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阪神9300系電車

阪神電気鉄道の通勤形電車

阪神9300系電車(はんしん9300けいでんしゃ)は、阪神電気鉄道が所有する優等列車用の電車。急行・特急運用が主体であるため、急行形車両に分類されることがある。

阪神9300系電車
西新町駅を通過する9300系(2017年5月)
西新町駅を通過する9300系(2017年5月)
基本情報
運用者 阪神電気鉄道
製造所 武庫川車両工業
製造年 2001年 - 2002年
製造数 18両
運用開始 2001年3月10日
投入先 (阪神電気鉄道)本線神戸高速線
山陽電気鉄道本線
主要諸元
編成 6両編成(MT比4M2T)
軌間 1,435 mm
電気方式 直流1,500V
架空電車線方式
最高運転速度 阪神 106 km/h
山陽 110 km/h
設計最高速度 110 km/h(準備で120 km/h)
起動加速度 3.0 km/h/s
減速度(常用) 4.0 km/h/s
減速度(非常) 4.3 km/h/s
車両定員 先頭車 124人
中間車 131人
自重 9301・9401形 34.5 t
9501形 27.0 t
全長 先頭車 18,980 mm
中間車 18,880 mm
全幅 2,800 mm
全高 9401形 4,160 mm
9301・9501形 4,060 mm
車体 普通鋼
主電動機 かご形三相誘導電動機
東洋電機製造 TDK-6146-A
主電動機出力 130 kW
駆動方式 TD平行カルダン駆動方式
歯車比 97:16 (6.06)
制御方式 IGBTVVVFインバータ制御
制御装置 東芝 SVF047-A0
制動装置 MBSA 電気指令電磁直通空気制動
回生制動付随車遅れ込め制御応荷重装置つき)
保安装置 阪神・山陽・阪急形ATS
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2001年3月10日に実施されたダイヤ改正において、直通特急が増発されたことに伴う所要本数増への対応および「赤胴車」と呼ばれる急行系車両中最も車齢の高い3000系の代替として、2002年にかけて6両編成3本18両が武庫川車両工業において製造された。

急行系車両では9000系に続くVVVFインバータ制御車であるとともに、阪神最初の大型車で当初は2扉クロスシート車として登場した3011形以来47年ぶり[1]の3扉セミクロスシート車両で、先に登場した5500系と同様、従来の急行系車両と大きく印象を変えた塗装で登場した。

目次

37年振りのクロスシート車編集

1998年2月15日のダイヤ改正で運行を開始した直通特急は、梅田駅から阪神本線阪神神戸高速線山陽電気鉄道本線の3線合計91.8kmを走破して山陽姫路駅に至る、私鉄の優等列車としては比較的長距離を走る列車である。直通特急の運行開始に際し、3扉セミクロスシート車の5000系5030系を投入した山陽電鉄とは異なり、阪神では、3扉ロングシート車の8000系・9000系を充当したが、転換クロスシート装備の後期タイプを中心に乗り入れ対象車とした山陽5000・5030系とのサービス格差は、ラッシュ時はともかく、データイムにおいては歴然としていた。このように、ロングシートの両系列は同じ直通特急で運用される車両の中で格差があるだけでなく、競合する西日本旅客鉄道(JR西日本)の新快速快速の主力車両である3扉オール転換クロスシートの221系223系に比べると見劣りしていた。

このように長距離を走る最優等列車であるにもかかわらずロングシート車を投入したのは、阪神本線内の朝ラッシュ時の輸送に配慮した[2]ことと、3011形就役後、輸送需要の増加に対応できずに何度も編成替えを繰り返し、ついには前面を非貫通構造から貫通構造に改造の上ロングシートにしたことから、クロスシート車の導入について慎重になっていたことなどの経緯がある。

しかし、直通特急運転開始後、懸念されていた山陽5000系列のクロスシート車による輸送上の混乱はなく、逆に利用者に対して短期間のうちにクロスシートサービスが定着していったことから、阪神においても2001年3月のダイヤ改正で直通特急が倍増されることに伴って必要となる増備車では、これらの動向を鑑みてクロスシート車を導入することを決め、同時に製造以来40年近く経過して老朽化が進行していた3000系を置き換えることとした。

