シダ類

真嚢シダ類と薄嚢シダ類を合わせた側系統群
真正シダ類から転送)

シダ類(シダるい、羊歯類、: Ferns)は、一般に「シダ」(羊歯、歯朶)と総称される維管束植物の一群である[1][2][3]。伝統的分類および一般的な文脈では、薄嚢シダ類に加え、合わせて真嚢シダ類とも呼ばれるリュウビンタイ目ハナヤスリ目を含む分類群を指す[1][3]

シダ類(廃止)
分類
: 植物界 Plantae
: シダ植物門 "Pteridophyta"
階級なし : 大葉シダ植物 Moniliformopses
: シダ綱 "Pteridopsida"
下位分類

かつてはシダ植物の伝統的分類において、マツバラン類(無葉類)ヒカゲノカズラ類(小葉類)およびトクサ類(楔葉類)とともにシダ類(大葉類)としてシダ植物に含められ[4][3][5][6]、多くシダ綱(シダこう、Pteridopsida, Filicopsida)としての階級に置かれた[1][5]。1920年代以降、系統的に4群が遠いと考えられるようになり、シダ門 Pterophytaシダ類亜門 Pterophytinaとしてより上位の分類階級に置くこともあった[7][8]。しかし分子系統解析により、シダ植物だけでなくシダ類自身も側系統群であることが判明し、本項の示す「シダ類」は分類群としては現在ではもはや用いられない[9][10]。なお、スミスら (2006)の分類体系では「シダ綱 Filicopsida」は薄嚢シダ類を指す分類群として用いられていた[11]

近年では分子系統解析により、伝統的なシダ類にマツバラン類およびトクサ類を含めたグループが単系統群をなすことが明らかになっており、それをまとめて「シダ類 ferns」と呼ぶことも多くなっている[4][9]。このグループはKenrick & Crane (1997)において "Moniliformopses" と呼ばれた群に相当し[12]、「モニロファイツ」や「大葉シダ類」と呼ばれる[13]ことも多く、この単系統群については「大葉シダ植物」にて解説する。

「シダ」 編集

 
単にシダとも呼ばれるウラジロ Diplopterygium japonica

シダ羊歯、歯朶)という言葉は、本項で示すシダ類を指す場合[2]に加え、シダ植物を指すこと[2][14]、および特にウラジロを指すこと[15][2][16]がある。和名の「シダ」の語源は「しだれる」と同源であるとされる[14][17]。シダは方言または古名でデンダカグマと呼ばれる[18][19][20][21][22]。このうち、「デンダ」は「連朶」が訛ったものだとされ[19]、そう漢字表記される[23]。また、標準和名シノブ Davalia mariesii として扱われる「シノブ」もシダの古名の一つである[24]

漢名の「羊歯」は葉が連なり生じて毛のある姿をに喩えたとされる[14]。特にオシダ科オシダ Dryopteris crassirhizomaを指すこともある[17]。中国では羊歯の名は爾雅のみに見られたが、日本では平安時代にシダに当てている[17]

系統関係 編集

以下にWickett ら (2014)Puttick ら (2018)による大規模な遺伝子を用いた分子系統解析に基づく、陸上植物の系統樹を示す[25]。本項の示すシダ類である旧シダ綱は薄嚢シダ類真嚢シダ類からなるが、このうち真嚢シダ類はクレードからマツバラン類を除いた側系統群であり、シダ綱も側系統となる。

陸上植物

コケ植物

維管束植物
小葉植物

ヒカゲノカズラ目 Lycopodiales

イワヒバ目 Selaginellales

ミズニラ目 Isoetales

シダ植物
"Pteridophyta"
Lycophyta
大葉植物
大葉シダ植物

トクサ目 Equisetales

マツバラン目 Psilotales

ハナヤスリ目 Ophioglossales

リュウビンタイ目 Marattiales

薄嚢シダ類 Polypodiidae

旧シダ綱
"Pteropsida"
Monilophyta

種子植物

Euphyllophyta

なお、Pryer ら (2001; 2004)による、プラスチドrbcLatpBrps4、および核の18S rDNAの4遺伝子を用いた古い分子系統解析では、次のような系統樹が描かれ、真嚢シダ類が多系統となっていた[26]

