ジョアン・ミル

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この名前は、スペイン語圏の人名慣習に従っています。第一姓(父方の)はミル第二姓(母方の)はマイラタです。(Template:スペイン語圏の姓名

ジョアン・ミル・マイラタ (Joan Mir Mayrata, 1997年9月1日 - ) は、スペインバレアレス諸島パルマ・デ・マヨルカ出身のオートバイレーサー。身長181 cm、体重68 kg[1]

ジョアン・ミル
ホルヘ・ロレンソ (写真左) と競り合うミル (写真右)
2019年アメリカGP
国籍 スペインの旗 スペイン
生年月日 (1997-09-01) 1997年9月1日(23歳)
バレアレス諸島マヨルカ島
パルマ・デ・マヨルカ
現在のチーム チーム・スズキ・エクスター
ゼッケン 36
ウェブサイト MIR 36
レースでの経歴
ロードレース世界選手権 MotoGPクラス
活動期間2019 -
マニファクチャラースズキ
チャンピオン1 (2020)
2020年 順位1位 (171 pts)
出走回数 勝利数 表彰台 PP FL 総ポイント
34 1 8 0 0 301
ロードレース世界選手権 Moto2クラス
活動期間2018年
マニファクチャラーカレックス
チャンピオン0
出走回数 勝利数 表彰台 PP FL 総ポイント
18 0 4 0 1 155
ロードレース世界選手権 Moto3クラス
活動期間2015年 - 2017年
マニファクチャラーKTMホンダ
チャンピオン1 (2017)
出走回数 勝利数 表彰台 PP FL 総ポイント
37 11 16 2 5 485

2015年よりロードレース世界選手権に参戦。2017年のMoto3クラスチャンピオン。2019年よりMotoGPクラスにチーム・スズキ・エクスターから参戦し、2020年にMotoGPクラスチャンピオンを獲得した。

経歴編集

初期の活動編集

ミルは6歳の頃、初めて小型オートバイに乗ったが、同世代のライバルたちに比べ、レースキャリアの始まりは遅かった[1]。父親はマヨルカ島でローラースケートショップを営んでおり[1]、ミルの少年時代はローラースケートやスケートボードキックスクーターと共にあった[2]。やがて、世界GP125ccクラスのライダーだった叔父のジョアン・ペレロ英語版に影響され、10歳の頃からレースに取り組むようになった。チーチョ・ロレンソ(ホルヘ・ロレンソの父親)が運営するスクールや、バレアレス・モーターサイクル連盟のスクールでライディングの基礎を学び、バレアレス選手権やバンキアカップで経験を積んだ[2]

2013年より若手ライダーの登竜門、レッドブルMotoGPルーキーズカップ英語版に参戦。2014年は3勝を挙げ、ホルヘ・マルティンに次ぐランキング2位を獲得した。2015年はFIM CEVレプソルMoto3ジュニア世界選手権に参戦し、4勝を挙げてランキング4位。同年のMotoGP第16戦オーストラリアGP尾野弘樹の代役として出場し、世界選手権Moto3クラスにデビューした[3]

ロードレース世界選手権参戦編集

Moto3クラス編集

2016年、レオパード・レーシングよりMoto3クラスにレギュラー参戦を開始。前半戦は苦戦するも、第10戦オーストリアGPで初ポールポジションからポール・トゥ・ウィンで初優勝。後半戦はコンスタントに上位を走り、2位1回・3位1回を加え年間ランキング5位でルーキー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた。

2017年はマシンをKTMからホンダ・NSF250RWにスイッチ。接戦でアクシデントの多いMoto3において全18戦中17戦でポイント獲得、うち優勝10回・2位2回・3位1回という卓越した成績を収め、ランキング2位に93点差をつけMoto3クラスチャンピオンを獲得した[3]。軽量クラスで年間2桁勝利を記録したのは、125 cc時代のバレンティーノ・ロッシ(1997年11勝)とマルク・マルケス(2010年10勝)以来となる。

Moto2クラス編集

2018年はMoto2クラスにステップアップし、2017年王者フランコ・モルビデリの後継としてマークVDSレーシングチームに加入。4度の表彰台(2位2回・3位2回)、ランキング6位でルーキー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた。

シーズン前半の第5戦フランスGP後に、早くも2019年からMotoGPクラスにステップアップすることを発表した[4]。ミルはホンダと仮契約を交わしていたが、スズキから好条件のオファーを受け、Moto2クラスのタイトルを狙うよりも、最高峰のMotoGPクラスにファクトリーライダーとして昇格するチャンスを選択した [5]

