ハシビロコウ

ハシビロコウ(嘴広鸛、Balaeniceps rex)は、ペリカン目ハシビロコウ科ハシビロコウ属に分類される鳥類。本種のみでハシビロコウ科ハシビロコウ属を構成する。

ハシビロコウ
ハシビロコウ
ハシビロコウ Balaeniceps rex
保全状況評価[1][2][3]
VULNERABLE
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 VU.svgワシントン条約附属書II
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: ペリカン目 Pelecaniformes
: ハシビロコウ科
Balaenicipitidae Bonaparte, 1853
: ハシビロコウ属 Balaeniceps
: ハシビロコウ B. rex
学名
Balaeniceps rex Gould, 1850[3]
和名
ハシビロコウ[4][5]
英名
Shoebill
Whale-headed stork
[3][4]

分布域

目次

分布編集

形態編集

大型の鳥類で、頭頂までの高さは110-140センチメートル、中には152センチメートルに達するものもある。翼開長230-260センチメートル。体重4-7キログラム[6][7]。オスは平均5.6キログラムと、メス(平均4.9キログラム)よりも大きい[8]。羽色はスレート灰色で、背では緑色の光沢を帯びる[5]。羽毛は、青みがかった灰色。後頭に短い冠羽がある[5]

巨大なくちばしを持ち、嘴(くちばし)は淡黄色に不規則な灰色の模様がある。嘴峰長18.8-24センチメートル。和名は「嘴の広いコウノトリ」、英名の Shoebill は「靴のような嘴」を意味している。また、学名はラテン語で「クジラ頭の王様」という意味。脚は長く、ふ蹠長21.7-25.5センチメートル。中趾長は16.8-18.5センチメートル。

分類編集

サギ類・コウノトリ類・ペリカン類に類似した形態・生態から、分類には諸説あったがコウノトリ目に含める説が主流とされていた。骨格からペリカンに近縁とする説もあったが、主流ではなかった。ハシビロコウの分類には諸説あったが、伝統的にはコウノトリ目の下位に分類されることが多い。しかし、近年のDNA分析による分類ではペリカン類に近いことが分かってきた[9]。その他、サギ類に近いという説もある[10]

生態編集

 
ハシビロコウのつがい
 
正面から見た頭部
 
南スーダン自治政府の紋章(非公式、2005年-2011年)

夜行性で、昼間はヨシやパピルスなどの草の間などで休む[5]。単独で生活する[5]。基本的には単独行動を好む。頸部をすぼめながら飛翔する[4][5]羽ばたきの回数は1分間に150回と、鳥類の中では非常にゆっくりとしている。長い飛翔は稀だが、興奮した際には、元いた場所から100-500メートルほど飛ぶこともある[8]。鳴管が退化しており鳴くことは少ないが、嘴を打ち鳴らしたり(クラッタリング)飛翔中に鳴くこともある[5]。近縁種のコウノトリ[要検証 ]と同じくめったに鳴かず、クラッタリングという行為をする。嘴をたたき合わせるように激しく開閉して音を出す行動で、ディスプレイや仲間との合図に用いられる。また、首を振りおじぎをする様は相手に対する親愛を意味しているという。ゆったりとした動きで、しばしば彫像のように動きを止めるため、「動かない鳥」として知られる。

食性は主に魚食性で、ハイギョの他、ポリプテルス・セネガルスティラピアナマズなどを食べる。カエル、水棲のヘビ、ナイルオオトカゲ、ワニの子供など、湿地に住む脊椎動物を食べることもある。嘴を下方へ向けたまま直立して動かずに、足元を通りかかった獲物を頸部を伸ばし嘴で咥えて捕食する[4]。捕えた獲物は嘴を動かして破砕する[4]。獲物を狙うときはじっとして動かず、これは大きな図体で動き回り魚に警戒感を起こさせることを避けるためと考えられる。大型のハイギョなどを好み、ハイギョが空気を吸いに水面に浮かび上がる隙を見て、素早く嘴で捕まえ丸呑みする。消化には数時間を要し、その作業にそれなりのエネルギーが費やされる。時たま、カバが水中にいる際に魚を水面に追いやることがあり、その行動が期せずして、餌を獲ろうと水辺に立つハシビロコウのためになることがある[8]

草の間に水生植物を積み上げた産座の直径が1メートルに達する巣を作る[5]。ペアの間ではクラッタリングやおじぎのようなディスプレイを行う[4]。1 - 2個(3個の例もある)の卵を産む。雌雄交替で抱卵し、抱卵期間は約30日[5]。生後3年で成熟する[5]