維管束植物

ヒカゲノカズラ目 Lycopodiales

イワヒバ目 Selaginellales

ミズニラ目 Isoetales

シダ植物
"Pteridophyta"
Lycophyta
大葉植物
大葉シダ植物

マツバラン目 "Whisk ferns"

ハナヤスリ目 "Ophioglossoid ferns"

トクサ目 "Horsetails"

リュウビンタイ目 "Marattioid ferns"

薄嚢シダ類 "Leptosporangiate ferns"

シダ類
"True ferns"
Monilophyta

種子植物

Euphyllophyta

特徴 編集

生活環に関しては「シダ植物」も参照

シダ類の生活環胞子体配偶体が独立して生活する単複世代交代型である[27]。胞子体にはが分化する[8]胞子は胞子体の胞子嚢の中に減数分裂の結果形成される[27]。ほとんどのシダ類では胞子は雌雄の差がない同形胞子性であるが、水生シダ類では大胞子小胞子をつくる異形胞子性である[27]。胞子嚢は普通、裏面または葉縁に集まって胞子嚢群(ほうしのうぐん、ソーラス sorus, pl.: sori)を作る[27][1]。胞子嚢が1つの細胞に由来し、1層の細胞層からなるシダ類を薄嚢シダ類 leptosporangiate ferns、胞子嚢が複数の細胞に由来し、複数の細胞層に包まれるシダ類を真嚢シダ類 eusporangiate fernsという[6][1]。薄嚢性は派生形質であり、薄嚢シダ類は単系統群である[6]

胞子嚢群の列
単一の胞子嚢群・腎臓型の包膜
胞子嚢
裂開した胞子嚢
ホシダの胞子嚢群

茎は短く、木生シダ以外では地中生、着生、地表生であり根茎 rhizomeと呼ばれる[1]。根茎には匍匐(creeping)するもの、斜上(ascending)するもの、直立(erect)するものがある[28]木生シダ類ヘゴ科では高く成長し、24 mに達するものもあるが、ハナワラビ類以外のシダ類の茎は肥大成長せず、木本ではない[27][29]。木生シダ類の「幹 trunk-like stem」は直立茎の周囲を不定根が覆ったものである[28]

編集

 
トキワシノブ Davallia tyermannii の葉の各部の名称。3-4回羽状複葉。

葉は大葉で、単葉からシダ型4-5回羽状複葉となるが[1]、羽状複生することが多く、特に羽葉frond)と呼ばれる[30]。複葉の小葉leaflet)は特に羽片(うへん、pinna, pl.: pinnae )と呼ぶ[31]。葉端の羽片を頂羽片terminal pinna)、それ以外を側羽片lateral pinna)、繰り返し構造となる羽片の更に1枚を小羽片pinnule)と呼ぶ[28]。他の複葉と同様に羽片の付く軸を葉軸(中軸、rachis)、小羽片の付く軸を羽軸pinna rachis)と呼ぶ[28]

葉の二形性は種によって異なり、二形 dimorphicのものでは胞子嚢を付ける胞子葉(実葉、fertile frond)と胞子を付けない栄養葉(裸葉、sterile frond)に分かれる[28]。また、区別のないものは同形 monomorphic、1枚の葉で胞子を付ける羽片と胞子を付けない羽片があるものは部分二形 hemidimorphicと呼ばれる[28]ハナヤスリ類では担栄養体(栄養葉、trophophore)と担胞子体(胞子葉、sporophyte)の基部が合わさって担葉体(共通柄、common stalk)となる[1][28]サンショウモ属では根を持たず、水上に浮かぶ浮葉floating leaf)と根のように変形した沈水葉(水中葉、submerged leaf)の2種類の葉を持つ[28]

生息環境 編集

 
岩に生えるサイゴクホングウシダ Lindsaea japonica

シダ類が最も多様に分化しているのは熱帯であり、雲霧林中の着生植物が多く、地上生種も多様である[27]木生シダ類では森林伐採後の二次植生として群生し、広大なヘゴ林を形成することも多い[29]。一方、ヒトツバのように乾燥に強いものやサンショウモのような水生シダ類も存在し、様々な環境に生育している[27]

