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イエスタデイ・アンド・トゥデイ

ビートルズのアルバム

イエスタデイ・アンド・トゥデイ』(Yesterday and Today) は、1966年6月にアメリカ合衆国で発売されたビートルズの11作目のアルバムである。

イエスタデイ・アンド・トゥデイ
ビートルズスタジオ・アルバム
リリース
録音 Abbey Road 1965年-1966年
ジャンル ロック
サイケデリック・ロック
フォークロック
時間
レーベル Capitol
ST 2553 (stereo)
T 2553 (monaural)
プロデュース ジョージ・マーティン
専門評論家によるレビュー
チャート最高順位
  • 1位(Billboard 200[1]キャッシュボックス[2]
  • ビートルズ U.S. 年表
    Rubber Soul
    (Capitol)

    (1965年)
    イエスタデイ・
    アンド・トゥデイ

    (1966年)
    Revolver
    (Capitol)

    (1966年)
    ビートルズ 日本 年表
    ヘルプ
    (四人はアイドル)

    (1970年)
    イエスタデイ・
    アンド・トゥデイ

    (1970年)
    ザ・ビートルズ1962年〜1966年
    (1973年)
    『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』収録のシングル
    1. ひとりぼっちのあいつ
      リリース: 1966年12月21日
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    解説編集

    『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』は、米キャピトル・レコードの編集アルバムである。1967年まで[注釈 1]当時のレコード会社の方針に従い、英国盤に収録の楽曲を一部省略したり、複数の楽曲を寄せ集めて1枚のアルバムとして発売していた。

    実際に本作も、当時の最新アルバムから米国ではカットされた楽曲、当時の最新シングルシングル、1966年4月にレコーディングを開始したばかりのアルバム『リボルバー』からの3曲が収録されている[3]

    このうち、『リボルバー』から収録された3曲のモノラル・ミックスは、1966年8月5日に英国でリリースされたミックスとは異なる。また、本作に収録のこの3曲のステレオ・ミックスは、モノラル・ミックスをステレオ化した擬似ステレオ(デュオフォニック)である[5]。後にキャピトル・レコードからリリースされたアルバムには、リアル・ステレオ・ミックスで収録されている[6]。なお、日本盤は米キャピトル盤とは異なり、オーダーをそのままに英国のマスター・テープを並べ替えて編集している。

    『ビルボード』誌アルバム・チャートでは、5週連続第1位を獲得し、年間ランキング17位を記録している。『キャッシュボックス』誌では、2週第1位を獲得し、1966年度年間ランキング46位だった。アメリカだけで200万枚以上のセールスを記録している。

    2014年に発売されたボックス・セット『THE U.S. BOX』で初CD化となった。

    アートワーク編集

    『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』のオリジナル・ジャケットの写真は、白衣を着たビートルズの4人がバラバラになった赤ん坊の人形と肉片を持って笑っているものであった(画像)。ビートルズがキャピトルにこのジャケット写真を提供した理由は「自分たちのオリジナリティを無視して複数のアルバムから曲を寄せ集め[注釈 2]、1枚のアルバムとして発売していた当時の米国キャピトル・レコードの姿勢に抗議したいから」「ベトナム戦争に対するビートルズの声明」[7]などとかつて言われていたが、実際には「ポップ・スターのアルバムジャケットの常識を破りたい」という意図を持ったイギリス人カメラマン、ロバート・ウィテカー[8]の発案によるものである[9][10]。このフォト・セッションは、1966年3月25日に行われた。ジョンとポールはウィテカーのアイディアを聞いて熱烈に支持を表明したが、ジョージは悪趣味さに閉口し、リンゴは乗り気ではなかった[10]。特にジョージは後に『アンソロジー』においても、「とにかく気持ち悪かったし、馬鹿げてると思った。」と語っている[11][12]