MotoGPクラス編集

2019年はチーム・スズキ・エクスターへ加入し、アレックス・リンスのチームメイトとしてスズキ・GSX-RRをライディングする[6]。第10戦チェコGP後のブルノテストで転倒し、肺挫傷のため2戦を欠場[7]。復帰後は7戦連続ポイントを獲得し、オーストラリアGPでシーズン最高5位を記録。初年度をランキング12位で終える。2019年のルーキー・オブ・ザ・イヤーにはファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)が選ばれ、ミルの3クラス連続受賞はならなかった。

2020年も同じ体制で2年目のシーズンを迎えた。新型コロナウイルス感染症によるカレンダー再編、王者マルク・マルケス(レプソル・ホンダ)の長期欠場という混迷のシーズンにおいて、ミルは優勝争いに浮上する。序盤3戦で2度の転倒リタイアを喫したが、第5戦オーストリアGPで2位初表彰台を獲得。続くスティリアGPではレース中盤までトップを快走するも、赤旗中断・再スタートの時点で新品のフロントタイヤが残っておらず、4位に後退した。その後も表彰台の常連に定着し、アラゴンGP終了時点でクアルタラロを抜きポイントリーダーに立つ。第13戦ヨーロッパGP(バレンシア)ではMotoGPクラス初優勝をリンスとのワンツーフィニッシュで達成[8]。続く第14戦バレンシアGPでシリーズチャンピオン獲得が決定した[9][10]。グランプリレギュラー参戦開始から5年目、23歳75日での最高峰クラス制覇は史上7番目の若さ[11]。また、2000年のGP500 ccクラスのケニー・ロバーツJr.以来20年ぶりにスズキのチャンピオンライダーとなり、同社の創業100周年・世界GP参戦60周年に花を添えた[12]

人物編集

スペイン語の"J"の発音から「ホアン・ミル[13]」と表記される場合もあったが、本人は「ジョアン」が正しいとのこと[14]

出身地はホルヘ・ロレンソと同じマヨルカ島だが、憧れのライダーはバレンティーノ・ロッシだった[2]。また、母国スペインのテニス選手ラファエル・ナダルがコート内外で見せるふるまいを尊敬している[2]

レース前の準備では必ず新品の青いパンツを履き、靴下やライディングスーツを右から着るというルーティンを通じて集中力を高めていく[14]

ステップアップの過程で苦戦する選手も多いなか、ミルは1年目に環境に慣れ、2年目にはチャンピオンを争うという適応力を示しており、「クレバーでハイレベルなライディングをコンスタントにできるライダー」と評価されている[15]。2017年のMoto3タイトルを制したときは、ポールポジション1回ながら優勝10回を記録した。2020年は最高峰クラスでは史上最も少ないシーズン1勝でチャンピオンを獲得した(それまでの最少記録は2勝が4回)[11]。ポールポジション0回でのチャンピオンは1992年ウェイン・レイニー以来28年ぶり[11]

おもな戦績編集

世界選手権編集

シーズン別編集

クラス マシン チーム 出走回数 勝利数 表彰台数 PP FL ポイント ランキング
2015 Moto3 ホンダ・NSF250R レオパード・レーシング 1 0 0 0 0 0 NC
2016 Moto3 KTM・RC250GP レオパード・レーシング 18 1 3 1 2 144 5位
2017 Moto3 ホンダ・NSF250RW レオパード・レーシング 18 10 13 1 3 341 1位
2018 Moto2 カレックス EG 0,0 Marc VDS 18 0 4 0 1 155 6位
2019 MotoGP スズキ・GSX-RR チームスズキエクスター 17 0 0 0 0 92 12位
2020 MotoGP スズキ・GSX-RR チームスズキエクスター 14 1 7 0 0 171 1位
2021 MotoGP スズキ・GSX-RR チームスズキエクスター 3 0 1 0 0 38* 5位*
合計 89 12 28 2 6 941

クラス別編集

クラス デビュー戦 初表彰台 初勝利 出走回数 勝利数 表彰台数 PP FL ポイント タイトル
Moto3 2015-2017 2015年オーストラリア 2016年オーストリア 2016年オーストリア 37 11 16 2 5 485 1
Moto2 2018 2018年カタール 2018年フランス 18 0 4 0 1 155 0
MotoGP 2019-現在 2019年カタール 2020年オーストリア 2020年ヨーロッパ 34 1 8 0 0 301 1
合計 2015-現在 89 12 28 2 6 941 2

