アボルミスのスフィンクス

アボルミスのスフィンクス』(原題:: The Sphinx of Abormis)は、アメリカ合衆国のファンタジー小説家ローレンス・J・コーンフォードが2001年に発表した短編ホラー小説。クトゥルフ神話の1つで。リン・カーターロバート・M・プライスが主導した「エイボンの書」再現企画のための書き下ろされた[1]本作は、ハイパーボリアを舞台とした作品を手掛けたクラーク・アシュトン・スミスの、タイトルのみ判明している未発表作品を題材としている。

カーターはアマチュア時代に辞典にて、バイアグーナナイアーラトテップの化身説を唱えた[2]。コーンフォードはアイデアを膨らませて、ロバート・ブロックのナイアーラトテップのネタを流用することで、『無貌の神』のナイアーラトテップ=「無貌のバイアグーナ」=「アボルミスのスフィンクス」とした[3]

実書籍「エイボンの書」の解説では、本作品を「スミスの真のウィットがきらめいている」と解説し、偉大な魔術師であっても権力欲にまみれたものであり、矮小な人間でしかないと述べている[4]

あらすじ編集

エイグロフ山脈の丘の上にあるアボルミスの町には、南ハイパーボリア最強の魔術師として知られるホルマゴールが住んでいた。だが北にはハイパーボリア史上最高と称賛される魔術師ゾン・メザマレックがおり、あるアイテムを入手したことがきっかけで、名実ともにホルマゴールを下して当代最強の魔術師となる。ホルマゴールはメザマレックに劣るという世間の評価に不満を抱き、ライバルの成功は単なるまぐれとし、自分には研究者としての力があると自負して研鑽と努力を重ねるが、それでも噂で届くライバルの成果を無視できずにいた。

あるときホルマゴールの夢に、顔のない黒いスフィンクスが現れ、褒美を授けるから自分の身体を作るよう言いつける。目覚めたホルマゴールは、巨岩を削ってスフィンクス像を造り始める。

そのうちにホルマゴールの元に、ゾン・メザマレックが失踪したという情報が届けられる。ホルマゴールは状況を理解できず、スフィンクスがライバルを消したのかといぶかしむ。虚ろな不戦勝によって意欲を失ったホルマゴールは、未完成のバイアグーナ・スフィンクス像を壊してしまおうと考え、弟子に伝える。その翌朝、ホルマゴールの死体が発見される。スフィンクスには顔があり、対照的にホルマゴールの顔にはずたずたの傷口が広がっていた。

アボルミスの人々は、ホルマゴールの遺言を叶えるべく、スフィンクス像を壊そうとするが、どうあっても傷がつかない。皆はホルマゴールの霊に許しを乞い、厄災を恐れて村を捨てて逃げ出す。無人となったアボルミスにはスフィンクス像が残される。アボルミスの廃村を訪れて行方不明になる者が現れ、またスフィンクスの目撃証言も複数あるものの報告される位置が食い違っていた。魔道士エイボンは、魔術師ホルマゴールの物語を「エイボンの書」に記録する。

主な登場人物編集

  • ホルマゴール - 南ハイパーボリア最強の魔術師。ゾン・メザマレックに激しい対抗心を燃やす。
  • ゾン・メザマレック - 北ハイパーボリア最強・歴代最高と名高い大魔術師。不思議な水晶「ウボ=サスラの目」を手に入れたことで、名声を確立したものの、消息を絶つ。消息の顛末は『ウボ=サスラ 』にて語られている。
  • ザイラック - ホルマゴールの一番弟子で、魔道士エイボンの師にあたる。
  • スフィンクス - 「無貌のもの」と称される神性バイアグーナ

収録編集

関連作品編集

  • 無貌の神 - ブロックの神話作品。顔のないスフィンクス(ナイアーラトテップ)が登場する。
  • 哄笑する食屍鬼 - ブロックの神話作品。バイアグーナの初出であるが、名前のみ。ブロックはバイアグーナを掘り下げなかった。

脚注編集

[脚注の使い方]
  1. ^ 学習研究社『クトゥルー神話事典第四版』432ページ。
  2. ^ 青心社『暗黒神話大系クトゥルー1』【クトゥルー神話の神神】322ページ。
  3. ^ 新紀元社『エイボンの書』91ページ。
  4. ^ 新紀元社『エイボンの書』91ページ。

外部リンク編集