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パリ高等師範学校(ENS Ulm)
国立行政学院(ENA)
国立土木学校(ENPC)

グランゼコール(Grandes Écoles 、またはグランド・ゼコール)とは、フランス高等教育における独自の高等職業訓練学校で、総称して「グランゼコール」とよばれる。ルイ14世絶対王制以降、中央政府は多くの専門的技術者を必要としてきた。この目的を達成するための理工系エリート技術者の養成機関が、グランゼコールであった。大学のリベラルアーツとしての学術教育ではなく、社会発展に直接寄与する実学の専門職業訓練教育を行っている。学校により入学難易度は大きく異なるが、国立行政学院パリ高等師範学校エコール・ポリテクニーク、国立土木学校パリ国立高等鉱業学校HEC経営大学院などが非常に高いことで知られている。現在、グランゼコール会議には229校も加盟しており増加傾向にあるが、実際に名門と社会的に認知されるのはごく一部である。修業年限は通常3年で、少人数教育を特長としている。国際標準教育分類(ISCED 1997版)では6レベルに相当する[1]

概略編集

グランゼコールのほとんどが理工系技術者の専門職養成学校であるが、行政・商業・軍事・芸術系の学校も設立し、直接職業と関連した授業が行われる。卒業生は近代以降のフランス社会での支配階層を占めており、一例を挙げれば行政系のグランゼコールであるフランス国立行政学院はこれまで数十名の大統領首相を輩出している。

一方で学位の付与などの権限はなく、国際的な知名度という点では限定的で制度としての理解も乏しい現状にある。

欧州の大学が伝統的に神学部法学部医学部を中心としてきたことがあり(「大学#大学_(universitas)_の歴史」を参照)、神学法学医学の分野のグランゼコールは存在しない。そのため、フランスで聖職者法曹医師を志望する者は大学に進学する。

博士課程がないグランゼコールも多く、研究者になる場合は一部のグランゼコールか研究型大学に進学するほかない。

歴史編集

最初のグランゼコールは国立土木学校であり、1747年ルイ15世の勅令によって、国家建設に不可欠な土木・建築領域におけるテクノクラート養成を目的として創立された。現在名門とされるグランゼコールの多くは18世紀に設立された。これらの歴史の古いグランゼコールのほとんどが理工系技術者の専門職養成学校である。これは、フランス革命によって貴族制が否定され、新国家再建のために高度な専門知識・技術を有する人材が求められたのに対して、フランスの大学はリベラルアーツ教育を目的としており、実学の職業教育を行う機関が存在せず、それを国家が用意する必要があったためである。その後、理工系グランゼコールを卒業した者は、フランスの富国強兵政策の技官として、また富国強兵政策の立案者としての役割を担ってきた。

理工系のグランゼコールが充実すると、商業系のグランゼコールも設立され始める。しかし、この時期に設立されたグランゼコールが現在のような専門分野での名門としての地位が高まるのは、下記の国立行政学院の設立以降である。第二次世界大戦後には、国際的にも知られているフランス国立行政学院が設立された。

評価編集

一部のグランゼコールは難関で知られ、入学難易度の高さは世界的にも高水準である。しかし、広範にわたる知識と教養の伝播を目的とし、また研究機関としての役割が重要な大学とは、性質が大きく異なるため、単純に比較することはできない。各種存在する世界大学ランキングなどでは、グランゼコールは、大学の学術研究機関というより専門職業訓練学校として認知されており、研究水準・設備・出版論文数なども評価の対象とされるため、少数で特定の専門分野のみの職業教育を行うことが売りのグランゼコールは評価されにくい。そのため、名門校でも、フランス国外の一般人にはその存在や影響力が詳しく知られていないことも多々ある。

進学キャリア編集

グランゼコール準備級(CPGE)編集

グランゼコールのひとつ(=グランデコール)への入学を希望する生徒は、Classes préparatoires aux grandes écoles(CPGE, グランゼコール準備級)に所属する必要がある。CPGEは独立した学校ではなく、主に、名門中高一貫校におけるバカロレア取得後の進学コースのようなものであり、ISCED-5Aに位置づけられる[2]

CPGEに進学できる子女の数は限られており、そこからさらにグランゼコールに進学できる学生数も制限されている(高等師範学校のような文系の場合は合格率は1~3パーセント程度。ただし理系の学校は専門が細分化されており定員枠も文系よりも遙かに多いため、合格率は過半を越える)。