年別編集

クラス マシン 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 順位 ポイント
2015 Moto3 ホンダ QAT AME ARG SPA FRA ITA CAT NED GER IND CZE GBR RSM ARA JPN AUS
Ret
MAL VAL NC 0
2016 Moto3 KTM QAT
12
ARG
5
AME
Ret
SPA
6
FRA
25
ITA
7
CAT
8
NED
8
GER
Ret
AUT
1
CZE
8
GBR
9
RSM
3
ARA
5
JPN
9
AUS
Ret
MAL
Ret
VAL
2
5位 144
2017 Moto3 ホンダ QAT
1
ARG
1
AME
8
SPA
3
FRA
1
ITA
7
CAT
1
NED
9
GER
1
CZE
1
AUT
1
GBR
5
RSM
2
ARA
1
JPN
17
AUS
1
MAL
1
VAL
2
1位 341
2018 Moto2 カレックス QAT
11
ARG
7
AME
4
SPA
11
FRA
3
ITA
3
CAT
Ret
NED
5
GER
2
CZE
Ret
AUT
8
GBR
C
RSM
5
ARA
6
THA
Ret
JPN
11
AUS
2
MAL
10
VAL
Ret
6位 155
2019 MotoGP スズキ QAT
8
ARG
Ret
AME
17
SPA
Ret
FRA
16
ITA
12
CAT
6
NED
8
GER
7
CZE
Ret
AUT
GBR
RSM
8
ARA
14
THA
7
JPN
8
AUS
5
MAL
10
VAL
7
12位 92
2020 SPA
Ret
ANC
5
CZE
Ret
AUT
2
STY
4
RSM
3
EMI
2
CAT
2
FRA
11
ARA
3
TER
3
EUR
1
VAL
7
POR
Ret
1位 171
2021 QAT
4
DOH
7
POR
3
SPA
FRA
ITA
CAT
GER
NED
FIN
AUT
GBR
ARA
RSM
JPN
THA
AUS
MAL
VAL
5位* 38*

* 現在進行中

脚注編集

  1. ^ a b c Joan Mir” (英語). Team SUZUKI. SUZUKI Motor Corporatin (2020年). 2020年11月12日閲覧。
  2. ^ a b c d Biography”. MIR36 (2020年). 2020年11月12日閲覧。
  3. ^ a b ジョアン・ミル、2017年Moto3クラスチャンピオン”. MotoGP.com (2017年10月22日). 2020年11月12日閲覧。
  4. ^ “MotoGP:スズキ、未決の1席に2017年Moto3王者ジョアン・ミルの起用を発表。2019年から2年契約結ぶ”. autosport web. (2018年6月11日). https://www.as-web.jp/bike/378830?all 2020年11月12日閲覧。 
  5. ^ “ジョアン・ミル「ホンダよりもスズキのオファーの方が充実していた」”. motorsport.com日本版. (2018年7月12日). https://jp.motorsport.com/motogp/news/joanmir-motogp/3139727/ 2020年11月12日閲覧。 
  6. ^ スズキ、MotoGPの2019年シーズン参戦体制を発表”. スズキ (2019年2月4日). 2020年11月12日閲覧。
  7. ^ “ジョアン・ミル、善戦見せるも裏では“呼吸に苦戦”。完全回復はまだ先?”. motorsport.com日本版. (2019年12月20日). https://jp.motorsport.com/motogp/news/mir-had-breathing-problems-following-brno-crash/4615168/ 2020年11月12日閲覧。 
  8. ^ MotoGP 第13戦 ヨーロッパGP 決勝”. スズキレーシングレポート. スズキ株式会社 (2020年11月8日). 2020年11月18日閲覧。
  9. ^ MotoGP 第14戦 バレンシアGP 決勝”. スズキレーシングレポート. スズキ株式会社 (2020年11月15日). 2020年11月18日閲覧。
  10. ^ “2020年MotoGPチャンピオンシップ優勝 ジョアン・ミル 「スズキでのタイトル獲得は、他のメーカーでのタイトル獲得より価値がある」”. 気になるバイクニュース. (2020年11月16日). https://kininarubikenews.com/archives/52560 2020年11月18日閲覧。 
  11. ^ a b c ジョアン・ミルのチャンピオンナンバー”. MotoGP.com (2020年11月15日). 2020年11月18日閲覧。
  12. ^ “ジョアン・ミルがMotoGPチャンピオンに。スズキ20年ぶりのタイトル”. RIDING SPORT. (2020年11月16日). https://www.ridingsport.com/news_detail.html?code=2266 2020年11月18日閲覧。 
  13. ^ HONDA Riders Close UP Moto3 ホアン・ミル Leopard Racing”. 本田技研工業 (2017年). 2020年11月15日閲覧。
  14. ^ a b MotoGPライダー ジョアン・ミルInterview 一旗揚げてやるぜ!の気概を感じさせた好青年「ジョアン」ミル選手”. Web Mr.Bike (2019年3月4日). 2020年11月16日閲覧。
  15. ^ “最高峰クラス参戦2年目にして才能開花。チャンピオンシップをリードするジョアン・ミル/MotoGP第13戦レビュー”. autosport web. (2020年11月11日). https://www.as-web.jp/bike/644143?all 2020年11月16日閲覧。 

関連項目編集

外部リンク編集