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日本学生野球憲章(にっぽんがくせいやきゅうけんしょう)は、1950年(昭和25年)1月22日に制定された、日本の学生野球の理念と方針を定めた憲章である。「学生野球の憲法」ともいわれる。

制定編集

1946年(昭和21年)12月、日本学生野球協会の結成と同時に、学生野球の指導方針を記した「学生野球基準要綱」が制定された。しかし、「学生野球基準要綱」は「野球統制令」廃止との関係で緊急に作られたものであり、また、要綱の文体が法文の形態をとっていなかった。1949年(昭和24年)3月、日本学生野球協会は、「学生野球基準要綱」の基本方針を憲章に発展させることを決定し、同年8月からの特別委員会で審議され、1950年(昭和25年)1月22日、評議員会で議決され、成立した。

特別委員編集

制定に携わった特別委員は以下の4名:

憲章の構成編集

憲章は、天野貞祐・第2代日本学生野球協会会長の記した「前文」と「総則」「大学野球」「高等学校野球」「附則」の4章25条からなる:

「総則」では、憲章の目的を「学生野球の健全な発達を図ること」とし、日本学生野球協会を「この憲章を誠実に執行するため」の機関と位置づけている。

「大学野球」では、シーズン制を採用すること、学生野球の純粋性の保持、アマチュアリズムの確立、無報酬主義などがうたわれている。

「高等学校野球」では、「大学野球」の規定が準用されるとともに、日本高等学校野球連盟の指導・監督、各校が参加しうる大会の規定などが記されている。

「附則」では、「学生野球の本義に違背」するか、学生野球憲章違反、「非行」を行ったりした部長、監督、コーチ、選手又は部員に対して、日本学生野球協会審査室の審議を経て警告、謹慎、出場禁止又は除名などの処分(憲章では「処置」)をくだすことができることなどが記されている(日本学生野球協会の「審査室」の項参照)。

学生野球の純粋性やアマチュアリズムの内容として、プロ野球選手が高校、大学野球の選手を直接指導すること、並びにプロ野球関係者がそれらに金品などを授受すること、商業目的のコマーシャル(日本オリンピック委員会選手強化キャンペーンの協賛企業も含む)やテレビのバラエティーなどの番組出演などの禁止があてはまる[1]。また社会人野球のチームでもプロ野球選手経験者、あるいはタレントが関与しているチームとの対戦も禁じられている[2]その項参照)。

なお、高等専修学校専門学校は、学生野球憲章における学校に定義付けられていない。

全国高等学校定時制通信制軟式野球大会を開催する全国高等学校定時制通信制軟式野球連盟・東京六大学野球連盟所属大学の通常の野球部への参加が困難な理工系学部などの大学生によって組織されている東京六大学理工系野球連盟・女子による学生野球の統括団体は、日本学生野球協会の傘下に入らず、学生野球憲章の適用を受けていない[3]

関西独立リーグ (2代目)(旧・BASEBALL FIRST LEAGUE)が下部組織として高等学校・大学に組織している野球部は日本学生野球協会に非所属のため、学生野球の試合に参加できない代わりに、元プロ選手による直接指導が行われているが、このことが原因で、社会人野球の統括団体である日本野球連盟との間で軋轢が生じ、同連盟との協定書が締結できなかった。同リーグは日本独立リーグ野球機構にも加盟していない他、退団選手の取り扱いについても、機構加盟リーグとの格差が設けられている。

広島東洋カープが、一時球団としての直接的な地域貢献活動に消極的な姿勢を取り[4]広島県における地域密着型異競技連携組織『トップス広島』への加入が他競技の団体より遅れたことも、球団の財政状況の他に憲章が関係したとされている。

憲章違反事例編集

2004年(平成16年)8月、一場靖弘明治大学から東北楽天ゴールデンイーグルス)に対し、巨人横浜阪神のスカウトが2003年末からこの事件発覚時までの間に現金を供与。憲章に牴触するとして問題になった。

2007年(平成19年)4月、専修大学北上高等学校で、野球部員に対しスポーツ特待をして奨学金を支給していたことが発覚(スポーツ選手への、選手たることを理由としての学費支給を禁じた第十三条違反)。学校は野球「部」を解散し、同好会に格下げした。[5]

2011年(平成23年)10月、出雲北陵高校が、部員間の暴力を理由に3ヶ月間の対外試合禁止の処分を受け、その後、暴力に加担した部員を出場させないとの条件で処分期間が短縮され、同年夏の大会島根県予選への出場が認められたが、同校は指導に背き、暴力加担の部員も出場させていたことが判明。憲章に違反するとして、同校は島根県高野連を脱退した。その後2014年に島根県高野連に再加盟し、各種大会に出場している。

2012年(平成24年)11月、花巻東高校岩手県内向けに放送した生徒募集のCMについて、同校が野球部員で北海道日本ハムファイターズへの入団が決まった大谷翔平を、高野連の承認を得ないで出演させていたことが判明し、高野連は憲章に抵触する可能性があるとして、実態調査に乗り出した[6]

学生野球憲章検討委員会編集

2007年(平成19年)の特待生問題の発覚を契機にして、選手を理由としての学費支給を禁じた学生野球憲章第十三条が注目を集め、「時代遅れだ」「野球だけ特待生を禁止するのはおかしい」などの批判を浴びた。そこで日本学生野球協会は、2010年(平成22年)をめどに学生野球憲章の改定を視野に入れた検討委員会を発足させた。委員となった人物は以下の9名:

脚注編集

  1. ^ このため、芸能プロダクションに所属するなど商業的な芸能活動を行っている生徒は野球部員として登録できない(一例として、高校時代に女子マネージャーとして入部していた磯山さやかが、芸能活動が原因で名目上退部扱いとなったが、試合にベンチ入りは出来ないものの個人の立場でマネージャーとしての業務は行った)。また一般視聴者としての『NHKのど自慢』『全国高等学校クイズ選手権』など視聴者参加番組への出演も制限される。一方、定時制高校在籍者でも個人事業主などでない被雇用者の場合は、勤務する業種によっては憲章に抵触しない場合もあり、当該部員が甲子園に出場している例もある。
  2. ^ ただし、近年は一部条件付きではあるがプロ選手経験者が、その選手の母校(出身校)に限り学生野球に登録している選手との合同トレーニングや、OB経験者によるイベントという形での直接指導が行われている。
  3. ^ 定時制・通信制高校には、自営業などの形で個人事業主や経営者として主体的に商業活動に関与している20歳以上の学生も相当数存在するため、憲章を適用すること自体が困難なためとされる。また、定時制高校に在学中の生徒が学校の野球部に属さず、個人の立場で社会人野球のクラブチームやプロ野球球団(主に独立リーグ)に所属している例もわずかながらある。
  4. ^ 小中学生層への野球教室などの活動は、球団在籍経験者によるOB会が主に行っていた。
  5. ^ 高野連による処分決議前に解散したため、除名はされていない。
  6. ^ 大谷、花巻東のCMに…学生野球憲章に抵触か Archived 2013年1月20日, at Archive.is 読売新聞 2013年1月17日