渓流は水流の圧力や濁流中の砂粒子、微生物による腐蝕といった陸上植物が様々なダメージを受け、水位の変化が激しい過酷な環境であるが、渓流帯にのみ適応した渓流沿い植物が存在する[32]。シダ類にも渓流沿い植物が存在し、日本ではゼンマイ科ヤシャゼンマイホングウシダ科サイゴクホングウシダオシダ科ヤエヤマトラノオウラボシ科ヒメタカノハウラボシミツデヘラシダなどが挙げられる[32]。これらは根茎が発達し、岩にしっかり固着できること、茎が強靭で折れにくいこと、葉は細長く流線型全縁、平滑で無毛などの形質を持つ[32]。このようなシダ植物では世界で約100種知られている[32]

下位分類 編集

現在では、小葉植物を含むシダ植物の分類体系として、PPG I分類体系が用いられている。右図における、ハナヤスリ科以下が本項における、これまで普通「シダ類」として扱われてきたである。

この項では本項に示す側系統群が「シダ綱」として扱われていた過去の分類体系を以下に示す。

コープランドの分類体系 編集

エドウィン・ビンガム・コープランドは「有効な」分類階級というものは「自然分類であること」と「有用であること」の両方を反映したものであると提案した最初の分類学者の一人である[33]

コープランド (1947)ではシダ綱 Filicinaeにその多くが単一種のみからなる305属を認めた[33]。コープランドはシダ綱をハナヤスリ目、リュウビンタイ目、シダ目の3目に分け、うちシダ目に19科を置いた[34]。デンジソウ科とサンショウモ科を含む水生シダ類 Hydropteridesは、その特異的な形質からそれぞれデンジソウ目 Marsilealesサンショウモ目 Salvinialesに置くことがあるとしながらも、その他のシダ目の系統の下にあるため独立した目に入れるのを嫌い、シダ目に入れるとした[34]

人とのかかわり 編集

シダ類以外のシダ植物の利用に関しては各項を参照。

短歌 編集

 
木に着生するノキシノブ Lepisorus thunbergianus

万葉集の中に読まれたシダ類は次の2首のみである[35]

ノキシノブ Lepisorus thunbergianusしだくさ(子太草)と呼ばれた[35][20]

わが屋戸の 軒のしだ草 生ひたれど 戀忘草 見れど生ひなく
柿本人麿歌集、万葉集 11 (2475)

もう一首は志貴皇子によりワラビ(和良妣)Pteridium aquilinumが読まれた[36]

石走る 垂水の上の さ蕨の 萌え出づる春に なりにけるかも
志貴皇子、万葉集 8 (1418)

また、シノブ Davallia mariesiiは次のような俳句がある[37]

大岩に生えて一本忍かな

観賞用 編集

着生植物であるシノブミズゴケなどを芯にして詰め、盆栽風にして「忍ぶ玉」と呼ばれ古くから観賞される[37]。特に玉や舟などの形に加工しぶら下げたものは「つりしのぶ」と呼ばれ、夏の夜店で売られる[15]ウラボシ科アオネカズラ Polypodium nipponicumも同様に鉢植えや「忍ぶ玉」のようにして栽培される[20]

オシダ科オニヤブソテツ Cyrtomium falcatum観葉植物として庭に植えたり室内インテリアとして鉢植えにしたりして用いられる[38]チャセンシダ科オオタニワタリ Asplenium antiquumは『古事記』では「御綱柏」と呼ばれていたが、美しい姿から栽培用に乱獲され危急種となっている[39]。またオオタニワタリとヒノキシダの雑種であるオニヒノキシダ Asplenium ×kenzoiは葉の形の面白さからよく栽培され、屋久島では土産物として売られる[39]イノモトソウ科のシダは欧米では観葉植物として栽培され、斑入り獅子葉の園芸品種もある[40]。例えば、白斑のあるホコシダ Pteris ensiformisや、獅子葉など様々な園芸品種が知られるオオバイノモトソウ Pteris cretica、若葉が赤紫色、成長すると白緑色になるハチジョウシダ類Pteris aspericaulisなどは園芸植物となる[40]。日本でもマツカサシダ Pteris nipponicaは『本草図譜』では「おきなしだ」の名で呼ばれ、古くから観賞されてきた[40]ホウライシダ科ホウライシダ Adiantum capillis-venerisの園芸品種は「アジアンタム」として、またクジャクシダ Adiantum pedatumも園芸用に栽培される[41]ツルシダ科のシダ類も観葉植物となり、Nephrolepis exaltataは変異個体が「ボストン・ファーン」として栽培され、タマシダ Nephrolepis cordifoliaホウビカンジュ Nephrolepis biserrataNephrolepis hirstula由来の園芸品種も存在する[42]フサシダ科カニクサ Lygodium japonicumは庭植えにされることがある[16]

