稲森 奈見(いなもり なみ、1993年10月15日 - )は、鹿児島県曽於市出身の、日本人女子柔道選手である[1]。階級は78kg超級。身長165cm。体重110kg。血液型はA型。段位は弐段。組み手は右組み。得意技は大内刈[2]。現在は三井住友海上女子柔道部に所属している[3]

獲得メダル
日本の旗 日本
柔道
グランドスラム
2014 東京 78kg超級
2015 東京 78kg超級
2016 チュメニ 78kg超級
2015 チュメニ 78kg超級
2018 大阪 78kg超級
アジア大会
2014 仁川 78kg超級
アジア柔道選手権
2017 香港 78kg超級
2015 クウェートシティ 78kg超級
世界ジュニア
2013 リュブリャナ 78kg超級
世界ジュニア団体
2013 リュブリャナ 70kg超級

経歴 編集

柔道は父親の影響で5歳の時に末吉柔道スポーツ団で始めた[2]末吉中学校から鹿児島南高校に進むと、1年の時に金鷲旗で3位となった。3年の時には金鷲旗で3位、インターハイ78kg超級ではオール一本勝ちの優勝を果たした。全日本ジュニアでは2位となった[2]

2012年には三井住友海上所属となると、2013年の実業団体ではチームの優勝に大きく貢献した[2]。さらに、全日本ジュニアで優勝すると、世界ジュニアではオール一本勝ちで優勝を飾った。団体戦決勝のフランス戦では2-2となった場面で登場して、豪快な裏投で相手を投げ飛ばすなどこちらもオール一本勝ちでチームを優勝に導いた[4][5]

2014年9月のアジア大会では決勝で中国の馬思思に有効で敗れて2位だった[6]。団体戦では優勝を飾った[7]。12月のグランドスラム・東京では、準々決勝で世界チャンピオンであるキューバのイダリス・オルティス、準決勝では全日本チャンピオンの山部佳苗を立て続けに破ると、決勝でも世界ジュニアチャンピオンである渋谷教育学園渋谷高等学校3年の朝比奈沙羅大内刈で一本勝ちして初優勝を飾った[8]

2015年4月の選抜体重別では決勝で綜合警備保障田知本愛に指導2で敗れた。5月のアジア選手権でも3位にとどまった。団体戦では優勝に貢献した[9][10]。7月のグランドスラム・チュメニでは決勝で馬に敗れて2位にとどまった。11月の講道館杯では決勝で東海大学1年の朝比奈に有効で敗れて2位に終わった。12月のグランドスラム・東京では決勝でオルティスを合技で破り、2連覇を達成した。この際の優勝インタビューでは、「これからオリンピック代表が決まるまでに3大会は勝たないといけません。ひとつでも負けたら、リオデジャネイロオリンピックの道は厳しいと思っています。」と語った[11][12]

2016年2月のグランプリ・デュッセルドルフでは、準決勝で世界チャンピオンの于頌に逆転負けするなどして5位に終わった[13]。さらに4月の体重別と全日本選手権でも初戦で敗れてオリンピック代表にはなれなかった[14]。6月の実業団体ではチームの2連覇に貢献した[15]。7月のグランドスラム・チュメニでは決勝でチュニジアのニヘル・シェイフルフを大内刈の技ありで破って優勝を飾った[16]。8月の実業個人選手権では初優勝を飾った[2]。12月のグランドスラム・東京では準々決勝で南筑高校1年の素根輝に指導2で敗れるなどして7位にとどまり、今大会3連覇はならなかった[17]

2017年2月のヨーロッパオープン・オーバーヴァルトでは決勝で韓国の金珉程に敗れて2位だった[18]。4月の体重別では決勝で南筑高校2年の素根輝と対戦すると、指導2でリードしながらGSに入ってから技ありを取られて敗れた[19]。5月のアジア選手権では決勝で金珉程と対戦して技ありを先取されるが、内股で技ありを取り返すと崩上四方固で一本勝ちして優勝を飾った。団体戦でも優勝した[20][21][22]。8月の実業個人選手権では決勝でコマツの橋本朱未を技ありで破って2連覇を飾った[23]。10月のグランプリ・ザグレブでは準決勝でリトアニアのサンタ・パケニテに技ありで敗れて3位だった[24]。11月の講道館杯では3位だった[25]。12月のグランドスラム・東京では準決勝で朝比奈に技ありで敗れると、3位決定戦でもブラジルのマリア・アルテマンに技ありで敗れて5位に終わった[26]

2018年2月のヨーロッパオープン・ローマでは準決勝でミキハウス山本沙羅に技ありで勝った以外は一本勝ちして優勝した[27][28]。3月の全日本選手権東京予選では優勝した[2]。4月の体重別では準決勝で朝比奈に合技で敗れた[29]。続く全日本選手権は外側半月板損傷により出場を見合わせた[30]。なお、アジア大会の団体戦代表には選ばれたが、左膝を負傷して出場を回避した[31][32]。11月のグランドスラム・大阪では準決勝でオルティスに合技で敗れるも3位となった[33]

2019年3月のグランドスラム・エカテリンブルグでは初戦でボスニアヘルツェゴビナのラリサ・ツェリッチに技ありで敗れた[34]。4月の体重別では準決勝で素根に技ありで敗れて3位だった[35]。続く全日本女子選手権では準々決勝で警視庁井上舞子を有効で破るも、準決勝で環太平洋大学1年の素根に有効で敗れて3位だった[36]。6月の実業団体ではコマツ戦で冨田若春と引き分けるも、63㎏級の鍋倉那美が一本負けしたためチームは2位にとどまった[37]。7月のグランプリ・モントリオールでは準々決勝で朝比奈に反則負けするも、その後敗者復活戦を勝ち上がって3位になった[38]

