全仏オープン
全仏オープン(ぜんふつオープン、フランス語: Les Internationaux de France de Tennis, Roland-Garros, 英語: The French Open)は、テニスの4大国際大会であるグランドスラムの一つである。5月末から6月初めにかけて、フランスの首都パリの名所ブローニュの森に隣接するスタッド・ローラン・ギャロス(Stade Roland Garros)で開催される。大会の運営はフランステニス連盟(FFT)が行う。
全仏オープン | |
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公式サイト | |
開催国 |
![]() パリ |
開催会場 |
スタッド・ローラン・ギャロス (1928–現在) |
サーフェス | クレー |
男子ドロー | 128S / 128Q / 64D |
女子ドロー | 128S / 96Q / 64D |
賞金総額 | €42,661,000 (2019)[1] |
グランドスラム | |

飛行家ローラン・ギャロス(1888年 - 1918年)の功績を称えて、会場にはギャロスの名前が冠されている。そのため、本大会は「ローラン・ギャロス・トーナメント」(Le Tournoi de Roland Garros)とも呼ばれる。
概要編集
全仏オープンは4大大会で唯一、クレー(赤土=レンガの粉)コートを用いることで知られており、他の大会とは違った展開が楽しめる。また、他のグランドスラムとは異なり、全仏オープンのみ開催が日曜日から始まり15日間の開催日程となっている。
毎年の大会は展開が波乱に富み、上位シード選手の早期敗退も多い[要出典]。たとえば、ピート・サンプラスは男子歴代4位(達成当時は歴代1位)の「14度」他の4大大会を制しながらも、全仏オープンだけは最後まで制覇できなかった。2000年代以降の最強テニスプレーヤーの系譜であるロジャー・フェデラーやノバク・ジョコビッチですら優勝経験は1度のみである(2018年現在)。歴代の男子シングルス優勝者には、同大会12度の優勝を誇るラファエル・ナダルのような「クレーコート・スペシャリスト」が優勝の大半を占める傾向があり、キャリア・グランドスラムを目指す最大の障壁となっている。
フランス人の観客の中で多くの選手はいわゆる「アウェイ」での戦いを強いられ、技術だけではなく強い精神力が勝敗を左右する。たとえば、地元フランスの選手との対戦では相手のアンフォーストエラーによる得点でも観客によるブーイングが起きることがある。最も過酷なトーナメントとも言われるグランドスラム大会である[要出典]。
この大会は、場内アナウンス、審判のコールその他は全てフランス語で行われる。また、選手が優勝スピーチの一部をフランス語で行うことでも知られている[要出典]。
この大会の結果を受けて更新される世界ランキングに基づいて出場選手が決められるため、オリンピックでテニスが復活して以降、オリンピックイヤーの大会はその最終選考会となっている。ランキングだけでは特定の国に選手が偏るため、1か国の出場枠が最大4人と決められており、強豪国の選手にとってはこの大会で勝ち抜くことがオリンピック出場権獲得のための絶対条件である[要出典]。
テレビ放送編集
フランス国内ではフランス・テレビジョンとユーロスポーツで、アメリカ国内ではNBCとテニス・チャンネルで放映されている[2]。
日本では、WOWOWとテレビ東京が共同で放映権を持っているため、試合の中継はこの2局で行われる。
日本人選手の活躍の無かった2008年から2013年まではテレビ東京では放送されず、WOWOWのみで放送された。2008年の大会では、テレビ東京は実況アナウンサーの現地への派遣や解説者の不足を理由に予選ラウンドから決勝までの全てを中継せず、WOWOWからの映像提供でスポーツニュース枠(「メガスポ!」)の時間で伝える程度であった。この間、テレビ東京での放送はWOWOWからの映像提供扱いで、「メガスポ!」の後継番組である「neo sports」のみしか放送されなかった。2014年度は錦織圭に関係する試合のみ生中継したが、2015年度は2007年以来8年ぶりにほぼ全日程で放送し、錦織に関係する試合は全試合中継を行った。2016年度以降も錦織に関係する試合は全試合中継を行ない、敗退後は男子シングル決勝戦を当日の深夜に録画中継で放送した。2017年の大会は同じ時期の開催と重なる「世界卓球2017年大会」とともに『テレビ東京スポーツ祭り』と題し、5月28日から連日放送した[3]。
2012年大会はWOWOWが放映権を取得した「UEFA EURO 2012」の衛星生中継との兼ね合いで、女子シングルス決勝・ダブルス決勝・男子シングルス決勝は録画中継で放送した。
歴史編集
- 1891年 - フランス選手権(Championnat de France)として創設された。最初は男子シングルスと男子ダブルスの2部門のみだった。
- 1897年 - 女子シングルス部門が追加された。