ホウライシダ科ミズワラビ Ceratopteris thalictroidesは水槽用の水草として用いられる[41]。ウラボシ科のミツデヘラシダ Microsorum pteropusは「ミクロソリウム」として熱帯魚の水槽で栽培される[20]

薬用・食用 編集

オシダ Dryopteris crassirhizomaは別名を「綿馬」という[17]中国医学本草)では貫衆と呼び塊根を薬用とする[17]。日本ではこれは「綿馬根」と呼ばれ[17]駆虫剤としても用いられた[38]カザリシダ Aglaomorpha coronansの根茎は「骨砕補」となる[27]。また中国ではタカワラビ科タカワラビ Cibotium barometzは「金狗毛蕨」と呼ばれ、茎を肝臓腎臓の薬として用いるほか[29]チャセンシダ科ホコガタシダ Asplenium ensiforme下痢止め利尿作用をもつとして薬用にされ、栽培もされる[39]ホングウシダ科ホラシノブ Sphenomeris chinensis民間薬として用いられ、雲南省南部では「起死回生」の効果があるとされる[43]ホウライシダ科のシダは漢方としてイワガネゼンマイ Coniogramme intermediaイワガネソウ Coniogramme japonicaでは腫物の毒消しに、タチシノブ Onychium japonicumでは解熱・利尿に、ホウライシダ Adiantum capillis-venerisでは全草が解熱・解毒に用いられる[41]フサシダ科カニクサの葉は利尿剤とされる[16]

ヒリュウシダ属も食用または薬用に供され、ニュージーランドマオリBlechnum capenseの芽を蒸し焼きにして、オーストラリアクイーンズランド州ではアボリジニBlechnum indicumの太った根茎を食べる[44]Blechnum fluviatileはニュージーランドで口内炎の薬として、ヒリュウシダ Blechnum orientaleは東南アジアで虫下し膀胱炎の薬として、またBlechnum hastatumの根茎はチリアラウコ人嘔吐剤または妊娠中絶薬として用いられた[44]

真嚢シダ類であるミヤコジマハナワラビ Helminthostachys zeylanicaマレーシアや中国で根茎を鎮痛解毒剤として用いられる[45]

毒性を有するものも多く、ワラビは葉にビタミン破壊酵素(チアミン分解酵素)を含み、草木灰重曹のようなアルカリで煮て灰汁抜きをし、毒成分を除去して食される[46][47]。この毒性により家畜シカは食べないため放牧食性が形成され、日本などでは火入れにより良質のワラビが収穫されてきた[47]サイレージなど飼料に混入することで家畜が膀胱がんなどになるワラビ中毒が発生する[47][22]

日本では山菜としてワラビ Pteridium aquilinumゼンマイ Osmunda japonicaヤマドリゼンマイ Osmundastrum cinnamomeum var. fokeienseなどが食用にされる[48][46]。ワラビは葉柄の柔らかい部分が灰汁抜きの後、煮物や和え物などに用いられ、塩や味噌に漬けて保存される[46]。ワラビの根からとれる澱粉はワラビ粉としてわらび餅団子に利用される[46][22]。ゼンマイやヤマドリゼンマイは巻いた若芽の葉柄部を食用にする[46]。ゼンマイは灰汁抜きの後、煮つけ、天麩羅、汁の実に用いられる[46]。ヤマドリゼンマイも灰汁や重曹で灰汁抜きの後、煮物や和え物、汁の実として用いられる[46]。どちらも乾燥したり塩漬けにしたり、卯の花漬けにして保存される[46]。ヤマドリゼンマイは瓶詰にして市販される[46]。日本の東北地方ではクサソテツコゴミと呼ばれお浸し揚げ物にして食される[15]。この仲間は北アメリカ東北部でも若芽の時期を珍重して食べられる[15]

