アパートの鍵貸します
『アパートの鍵貸します』(アパートのかぎかします、The Apartment)は、1960年のアメリカ合衆国のロマンティック・コメディ映画。監督はビリー・ワイルダー、出演はジャック・レモンとシャーリー・マクレーンなど。出世の糸口として、アパートの部屋を上役の情事の場に提供する独身サラリーマンの悲哀をユーモアとペーソスを絡めて描いている[2]。第33回アカデミー賞にて、作品賞、監督賞など5部門受賞した。
アパートの鍵貸します | |
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The Apartment | |
![]() ポスター(1960) | |
監督 | ビリー・ワイルダー |
脚本 |
ビリー・ワイルダー I・A・L・ダイアモンド |
製作 | ビリー・ワイルダー |
製作総指揮 | ウォルター・ミリッシュ |
出演者 |
ジャック・レモン シャーリー・マクレーン フレッド・マクマレイ |
音楽 | アドルフ・ドイチュ |
撮影 | ジョセフ・ラシェル |
編集 | ダニエル・マンデル |
配給 | ユナイテッド・アーティスツ |
公開 |
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上映時間 | 120分 |
製作国 |
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言語 | 英語 |
製作費 | $3,000,000[1] |
興行収入 |
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1968年には、当作を原作としたブロードウェイ・ミュージカル『プロミセス・プロミセス』が、脚本ニール・サイモンにより、公演された。
ストーリー編集
ニューヨークの保険会社に勤めるバド(バクスター)は、昇進のため、4人の部長と愛人の密会用に自分のアパートの部屋を時間貸しし、毎夜遅く帰る生活をしていた。ある日、シェルドレイク部長に呼び出され、彼にも部屋を貸すことになる。課長補佐に昇進したバドは会社のエレベーター係のフランをデートに誘うが、実は彼女はシェルドレイクの愛人で、バドとのデートの約束をすっぽかしてしまう。
クリスマス・イブの会社でのパーティで、フランはシェルドレイクの秘書・オルセンから彼の女性遍歴を聞いて落ち込む。また、バドはふとしたことからフランがシェルドレイクの愛人であることに気付き、ショックを受ける。シェルドレイクに部屋を貸したバドはバーで閉店まで時間をつぶす。シェルドレイクと別れ話になったフランは、彼が帰ったあと睡眠薬自殺を図る。帰宅したバドは倒れているフランを見つけると、隣の部屋のドレイファス医師を呼んで介抱する。翌日、フランの看病のため、会社を休んだバドだったが、フランを迎えに来た義兄のカールにバドがフランの自殺未遂の原因と誤解されて殴られる。
翌日、出社したバドは、シェルドレイクにフランを引き取ると持ち掛けようとするが、シェルドレイクは解雇したオルセンに女性関係をばらされて離婚することになったと打ち明け、バドを部長補佐に昇進させる。大晦日、スポーツクラブに泊まっていたシェルドレイクはフランと過ごすため、バドにアパートの鍵を要求するが、バドは要求をはねつけて会社を退職し、アパートから引っ越す準備をはじめる。
新年をレストランのパーティで迎えたフランは、シェルドレイクからバドが会社を辞めたと聞き、彼の気持ちにようやく気付くと、彼のアパートに急ぐ。ひとりでシャンパンを開けていたバドのもとにフランがやってくる。バドは街を出るつもりであると語り、フランに愛を告白する。フランはそれに答えず、バドにトランプを配り、カードゲームに誘う。
キャスト編集
※括弧内は日本語吹替
- C・C・バクスター(バド): ジャック・レモン(愛川欽也)
- フラン・キューブリック: シャーリー・マクレーン(市川和子)
- ジェフ・D・シェルドレイク: フレッド・マクマレイ(近藤洋介)
- ジョー・ドービッシュ: レイ・ウォルストン - バドの上役で部屋の利用者の1人。
- ドレイファス医師: ジャック・クルーシェン(早野寿郎) - バドのアパートの隣人。
- アル・カークビー: デヴィッド・ルイス - バドの上役で部屋の利用者の1人。
- ミス・オルセン: エディ・アダムス - シェルドレイクの秘書で元愛人。
- マージー・マクドゥーガル: ホープ・ホリデイ - クリスマスイブの夜にバドと出会った孤独な女性。
- シルヴィア: ジョーン・ショウリー - カークビーの愛人。電話交換手。
- ミルドレッド・ドレイファス: ナオミ・スティーヴンス - ドレイファス医師の妻。
- カール・マツーシュカ: ジョニー・セブン - フランの義兄(姉の夫)でタクシー運転手。
- ヴァンダーホフ: ウィラード・ウォーターマン - バドの上役で部屋の利用者の1人。
