シーウルフ級原子力潜水艦

シーウルフ級原子力潜水艦
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艦級概観
艦種 攻撃型原子力潜水艦
艦名
建造期間 1989年 - 2004年
就役期間 1997年 - 就役中
前級 ロサンゼルス級
準同型艦 ジミー・カーター
次級 バージニア級
性能諸元
排水量 水上:7,460t
水中:9,150t
全長 107.6m
全幅 12.0m
吃水 10.67m
予備浮力 22.7%
機関 原子力ギアード・タービン推進(52,000 shp
WEC S6W型加圧水型原子炉 1基
蒸気タービン 2基
WEC 2次推進モーター 1基
ポンプジェット・プロパルサー 1軸
電池
最大速力 (水上/水中):不明/35ノット
潜航深度 610m
乗員 131名(士官10名、下士官兵121名)
探索装置 ソナー
統合BQQ-5E(BQS-13、BQG-5A WAA、WLY-1、BQS-24、
曳航アレイTB-16EおよびTB-29)
レーダー
BPS-16、BRD-9、WLQ-4
(戦闘データ・システム)
BSY-2 SUBACS-B、CCS Mk2
兵装 660mmエア・タービン駆動水圧式Mk69魚雷発射管
Mk 48 魚雷
ハープーン USM
トマホーク SLCM
• 各種機雷
弾庫容量: 53基分
8基

シーウルフ級原子力潜水艦(シーウルフきゅうげんしりょくせんすいかん、Seawolf class submarine)はアメリカ海軍の攻撃型原子力潜水艦

あらゆる分野で仮想敵であるソ連海軍の原子力潜水艦を凌駕する超高性能艦として設計されたが、冷戦終結による必要性の低下や高額な建造費などによって当初29隻だった建造数は大幅に縮小され、結局同型艦2隻・準同型艦1隻の計3隻で建造は終了した。

来歴編集

1970年代末以降、アメリカ海軍はソ連海軍原子力潜水艦の性能に長足の進歩があることを認めざるを得なくなると同時に、危機感を深めつつあった。この危機感には2つの側面があった。

1つの側面は、静粛性の向上である。とりわけ、アクラ型の登場は、当局者にとって大きな衝撃であった。というのも、アクラ型は、在来のいかなるソ連海軍の潜水艦よりも静粛であり、初期建造型ではロサンゼルス級初期建造型とほとんど同等であり、また、後期建造型ではやはりロサンゼルス級後期建造型とほとんど同等の水中雑音レベルに達していたからである。このため、低速力で航走中のアクラ級をSOSUS網は探知することが出来ず、また、ロサンゼルス級はアメリカ東海岸を哨戒中のアクラ型の追跡に失敗するという失態さえ起きた。

もう1つの側面は、ソ連海軍の潜水艦発射弾道ミサイルの性能向上である。旧世代のミサイルは2,000kmから3,000kmほどの射程をもつにとどまるためにアメリカ及びNATOの制海圏に進出しなければ、有効な攻撃をなしえなかったが、デルタ型とともに登場したR-29ミサイルは、6,000km以上と充分な長射程を備え、安全な海域にとどまったままでも西側諸国に攻撃を加えることが出来るようになった。シーウルフ級は、こうしたソ連海軍潜水艦の脅威度の上昇を踏まえ、ロサンゼルス級を代替するべく、1980年代末以降に開発が進められた。

概要編集

アメリカ海軍最後の冷戦型攻撃原潜となった本級は、静粛性、氷海行動力、弾量を重視し、「聖域」内への積極的攻勢すら可能な、あらゆる面でソ連原潜を凌駕する超高性能艦とするべく設計された。ロサンゼルス級と比較してみると、減少した運用深度を取り戻すべく高張力鋼HY-110を採用し、氷海行動力も当初から盛り込まれた点で対照を成すが、一方で水上艦用原子炉から発展したS6W型を搭載する点は引き継がれている。

また、イギリス海軍での運用実績に学んで、ポンプジェット・プロパルサーを制式としては初めて装備し、キャヴィテーションを起こさずに20ktで航走可能になった。魚雷発射管室内の弾庫の容量も根本的に見直され、冷戦後期から米原潜が悩まされてきた搭載兵器量の問題はついに解決された。

