東武300系電車

東武鉄道の電車
東武350系電車から転送)
東武1800系電車 > 東武300系電車

東武300系電車(とうぶ300けいでんしゃ)は、かつて東武鉄道に在籍していた電車。6両編成の300型と、4両編成の350型で構成された。

東武300系電車
300型の特急「きりふり」(2007年)
基本情報
運用者 東武鉄道
製造所 日本車輌製造
ナニワ工機・アルナ工機
種車 1800系
製造年 1969年 - 1979年
改造所 アルナ工機
津覇車輛工業
富士重工業
改造年 1991年
改造数 300型:2編成12両
350型:3編成12両
運用開始 1991年7月21日
運用終了 2022年3月6日(定期運用)[1]
廃車 2022年7月7日
主要諸元
編成 300型:6両編成
350型:4両編成
軌間 1,067 mm
電気方式 直流 1,500 V
架空電車線方式
最高運転速度 110 km/h
設計最高速度 110 km/h
起動加速度 2.23 km/h/s
減速度(常用) 3.7 km/h/s
減速度(非常) 5.0 km/h/s
編成定員 300型: 408人
350型: 268人
車両定員 下記参照
自重 下記参照
編成重量 300型: 227 t
350型: 147.5 t
全長 20,200 mm(先頭車)
20,000 mm(中間車)
全幅 2,878 mm
全高 4,200 mm
車体 普通鋼
主電動機 直流直巻補極補償巻線付電動機 TM-63
主電動機出力 130 kW × 4
駆動方式 中空軸平行カルダン駆動方式
編成出力 300型: 2,080 kW
350型: 1,040 kW
制御方式 電動カム軸超多段式直並列バーニヤ抵抗制御
制動装置 発電ブレーキ併用電磁直通空気ブレーキ(HSCブレーキ)抑速ブレーキ
保安装置 東武形ATS
テンプレートを表示

急行列車「きりふり」・「ゆのさと」用として1991年平成3年)7月21日に営業運転を開始した。その後、「きりふり」・「ゆのさと」の特急列車への格上げにより、実質的に急行用から特急用となった。

概要

編集

伊勢崎線日光線系統では、優等列車として特急の他に快速急行が存在したが、この快速急行には快速用の6050系が使われており、車両のグレードなどサービス面での向上が求められていた[2]。また野岩鉄道開業により6050系に車両不足が生じていた。

こうした中、急行(1999年より特急)「りょうもう」で使用されていた1800系のうち、200型の増備で運用を離脱した1813F・1816F - 1818Fを改造し、6両編成を300型、4両編成を350型とした。

350型の改造種車となった1800系は6両編成2本であったことから、352Fのみ中間車を方向転換のうえ先頭車改造している。このため352Fは客室窓の窓割りや台車の構造が351F・353Fと異なっている。

この300型・350型の登場により「快速急行」は「急行」に変更された。また、これに伴い快速急行運用から6050系が撤退、運用の空きができたために団体用などの臨時列車にも使用されるようになった。そのため、従来これらの臨時列車に充当されていた5700系が営業運転から離脱した。

車両概説

編集

外観

編集

車体塗装は6050系やデビュー時の100系に倣い、ジャスミンホワイトを基調としパープルルビーレッドとサニーコーラルオレンジの帯を巻いた日光線優等列車のイメージカラーを採用している。前面の灯具類は全て1800系1819Fと同じ角型に交換された。

内装

編集

車内座席は全て、種車そのままのリクライニング機能がない回転クロスシートである。フットレストを備え、背面に折り畳み式テーブルがあるほか、窓の下に細長いテーブルが折り込まれており、利用者はそれを引き出して使用することができる。デッキ内にはトイレ(和式)、清涼飲料水自動販売機がある。車内販売サービスは行われていない。テレホンカード専用車内電話もあったがmova停波のため2012年3月31日で撤去された。のちに300型は自動販売機も撤去された。

座席指定の表示は東武鉄道で多用された「号車と下りから座席番号を順番に数えた(1号車なら101から164まで)」方式であり、JR線の特急列車や100系などのように「x号車 y列 z席」という表示にはなっていない[3]