概要編集

本系列は、外観では8000系タイプIVや5500系、性能面や搭載機器では9000系をベースとしており、前面のデザインや塗色、座席こそ大きく変わったが、1980年代後半以降に確立された阪神の車両スタイルを継承している。

編成・車体編集

編成は8000・9000系と同じ制御車 (Tc) - 電動車 (M') - 電動車 (M) の3両ユニットを背中合わせに2組連結した6両固定編成で、車両番号の奇数が大阪方、偶数が神戸方に組成される構成も同じである。車体は、阪神・淡路大震災被災廃車された車両の補充分を緊急に製造する必要からステンレス車体を採用した9000系とは異なり、本系列では再び普通鋼製の車体に戻ったが、屋根や戸袋部、床下部といった雨水による腐食が発生しやすい部分は、5500系同様ステンレス製である。窓配置は、8000系タイプIV以降共通の先頭車d1D3D3D2、中間車2D3D3D2(d:乗務員扉、D:客用扉)で、間柱を細くして連窓風にブラック仕上げとした客室側窓といった点は変わりないが、客用扉の幅がクロスシート部のシートピッチ(座席の前後間隔)確保のため、従来の阪神標準の1,400mmから他社の両開き扉車と同じ1,300mmとなった。車両前面のデザインは、前面ガラスの取り付けをボンディング工法と呼ばれる接着によるものにすることや前照灯を内はめ式に変更することでフラットですっきりとしたイメージを出したほか、左右に大きな後退角を取り、裾部を斜めにカットすることで、従来車のイメージを残しつつスピード感を持たせたものになった。屋根上には集約分散式冷房装置 (CU703) を各車に2基搭載したほか、9401形の大阪方に下枠交差式のパンタグラフを1基搭載し、同形式の神戸方にはパンタグラフ設置準備工事がなされている。また、連結器は9000系や5500系と同様に、両先頭車の前面はバンドン式密着連結器、9401形奇数車の神戸方と偶数車の大阪方は廻り子式密着連結器、その他の部分は半永久連結器を採用、9500形偶数車には非常時に山陽電鉄の車両と連結するためのアダプタが搭載された。9300系の登場以降は阪神なんば線を介した近畿日本鉄道奈良線との相互乗り入れ計画が具体化したことから、本系列はバンドン式密着連結器を装着した最後の新造車両となった。この他、車両間には5500系2次車以降本格的に採用された転落防止幌を設置している。

内装編集

内装は3011形以来となるセミクロスシートを中間車4両の扉間座席に採用し[3]、出入口側には固定クロスシートを、中間部には転換クロスシートを設置した。両先頭車2両は、梅田、三宮元町高速神戸新開地、山陽姫路といった阪神本線とその乗り入れ先である神戸高速鉄道東西線および山陽電鉄本線の主要駅の階段および改札口が両先頭車に最も近い位置にあることから、混雑を考慮してロングシートとなった。座席の表地には複雑な柄を表現できるジャガード織のモケットを採用、一般席は金茶色、優先席はグレー基調となった。また、クロスシートの採用に伴い、座席幅と通路幅を確保するため、9000系に比べると側壁の厚さが15mm薄くなっている。車内案内表示器は、5500系・9000系で採用したLED式路線図を山陽電鉄線内にも拡大、直通特急停車駅のみ追加して点滅するように改良し[4]、山側2か所・浜側1か所[5]の客用扉上部に配置したほか、5500系・9000系と同様に扉開閉予告ブザーを設置した。運転台は5500系・9000系と同じデスクタイプであるが、ブレーキハンドルには初めて横軸式が採用された。乗務員室と客室との仕切り窓の遮光幕は全自動昇降式となり、8000系リニューアル車、9000系近鉄乗り入れ対応改造車、1000系にも継承された。