2020年3月の全日本選手権東京予選では4連覇を果たした[39]。12月に延期された全日本選手権では準決勝でコマツの冨田若春に技ありで敗れた[40]

2021年6月には三井住友海上を退社した[41]。その後、鹿児島県柔道会の所属になると、12月の全日本選手権では3回戦で70㎏級の選手であるJR東日本寺田宇多菜に反則負けを喫した[42]。2022年からは日本エースサポートの所属となった[43]。4月の体重別では準決勝で冨田に反則負けして3位だった[44]。5月の実業団体2部では優勝した[45]。10月の講道館杯は3位だった[46]。2023年4月の体重別では初戦で敗れた[47]

戦績 編集

(出典[2]、JudoInside.com)

脚注 編集

  1. ^ 話題の広場 - 曽於市
  2. ^ a b c d e f g 「柔道全日本強化選手名鑑 2022」近代柔道 ベースボールマガジン社、2022年4月号
  3. ^ 選手プロフィール : 稲森 奈見 | 三井住友海上
  4. ^ 稲森、吉村が優勝=柔道世界ジュニア 時事通信 2013年10月27日
  5. ^ Junior World Championships, Ljubljana 2013
  6. ^ 王子谷、吉田が金メダル アジア大会柔道 日本経済新聞 2014年9月22日
  7. ^ 柔道・団体 女子「金」 闘志前面 MSN産経ニュース 2014年9月24日
  8. ^ 【柔道】21歳・稲森、女子78キロ超級で初優勝 スポーツ報知 2014年12月7日
  9. ^ 梅木、長島、高木が優勝 柔道アジア選手権 日刊スポーツ 2015年5月15日
  10. ^ 日本、男女とも団体優勝=柔道アジア選手権 時事通信 2015年5月16日
  11. ^ 稲森、五輪女王撃破で2連覇「行くしかないと自然に体が動いた」/柔道 サンケイスポーツ 2015年12月6日
  12. ^ 優勝選手インタビュー 女子78kg超級 稲森奈見
  13. ^ 稲森は5位 柔道グランプリ大会・女子78キロ超級 スポーツニッポン 2016年2月22日
  14. ^ 平成28年全日本選抜柔道体重別選手権大会
  15. ^ 第66回全日本実業柔道団体対抗大会 結果
  16. ^ 日本女子、全階級を制覇=柔道GS 時事通信 2016年7月17日
  17. ^ Judo Grand-Slam Tokyo 2016
  18. ^ 78キロ級の浜田、70キロ級の大野が優勝 欧州OP/柔道 サンケイスポーツ 2017年2月20日
  19. ^ 平成29年全日本選抜柔道体重別選手権大会
  20. ^ 稲森、藤原らが優勝 アジア選手権/柔道 サンケイスポーツ 2017年5月27日
  21. ^ 日本女子が優勝=柔道アジア選手権 時事通信 2017年5月28日
  22. ^ 2017年アジア選手権大会(香港)大会結果
  23. ^ 全日本実業柔道個人選手権大会結果
  24. ^ Grand-Prix Zagreb 2017
  25. ^ 平成29年度講道館杯全日本柔道体重別選手権大会
  26. ^ Grand Slam Tokyo 2017
  27. ^ 和田、稲森が優勝/柔道 サンケイスポーツ 2018年2月19日
  28. ^ European Judo Open Women Rome 2018
  29. ^ 平成30年全日本選抜柔道体重別選手権大会
  30. ^ 稲森けがで欠場=全日本女子柔道 日刊スポーツ 2018年4月21日
  31. ^ アジア大会の女子代表に素根、近藤ら 全日本柔道連盟が発表/柔道 サンケイスポーツ 2018年4月22日
  32. ^ 稲森に代わり山本がアジア大会代表に/柔道 サンケイスポーツ 2018年7月3日
  33. ^ Grand-Slam Osaka 2018
  34. ^ Grand-Slam Ekaterinburg 2019
  35. ^ 平成31年全日本選抜柔道体重別選手権大会
  36. ^ 第34回皇后盃全日本女子柔道選手権大会
  37. ^ 第69回全日本実業柔道団体対抗大会
  38. ^ 原沢、決勝でリネールに屈す=ベイカーら優勝-柔道グランプリ大会 時事通信 2019年7月8日
  39. ^ 小川雄勢、7試合中6戦一本勝ちで3年ぶり2度目V パリ五輪へ「休んでいる暇はない」 時事通信 2020年3月15日
  40. ^ 稲森奈見、7度目挑戦も実らず「悔しい気持ちでいっぱい」/柔道 サンケイスポーツ 2020年12月27日
  41. ^ 稲森 奈見選手退社のお知らせ
  42. ^ 第36回皇后盃全日本女子柔道選手権大会
  43. ^ 柔道人生「五輪目指さなくても続けていい」 リオ五輪補欠の元高校チャンピオン、心身のバランス壊した「どん底」から救った教えがあった 日刊スポーツ 2022年6月15日
  44. ^ 2022年全日本選抜柔道体重別選手権大会
  45. ^ 第72回全日本実業柔道団体対抗大会 結果
  46. ^ 2022年度講道館杯全日本柔道体重別選手権大会
  47. ^ 2023年全日本選抜柔道体重別選手権大会

外部リンク 編集