- 1902年 - 混合ダブルス部門が追加された。
- 1907年 - 女子ダブルス部門が追加された。
- 1925年 - それまではフランス人選手しか出場資格を得られなかったが、規約を改定して国際大会となった。正式な大会名を「フランス国際大会(Internationaux de France)」と改名した。
- 1928年 - 開催地がスタッド・ローラン・ギャロスに移転された。
- 1968年 - 四大大会で初のオープン大会となり、アマチュア・プロの別を問わず参加可能になった。
- 1995年 - センターコート「コート・フィリップ・シャトリエ」(Court Philippe-Chatrier)が増築された。
- 2007年 - 車いすテニス部門が追加された。詳細は、全仏オープン (車いすテニス)を参照。
- 2019年 - ショーコート「コート・シモーヌ・マチュー」(Court Simonne-Mathieu)が新設された[4]。
- 2020年 - 新型コロナウイルス感染症の影響により、開催が延期された[5][6][7]。
過去10年のシングルス優勝者編集
年 | 男子 | 女子 | 備考 |
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2011 | ラファエル・ナダル | 李娜 | 李娜は、アジア人選手として初の4大大会優勝。 |
2012 | ラファエル・ナダル | マリア・シャラポワ | シャラポワは、キャリア・グランドスラムを達成。 |
2013 | ラファエル・ナダル | セリーナ・ウィリアムズ | セリーナは、31歳8か月でオープン化以降の最年長優勝記録。 |
2014 | ラファエル・ナダル | マリア・シャラポワ | ナダルは、史上初の大会5連覇で大会最多の通算9勝目。 |
2015 | スタン・ワウリンカ | セリーナ・ウィリアムズ | ワウリンカは初優勝、セリーナは通算4勝目。 |
2016 | ノバク・ジョコビッチ | ガルビネ・ムグルサ | ジョコビッチは、キャリア・グランドスラムを達成。また4大大会4連勝達成。ムグルサは4大大会初優勝 |
2017 | ラファエル・ナダル | エレナ・オスタペンコ | ナダルは、10回目の優勝。オスタペンコは女子では大会初のノーシードから4大大会初優勝。また、ツアー初優勝が4大大会となった。 |
2018 | ラファエル・ナダル | シモナ・ハレプ | ハレプは4大大会初優勝。 |
2019 | ラファエル・ナダル | アシュリー・バーティ | バーティは4大大会初優勝。 |
2020 | ラファエル・ナダル | イガ・シフィオンテク |
記録編集
男子(1891年 - )編集
記録名 | 時代 | 選手名 | 記録値 | 年代 |
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シングルス 最多優勝回数 |
1924年以前 | マックス・デキュジス | 8回 | 1903年 - 1904年、1907年 - 1909年、1912年 - 1914年 |
1925年 - 1967年 | アンリ・コシェ | 4回 | 1926年、1928年、1930年、1932年 | |
1968年以後 | ラファエル・ナダル | 13回 | 2005年 - 2008年、2010年 - 2014年、2017年 - 2020年 | |
シングルス 最多連続優勝回数 |
1924年以前 | マックス・デキュジス | 3回 | 1907年 - 1909年と、1912年 - 1914年の2度 |
1925年 - 1967年 | フランク・パーカー | 2回 | 1948年 - 1949年 | |
ヤロスラフ・ドロブニー | 1951年 - 1952年 | |||
トニー・トラバート | 1954年 - 1955年 | |||
ニコラ・ピエトランジェリ | 1959年 - 1960年 | |||
1968年以後 | ラファエル・ナダル | 5回 | 2010年 - 2014年 | |
ダブルス 最多優勝回数 |
1924年以前 | マックス・デキュジス | 14回 | 1902年 - 1914年、1920年 |
1925年 - 1967年 | ロイ・エマーソン | 6回 | 1960年、1962年(ニール・フレーザー組)、1961年(ロッド・レーバー組)、 1963年(マニュエル・サンタナ組)、1964年(ケン・フレッチャー組)、1965年(フレッド・ストール組) | |
1968年以後 | ポール・ハーフース | 3回 | 1995年、1998年(ヤッコ・エルティン組)、2002年(エフゲニー・カフェルニコフ組) | |
エフゲニー・カフェルニコフ | 1996年 - 1997年(ダニエル・バチェク組)、2002年(ポール・ハーフース組) | |||
リーンダー・パエス | 1999年、2001年(マヘシュ・ブパシ組)、2009年(ルーカス・ドロウヒー組) | |||
