ツール・ド・フランス2015

ツール・ド・フランス 2015 (: Tour De France 2015) は、ツール・ド・フランスの102回目のレース。オランダユトレヒトからスタートし、パリにゴールする3,360kmのコースで2015年7月4日から7月26日まで行なわれた。

ツール・ド・フランス 2015
Tour De France 2015
UCIワールドツアー2015第18レース
全体コース図
全体コース図
レース詳細
開催期間 2015年7月4日 - 7月26日
ステージ 21
全行程 3,360 km (2,088 mi)
優勝タイム 84時間46分14秒 (39.64 km/h (24.63 mph))
レース結果
優勝  クリス・フルーム (UK) (チーム・スカイ)
2位  ナイロ・キンタナ (COL) (モビスター・チーム)
3位  アレハンドロ・バルベルデ (ESP) (モビスター・チーム)

ポイント賞  ペーター・サガン (SVK) (ティンコフ=サクソ)
山岳賞  クリス・フルーム (UK) (チーム・スカイ)
新人賞  ナイロ・キンタナ (COL) (モビスター・チーム)
チーム時間賞 モビスター・チーム
2014
2016

概要 編集

オランダでグランデパールを迎えるのは2010年以来5年ぶり6回目[1]。個人タイムトライアルが第1ステージの1回のみの設定、チームタイムトライアルが1週目最終日と遅めとなっている。

第1週はユトレヒトから北海英仏海峡沿岸を西に進みブルターニュ地方へ。最初の休息日で一気にピレネーに移動し、第2週初日からピレネー3連戦をこなした後すぐに中央山塊に入り、週終わりでアルプスの麓に到達。そして第3週は最終日前日のラルプ・デュエズまでアルプスでの山岳ステージが続き、最終日にパリへと移動。最終ステージのシャンゼリゼ周回に入る前のパリ市内の通過地点は例年と異なり、ロンシャン競馬場脇、エッフェル塔前、ブルボン宮殿前を通過する[2]

第1週は9ステージだが、休息日を挟んだ第2週は7ステージ、休息日明け第3週は5ステージと少し変則的になっている。なお、7月20日月曜日にもレースが行われる(例年は7月第3月曜日は休息日だった)。

ポイント賞の得点が一部変更されたほか、ステージ上位(3位まで)に与えられるボーナスタイム制度が復活。第2~4ステージではボーナスタイムの影響によるマイヨ・ジョーヌ着用者の変遷が見られた。

出場チーム 編集

●はプロフェッショナルコンチネンタルチーム、その他はUCIワールドチーム

レース概要 編集

第1ステージは同年のツアー・ダウンアンダー覇者であるローハン・デニストニー・マルティンファビアン・カンチェラーラ、地元オランダ期待のトム・デュムランらを下し優勝。総合勢はヴィンチェンツォ・ニバリが好スタートを切ることに成功し、ナイロ・キンタナは僅かながら出遅れてしまう。

続く第2ステージ、海岸から来る横風を利用したティンコフ=サクソが集団分断を仕掛ける。ダブルツール達成を目指すアルベルト・コンタドールや、2年ぶりのツール制覇に向けて調整をしてきたクリス・フルームは難を逃れた一方、キンタナとニバリ、アレハンドロ・バルベルデジャン=クリストフ・ペローなどが集団分断の餌食となってしまう。キンタナは結果としてこの日の遅れが致命的となった。また、マイヨ・ジョーヌのデニスも遅れたため、アンドレ・グライペルペーター・サガンに続きステージ3位に食い込んだカンチェラーラがマイヨ・ジョーヌを獲得。

フレッシュ・ワロンヌでお馴染みのユイの壁が登場した第3ステージ。ホアキン・ロドリゲスが抜群の加速を見せ5年ぶりのツール区間優勝を果たし、ステージ2位となったフルームが早くもマイヨを獲得。しかし、レース中盤に大落車が発生しており、カンチェラーラも巻き込まれていた。ニュートラルが敷かれる事態にまで陥り、カンチェラーラはこのステージ完走後にツールを去った。