主要機器

編集

種車の1800系で使われていたものが使用されたが、両系列ともに、日光付近の勾配に対応するため、1800系時代にはなかった発電ブレーキ抑速ブレーキを追加装備している。それに関連して主電動機を375V定格のTM-63に統一のうえ、300型を1800系時代の3M3T編成から4M2T編成としている。

改造種車

編集

300型

編集

総定員408名[4]

  • 301F←1818F
  • 302F←1817F

350型

編集

総定員268名[5]

  • 351F←1816Fのうち登場時の4両
  • 352F←1813F・1816Fのうち6両編成化時に増備された中間車各2両
  • 353F←1813Fのうち登場時の4両

改造所は

301・352・353F:アルナ工機

351F:津覇車輛工業

302F:富士重工業

なお300型は当初3編成改造される予定だったが実際に改造は行われず303Fは未成となった。

編成表

編集
凡例
Tc:制御車、M:電動車
CON:制御装置、MG:電動発電機、CP:電動空気圧縮機、PT:集電装置
300型
 
号車 6 5 4 3 2 1
形式 クハ300-1形
(Tc1)
モハ300-2形
(M2)
モハ300-3形
(M1)
モハ300-4形
(M4)
モハ300-5形
(M3)
クハ300-6形
(Tc2)
搭載機器 MG・CP CON・PT MG・CP CON・PT
自重 34.0 t 39.5 t 40.0 t 39.5 t 40.0 t 34.0 t
定員 64人 72人 68人 68人 72人 64人
車両番号 301-1
302-1
301-2
302-2
301-3
302-3
301-4
302-4
301-5
302-5
301-6
302-6
350型
 
浅草
号車 4 3 2 1
形式 クハ350-1形
(Tc1)
モハ350-2形
(M2)
モハ350-3形
(M1)
クハ350-4形
(Tc2)
搭載機器 MG・CP CON・PT
自重 34.0 t 39.5 t 40.0 t 34.0 t
定員 64人 72人 68人 64人
車両番号 351-1
352-1
353-1
351-2
352-2
353-2
351-3
352-3
353-3
351-4
352-4
353-4

運用概況

編集

2006年3月18日ダイヤ改正で列車種別変更が行われ、従来の座席指定制の急行列車はすべて特急列車に昇格した。それに伴い、側面種別表示は緑地に白文字から金色地に白文字と変更になったほか、前面種別表示も緑色の「急行」から金色の「特急」へと変更になった。ただし、100系「スペーシア」と車内設備に格差があることから、特急料金は改正前の急行料金並みに抑制される等の措置がとられた。

2018年5月20日までは、種車となった1800系の最終編成(1819F)が臨時快速や団体専用列車として日光線東武日光駅まで乗り入れており、臨時特急に入った300型・350型と顔を並べることもあった。

300型

編集

1997年3月までは急行「きりふり」・「ゆのさと」で運用されていたが、両列車の定期運用廃止により定期運用を失った時期もあった。その後、2006年3月のダイヤ改正で特急へと格上げされたと同時に設定された浅草南栗橋行き「きりふり」283号(2015年現在は285号)、2013年3月のダイヤ改正からは浅草発春日部行き「きりふり」283号(どちらも平日運転)として300系の定期運用が復活した。この列車はJRでいう「ホームライナー」的要素が強い。他に臨時運転の「きりふり」・「ゆのさと」および団体専用列車(「伊勢崎市民号」など)に使用された。車両故障等でやりくりがつかない場合100系「スペーシア」の代走に使われるが、サービス面で大きく劣ることから特急料金不要の措置がとられていた。

また、2001年から冬季に運転される臨時夜行列車「スノーパル」と、翌2002年からは毎年6月 - 10月に運転される臨時夜行列車「尾瀬夜行」に従来使用されていた6050系に代わって300型が充当されていた。

2015年12月には野田線経由の浅草発運河行き臨時特急「きりふり」267号にも充当された[6]