アジアでは広くクワレシダ Diphasium esculentumが食用にされる[21]。中国南部や東南アジアでは、ホウライシダ科ミズワラビが食用にされる[41]ブータンではランダイワラビ Pteridium revolutumイワデンダ科Diplazium maximaやクワレシダ、オオイシカグマ Microlepia speluncaeナチシダ Pteris wallichianaなどを食用とする[47]。これらはいずれも毒性があって家畜シカは食べないため、その排泄物を栄養として肥沃な放牧場にはこれらがよく繁茂し、放牧植生ができている[47]ヘゴも髄に多量の澱粉を含む茎や若い葉は食用とされ、オーストラリアではほろ苦い甘みがあり、まずいカブのような味だと表現される[29]

加工 編集

ウラジロは単にシダと呼ばれる普通種で、常緑であるため、および「齢垂れる(しだれる)」とかけて長寿の象徴として正月の飾り物(注連飾り)などに用いられる[14][15][16]

カニクサ編み籠の材料とされた[16]。葉軸がしなやかであるためウラジロ科も編んで壁材や籠などの工芸品に利用される[16]

木生シダ類ヘゴ Cyathea spinulosaオニヘゴ Cyathea podophyllaヒカゲヘゴ Cyathea lepiferaマルハチ Cyathea mertensianaは幹を家の柱や垣根に用いられ、細いものは生花の器に用いられるが、近年では専ら園芸材料として利用される[29]洋ランは自生地では樹木や岩石に付着し生活するため、洋ランの栽培に円盤状や板状、棒状や植木鉢状に加工して利用される[29]。ヘゴの根やゼンマイのひげ根(オスマンダ)はコンポストとして用いられる[29]。ヘゴ板の建材や園芸資材の需要は多くの種を脅かし、ワシントン条約により輸入規制されるものもある[29]

その他 編集

 
水面に浮かぶニシノオオアカウキクサ zolla filiculoides

アカウキクサ科水生シダには藍藻 Anabaena azollae共生窒素を供給するので貧栄養下でも生育できるため、東南アジアでは緑肥として用いられ、熱帯稲作地帯における肥料となっている[49]フィリピン国際稲研究所にはアカウキクサの系統保存施設がある[49]。逆にサンショウモ Salvinia natansは切断された植物体から栄養繁殖するため水田を覆い尽くす害草となる[49]

ニューギニア島ではキジノオシダ科のシダの葉を乾燥させ、の際に体を飾る材料として利用される[50]

徳川家康は老年期、兜の前立てにシダの歯を象った通称「歯朶具足」を愛用した。甲冑一式は久能山東照宮に奉納され、現在まで伝わっている。

フェナリー 編集

 
リッポン・リーのフェネリー
 
ジーロング植物園(1892-1902年)のフェナリー

フェナリー(英:fernery)は、シダの栽培と展示のための専門の庭園である。

多くの国ではフェナリーは少なくとも日陰で湿った環境や光、霜などの極限からの保護や、乾燥地域に自生するシダの中にも雨や湿度からの保護を必要とするために屋内施設であるが、完全日照で最もよく育つものも存在するため、温暖な地域では屋外にあることが多く、同じような条件で育つさまざまな種が並んでいる。

1855年、イングランドの一部ではシダのブームが起きてプテリドマニア(シダ狂い)という現象を生む[51]。この言葉は聖職者であり自然主義者であったチャールズ・キングズリー(後に『水の子どもたち 陸の孤児のための童話』の著者)によって作られたものであるが、当時英国と外来の品種が収集、紹介されていくとコレクションを維持するために多くの道具が開発され、関連する園が次々と構築されていったことが知られる[52][53]