アメリカ海軍は年3.3隻のペースで合計29隻を建造する計画であったが、冷戦の終結とともに必要性は失われた。また、建造途上の技術的問題により建造が遅延し、予算が上昇したことも、本級に対する目を厳しいものとした。結果、21億ドルアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦の約2倍)もの建造費を要し、あまりに高価で過剰性能であると判断されたこと、また、冷戦後における潜水艦に対する要求事項の変化があったことなどから、建造計画は大きく縮小され、一度は2隻のみにとどめられることが決定された。後に3番艦「ジミー・カーター」の調達が造船所の潜水艦建造能力を維持する方策として特別に認められた。

なお、性能だけを見た場合は非常に優秀なため、以降は能力を本級の75%を最低目標とし、その引き換えにコストを下げた攻撃型原潜としてバージニア級を建造するという影響も与えている。

比較表編集

SSN各型の比較
バージニア級
Block I - IV
シーウルフ級 フランクリン級[注 1] ロサンゼルス級
フライトII/III
アレン級[注 1] ワシントン級[注 1] ロサンゼルス級
フライトI
リプスコム ナーワル
船体 水上
排水量
不明 7,460 t[注 2] 7,320 t 6,255 t - 6,330 t 6,955 t 5,959 t 6,080 t - 6,165 t 5,813 t 4,450 t
水中
排水量
7,800 t 9,150 t[注 3] 8,240 t 7,102 t - 7,177 t 7,880 t 6,709 t 6,927 t - 7,012 t 6,480 t 5,350 t
全長 114.8 m 107.6 m[注 4] 129.5 m 109.73 m 125 m 116.3 m 109.73 m 111 m 95.91 m
全幅 10.4 m 12.2 m 10 m 10.1 m 9.8 m 11.46 m
吃水 9.3 m 10.67 m[注 5] 9.4 m 9.75 m 8.4 m 8.1 m 9.8m 不明 8.8 m
主機 機関 原子炉+蒸気タービン
方式 GT TE
原子炉 GE S9G WEC S6W WEC S5W GE S6G WEC S5W GE S6G WEC S5W GE S5G
出力 40,000 shp 45,000 shp 15,000 shp 30,000 shp 15,000 shp 30,000 shp 12,500 shp 17,000 shp
水中速力 推定34 kt 35 kt[注 6] 21 kt 31 kt 21 kt 22 kt 31 kt 23 kt 25 kt
兵装 水雷 533mm魚雷発射管×4門 660mm魚雷発射管×8門 533mm魚雷発射管×4門
ミサイル TLAM VLS×12セル [注 7] TLAM VLS×12セル [注 7]
同型艦数 28隻予定 2隻[注 8] 2隻[注 9]
(退役)
31隻[注 10] 5隻
(退役)
3隻[注 11]
(退役)
31隻
(退役)
1隻
(退役)
1隻
(退役)
スタージョン級
長船体型
スタージョン級
短船体型
タリビー スレッシャー級/
パーミット級
ハリバット トライトン スキップジャック級 スケート級 シーウルフ ノーチラス
船体 水上
排水量
4,460 t 4,250 t 2,316 t 3,705 t 3,655 t 5,800 t 3,070 t 2,550 t 3,260 t 2,980 t
水中
排水量
4,960 t[注 12] 4,780 t 2,607 t 4,311 t 5,000 t 7,900 t 3,500 t 2,848 t 4,110 t 3,520 t
全長 92.1 m[注 13] 89.1 m 83.2 m 84.9 m 106.7 m 136.5 m 76.7 m 81.6 m 102.9 m 97.5 m
全幅 9.7 m 7.2 m 9.7 m 8.8 m 11.3 m 9.6 m 7.6 m 8.4 m 8.5 m
吃水 9.1 m[注 14] 7.4 m 6.4m 7.7 m 8.5 m 7.2 m 7.7 m 6.3 m 6.7 m 7.9 m
主機 機関 原子炉+蒸気タービン
方式 GT TE GT
原子炉 WEC S5W CE S2C WEC S5W WEC S3W GE S4G WEC S5W WEC S3W GE S2G[注 15] WEC S2W
出力 15,000 shp 2,500shp 15,000 shp 7,300 shp 45,000 shp 15,000 shp 6,600 shp 15,000 shp
水中速力 25 kt[注 16] 25 kt 14.8 kt 28 kt 20 kt以上 27 kt 29 kt 18 kt 19 kt 23.3 kt
兵装 水雷 533mm魚雷発射管×4門 533mm魚雷発射管×6門
ミサイル レギュラス発射機×1基
同型艦数 9隻
(退役)
28隻
(退役)
1隻
(退役)
14隻
(退役)
1隻
(退役)
1隻
(退役)
6隻
(退役)
4隻
(退役)
1隻
(退役)
1隻
(退役)