第4ステージは石畳が登場。昨年この石畳で大幅に遅れをとったコンタドールは自転車を乗り換える。幸い大きな落車は起こらず、総合勢も同タイムでフィニッシュ。ステージは初日からずっとマイヨに手が届かなかったマルティンがロングスパートをしかけ独走勝利。念願のマイヨをついに手中に収める。続く第5ステージではアレクサンダー・クリストフマーク・カヴェンディッシュを抑えグライペルが2勝目を挙げる。

上りフィニッシュが設定された第6ステージ、最終盤でマイヨのマルティンやニバリ、キンタナらが落車。ニバリとキンタナは軽傷で済んだが、マルティンは肩を痛め、チームメートに押されながらフィニッシュ。検査の結果、鎖骨粉砕開放骨折と判明。同時にリタイアも表明した。

マルティン離脱の波乱から一夜開けた第7ステージ、繰上げで総合トップとなったフルームはマルティンに敬意を表しマイヨを着用しなかった。ステージはカヴェンディッシュがマルティンに捧げる26回目のステージ優勝を飾った。

2011年、カデル・エヴァンスが制したミュール・ド・ブルターニュの頂上フィニッシュでは元MTB選手の本領を発揮したアレクシー・ヴュイエルモーズがステージ優勝。フルームは難なくフィニッシュしたが、ニバリはタイムを失ってしまう。ニバリはのちに「空白の一日だった」と語っている。翌日のTTTでは世界王者のBMC・レーシングチームスカイを1秒差で下し区間優勝。

今大会最初の超級山岳山頂フィニッシュが登場した第10ステージでは、フルームが圧勝。僅か6.5kmでステージ2位のリッチー・ポートに1分近い差をつけ、ニバリに至っては7分以上のタイムを失ってしまった。第11ステージは昨年の山岳王ラファル・マイカが独走勝利。第12ステージではロドリゲスがヤコブ・フルサングを引き離し区間2勝目をあげ、フルーム率いるスカイはライバルたちの攻撃を完封する。

激坂・マンドへのフィニッシュが設定された第13ステージではフレフ・ヴァン・アーヴェルマートがサガンを下し初の区間優勝を飾る。翌日はスティーヴ・カミングスが先行するティボー・ピノロマン・バルデを一気に追い抜き優勝。南アフリカ国籍のMTN・クベカにとっては、記念すべきネルソン・マンデラ・デー[3]で初の区間優勝を獲得した。第15ステージではグライペルが3勝目を挙げる。

第16ステージではベテラン、ルーベン・プラサが独走で優勝。サガンは今大会5度目のステージ2位となる。翌日は「髭のゲシュケ」ことシモン・ゲシュケが本人も予想外だったというステージ優勝を獲得。超級山岳グランドン峠がコースに組み込まれた第18ステージは、グランドン峠でアタックしたバルデが勝利。続く第19ステージでは、フルームがメカトラブルで止まった際にアタックしたニバリが復活のステージ優勝をあげるも、フルームからは「彼はきっとブエルタでバチが当たる」とまで批判された。

最終決戦となる第20ステージはクロワ・ド・フェール峠ラルプ・デュエズを上る過酷なコース。逆転総合優勝を目指すキンタナはクロワ・ド・フェール峠で仕掛けるが下りでフルームに追いつかれてしまう。しかし、ラルプ・デュエズでフルームは明らかに不調である[4]ことが発覚する。モビスターはまずバルベルデにアタックさせ様子を窺う。しかし、スカイは総合3位バルベルデのアタックを追わなかった。続いてキンタナもアタック。一瞬ワウト・プルスが追走しようとしたが、フルームはついてこれない。ここでフルームは大ピンチに晒される。快調なリズムで進むキンタナに対し、フルームはどんどん失速。完全にポートが作るリズム頼りとなり、キンタナの逆転総合優勝の可能性も見えた。が、フルームはここで粘り、バルベルデと同タイムでフィニッシュ。キンタナからの遅れも1分ほどに抑え、総合優勝と同時に山岳賞獲得も確定した。ステージはキンタナの猛烈な追走から唯一逃げ切ったピノが獲得。

