マイクロ
マイクロ(英: micro、記号: 立体の μ )は国際単位系 (SI) における接頭語の一つで、基礎となる単位の 10−6倍(= 百万分の一、0.000001倍)の量であることを示す。したがって、マイクロはミリの0.001倍、ナノの1000倍である。
概要
編集マイクロは、ギリシャ語で「小さい」という意味の μικρός (mikros) に由来する。1874年、英国科学振興協会 (BA) がCGS単位系の電磁気の単位の標準化を行う際に、その一部としてメガとともに新たに導入された。CGS単位系で電磁気の単位を組み立てると、その示す値が非常に大きくまたは小さくなるため、それまであった接頭辞だけでは足りず、新たな接頭辞を導入する必要があった。1960年の第11回国際度量衡総会 (CGPM) でSIが制定される際、正式に承認された。
表記
編集国際単位系 (SI) の規定では、"A(アンペア)"や"g(グラム)"のような単位記号と同様に、"k(キロ)"や"p(ピコ)"のようなSI接頭語も立体(ローマン体)で表記することが必須 (mandatory) であると定められている[1][2][3][4]。したがって、しばしば、μ を斜体として「μ」(例えば、μm)と書かれることがあるが誤りである[5]。
μ | μ | ||||
立体(正しい) | 斜体(誤り) |
以下はマイクロメートルの表記の例である。
μm | μm | ||||
立体(正しい) | 斜体(誤り) |
マイクロを表す記号には次の2つがある。
- ユニコードの通常のギリシャ文字領域に存在するミュー「μ」(
U+03BC
GREEK LETTER SMALL MU) - Latin-1領域にあるマイクロ記号「µ」(
U+00B5
MICRO SIGN) (互換性のため)
ユニコードコンソーシアムは前者1.のギリシャ文字を推奨しているが、実装はマイクロ記号を認識できる必要があるとしている[6]。
前者1.のギリシャ文字「μ」(U+03BC
GREEK LETTER SMALL MU) を用いると、環境によっては斜体で表示されることがある[7]ので、後者2.の「µ」(U+00B5
MICRO SIGN)を用いる方がよい。
上記の2つの記号が共に使用することができない場合は、ラテン文字の"u"(小文字のユー)で代用されることもあるが、国際単位系国際文書の規定からは逸脱する。
単位以外
編集接頭語とは関係なく、大きさが(非常に)小さいものについて「マイクロ」を冠する言葉がいくつかある。この場合は「ミクロ」と発音することがある。
脚注
編集出典
編集- ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 産業技術総合研究所、計量標準総合センター、p.112、2020年4月。「接頭語記号は、その前後の文章の様式にかかわらず、単位記号と同様に立体で表記され、接頭語記号と単位記号の間に空白を空けずに記載する。」
- ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 産業技術総合研究所、計量標準総合センター、5.2、p.116、2020年4月。「単位記号は、その前後の文章で使われている活字書体にかかわらず、直立体で表記される。」
- ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 産業技術総合研究所、計量標準総合センター、2.3.1、p.98 欄外、2020年4月。「単位記号は、直立体(ローマン体)フォントで表記することになっており、これは必須である。」
- ^ The International System of Units (SI) 9th ed. Text in English 2.3.1 Base units p.130 欄外注
- ^ 物理量・数値・単位と分率の表記についての提言 「日本の出版・印刷業界には自社規格に強いこだわりがあるらしい。日本語ワープロソフトもその影響を受け,2バイト文字のギリシャ文字は斜字体(イタリック)になっているように見える。10-6を示す分量接頭記号 μ は,実社会に流通している印字のほとんどで μ となっている。円周率の π でも同じ現象が見られる。大学入試センター試験の試験問題でも,数年前まではマイクロリットルの単位記号を「μℓ」と表記していた科目があった。学界だけでなく,初等中等教育を含めた一般社会でも,自然科学における記号では,立字体と斜字体ではその文字が意味する内容が異なることの認識が必要であろう。」、岩本振武、ぶんせき、2017年8月号、5・1 ギリシャ文字の字体、pp.343-344
- ^ Unicode Technical Report #25 Unicode Support for Mathematics
- ^ 物理量・数値・単位と分率の表記についての提言 岩本振武、ぶんせき、2017年8月号、5・1 ギリシャ文字の字体、pp.343-344
外部リンク
編集- 「µ」と「μ」は違う文字! 違いと使い分け (マイクロとミュー) 情報の海を泳ぐ、2021-11-23
関連項目
編集接頭語 | 記号 | 10n | 十進数表記 | 漢数字表記 | short scale | メートル法への導入年 | 国際単位系における制定年 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
クエタ (quetta) | Q | 1030 | 1000000000000000000000000000000 | 百穣 | nonillion | - | 2022年 |
ロナ (ronna) | R | 1027 | 1000000000000000000000000000 | 千𥝱 | octillion | ||
ヨタ (yotta) | Y | 1024 | 1000000000000000000000000 | 一𥝱 | septillion | 1991年 | |
ゼタ (zetta) | Z | 1021 | 1000000000000000000000 | 十垓 | sextillion | ||
エクサ (exa) | E | 1018 | 1000000000000000000 | 百京 | quintillion | 1975年 | |
ペタ (peta) | P | 1015 | 1000000000000000 | 千兆 | quadrillion | ||
テラ (tera) | T | 1012 | 1000000000000 | 一兆 | trillion | 1960年 | |
ギガ (giga) | G | 109 | 1000000000 | 十億 | billion | ||
メガ (mega) | M | 106 | 1000000 | 百万 | million | 1874年 | |
キロ (kilo) | k | 103 | 1000 | 千 | thousand | 1795年 | |
ヘクト (hecto) | h | 102 | 100 | 百 | hundred | ||
デカ (deca) | da | 101 | 10 | 十 | ten | ||
100 | 1 | 一 | one | ||||
デシ (deci) | d | 10−1 | 0.1 | 一分 | tenth | 1795年 | 1960年 |
センチ (centi) | c | 10−2 | 0.01 | 一厘 | hundredth | ||
ミリ (milli) | m | 10−3 | 0.001 | 一毛 | thousandth | ||
マイクロ (micro) | μ | 10−6 | 0.000001 | 一微 | millionth | 1874年 | |
ナノ (nano) | n | 10−9 | 0.000000001 | 一塵 | billionth | - | |
ピコ (pico) | p | 10−12 | 0.000000000001 | 一漠 | trillionth | ||
フェムト (femto) | f | 10−15 | 0.000000000000001 | 一須臾 | quadrillionth | 1964年 | |
アト (atto) | a | 10−18 | 0.000000000000000001 | 一刹那 | quintillionth | ||
ゼプト (zepto) | z | 10−21 | 0.000000000000000000001 | 一清浄 | sextillionth | 1991年 | |
ヨクト (yocto) | y | 10−24 | 0.000000000000000000000001 | septillionth | |||
ロント (ronto) | r | 10−27 | 0.000000000000000000000000001 | octillionth | 2022年 | ||
クエクト (quecto) | q | 10−30 | 0.000000000000000000000000000001 | nonillionth |