同型艦編集

全艦ジェネラル・ダイナミクス・エレクトリック・ボートで建造された。

艦番号 艦名 起工 進水 就役 母港
SSN-21 シーウルフ
USS Seawolf
1989年
10月25日
1995年
6月24日
1997年
7月19日
ワシントン州ブレマートン
キトサップ海軍基地
SSN-22 コネチカット
USS Connecticut
1992年
12月14日
1997年
9月1日
1998年
12月11日
SSN-23 ジミー・カーター
USS Jimmy Carter
1996年
6月29日
1998年
12月5日
2004年
5月13日

登場作品編集

映画編集

ゲーム編集

鋼鉄の咆哮シリーズ
第一作目から敵として「シーウルフ級」が登場する。史実通り水中では他の潜水艦よりも圧倒的に素早い他、作品や難易度によっては巡航ミサイルを搭載しており、攻撃型原潜のような扱いにもなっている。潜水艦が設計可能な作品では、プレイヤーもシーウルフ級と思われるパーツを使用、設計することできる。
Modern Warships
1番艦「シーウルフ」が登場。最大2発の兵装を同時に発射することが可能となっている。

アニメ・漫画編集

沈黙の艦隊
架空艦「キング」「アレキサンダー」が登場。北極海原子力潜水艦やまと」と魚雷戦を繰り広げる。作中のシーウルフ級は「やまと」とほぼ同じ装備で、シーバット建造計画時から建造が予定していた。そのため同性能の艦と言えるが「やまと」が極東用であるに対してシーウルフ級は北極用のため、サイドソナーを備えている。
また、「やまと」のデザインや設定はシーウルフ級がモデルと言われている。

小説編集

GODZILLA 怪獣黙示録
「シーウルフ」が登場。太平洋の深海で何かと衝突する。
ソードアート・オンライン
「ジミー・カーター」が登場。ガブリエル・ミラー率いる襲撃部隊をオーシャン・タートルまで送り届ける。

切手編集

トーゴ2019年に発行した「世界の潜水艦」800CFAフラン切手シートに、「シーウルフ」があしらわれた[1]

脚注編集

[脚注の使い方]

注釈編集

  1. ^ a b c SSBNからの艦種変更
  2. ^ 準同型艦は7,568 t
  3. ^ 準同型艦は12,139 t
  4. ^ 準同型艦は138 m
  5. ^ 準同型艦は10.9 m
  6. ^ 準同型艦は25 kt
  7. ^ a b 就役時はSLBM16基を搭載していたが、第二次戦略兵器制限交渉の制限に基づき弾道ミサイル潜水艦の削減の実施されたことにより、ミサイル発射筒はセメントで封鎖し、ミサイル射撃指揮装置は撤去された。
  8. ^ 準同型艦1隻
  9. ^ 3番艦,6番艦
  10. ^ フライトII:3隻退役/フライトIII:1隻退役
  11. ^ 1番艦,2番艦,4番艦
  12. ^ 6番艦は大規模改修により7,800 t
  13. ^ 6番艦は大規模改修により122.4 m
  14. ^ 6番艦は大規模改修により8.8 m
  15. ^ 1960年以降WEC S2W
  16. ^ 6番艦は大規模改修により20 kt以上

出典編集

  1. ^ 「海外の艦船切手から」『世界の艦船』第919集(2020年3月号) 海人社 P.132

外部リンク編集