人間との関係編集

農地開発や牧草地への転換などによる生息地の破壊、石油採掘や農薬・皮革廃液などによる水質汚染、家畜に踏みつけられることによる巣の破壊、食用・卵や雛も含めた飼育目的の狩猟・捕獲などにより生息数は減少している[3]。1987年にワシントン条約附属書IIに掲載されている[2]。生息数は1997年に12,000 - 15,000羽とする報告例があるが、2002年には5,000 - 8,000羽、2006年には10,000羽以下とする報告例もある[3]

2013年現在、飼育下繁殖例は2008年のペリダイザ動物公園(旧称:パラディシオ公園)フランス語: Pairi Daiza)で生まれた雄と雌、と2009年にタンパ・ローリー・パーク動物園(英語: Lowry Park Zoo)で生まれた雌[11]の2例に限られる。

実際の寿命は解明されていないが、高齢になるに従い瞳の色が金から青に変化する。伊豆シャボテン公園で飼育されているオスの「ビル」は、進化生物学研究所において約10年飼育された後、1981年に来園し、推定年齢43歳以上(2013年時点)と国内で最も長寿のハシビロコウ[12]。国内で唯一放し飼いにされている[12]。性格が攻撃的であり、動物園などでは一つの鳥舎に複数の個体を入れておくと、互いに激しくつつき合って喧嘩をする。さらに、人間による飼育期間が長くなるほど、攻撃性が高まる傾向がある。このため、人の手による繁殖は非常に難しく、世界的にも手詰まりの状態にある[13]

画像編集

動物園のハシビロコウ編集

出典編集

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  1. ^ Appendices I, II and III<https://cites.org/eng>(Accessed[リンク切れ] 22/07/2017)
  2. ^ a b UNEP (2017). Balaeniceps rex. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. (Accessed 22/07/2017)
  3. ^ a b c d e f BirdLife International. 2016. Balaeniceps rex. The IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T22697583A93622396. http://dx.doi.org/10.2305/IUCN.UK.2016-3.RLTS.T22697583A93622396.en. Downloaded on 22 July 2017.
  4. ^ a b c d e f James Hancock 「ハシビロコウ」上田恵介訳『動物大百科7 鳥 I』黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編、平凡社1986年、88、93頁。
  5. ^ a b c d e f g h i j 森岡弘之 「ハシビロコウ科の分類」『世界の動物 分類と飼育8 コウノトリ目+フラミンゴ目』黒田長久・森岡弘之監修、東京動物園協会、1985年、78-79、158頁。
  6. ^ Balaeniceps rex. Fsbio-hannover.de. Retrieved on 2012-08-21.
  7. ^ Stevenson, Terry and Fanshawe, John (2001). Field Guide to the Birds of East Africa: Kenya, Tanzania, Uganda, Rwanda, Burundi. Elsevier Science, ISBN 978-0856610790
  8. ^ a b c Hancock & Kushan, Storks, Ibises and Spoonbills of the World. Princeton University Press (1992), ISBN 978-0-12-322730-0.
  9. ^ Mayr, Gerald(2003):The phylogenetic affinities of the Shoebill(Balaeniceps rex). Journal fur Ornithologie 144(2):157-175. [English with German abstract] HTML abstract
  10. ^ Hagey, J. R.; Schteingart, C. D.; Ton-Nu, H.-T. & Hofmann, A. F.(2002):A novel primary bile acid in the Shoebill stork and herons and its phylogenetic significance. Journal of Lipid Research 43(5):685?690. PDF fulltext
  11. ^ Tampa's Lowry Park Zoo.. “At the Zoo: Shoebill Stork”. 2015年11月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年8月27日閲覧。
  12. ^ a b 株式会社サボテンパークアンドリゾート 広報部. “伊豆シャボテン公園「ハシビロコウ『ビル』来園32周年記念イベント」開催のお知らせ(2013年4月20日付) (PDF)”. 2016年3月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年3月2日閲覧。
  13. ^ 柚木まり (2014年6月2日). “動かぬ怪鳥 繁殖へ動く ハシビロコウ”. 東京新聞. オリジナル2014年6月3日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140603031004/http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014060202000110.html 2014年6月2日閲覧。 
  14. ^ ハシビロコウ「ビル」来園35周年 伊豆シャボテン公園、世界最長寿/静岡”. 毎日新聞 (2016年4月29日). 2016年10月25日閲覧。

関連項目編集