出典 編集

  1. ^ a b c d e f g h 山田ほか 1983, p.524
  2. ^ a b c d 新村 2008, p.1237
  3. ^ a b c 伊藤 1972, pp. 8–10.
  4. ^ a b 海老原 2016, pp.16-17
  5. ^ a b 村上 2012, pp.67-73
  6. ^ a b c 伊藤 2012, pp.116-129
  7. ^ 田川 1959, pp.1-5
  8. ^ a b 岩槻 1975, pp.157-193
  9. ^ a b 巌佐ほか 2013, p.1642
  10. ^ PPG I 2016、pp.563-603
  11. ^ Smith et al. 2006, pp.705-731
  12. ^ Kenrick & Crane 1997, pp.226-259
  13. ^ 長谷部 2020, pp.143-150
  14. ^ a b c d 加納 2007, p.146
  15. ^ a b c d e 伊藤 1972, p. 1.
  16. ^ a b c d e f 西田 1997, pp.73-76
  17. ^ a b c d e f 加納 2007, p.407
  18. ^ 岩槻 1992, p. 156.
  19. ^ a b 岩槻 1992, p. 226.
  20. ^ a b c d 鈴木 1997, pp.9-15
  21. ^ a b 加藤 1997, pp.19-24
  22. ^ a b c 今市 1997, pp.60-61
  23. ^ 桶川・大作 2020, p. 66.
  24. ^ 岩槻 1992, p. 115.
  25. ^ 長谷部 2020, pp. 1-4, 68-70
  26. ^ Pryer et al. 2004
  27. ^ a b c d e f g h 岩槻 1997, pp.2-5
  28. ^ a b c d e f g h 海老原 2016, pp.9-15
  29. ^ a b c d e f g h 西田・橋本 1997, pp.66-70
  30. ^ 西田 2017, p. 155.
  31. ^ 清水 2001, p.132
  32. ^ a b c d 加藤 1997, pp.30-32
  33. ^ a b Christenhusz & Chase 2014, pp.571-594
  34. ^ a b Copeland 1947, pp.1-232
  35. ^ a b 吉野 1988, p.114
  36. ^ 吉野 1988, p.270
  37. ^ a b 加藤 1997, pp.56-59
  38. ^ a b 林・中池 1997, pp.26-29
  39. ^ a b c 村上 1997, pp.38-43
  40. ^ a b c 鈴木 1997, pp.43-47
  41. ^ a b c d 益山 1997, pp.51-54
  42. ^ 宮本 1997, pp.55-56
  43. ^ 林 1997, pp.59-60
  44. ^ a b 栗田 1997, pp.35-38
  45. ^ 佐橋 1997, pp.82-84
  46. ^ a b c d e f g h i 星川 1979, pp.297-298
  47. ^ a b c d e 松本 2009, pp.55-65
  48. ^ 伊藤 1972, pp. 1–11.
  49. ^ a b c 長谷部 1997, pp.5-7
  50. ^ 中池 1997, p.77
  51. ^ 遠山茂樹『歴史の中の植物 花と樹木のヨーロッパ史 』ISBN978-4-89694-265-1
  52. ^ Gibby, Mary (2013年). “The Benmore Fernery”. www.buildingconservation.com. 2014年1月4日閲覧。
  53. ^ Gibby, Mary. “The Benmore Fernery”. Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。