    ビートルズのマネージャー、ブライアン・エプスタインは、ビートルズとウィテカーがエプスタインのオフィスで初対面した同年3月23日にポートレートとして撮影された、トランクを囲んでメンバーが並んでいる写真を(後に「トランク・カバー」と呼ばれる。後述)本アルバムのジャケットとしてアメリカに送るつもりでいた[9]。「レイン」と「ペイパーバック・ライター」のプロモーション・フィルム撮影の際に、エプスタインがトランク・カバーの見本刷りらしき写真を見ている写真が、トランク・カバーが当初決定していたことの証拠であるという[9]。また、エプスタインは、フォト・セッションにおける写真を見て「大事なビートルズに肉屋の格好をさせられるか」と激怒し、写真を破棄しようとした[10]。しかし、ジョンとポールがフォト・セッションで撮影した写真の使用を強硬に主張したために、エプスタインは二人の意見を入れて変更することとなった[10]

    しかし発売直前になって、キャピトル・レコードのセールスマンやレコード販売店から「こんなグロテスクなジャケットは売りたくない」という苦情が殺到し、キャピトル・レコードの親会社EMIの会長であるジョゼフ・ロックウッド英語版[13]の指示により、発売日5日前の1966年6月10日に急遽、アルバムの回収を全米の販売店に通知する事態に陥った[9][14]。結果、ジャケット・デザインは当初予定されていたというトランクと4人が写っている写真に変更された[9][14]。ジョンは、この措置について不満を漏らしている[15]

    オリジナル・ジャケットはその後「ブッチャー・カバー」と呼ばれるようになり、変更後のデザインはブッチャー・カバーと区別するため「トランク・カバー」と呼ばれている。回収が間に合わず、ごく少数出回ったブッチャー・カバー『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』は現在高価なコレクターズ・アイテムとなっている。世界で現在までに確認されているのは150~200枚で、2015年10月27日放送の『開運!なんでも鑑定団』では125万円と鑑定された[16]

    販売会社在庫の未販売ブッチャー・カバー・ジャケットの『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』は、その上からトランク・カバーを貼り付けて出荷された。これを蒸気を当てるなどして慎重に剥がしたものは「ピールド・カバー」と呼ばれている。綺麗に剥がれたものはオリジナルと一見見分けが付かないが、工場でトランクカバーを貼る際にジャケットの右側を2mmほど切っているためやや小さい。ブッチャー・カバーほどではないがこちらも希少価値はあり高価で取引されている。なおブッチャー・カバーに使用された写真は後に『レアリティーズ Vol.2』のインナーに使用された[17]

    2019年5月9日、ザ・ビートルズ・ストーリー・ミュージアムにて、ジョンが所有していたブッチャー・カバーが、匿名のアメリカ人コレクターに売却され、レコードでは史上3番目の高価格となる18万ポンド(約2500万円)の値をつけたことが発表された[18]

    収録曲編集

    特記を除き、作詞作曲はレノン=マッカートニーによるもの。

    アナログA面
    #タイトル作詞・作曲リード・ボーカル時間
    1.ドライヴ・マイ・カー(Drive My Car) ポール・マッカートニー
    ジョン・レノン
    2.アイム・オンリー・スリーピング(I'm Only Sleeping) ジョン・レノン
    3.ひとりぼっちのあいつ(Nowhere Man) ジョン・レノン
    4.ドクター・ロバート(Doctor Robert) ジョン・レノン
    5.イエスタデイ(Yesterday) ポール・マッカートニー
    6.アクト・ナチュラリー(Act Naturally)ジョニー・ラッセル
    ヴォニー・モリソン
    リンゴ・スター
    合計時間:
    アナログB面
    #タイトル作詞・作曲リード・ボーカル時間
    7.アンド・ユア・バード・キャン・シング(And Your Bird Can Sing) ジョン・レノン
    8.恋をするなら(If I Needed Someone)ジョージ・ハリスンジョージ・ハリスン
    9.恋を抱きしめよう(We Can Work It Out) ポール・マッカートニー
    10.消えた恋(What Goes On[注釈 3]) リンゴ・スター
    11.デイ・トリッパー(Day Tripper) ジョン・レノン
    ポール・マッカートニー
    合計時間:

    パーソネル編集

    外部ミュージシャン・スタッフ

    脚注編集

    [ヘルプ]

    注釈編集

    1. ^ 米キャピトル盤『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』は、基本的には英国盤と収録曲は同じだが、最後の「サージェント・ペパー・インナー・グルーヴ」は収録されていない。
    2. ^ キャピトル・レコードから発売された作品の中には英国では未発表となっている楽曲が、米国で先にリリースされたケースもあった。
    3. ^ 本盤のタイトル表記には"What Goes On?"とクエスチョン・マークが入る。