- アイケルバーガー: デヴィッド・ホワイト - バドの上役で部屋の利用者の1人。
作品の評価編集
映画批評家によるレビュー編集
Rotten Tomatoesによれば、批評家の一致した見解は「ビリー・ワイルダー監督のいつもの皮肉は、優しいユーモア、ロマンス、そして偽りのないペーソスによって本作ではより興味を引くものになっている。」であり、71件の評論のうち高評価は93%にあたる66件で、平均点は10点満点中8.73点となっている[4]。 Metacriticによれば、21件の評論のうち、高評価は20件、賛否混在は1件、低評価はなく、平均点は100点満点中94点となっている[5]。
受賞歴編集
賞 | 部門 | 対象者 | 結果 |
---|---|---|---|
第33回アカデミー賞 | 作品賞 | 受賞 | |
監督賞 | ビリー・ワイルダー | ||
主演男優賞 | ジャック・レモン | ノミネート | |
主演女優賞 | シャーリー・マクレーン | ||
助演男優賞 | ジャック・クルーシェン | ||
脚本賞 | ビリー・ワイルダー、I・A・L・ダイアモンド | 受賞 | |
録音賞 | ゴードン・E・ソーヤー | ノミネート | |
美術賞 (白黒部門) | アレクサンドル・トローネ、エドワード・G・ボイル | 受賞 | |
撮影賞 (白黒部門) | ジョセフ・ラシェル | ノミネート | |
編集賞 | ダニエル・マンデル | 受賞 | |
第18回ゴールデングローブ賞 | 作品賞(ミュージカル・コメディ部門) | 受賞 | |
主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門) | ジャック・レモン | ||
主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門) | シャーリー・マクレーン | ||
監督賞 | ビリー・ワイルダー | ノミネート | |
第26回ニューヨーク映画批評家協会賞 | 作品賞 | 受賞 | |
監督賞 | ビリー・ワイルダー | ||
脚本賞 | I・A・L・ダイアモンド、ビリー・ワイルダー | ||
第21回ヴェネツィア国際映画祭 | 金獅子賞 | ノミネート | |
女優賞 | シャーリー・マクレーン | 受賞 | |
第14回英国アカデミー賞 | 総合作品賞 | 受賞 | |
外国男優賞 | ジャック・レモン | ||
外国女優賞 | シャーリー・マクレーン |
トリビア編集
- バクスターが自宅でテレビをつけた際、ジョン・ウェイン主演の『駅馬車』や『拳銃無宿』、グレタ・ガルボ主演の『グランド・ホテル』が流れている。
- この作品が大ヒットした記念における披露宴で、ワイルダーは偶然出席していたマリリン・モンローと再会し、和解したという。モンローとは、『お熱いのがお好き』の撮影時におけるトラブルから、一時期、関係が険悪になり決別していた。この事から、次回作『あなただけ今晩は』のヒロインにモンローを起用しようと考えていたが、モンローの突然の急逝によりそれは叶わぬものとなった。
- 明石家さんまがこの映画のジャック・レモンを意識しながらテレビドラマ『男女7人夏物語』の今井良介を演じていたと、自らDJを務めるラジオ番組『ヤングタウン』の中で語っていたことがある。テニスのラケットでスパゲティの湯を切るシーンはそのまま引用して演じていた。
- 2001年に放送された日本の特撮作品『仮面ライダーアギト』の第29話で、ヒロインの一人である風谷真魚が高校のテニス部に入部した時に、主人公の津上翔一が居候先の美杉家の台所のシンクで、彼女のラケットを持ちながら「スパゲッティをゆでるのにいいかも…」と呟くなど、本作のオマージュのようなシーンがある。
出典編集
- ^ a b “The Apartment (1960) - Financial Information” (英語). The Numbers. 2020年11月6日閲覧。
- ^ “アパートの鍵貸します”. WOWOW. 2020年11月5日閲覧。
- ^ “アパートの鍵貸します(テレビ吹替音声収録)HDリマスター版 [DVD]”. Amazon.co.jp. 2020年11月5日閲覧。
- ^ “The Apartment (1960)” (英語). Rotten Tomatoes. 2020年11月5日閲覧。
- ^ “The Apartment Reviews” (英語). Metacritic. 2020年11月5日閲覧。
関連項目編集
外部リンク編集
- ウィキメディア・コモンズには、アパートの鍵貸しますに関するカテゴリがあります。
- アパートの鍵貸します ライセンスエージェント
- アパートの鍵貸します - allcinema
- アパートの鍵貸します - KINENOTE
- The Apartment - オールムービー(英語)
- The Apartment - インターネット・ムービー・データベース(英語)