参考文献 編集

  • Copeland, Edwin Bingham (1947). Genera Filicum, the genera of ferns. Waltham: Chronica Botanica 
  • Christenhusz, Maarten J. M.; Chase, Mark W. (2014). “Trends and concepts in fern classification”. Annals of Botany 113: 571-594. 
  • Kenrick, Paul; Crane, Peter R. (1997). The Origin and Early Diversification of Land Plants —A Cladistic Study. Smithonian Institution Press. pp. 226-259. ISBN 1-56098-729-4 
  • PPG I (The Pteridophyte Phylogeny Group) (2016). “A community-derived classification for extant lycophytes and ferns”. Journal of Systematics and Evolution (Institute of Botany, Chinese Academy of Sciences) 56 (6): 563-603. 
  • Pryer, Kathleen M.; Schneider, Harald; Smith, Alan R.; Cranfill, Raymond; Wolf, Paul G.; Hunt, Jeffrey S.; Sipes, Sedonia D. (2001). “Horsetails and ferns are a monophyletic group and the closest living relatives to seed plants”. Nature 409: 618–622. http://www.nature.com/nature/journal/v409/n6820/abs/409618a0.html. 
  • Pryer, Kathleen M.; Schuettpelz, Eric; Wolf, Paul G.; Schneider, Harald; Smith, Alan R.; Cranfill{first6=Raymond (2004). “Phylogeny and evolution of ferns (monilophytes) with a focus on the early leptosporangiate divergences”. American Journal of Botany 91 (10): 1582-1598. 
  • Puttick, Mark N.; Morris, Jennifer L.; Williams, Tom A.; Cox, Cymon J.; Edwards, Dianne; Kenrick, Paul; Pressel, Silvia; Wellman, Charles H. et al. (2018). “The interrelationships of land plants and the nature of ancestral Embryophyte”. Current Biology (Cell) 28: 1-3. doi:10.1016/j.cub.2018.01.063. 
  • Smith, Alan R.; Pryer, Kathleen M.; Schuettpelz, Eric; Korall, Petra; Schneider, Harald; Wolf, Paul G. (2006). “A classification for extant ferns”. TAXON 55 (3): 705-731. http://fieldmuseum.org/sites/default/files/smith-et-al-taxon-2006.original.pdf. 
  • Wickett, Norman J. (2014). “Phylotranscriptomic analysis of the origin and early diversification of land plants”. PNAS 111 (45): E4859-E4868. 
  • 伊藤元己『植物の系統と進化』裳華房〈新・生命科学シリーズ〉、2012年5月25日、116-129頁。ISBN 978-4785358525 
  • 伊藤洋 ほか共著『シダ学入門』ニュー・サイエンス社、1972年8月20日、8-10,165-169頁。 
  • 巌佐庸、倉谷滋、斎藤成也塚谷裕一『岩波生物学辞典 第5版』岩波書店、2013年2月26日、589,1641-1644頁。ISBN 9784000803144 
  • 岩槻邦男 著「13. シダ植物門 Division PTERIDOPHYTA」、山岸高旺 編『植物分類の基礎』(2版)図鑑の北隆館、1975年5月15日、157-193頁。 
  • 岩槻邦男『日本の野生植物 シダ』平凡社、1992年2月4日。ISBN 4-582-53506-2 
  • 岩槻邦男大場秀章清水建美堀田満ギリアン・プランスピーター・レーヴン『朝日百科 植物の世界[12] シダ植物・コケ植物・地衣類・藻類・植物の形態』朝日新聞社、1997年10月1日、1-93頁。 
  • 海老原淳、日本シダの会 企画・協力『日本産シダ植物標準図鑑1』学研プラス、2016年7月13日、8-17,26-27頁。ISBN 978-4054053564 
  • 桶川修(文)・大作晃一(写真)『くらべてわかるシダ』山と溪谷社、2020年4月20日。ISBN 978-4-635-06354-8 
  • 加納喜光『動植物の漢字がわかる本』山海堂、2007年1月10日、146頁。ISBN 9784381022004 
  • 加納喜光『植物の漢字語源辞典』東京堂出版、2008年6月20日、407頁。ISBN 9784490107395 
  • 清水建美『図説 植物用語事典』八坂書房、2001年7月30日、132頁。ISBN 4-89694-479-8 
  • 田川基二『原色日本羊歯植物図鑑』保育社〈保育社の原色図鑑〉、1959年10月1日。ISBN 4586300248 
  • 新村出広辞苑 第六版』(第6版)岩波書店、2008年1月11日、1237頁。ISBN 9784000801218 
  • 長谷部光泰『陸上植物の形態と進化』裳華房、2020年7月1日、1-4,124-173頁。ISBN 978-4785358716 
  • 星川清親千原光雄『食用植物図説』(6版)女子栄養大学出版部、1979年9月1日、297-298頁。 
  • 松本定 (2009). “ブータンのシダ植物調査”. 信州大学農学部紀要 45 (1-2): 55-65. 
  • 山田常雄前川文夫江上不二夫八杉竜一小関治男古谷雅樹日高敏隆『岩波生物学辞典 第3版』岩波書店、1983年3月10日、524頁。ISBN 4-00-080018-3 
  • 吉野正美『万葉集の植物』偕成社、1988年9月、114,270頁。ISBN 4-03-529070-X 

関連項目 編集