    出典編集

    1. ^ Ovens, Don (dir. reviews & charts) (1966-08-13). “Billboard Top LP's (For Week Ending August 13, 1966)”. Billboard: 54. https://books.google.com.au/books?id=AhEEAAAAMBAJ&q=%22Yesterday+and+Today%22#v=snippet&q=%22Yesterday%20and%20Today%22&f=false 2018年12月21日閲覧。. 
    2. ^ “Cash Box Top 100 Albums (August 6, 1966)”. Cash Box. (1966-08-06). 
    3. ^ Eder, Bruce. “The Beatles Yesterday … and Today”. AllMusic. 2019年5月6日閲覧。
    4. ^ Lewisohn, Mark (2005) [1988]. The Complete Beatles Recording Sessions: The Official Story of the Abbey Road Years 1962–1970. London: Bounty Books. p. 80. ISBN 978-0-7537-2545-0. 
    5. ^ Rodriguez, Robert (2012). Revolver: How the Beatles Reimagined Rock 'n' Roll. Milwaukee, WI: Backbeat Books. p. 123, 132. ISBN 978-1-61713-009-0. 
    6. ^ Winn, John C. (2009). That Magic Feeling: The Beatles' Recorded Legacy, Volume Two, 1966–1970. New York, NY: Three Rivers Press. p. 12, 14-15, 18. ISBN 978-0-307-45239-9. 
    7. ^ “Inside Beatles’ Bloody, Banned ‘Butcher’ Cover”. Rolling Stone. (2016年6月20日). https://www.rollingstone.com/music/music-news/inside-beatles-bloody-banned-butcher-cover-42504/ 2019年5月6日閲覧。 
    8. ^ 訃報:ロバート・ウィテカーさん 71歳=英国出身の写真家”. 毎日jp. 毎日新聞社 (2011年10月3日). 2011年10月15日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2011年10月4日閲覧。
    9. ^ a b c d e 第4章 ビートルズアメリカ盤最大の謎を解く!?、p.140-p.141.
    10. ^ a b c d “3月25日甲虫日記 物議醸した「肉屋」カバー - この日のビートルズ -”. 朝日新聞どらく (朝日新聞社). (2009年3月25日). オリジナルの2009年4月9日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20090409180049/http://doraku.asahi.com/entertainment/beatles/090325.html 2019年5月6日閲覧。 
    11. ^ The Beatles (2000). The Beatles Anthology. San Francisco, CA: Chronicle Books. p. 204. ISBN 0-8118-2684-8. 
    12. ^ 発売禁止になったビートルズの「ブッチャーカバー」にまつわる裏話”. Rolling Stone JAPAN (2019年6月16日). 2019年6月17日閲覧。
    13. ^ Butcher cover, Canadian – Paul White Letter”. Rarebeatles.com. 2019年5月6日閲覧。
    14. ^ a b Turner, Steve (2016). Beatles '66: The Revolutionary Year. New York, NY: Ecco. p. 202-203. ISBN 978-0-06-247558-9. 
    15. ^ DeMain, Bill (2002). “Meat Is Murder”. Mojo Special Limited Edition: 1000 Days That Shook the World (The Psychedelic Beatles – April 1, 1965 to December 26, 1967). London: Emap. 
    16. ^ ブッチャーカバー|開運!なんでも鑑定団
    17. ^ Womack, Kenneth (2014). The Beatles Encyclopedia: Everything Fab Four. Santa Barbara, CA: ABC-CLIO. p. 776, 1041. ISBN 978-0-313-39171-2. 
    18. ^ “ジョン・レノン所有のザ・ビートルズのブッチャー・カヴァー、約2500万円の値をつけることに”. NME Japan (IPC Media社). (2019年5月11日). https://nme-jp.com/news/72696/ 2019年5月12日閲覧。 

    参考文献編集

    • 中山康樹小川隆夫著『ビートルズ アメリカ盤のすべて』、集英社インターナショナル、2004年 ISBN 4797671327
      • 第4章『ビートルズ・アメリカ盤最大の謎を解く!?』、Part1『伝説の"ブッチャー・カヴァー"の真実』、同書、p.140-P.141.