漁
漁(いさり、りょう)とは、人間がさまざまな漁具を用いて、水産資源を捕獲する行為のことである。また、さまざまな漁具の種類、用法によって類別される漁の方法のことを漁法(ぎょほう)という。いさり(漁)に対して、かり(狩)。
なお、漁をおこなう行為のうち、その労働的側面に着目する場合、漁撈といって区別するのが一般的である。また、趣味・娯楽として楽しむ漁の場合は、とくに遊漁といって区別する。
概要編集
漁の歴史的起源は古く、捕獲の対象となる生物の生態にあわせて、また、時代の技術的制約のもとで、さまざまな漁具や漁法が用いられてきた。
伝統的な漁では、漁具の材料に在来のものが多く、その生産性は低かったが、漁の規模と水産資源の生態が調和し、水域の水産資源は再生産されていた。
漁の規模が大きくなると、数人で共同して漁をおこなったり、とくに近世以降は、網主が大人数を雇って漁をおこなうような例(地引き網や敷き網など)もあらわれた。
漁船の動力化や合成繊維網の普及などによる生産性の向上、急速な人口増加、漁場の広域化などの諸因により、水産資源の枯渇化という懸念が生じている。
そのため、漁は場所や漁具、捕獲対象によって法令で規制されている事が多い。例えば、免許を持たない者がヤスで刺突漁を行うのは問題ないが、同じことを水中メガネを付けて行うと漁業権を侵害したことになる[2]。
漁法の種類編集
漁にはさまざまな漁法がある。もっとも素朴なものは、徒手採捕、ヌードリングと呼ばれる漁具を用いずに人間が直接素手で魚類などを掴み取る方法である。
漁具を用いる漁法では、漁獲の対象となる水生生物の生態や、漁場環境、漁期などを考慮して、その漁撈活動に最適の漁具を用いて、もっとも効率のよい漁法が選択される。以下に、代表的な漁法を紹介する。
網漁業編集
漁具として網(漁網)を用いる漁法である。主な網漁業には以下のようなものがある。網漁の種類など詳細については漁網を参照。
- 投網(被網)
- 底引き網
- 遠洋底引き網 - 北方トロール、転換トロール、北転船、南方トロール、えびトロールの総称
- 以西底引き網
- 沖合底引き網
- 小型底引き網
- 船引き網(中層引き網)
- 引き回し網
- 引き寄せ網
- 地引き網
- 巻き網
- 吾智網
- 刺し網
- 敷網 - 棒受け網、四つ手網など
- 定置網
- すくい網
釣漁業編集
一般には釣り具を用いる漁法であるが、釣り竿を用いない釣り漁や、延縄漁もこれに含まれる。主な釣漁業には以下のようなものがある。詳細は釣り漁を参照。
- 延縄(はえなわ) - まぐろ延縄、さけ・ます延縄など
- 手釣り漁
- 竿釣り漁 - 遠洋かつお一本釣など
- 機械釣り漁 - 遠洋いか釣など
- 曳縄釣り漁
- 立縄釣り漁
刺突漁編集
徒行や船上から突具・鉤具を用いて、移動する魚類などを直接刺突する漁法である。見突き漁や突きん棒漁と呼ばれる岸辺や船上から目視して刺突する方法や[3]、潜水して移動中の魚を「追突」(おいづき)する例などがある。以下のような刺突具がある。
- モリ(銛)
- モリはクジラや海洋の大型魚の刺突に用いられた遊撃刺突具。
- ヤス(簎・矠)
- 長い柄の先端に、数本の尖った鉄製の突き刺し具が付けられている。
- カギ(鉤)
- 長い柄の先端に、先端が曲がった鉤状の金属が付けられている。
- むつかけ
陥穽漁法編集
陥穽漁法(かんせいぎょほう、英: Fish trap)とは、魚類の習性(遡上や降下性)を利用する、餌で誘導する、水流を利用するなど、さまざまな工夫によって魚を誘い込み、何らかのしかけ・罠によって魚を逃げられないようにする漁法である。以下のようなしかけ、漁具がある。
潜水漁法(潜水器漁業)編集
素潜りまたは潜水器具を着用して、素手または刺突具など道具を用いて水生動物を捕獲する。
その他編集
日本で禁止されている漁法編集
- 爆発物をもちいて、水中の魚群を気絶させ、または死亡させて、漁獲する。海獣捕獲を目的とする場合を除き、水産資源保護法第5条により禁止されている。
- 青酸、樒、椿の油粕、山椒などの毒物を流して魚群を浮上させる漁法。毒もみ、毒流し、アメながし、根流しとも呼ばれる。調査研究のため農林水産大臣の許可を得た場合を除き、水産資源保護法第6条により禁止されている。
- 電気ショック漁法
- 電気ショッカー、エレクトロフィッシャー、鉛蓄電池などによって電流を流して、魚群に電気的ショックを与えて気絶させ、浮上させる漁法。ビリとも呼ばれる。各県の漁業調整規則などにより、有害魚種駆除の目的で許可を受けた場合以外、原則的に禁止されている。カジキの突きん棒漁では先端から電流を流す銛が使われており、こちらは合法である[4]。
- 一本釣り
脚注編集
- ^ The State of World Fisheries and Aquaculture 2016(国際連合食糧農業機関(国際連合食糧農業機関)pdfファイル。P.3
- ^ 亀井まさのり『あぁ、そういうことか!漁業のしくみ』恒星社厚生閣、2013年、ISBN 9784769912965 pp.57-58,114.
- ^ “【見突き漁】”. 日本財団. 2016年1月9日閲覧。
- ^ 一本釣り - マリン製品 - ヤマハ発動機
- ^ 金田 1995, pp. 140-147.