着うた(ちゃくうた)は、2002年から2016年にかけて、主に日本で普及した高機能携帯電話(フィーチャー・フォン)において提供された、携帯電話着信音を、MP3AACなどのフォーマットで符号化された30秒程度の長さの楽曲にするサービス。株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント (SME) の登録商標(第4743044号ほか)である[1]。また、本項では便宜上、着うたの短縮版サービスにあたる着うたミニ(ちゃくうたミニ)についても記述する。

目次

概要・沿革編集

2002年12月にKDDI/沖縄セルラー電話連合の各auブランドの携帯電話端末でサービス開始した。au端末にバンドルされたCHEMISTRYMy Gift to You」が世界初の着うたである。同時に、着うたの商標を持つソニーの子会社のレコチョクからauに対して、着うた向けの世界初の商用音楽配信サービスの展開が開始された。世界展開もなされていたがほとんど普及せず、またスマホ時代はこのような面倒なシステムを用いなくともiTunesなどで手軽に着信音を購入・作成・保存したりできるため、ほぼ日本のガラケー時代の特徴的な文化となった。

2003年12月にボーダフォン日本法人(現:ソフトバンク)が、2004年(平成16年)2月にはNTTドコモも同様のサービスを開始した。2004年12月にはボーダフォン日本法人が、Vodafone 3G(現:SoftBank 3G)端末向けに1分を超えるロングバージョンを開始した。なお、auでは当初、他キャリアのサービスとの差別化を図るため「EZ「着うた」」の名称を使用していたが、2009年10月以降より他キャリア同様「「着うた」」に改称した。

2003年の着うたの市場はほとんどなく、2004年でも200億円と、1100億円を超える着メロの市場と比べるとかなり小さかった。問題点として、1990年代から2000年代初頭にかけて携帯電話の着信音の主流だった「着信メロディ」(着メロ)は、「楽譜」に相当するMIDIファイルのみの提供であったため、楽曲の使用料が作曲者・音楽出版社にしか支払われなかったのに対し、「楽曲」そのものを提供する着うたではそれに加え、歌唱者・音源を保有するレコード会社芸能事務所などにも支払われたため、料金が前者と比べて割高(1曲平均100円 - 消費税別)になった。手持ちの音源を使って着うたを自作することもできたが、パソコンで複数のソフトを使ってデータ形式の変換や波形編集などの複雑な作業を行う必要があり、非常に面倒であった。そのため、インターネットを通じて無料で自作着うたをダウンロードできるサイトなどが有志によって開設された(多くは「自作」と言いながら単に当時の有名ヒット曲のリッピングであり、著作権に問題があった)。

また、データ量も着メロでは多くて50キロバイト程度だったが、着うたでは100キロバイトを超える場合がほとんどだった。さらに、2004年に登場した着うたのロングバージョンは400キロバイトを超えるうえ、通常の着うたよりもさらに割高だった。2003年にパケット料金定額制が登場し、ダウンロード数は飛躍的に伸びたが、最大の通信速度が128kbpsとなる第2.5世代移動通信システム(2.5G)ではメガバイトどころかキロバイト以下のパケット(128バイト)単位のデータすら重く、ダウンロード時間の短縮が課題となった。携帯電話でインターネットの閲覧を可能にするiモードの普及などもあり、日本では2000年代中頃に最大の通信速度が14.4Mbpsとなる第3世代移動通信システム(3G)の普及が急速に進んだ。

2004年から2007年にかけて、着うたの市場は着メロの市場を食いながら急激に拡大した。2004年冬以降のauのCDMA 1X WIN(現:au 3G)端末・ソフトバンクモバイル(現:ソフトバンク)の2005年8月以降のSoftBank 3G端末(一部機種を除く。また、法人専用端末も含む)・NTTドコモの902iSシリーズ以降では、サビなど楽曲の一部ではなく、一曲丸ごとの配信が可能な着うたフルを導入した。着うたフルでは、新しい圧縮方式としてHE-AACを採用することにより、ダウンロード時間の短縮が図られた。

2007年から2010年にかけて、着うたの市場規模が1000億円を超える全盛期を迎え、2009年には約1200億円のピークとなった。2000年代後半、全盛期には携帯電話各社からMUSIC-HDD W41TW42SW44T(TiMO W44T II、LEXUS W44T IIIを含む)W51SAW52SW52TW54TMUSIC PORTER XVodafone 804NVodafone 803TVodafone 705TVodafone 904TSoftBank 910TSoftBank 911TSoftBank 920T等大容量メモリを搭載し、音楽再生用の機構を持った携帯電話が数多く発売されていた。

着うたは著作権情報を持つので本体メモリから外部メモリへ移せず、本体メモリが足りなくなるという問題があったが、外部メモリーカード著作権保護機能を使用して、ダウンロードした端末または契約者電話番号でプロテクトを掛ける方法によって解決が図られた。また、着うたのフォーマットには、NTTドコモは3GPPを、ソフトバンクモバイルはMP4を、auは3GPP2あるいはAMCを採用していた。これらは各社独自拡張部分があるため互換性は無く、このため、番号ポータビリティで他のキャリアに乗り換えた場合は、着うたの引継ぎは出来なかった。

着うたはこのように後世から見ると、携帯キャリアや音楽会社の都合でユーザーに非常に不便なシステムを強いたが、携帯電話の着信音に好きな音楽が使えるという、非常に便利で素晴らしいシステムだと当時のユーザーは考え、日本で大いに普及。全盛期には1曲のダウンロード数が100万を超えるなど、商業的な面でも音楽業界の新しい形態として注目を集めていた。

