradise吉川晃司吉川晃司後藤次利
14.BACK TO ZERO吉川晃司吉川晃司清水信之
15.a day・good night安藤秀樹佐藤健大村雅朗
合計時間:

VHS, LD 編集

#タイトル作詞作曲
1.A-LA-BA・LA-M-BA吉川晃司吉川晃司
2.LA VIE EN ROSE売野雅勇大沢誉志幸
3.ナーバス ビーナス吉川晃司吉川晃司
4.サイケデリックHIP吉川晃司吉川晃司
5.INNOCENT SKY松本一起佐藤健
6.恋をしようぜ!!吉川晃司吉川晃司
7.You Gotta Chance 〜ダンスで夏を抱きしめて〜麻生圭子NOBODY
8.モニカ三浦徳子NOBODY
9.No No サーキュレーション安藤秀樹大沢誉志幸
10.BACK TO ZERO吉川晃司吉川晃司
11.a day・good night安藤秀樹佐藤健

スタッフ・クレジット 編集

ライブ・アルバム 編集

  • CDブックレットに記載されたクレジットを参照[18]

参加ミュージシャン 編集

スタッフ 編集

  • 川面博(渡辺ミュージック) – ディレクター
  • 三宅彰(東芝EMI) – ディレクター
  • 坂元達也 – レコーディング・エンジニアミキシング・エンジニア
  • 徳永“ゴジラ”陽一 (S.C.I.) – アシスタント・エンジニア
  • 伊藤隆司(セディックスタジオ) – アシスタント・エンジニア
  • 樋口和夫(スタジオテラ) – アシスタント・エンジニア
  • S.C.I. – ライブ・レコーディング・クルー
  • 富樫巧(セブンスエンタープライズ) – マネージメント
  • 河村嚴生(セブンスエンタープライズ) – プロデュース
  • 渡辺ミュージック – プロデュース
  • 原伸一 – アート・ディレクション
  • RICE – デザイン
  • 岩岡五郎 – 写真撮影
  • ハービー山口 – 写真撮影
  • さわいずみ – 写真撮影

リリース日一覧 編集

ライブ・アルバム 編集

No. リリース日 レーベル 規格 カタログ番号 最高順位 備考 出典
1 1988年6月25日 東芝EMI/イーストワールド 2枚組LP RT18-5250~1 5位 [2]
2 CT ZT36-5250 [2]
3 CD CT36-5250 予約(先着購入)特典のCDサイズBOOKが付属 [2][16][19]
4 2009年7月22日 Far Eastern Tribe Records UMCF-9517 10位 アルバム『Double-edged sword』(初回限定盤)のDisc3に収録

ライブ・ビデオ 編集

No. リリース日 レーベル 規格 カタログ番号 最高順位 備考 出典
1 1988年9月10日 東芝EMI VHS TT60-1290HI - [20]
2 1988年10月5日 LD L060-1137 -
3 2009年12月23日 ユニバーサルミュージック DVD UMBF-9505 - DVD-BOXKIKKAWA KOJI 25th ANNIVERSARY LIVE FILM COLLECTION 『LIVE=LIFE』』のDisc5に収録

脚注 編集

  1. ^ 吉川晃司/LIVE~ZERO (東芝EMI): 1988”. 国立国会図書館サーチ. 国立国会図書館. 2023年12月24日閲覧。
  2. ^ a b c d e オリコンチャート・ブック アルバムチャート編 1999, p. 41.
  3. ^ Zero 吉川晃司 : Hi-vision live world '88 (東芝EMI): 1988”. 国立国会図書館サーチ. 国立国会図書館. 2023年12月24日閲覧。
  4. ^ 月刊カドカワ 1993, p. 62- 「ALL DATA 10 YEARS HISTORY」より
  5. ^ 吉川晃司 2012, pp. 66–68- 「第2章「信念」」より
  6. ^ 吉川晃司 2012, p. 68- 「第2章「信念」」より
  7. ^ 月刊カドカワ 1993, p. 36- 「本人自身による全アルバム解説」より
  8. ^ a b c d e 月刊カドカワ 1993, p. 61- 「ALL DATA 10 YEARS HISTORY」より
  9. ^ 月刊カドカワ 1993, pp. 61–62- 「ALL DATA 10 YEARS HISTORY」より
  10. ^ a b c d e 月刊カドカワ 1993, p. 37- 「本人自身による全アルバム解説」より
  11. ^ 吉川晃司@日本武道館(東京都))(1988.05.09)”. LiveFans. SKIYAKI APPS. 2023年12月24日閲覧。
  12. ^ a b 吉川晃司 1988, p. 33- 野中智美「征服/1987-1988」より
  13. ^ 吉川晃司の妖刀ギラつくニューアルバム、初回盤は豪華3枚組”. 音楽ナタリー. ナターシャ (2009年6月9日). 2023年12月24日閲覧。
  14. ^ 吉川晃司、アルバムタイトルには“武器を持って戦え”の意味が”. BARKS. ジャパンミュージックネットワーク (2009年7月27日). 2023年12月24日閲覧。
  15. ^ 仮面ライダーWも応援!白熱の吉川晃司25周年記念ツアー”. 音楽ナタリー. ナターシャ (2009年11月8日). 2023年12月24日閲覧。
  16. ^ a b c 吉川晃司 / LIVE~ZERO [廃盤]”. CDジャーナル. 音楽出版社. 2023年12月24日閲覧。
  17. ^ ZERO 1988, pp. 1–17.
  18. ^ ZERO 1988, p. 20.
  19. ^ 吉川晃司/LIVE~ZERO”. TOWER RECORDS ONLINE. タワーレコード. 2023年12月24日閲覧。
  20. ^ 吉川晃司/ZERO~ハイビジョン・ライブ・ワールド’88 [VIDEO他]”. CDジャーナル. 音楽出版社. 2023年12月24日閲覧。

参考文献 編集

外部リンク 編集