最終・第21ステージはグライペルが4勝目を挙げる。そして、フルームの総合優勝で2015年ツールは幕を閉じた。

大会日程 編集

大会日程
区間 コース km 種類 区間勝者
1 7/4  ユトレヒト –  ユトレヒト 13.8   個人タイムトライアル ロハン・デニス
2 7/5  ユトレヒト –  ネールチェ・ヤンス英語版オランダ語版 166   平坦 アンドレ・グライペル
3 7/6  アントウェルペン –  ユイの壁
159.5   中級山岳 ホアキン・ロドリゲス
4 7/7 セラン – カンブレー
223.5   平坦・石畳 トニー・マルティン
5 7/8 アラス – アミアン
189.5   平坦 アンドレ・グライペル
6 7/9 アブヴィル – ル・アーヴル
191.5   平坦 ズデネク・シュティバル
7 7/10 リヴァロフランス語版 – フージェール
190.5   平坦 マーク・カヴェンディッシュ
8 7/11 レンヌ – ミュール=ド=ブルターニュ
181.5   中級山岳 アレクシー・ヴュイエルモーズ英語版フランス語版
9 7/12 ヴァンヌ – プリュムレック
28   チーム・タイムトライアル BMC・レーシングチーム
7/13   休息日 (ポー)
10 7/14 タルブ – ピエール・サン=マルタンフランス語版
167   山岳 クリス・フルーム
11 7/15 ポー – コトレフランス語版
188   山岳 ラファウ・マイカ
12 7/16 ラヌムザンフランス語版 – プラトー・ド・ベイユフランス語版
195   山岳 ホアキン・ロドリゲス
13 7/17 ミュレ – ロデーズ
198.5   中級山岳 フレフ・ファン・アヴェルマート
14 7/18 ロデーズ – マンド
178.5   中級山岳 スティーヴ・カミングス
15 7/19 マンド – ヴァランス
183   丘陵 アンドレ・グライペル
16 7/20 ブール=ド=ペアジュフランス語版 – ギャップ
201   中級山岳 ルーベン・プラサ
7/21   休息日 (ギャップ)
17 7/22 ディーニュ=レ=バン – プラ=ルフランス語版
161   山岳 ジーモン・ゲシュケ
18 7/23 ギャップ – サン=ジャン=ド=モーリエンヌ
186.5   山岳 ロマン・バルデ
19 7/24 サン=ジャン=ド=モーリエンヌ – シベルフランス語版
138   山岳 ヴィンチェンツォ・ニバリ
20 7/25 モダンフランス語版 – ラルプ・デュエズ
110.5   山岳 ティボー・ピノ
21 7/26 セーヴル – パリ
109.5   平坦 アンドレ・グライペル

各賞の変遷 編集

区間 勝者 総合成績
 
ポイント賞
 
山岳賞
 
新人賞
 
チーム総合賞 敢闘賞
 
1 ロハン・デニス ロハン・デニス ロハン・デニス 受賞なし ロハン・デニス チーム・ロットNL・ユンボ 受賞なし
2 アンドレ・グライペル ファビアン・カンチェラーラ アンドレ・グライペル トム・デュムラン BMC・レーシングチーム ミハウ・クフャトコフスキ
3 ホアキン・ロドリゲス クリス・フルーム ホアキン・ロドリゲス ペーター・サガン ヤン・バルタ
4 トニー・マルティン トニー・マルティン ヴィンチェンツォ・ニバリ
5 アンドレ・グライペル マイケル・マシューズ
6 ズデネク・シュティバル ダニエル・テクレハイマノ ペーリ・ケムヌール英語版フランス語版
7 マーク・カヴェンディッシュ クリス・フルーム アントニー・ドゥラプラス英語版フランス語版
8 アレクシー・ヴュイエルモーズ英語版フランス語版 ペーター・サガン バルトシュ・フザルスキ英語版
9 BMC・レーシングチーム 受賞なし
10 クリス・フルーム アンドレ・グライペル クリス・フルーム ナイロ・キンタナ チーム・スカイ ケネス・ヴァンビルセン英語版
11 ラファウ・マイカ ペーター・サガン ダニエル・マーティン
12 ホアキン・ロドリゲス モビスター・チーム ミハウ・クフャトコフスキ
13 フレフ・ファン・アヴェルマート トーマス・デ・ヘント
14 スティーヴ・カミングス ピエール=リュック・ペリション英語版フランス語版
15 アンドレ・グライペル ペーター・サガン
16 ルーベン・プラサ
17 ジーモン・ゲシュケ ジーモン・ゲシュケ
18 ロマン・バルデ ホアキン・ロドリゲス ロマン・バルデ
19 ヴィンチェンツォ・ニバリ ロマン・バルデ ピエール・ロラン
20 ティボー・ピノ クリス・フルーム アレクサンドル・ジュニエ
21 アンドレ・グライペル 受賞なし
最終成績 クリス・フルーム ペーター・サガン クリス・フルーム ナイロ・キンタナ モビスター・チーム ロマン・バルデ