マックス・ミルヌイ | 2005年、2006年(ヨナス・ビョークマン組)、2011年(ダニエル・ネスター組) | |||
ダニエル・ネスター | 2007年(マーク・ノールズ組)、2010年(ネナド・ジモニッチ組)、2011年(マックス・ミルヌイ組) | |||
ダブルス 最多連続優勝回数 |
1924年以前 | マックス・デキュジス | 13回 | 1902年 - 1914年 |
1925年 - 1967年 | ロイ・エマーソン | 6回 | 1960年 - 1965年 | |
1968年以後 | ジーン・メイヤー | 2回 | 1978年(ハンク・フィスター組) - 1979年(サンディ・メイヤー組) | |
エフゲニー・カフェルニコフ ダニエル・バチェク |
1996年 - 1997年 | |||
ヨナス・ビョークマン マックス・ミルヌイ |
2005年 - 2006年 | |||
ダニエル・ネスター | 2010年(ネナド・ジモニッチ組) - 2011年(マックス・ミルヌイ組) |
優勝回数ランキング編集
選手 | 回数 |
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ラファエル・ナダル | 13 |
マックス・デキュジス | 8 |
ビヨン・ボルグ | 6 |
アンリ・コシェ | 4 |
André Vacherot | 4 |
Paul Aymé | 4 |
女子(1897年 - )編集
この節の加筆が望まれています。 |
その他編集
優勝者一覧編集
優勝賞金(男女シングルス)編集
大会 | 金額(男子) | 金額(女子) |
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1989年大会 | 29万1752USドル | 25万7379USドル |
1990年大会 | 37万0000USドル | 29万3000USドル |
2002年大会 | 78万0000ユーロ | 76万0500ユーロ |
2003年大会 | 84万0000ユーロ | 81万9000ユーロ |
2004年大会 | 86万0000ユーロ | 83万8500ユーロ |
2005年大会 | 88万0000ユーロ | 86万7000ユーロ |
2006年大会 | 94万0000ユーロ | |
2007年大会 | 100万0000ユーロ | |
2008年大会 | 100万0000ユーロ | |
2009年大会 | 106万0000ユーロ | |
2010年大会 | 112万0000ユーロ | |
2011年大会 | 120万0000ユーロ | |
2012年大会 | 125万0000ユーロ | |
2013年大会 | 150万0000ユーロ | |
2014年大会 | 165万0000ユーロ | |
2015年大会 | 180万0000ユーロ | |
2016年大会 | 200万0000ユーロ | |
2017年大会 | 210万0000ユーロ | |
2018年大会 | 220万0000ユーロ | |
2019年大会 | 230万0000ユーロ |
優勝トロフィー編集
全仏オープンの優勝カップは、男子はムスクテール・カップ (en) (ムスクテールとは四銃士に由来)(1981年制作)、女子はスザンヌ・ランラン・カップ (fr) (1925年制作)と呼ばれる。オリジナルはFFT本部に保管され、通常は優勝者の表彰式の時にだけ外に出される。優勝者はオリジナルのカップに触れることはできるが、記念として渡されるのは一回り小さく作られたレプリカである[要出典]。
協賛スポンサー編集
脚注編集
- ^ “Roland-Garros 2019: the new prize money unveiled”. rolandgarros.com. 2019年11月16日閲覧。
- ^ “Broadcasters”. rolandgarros.com. 2020年3月18日閲覧。
- ^ スポーツ新聞各紙芸能欄記事やテレビ東京の番宣スポットより。
- ^ “温室に囲まれたテニスコートも、生まれ変わった全仏OPの会場”. afpbb.com. 2020年2月3日閲覧。
- ^ 当初は5月に開催される予定だったが、9月に延期となった。
- ^ “French Open delayed to September due to coronavirus”. afp.com. 2020年3月18日閲覧。
- ^ “テニス全仏OP、9月に延期”. this.kiji.is. 2020年3月18日閲覧。
- ^ a b “Partners”. rolandgarros.com. 2020年3月18日閲覧。
- ^ “The history of the partnership between Roland-Garros and BNP Paribas”. group.bnpparibas. 2020年4月19日閲覧。
関連項目編集
外部リンク編集
- 全仏オープン公式サイト(英語)(フランス語)(中国語)