2008年7月11日、iPhone 3Gが日本に上陸。全てをクラウドで管理するのでデータの引継ぎどころかメモリすら必要ないiTunesの登場によって、着うたの優位性は失われ、ガラケーと呼ばれるようになった従来型携帯電話の普及率の低下とともに着うたの普及率も低下した。着メロと着うたを合計した従来型携帯端末向け音楽市場は、2005年から2009年までほぼ横ばいで1600億円程度を維持していたが、スマホの普及が始まる2010年頃より急激に縮小し、2012年には市場規模が半分の約750億円となり[2]、2016年に市場が消滅した。

2016年12月13日、レコチョクは従来型携帯電話に対する音楽配信サービスの終了を発表[3]。2016年12月15日23時59分をもって、着うたの歴史が終了した。なお、その1か月前の2016年11月にはNTTドコモがiモードに対応した従来型携帯端末の販売を終了しており、ガラケーの歴史と時を同じくした形となった。

サービス終了に伴って、各種のデータが公開された。それによると、レコチョクによる「着うた」に対する音楽配信サービスのトータルでの利用数は、2016年11月末時点で17億ダウンロード。「着うた」の配信サービスが開始された2002年12月3日から2016年11月30日までの15年間における累計ダウンロード数の1位はGReeeeNの「キセキ」、2位が青山テルマ feat.SoulJaの「そばにいるね」、3位がGReeeeNの「愛唄」であった[4]

着うたミニ編集

2010年(平成22年)1月27日よりau(KDDI/沖縄セルラー電話連合)、NTTドコモ、ソフトバンクモバイルの各キャリアにて配信サービスを開始[5]。既存の着うたに標準で対応している機種はそのまま利用する事ができる。現在商標登録出願中。

着うたミニは既存の着うたよりもさらに再生時間が短く、楽曲の歌詞やフレーズなどの印象的な部分を3~10秒間程度におさえられており、楽曲のフレーズ部分を聴くよりも、どちらかといえば着信音やメール、目覚し音などの繰り返し使えるメロディパターンといった利用方法が想定されている。ちなみに、着うたミニの1曲あたりの平均料金は100円(消費税別)と既存の着うたとほぼ同一の料金となっている。

開始当初はほぼ洋楽のみが配信されていたが、それ以外のジャンルも順次配信された。

しかし2010年には既にスマートフォンの普及が始まっており、iTunesではフルの曲が、DRMなしで、着うたミニよりも安く売られていた。そのため、ほとんど話題にならずにサービスを終了した。

自作着うた編集

最近では、ユーザー自身が着うたを自作することもよく行われている。これは公式に着うたが配信されていないようなマイナーな楽曲を着信音登録するため、配信されていてもその部分が望むものでないため、CD等で購入済みの楽曲を再購入することに抵抗を覚えるためなどの理由がある。

しかしながら、日本の携帯電話会社は着うたの自作に対して規制を敷いているため、製作工程は以下に示すような複雑なものとなっている。このため自作着うたは公式のものとは異なる形式の場合が多く、容量制限と組み合わさることで同等の再生時間や音質のものを作ることは事実上不可能である。また楽曲の切り出しやフェードアウト等の編集を伴うため、コーデック波形編集に関する、ある程度の知識が要求される。

自作着うたにされるのは、CDなどで購入した楽曲が中心であるが、アニメやドラマの音声(決めゼリフや面白い声)を好んで使うことも多い。

自作着うたの種類編集

自作着うたには以下の種類がある。

  • キャリア公式の形式(amcなど)に変換するもの。
最も長時間かつ高音質なものが製作可能だが、キャリアの隙をついた方法であり、新形式の採用が行われた直後など一部の機種でしか登録できない。
  • 動画ファイル(3gpや3g2など)に偽装するもの。
比較的長時間かつ高音質であるが、機種ごとに作成方法(主に後処理)が異なり、また登録可能な項目が少ない。
  • 着信メロディやボイスメモ(mmf、qcpなど)を利用するもの。
いわゆる「えせ着うた」。仕様上、低音質で再生時間も短いものしか作れないが、キャリアを問わず多くの機種で登録でき、項目の制限も無い。また著作権保護機能の対象にならない。

自作着うたの作成編集

自作着うたの作成は、主に以下のような工程で行われる。

自作着うたの問題点編集

自作着うたの作成や自身の端末への登録は著作物の個人的利用に該当する限りは法に触れないが、著作権フリー(パブリックドメイン)の作品以外については、他人への譲渡やサイトなどでの公開は違法行為となる。また現在のように携帯電話にメモリーカードが普及する以前は携帯電話への転送手段はアップローダーと呼ばれる掲示板を利用することが主流であり(ほかにも電子メールやメモリー編集ソフトなどの手段はあったが容量制限が厳しかったため必然的にこうなった)、初心者が気が付かずに違法アップロードしてしまうこともあった。

また、自作着うたはキャリアのサポート外となり、また失敗作を再生した場合、端末の電源が落ちることも多々あるので注意が必要である。

対応機種編集

※2010年8月現在

au(KDDI/沖縄セルラー電話連合)編集

SoftBank編集

ロングバージョン対応編集

など

ロングバージョン非対応編集

2Gでは唯一サービスを行っている。

NTT docomo編集

など

イー・モバイル(現:ソフトバンク・ウィルコム沖縄連合 Y!mobileブランド)編集

  • H11T2010年5月31日を以って、ダウンロードを停止。会員登録も同日を以って解除されている。

国外での着うた編集

海外の携帯電話でも「着うた」は「Ringtone」という名前で存在する。ビルボードなどがRingtoneのチャートを出しているが、海外の携帯電話は日本と違いPCから転送した楽曲を着信音に(無料で)設定できる。単語としてのringtone着信メロディを指す。

関連記事編集

脚注編集

外部リンク編集