車両の老朽化および500系「リバティ」の導入による運行形態の変更に伴い、2017年4月20日のきりふり285号を最後に運用を終了した[7]。また、同年4月16日には引退記念列車としてきりふり275号が浅草駅から東武日光駅まで運行された[8][9]

350型

編集

2005年2月28日までは野岩鉄道会津鉄道に乗り入れる浅草駅 - 会津田島駅間の急行「南会津」の運用もあり、この運用を引き継いだ浅草駅 - 新藤原駅間の急行「ゆのさと」には2006年3月17日まで使用された。また、2017年4月20日を最後に運用を終了した300型(前項)と同様に臨時「ゆのさと」にも使用された。

2014年6月からは、毎週金曜日に新栃木行き「きりふり」269号に充当されていた。

353編成は2010年4月24日から同年8月まで「スカイツリートレイン」として運行されていた。これは、車内に東京スカイツリーの写真等を展示しているものであり、前面や側面にもラッピングがされていた。またこの期間、特急「きりふり」275号は「ゆのさと」275号に変更されていた。なお、運行初日の「ゆのさと」275号のみ特別ヘッドマークを取り付けての運行であったが、車両不具合のため浅草発はラッピングなしの351Fで運転され、新栃木で353Fと車両交換を行った。なお「スカイツリートレイン」の名称は、2年半後の2012年10月から6050系を改造した展望列車634型の臨時特急の愛称に使われた。

2020年4月24日までは「しもつけ」でも運用されていた。

2021年4月[10]の時点で4連3本が在籍し、土休日運転の「きりふり」で運用されていたが、2022年3月のダイヤ改正で定期運用を終了した。最後の運用は、3月6日運転の特急きりふり283号新栃木行き[1]であった。

その後2021年6月2日に352Fが、2022年6月16日に351Fがそれぞれ廃車されたのに続き、最後に残った353Fも7月7日の北館林荷扱所への廃車回送を兼ねた館林駅までの臨時団体列車の運用を最後に廃車。これにより300系列が全て消滅するとともに、種車時代から約53年にわたって運用された1800系列の車両は完全に姿を消した。

廃車後は300系列、1800系共に全車両が解体されており現存しない。

脚注

編集

注釈

編集

出典

編集
  1. ^ a b “東武350系、定期運用を終了”. railf.jp鉄道ニュース. 鉄道ファン (交友社). (2022年3月7日). https://railf.jp/news/2022/03/07/160000.html 
  2. ^ 花上嘉成・諸川久『日本の私鉄 <10>東武 カラーブックス』、保育社、1991年8月、ISBN 978-4586508136
  3. ^ http://sonicrailgarden.sakura.ne.jp/seat_tobu300.html
  4. ^ 稲葉克彦「東武鉄道現有車両諸元表」『鉄道ピクトリアル』第58巻第1号臨時増刊号(通巻799号)、電気車研究会、東京、2008年1月、277-278頁、ISSN 0040-4047 
  5. ^ 稲葉克彦「東武鉄道現有車両諸元表」『鉄道ピクトリアル』第58巻第1号臨時増刊号(通巻799号)、電気車研究会、東京、2008年1月、278頁、ISSN 0040-4047 
  6. ^ 浅草駅から東武アーバンパークライン 清水公園駅方面に直通する運河駅行き臨時特急を初運転!” (PDF). 東武鉄道 (2015年11月10日). 2015年11月12日閲覧。
  7. ^ “東武鉄道300系が引退”. 交友社 鉄道ファン railf.jp. (2017年4月21日). http://railf.jp/news/2017/04/21/180000.html 
  8. ^ ありがとう300型!きりふり275号で引退記念運転イベントを実施します” (PDF). 東武鉄道 (2017年3月27日). 2017年3月27日閲覧。
  9. ^ “東武鉄道で『ありがとう300型 引退記念運転』”. 交友社 鉄道ファン railf.jp. (2017年4月17日). http://railf.jp/news/2017/04/17/161500.html 
  10. ^ 私鉄車両編成表2021

外部リンク

編集