ドネツ川
ドネツ川(ドネツがわ、ウクライナ語: Сіверський Донець[注 1]: 、ロシア語: Северский Донец[注 2]、通常は単にDonets)は東ヨーロッパ平原の南に位置する川。
ドネツ川 | |
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延長 | 1,053 km |
平均流量 | 200 m³/s |
流域面積 | 98,900 km² |
水源 | 中央ロシア高地 |
水源の標高 | 215 m |
河口・合流先 | ドン川 |
流域 | ロシア、ウクライナ |
ウクライナで4番目に長い川(参考:ウクライナの川の一覧)である。ベルゴロド北方の中央ロシア高地に発し、ウクライナの南東部(ハルキウ州、ドネツィク州、 ルハーンシク州)を貫流し、再びロシア(ロストフ州)を流れ、アゾフ海からおよそ100km[注 3]上流で、ドン川に合流する。ウクライナで4番目に大きく[注 4]、東ウクライナで最も大きな川である。東ウクライナで真水の取水源として重要である。ドネツ盆地(一般に、ドンバスとして知られる)はこの川の名前に由来する。ドンバスはウクライナの重要な採炭地域である。
語源編集
ドン(Дон)およびその指小形ドネツ(Донец)[注 5]はイラン系サルマタイ語 Dānu(川)に由来する。V.Abaevによれば、ドンはイラン系スキタイ・サルマタイ語 Dānu(川)に由来する。スキタイ・サルマタイ人は、紀元前1100年から中世初期の間、この地域から黒海の北方にかけて居住していた。
2世紀にプトレマイオスはドン川をTanaisとして知った。そして西ヨーロッパ人はドン川が「小Tanais」すなわちドネツと呼ばれる重要な支流を持つと認識した。
スラヴ名Северский Донец(ラテン翻字例: Severcky Donets)は、その川がシヴェーリア人(Severians)の地から流れ出している事実に由来する。
イタリア系ポーランド人歴史家en:Alexander Guagnini(1538-1614)は次のように書いた。「シヴェーリア公国に淵源を持ち(それ故Donets Severskyと呼ばれた)、アゾフの上でTanaisに流れ込む小さなTanaisもある」と。
「北ドネツ川」と表記される場合があるが、これはシヴェーリア人に由来するセーベルスキー(Северский、Severcky)の名が、誤って「北の」を意味するセーベルヌイ(Северный、Severny)に置き換えられたためである[1]。
地理学と水文学編集
ドネツ川は、東ウクライナ最大の川であり、ドン川最大の支流である。全長は1,053km、流域面積は98,900平方km。全長の大部分950kmはウクライナを横断して拡がる。年間の平均流量(毎秒)は源流付近で25立方メートル、ドン川との合流点で200立方メートルである。
ドネツ川源流はベルゴロドの北、プロホロフカ地区、Podolkhi村近くの中央ロシア高地、海抜200メートルの地点に位置する。
その流域には3,000以上の川があり、内425は10km以上、11は100km以上の長さがある; 内1011の川は直接ドネツ川に流れ込む。
これらの河川群の元は大部分が融雪水であり、その結果、水の供給量は年間通じて一定ではない。春の大増水(spring flood)はおよそ2ヶ月間、2月から4月まで続く。この期間の水位は3メートルから8メートル増加する。洪水(excessive flood)は川沿いに建設された豊富な人工貯水池のおかげで滅多にない。
川幅は大部分30から70メートルの範囲であり、時に100-200メートル、貯水池地域では4kmに及ぶ。川底は砂質で平坦でなく、深さは0.3から10メートル、平均2.5メートルである。
ドネツ川は12月半ば頃から3月後半まで凍結し、20–50 cmの厚い氷で覆われる。ドン川河口から218km、海抜5.5メートルの位置で合流する。ドネツ川の高低差は195メートル、平均勾配は0.18m/kmである。
戦場として編集
脚注編集
注釈編集
- ^ ラテン文字翻字例 Siverskyi Donets
カナ表記はウクライナ語の日本語表記参照 - ^ ラテン文字翻字例 Severcky Donets
カナ表記はWikipedia:外来語表記法/ロシア語参照 - ^ 直線距離で約130km
- ^ 流域面積
- ^ Дон + ец :-ец はロシア語の接尾辞で時に指小形を表す
出典編集
- ^ ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、日本大百科全書. “ドネツ川”. コトバンク. 株式会社DIGITALIO. 2020年11月24日閲覧。
- ^ “ロシア軍の渡河作戦、ウクライナ軍が「9回阻止」…戦車など「70台以上破壊」”. 読売新聞オンライン (2022年5月15日). 2022年5月17日閲覧。