走行機器編集

台車は9000系と同一の1本リンク式ボルスタレス台車であるが、空気バネの形状や左右動ダンパ取り付け位置が異なることから、新形式のSS-144B(電動車用)・SS-044B(制御車用)となった。主電動機は9000系と同一の東洋電機製造製TDK-6146-A 130kWを搭載するが、制御装置は阪神では初めてIGBT素子によるVVVFインバータ制御装置である東芝製SVF047-A0(3300V / 1200A)を採用し、9401形に搭載している。また、補助電源装置の静止形インバータ (SIV) は140kVAのINV094-LOを、空気圧縮機 (CP) はC-2000-MLを9301形に搭載している。

塗色をめぐる話題編集

塗色は「急行系は赤色系」という阪神電車の色の伝統を引き継ぎながら、従来の赤胴車とは異なり、5500系の塗装に対応させた上部「プレストオレンジ」、下部「シルキーベージュ」のツートンカラーとされた。「プレスト」(Presto)とはイタリア語演奏記号「極めて速く演奏せよ」の意味だが、この上部「プレストオレンジ」下部「シルキーベージュ」のツートンカラーに床下機器の黒の取り合わせが読売ジャイアンツのチームカラーに類似していたことから「タイガースの親会社の電車が読売巨人軍をイメージさせるカラーリングというのはいかがなものか」と物議を醸し[6]、2001年開催の株主総会でも問題となったほか、川島令三の著書にも取り上げられた[7]。このように話題を呼んだカラーリングであったが、その後の8000系リニューアル車でも採用された。その後も2017年2018年の2年連続で阪急阪神ホールディングス株主総会にてこの塗色についての質問が株主から呈されており[8][9]、会社側は「(過去にも同じような意見はあったとした上で)次期リニューアルの時には検討したい」と回答している[8]

その後新造された1000系および、近鉄乗り入れ対応改造された9000系では、ブラック処理された前面に、やや黄色に近いオレンジの「ヴィヴァーチェオレンジ」というカラーリングとなり、阪神タイガースの球団旗に近い色合いとなった。

変遷と現状編集

 
連結器交換前の9300系

9501Fは2001年3月6日に竣工し、同年3月10日のダイヤ改正では正面および側面にステッカーを貼り付け、梅田駅10時00分発の姫路行直通特急から営業運転を開始、3000系3105F + 3106Fを廃車にするとともに、直通特急から準急まで、阪神本線・山陽電鉄本線で急行系車両を使用する列車で幅広く運用されるようになった。翌2002年2月には9503Fが竣工、これに伴い3107F + 3108Fが代替廃車された。続いて同年9月24日には9505Fが竣工したが、メーカーの武庫川車両工業が同月末をもって解散したことから、同社において新造された最後の車両となった。この時、車両需給の関係で3111F + 3112Fが予備車として翌年3月まで残ったが、2003年3月16日付けで廃車され、3000系は消滅した。この時点で本系列の製造目的のひとつである3000系の廃車代替新造が達成されたこと、および近鉄奈良線との相互直通運転が具体化したことから9300系の製造はこの3本で終了し、その後は8000系のリニューアル改造や、近鉄奈良線直通用の1000系の新造に移行した。

本系列は近鉄奈良線への乗り入れ運用への使用予定はなかったことから直通対応は実施されていないが2009年3月20日からの近鉄奈良線との相互直通運転に際し、他形式車両と同様に従来のバンドン式密着連結器から廻り子式密着連結器への換装を開始した。これは既に阪神しかバンドン式を使用しておらず、1974年以降は製造自体が中止され、廃車発生品の使い回しを何度も繰り返していたが、ついには部品不足となっていたことにもよる。

2007年7月下旬には3編成全ての連結器の交換が終了した。目立たないところでは連結器の取り付け高さを若干高くしたことから正面下部に切り欠きができている。

デビュー当初は中間車のクロスシート部にはつり革がなかった(扉上部のみ設置)が、2013年時点ではクロスシート部にもつり革が追設されている。

2013年には9401の集電装置がシングルアーム式に交換され、8月3日に営業運転を開始した[10]。その後2014年に9402もシングルアーム式に交換、2015年に9505Fおよび9503Fがシングルアーム式に交換され、下枠交差式パンタグラフ装備編成は消滅した。