最終成績 編集

個人総合成績 編集

選手名 国籍 チーム 時間
1  クリス・フルーム   イギリス チーム・スカイ 84時間46分14秒
2 ナイロ・キンタナ   コロンビア モビスター・チーム +1分12秒
3 アレハンドロ・バルベルデ   スペイン モビスター・チーム +5分25秒
4 ヴィンチェンツォ・ニバリ   イタリア アスタナ・プロチーム +8分36秒
5 アルベルト・コンタドール   スペイン ティンコフ=サクソ +9分48秒
6 ロベルト・ヘーシンク   オランダ チーム・ロットNL・ユンボ +10分47秒
7 バウク・モレマ   オランダ トレック・ファクトリー・レーシング +15分14秒
8 マティアス・フランク   スイス IAMサイクリング +15分39秒
9 ロマン・バルデ   フランス AG2R・ラ・モンディアル +16分00秒
10 ピエール・ロラン   フランス チーム・ユーロップカー +17分30秒

ポイント賞 編集

選手名 国籍 チーム ポイント
1  ペーター・サガン   スロバキア ティンコフ=サクソ 432
2 アンドレ・グライペル   ドイツ ロット・ソウダル 366
3 ジョン・デーゲンコルプ   ドイツ チーム・ジャイアント=アルペシン 298
4 マーク・カヴェンディッシュ   イギリス エティックス・クイックステップ 206
5 ブリアン・コカール   フランス チーム・ユーロップカー 152

山岳賞 編集

選手名 国籍 チーム ポイント
1  クリス・フルーム   イギリス チーム・スカイ 119
2 ナイロ・キンタナ   コロンビア モビスター・チーム 108
3 ロマン・バルデ   フランス AG2R・ラ・モンディアル 90
4 ティボー・ピノ   フランス FDJ 82
5 ホアキン・ロドリゲス   スペイン チーム・カチューシャ 78


新人賞 編集

選手名 国籍 チーム 時間
1  ナイロ・キンタナ   コロンビア モビスター・チーム 84時間47分26秒
2 ロマン・バルデ   フランス AG2R・ラ・モンディアル +14分48秒
3 ワレン・バルギル   フランス チーム・ジャイアント=アルペシン +30分03秒
4 ティボー・ピノ   フランス FDJ +37分40秒
5 ボブ・ユンゲルス   ルクセンブルク トレック・ファクトリー・レーシング +1時間32分09秒

チーム時間賞 編集

1位 モビスター・チーム 255時間24分24秒
2位 チーム・スカイ +57分23秒
3位 ティンコフ=サクソ +1時間00分12秒
4位 アスタナ・プロチーム +1時間12分09秒
5位 MTN=クベカ +1時間14分32秒

参考文献 編集

脚注 編集

  1. ^ 2015年ツールはユトレヒトで開幕 オランダで6回目のグランデパールシクロワイアード 2013年11月9日
  2. ^ 第21ステージ J SPORTS 2015年7月13日閲覧
  3. ^ ネルソン・マンデラの誕生日。
  4. ^ 当時選手たちの間で風邪が蔓延しており、フルームは風邪をひいてしまった。バレないように隠すことが辛かったと語っている。

外部リンク 編集