なお、かつてはCPGEの選抜試験は学校単位で実施されていたが、現在は試験は全国で一括して実施され志望者が特定の学校を選択することはできず、試験結果に応じて入学する学校が指定され、2年次進級できなかったものは、大学に編入することが多い。なお、名門グランゼコールに受験できる回数は3回までに限られており(合格するまでは「留年生」として準備学級に在籍できる)、3回以内で合格できなかった場合には通常の大学に進学せざるを得ない。また、CPGEの大半は公立で無償であるが、高収入の家庭でなければ授業料を払うことすらも難しい私立校も若干ある。なお、サルトルフーコーといったフランスを代表する人物を輩出してきたリセ・ルイ・ルグランアンリ四世校は公立であるため無償である。

入学試験編集

CPGEを卒業したものは、グランゼコールの選抜試験へと進む。選抜試験は、筆記(論文形式)と面接による試験である。試験内容は、専攻する学問に関連する領域における論文を記述するもの。例えば高等師範学校(文系)の場合には試験は二次に渡って実施される。一次試験では歴史学、哲学、社会学などの領域を対象(専攻領域によって対象は異なる)として、「××(歴史的な出来事)のフランスにおける意義」と言った広汎な設問に対して論理的かつ詳細な論述が求められ、同時に数十ページに渡る外国語テキストの翻訳の語学試験(二カ国語以上)も実施される。試験時間は論述試験は一領域あたり6時間程度、語学は4時間程度を要するため、一週間程度の期間に連続して試験を受けることになる。この一次試験を通過した後に一次試験と同様の二次の論述試験と共に、数時間で論文を読破した後にその内容に関する詳細な説明や討論が求められる面接試験が実施される。したがって、面接試験と言っても日本における面接試験のような、志望動機や入学するに当たっての希望や心構えなどが尋ねられることはない。

在学中編集

フランスでは大学も含めて公教育が無償であることが多い。エコール・ポリテクニークパリ高等師範学校国立古文書学校のみ、聴講官という準国家公務員相当の地位となり給金が支給されるが、卒業後10年間は公務員として働く義務を負い、辞退者にはペナルティ罰金が課される[3]。しかし商業系のグランゼコールによっては国立であっても有償で、学費の安くないところもある。

主なグランゼコール編集

理工系・自然科学系グランゼコール編集

フランスでは名門グランゼコールに進学することは、その専門分野でのエリートコースであるという認識も強くあるため、注目が高く、様々なランキングが出されている[4][5]。評価は、ランキングを算出する機関や雑誌により異なるが、エコール・ポリテクニークパリ国立高等鉱業学校エコール・サントラル・パリ国立土木学校、高等電気学校が名門とされている。入学選抜試験も最難関であり、理工系・自然科学系グランゼコールの頂点と考えられている。

その他のグランゼコール編集

グランゼコールは上記の理工系分野を中心に創設された経緯があり、商業・教育・行政・司法・軍事のグランゼコールは理工系に比較するとそれほど多くはなく、歴史も浅いものが含まれる。例外として、高等師範学校高等研究実習院(EPHE)が挙げられるが、これは自然科学・人文科学・社会科学の全てを含むグランゼコールとして設立されたため、古い歴史を有している。

行政分野に関しては、パリ政治学院を卒業後、フランス国立行政学院に進学するパターンがその分野におけるエリートコースとされている。

名門グランゼコールの学生や出身者は通称で呼ばれる。例えば、ポリテクニシャン(エコール・ポリテクニーク=理工科学校)、サントラリアン(エコール・サントラル=中央学校)、ノルマリアン(エコール・ノルマル・シュペリウール=高等師範学校)、エナルク(エナ=国立行政学院)、シャルティスト(エコール・ナシオナル・デ・シャルト=国立古文書学校)などがある。MBAなどを取得できるグランゼコールもある[6][7]

名門とされるグランゼコール編集

理工系・自然科学系の名門グランゼコール

商業系の名門グランゼコール

行政・司法系の名門グランゼコール

社会科学系の名門グランゼコール

軍事系グランゼコール

脚注編集

  1. ^ http://www.mzes.uni-mannheim.de/publications/misc/isced_97/kief08a_applying_the_isced-97_to_france_some_issues_and_pr.pdf
  2. ^ ISCED mapping - France”. UNESCO. 2015年11月13日閲覧。
  3. ^ 田中 文憲「フランスにおけるエリート主義」『奈良大学紀要』2007年3月、 13-32頁、 NAID 120002662257
  4. ^ Palmarès des grandes écoles - Lepoint.fr
  5. ^ 技術系のグランゼコール
  6. ^ Ecoles de commerce post-prépas - Palmarès des grandes écoles - Lepoint.fr
  7. ^ 商業系(MBA)のグランゼコール

関連項目編集

外部リンク編集