2013年秋ごろから、車内案内表示器からランプ点灯式の路線図を撤去してLEDスクロール式案内表示器のみとする改造が行われ、現在全編成撤去が終了している。

2014年には、姫路寄り先頭車1号車 (9501形偶数番号車) 山側に「上り大塩駅ではこの扉は開きません」のステッカーが貼られた。

2017年4月1日現在、6両編成3本18両が在籍している[11]

編成編集

2006年4月1日現在[12]

← 大阪
神戸・姫路 →
製造年
Tc1 M' M M M' Tc2
9501 9301 9401 9402 9302 9502 2001年3月
9503 9303 9403 9404 9304 9504 2002年3月
9505 9305 9405 9406 9306 9506 2002年9月

脚注編集

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  1. ^ 3011形のロングシート改造時からでは37年ぶりとなる。
  2. ^ 山陽5030系も阪神本線のラッシュ輸送に配慮して横1人-2人配列の転換クロスシートを採用した。
  3. ^ 普通系車両で当初転倒防止のためセミクロスシートを採用した5001形(初代)を除く。
  4. ^ 本系列を導入時には既に西宮東口駅が廃止されていたため、同駅部分は当初から省略されている。また、白浜の宮駅の表示部分は直通特急の臨時停車を考慮して当初から設けられていたが、2008年から一部が停車するようになった荒井駅の表示部分は設けられていなかったため、撤去されるまで荒井駅は表示されないまま使用された。
  5. ^ 大阪方先頭で進行方向左側が山側、右側が浜側。
  6. ^ もっとも、1リーグ時代の巨人軍には阪神電鉄が、タイガースには読売新聞が互いに持合いの形で主要株主として名を連ねていた他(ライバル球団の株式を保有することは現在は禁止されているが、当時は無協約時代ゆえに可能だった)、読売新聞の大阪進出の際には阪神電鉄が大阪市北区野崎町の社屋用地を仲介する等、企業としての読売新聞と阪神電鉄は良好な関係である。
  7. ^ 『鉄道新車レビュー Vol.1』170p, 中央書院、2003年。ただし、川島はクロスシート車両の投入について以前から『全国鉄道事情大研究 神戸篇』(草思社)などの著書で提言していた。
  8. ^ a b “阪神電車はなぜ巨人カラー? 株主総会で株主が質問、電鉄側の回答は…”. SankeiBiz (産経デジタル). (2017年6月14日). https://www.sankeibiz.jp/business/news/170614/bsd1706140850004-n1.htm 2018年6月18日閲覧。 
  9. ^ “なんで阪神電車は巨人色? 株主総会で様々な質問”. nikkansports.com (日刊スポーツ新聞社). (2017年6月14日). https://www.nikkansports.com/baseball/news/201806140000271.html 2018年6月18日閲覧。 
  10. ^ 阪神9300系9401号車の集電装置がシングルアームに - 交友社『鉄道ファン』railf.jp 鉄道ニュース 2013年8月7日
  11. ^ 鉄道ファン』2017年8月号 交友社 「大手私鉄車両ファイル2017 車両配置表」
  12. ^ ジェー・アール・アール『私鉄車両編成表 '06年版』2006年、130頁。

参考文献編集

  • 鉄道ピクトリアル』1997年7月臨時増刊号 No.640 「特集:阪神電気鉄道」 電気車研究会
  • 鉄道ファン』 2001年4月号 No.480 「新車ガイド 阪神9300系」 交友社
  • 『関西の鉄道』 No.49 「特集:阪神電気鉄道 山陽電気鉄道 兵庫県の私鉄PartII」 関西鉄道研究会
  • 『車両発達史シリーズ 7 阪神電気鉄道』 2002年 関西鉄道研究会

外部リンク編集