雲のじゅうたん
『雲のじゅうたん』(くものじゅうたん)は、1976年(昭和51年)4月5日から10月2日まで放送されたNHK連続テレビ小説17作目。
雲のじゅうたん | |
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ジャンル | ドラマ |
脚本 | 田向正健 |
出演者 |
浅茅陽子 竜崎勝 志垣太郎 中条静夫 幸田弘子 高松英郎 馬渕晴子 戸浦六宏 船越英二 山田はるみ ほか |
ナレーター | 田中絹代 |
時代設定 | 大正7年〜昭和28年 |
製作 | |
制作 | NHK |
放送 | |
放送国・地域 | ![]() |
放送期間 | 1976年4月5日 - 10月2日 |
放送時間 | 15分 |
回数 | 156回 |
番組年表 | |
前作 | おはようさん |
次作 | 火の国に |
概要 編集
浅茅陽子扮するヒロイン真琴が、大正・昭和時代に飛行家(操縦士)という夢に向かって奮闘する姿を伸びやかに描いている[1]。秋田県が主な舞台となった初めての作品である[2]。
中条静夫演じるヒロインの父・左衛門の、頑固親父ぶりも人気を博した。ナレーションの田中絹代は総集編の収録終了後の1976年12月27日に静養のため入院し、そのまま1977年3月に亡くなった[3]。
1976年の平均視聴率は40.1%、最高視聴率は48.7%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)[4]。全156回。1976年12月20日から12月29日まで、45分の総集編全10回が放送された。
民放で販売され再放送された初のNHKドラマでもある[5][注釈 1][注釈 2]。
1976年当時、同タイトルで小説化本が発売された(田向正健・追島小葉・著、日本放送出版協会)。
ロケ撮影ではフィルムが用いられている[1]。
前述のように初めて民放へ本格的に販売されたNHKの番組である。これまでも1967年に東京12チャンネルに提供したドラマや放送番組センターを通して配給したドキュメント番組があったがそれらは非営利だった。『雲のじゅうたん』の販売は国際映画社の仲介でNHKサービスセンターとの間で1977年5月に推定2,500万円で販売契約が成立し、作家・音楽家・出演者の再放送分報酬を除いた1,000万円前後がNHKの取り分となった[8]。
1999年10月4日から2000年4月1日まで、NHK BS2で月 - 土午前7時46分 - 8時1分に全156回が再放送された。
2001年には、全5巻の総集編VHSビデオが発売された。 各地のNHKアーカイブスの番組公開ライブラリーで総集編全10回を視聴可能。 ただし完全版・総集編共にDVDは未発売。
放送ライブラリーでは第1回が公開[9]。
テーマ曲はCD「朝ドラ~NHK連続テレビ小説テーマ集」(2006年、ソニー・ミュージック、MHCL-722)に収録されている。
キャスト 編集
- 小野間(稲葉)真琴
- 演 - 浅茅陽子[10][11]
- 小野間左衛門
- 演 - 中条静夫
- 小野間たき
- 演 - 幸田弘子[12]
- 小野間千代
- 演 - 堀井永子
- 小野間直子
- 演 - 浅利香津代
- 小野間行雄
- 演 - 小鹿番
- 小野間良子
- 演 - 斉藤友子
- 小野間英子
- 演 - 川島ゆかり
- 井原高子
- 演 - 山田はるみ
- 稲葉忠裕
- 演 - 竜崎勝
- 稲葉誠
- 演 - 井上純一(幼少期: 演 - 古川清隆)
- 遠井知恵子→稲葉知恵子
- 演 - 佐野布美子
- 利根優
- 演 - 高松英郎
- 飛行学校校長
- 白川義信
- 演 - 船越英二
- 白川春子
- 演 - 馬渕晴子
- 白川信之助
- 演 - 辻辰行
- 高沢兼子
- 演 - 千石規子
- 茅野隆二
- 演 - 志垣太郎[13]
- 海軍少尉
- 三吉
- 演 - 北村和夫(幼少期: 演 - 兼安博文)
- とめ
- 演 - 大久保正信
- 加屋徳次郎
- 演 - 戸浦六宏
- 順三
- 演 - 鈴木公久
- 安藤先生
- 演 - 奥村公延
- 小林町長
- 演 - 小松方正
- 大林良平
- 演 - 矢崎滋
- 俊堂
- 演 - 風間杜夫[14]
- 飛行訓練生
- 正吉
- 演 - 桐原史雄
- その他
- 演 - 金井大、山崎猛、山谷初男、大山高男、矢田稔、東啓子、佐藤輝、山田康雄 他
スタッフ 編集
「モデル」とされた飛行士たち 編集
好評を得たドラマであり、初期の女性飛行士たちにも注目が集まった(後に掲げる、「モデル」と取りざたされた人々は放送時点で存命であった)。モデル探しの過熱や、特定人物と過度に結び付けられることに配慮したためか、1976年時点で脚本の田向正健は「あくまでもオリジナル作品で、特定のモデルはいない」と強調している[16]。2020年現在のNHKは、「ヒロインのモデルとなった人物は日本初の女性飛行士をはじめ複数いたそうだ」と記している[17][18]。
第二次世界大戦以前の日本で飛行士の資格を取得した女性は30人ほどいる[注釈 3]。「『雲のじゅうたん』の主人公のモデル」として、以下のように複数の人物の名が挙げられる(カッコ内は結婚後の姓。資格取得順[21])。
- 兵頭精[22][23] - 愛媛県出身。日本初の女性飛行士(1922年3月に三等飛行機操縦士資格取得)。1980年没。
- 木部シゲノ[24] - 福岡県出身。最初の女性二等飛行機操縦士(1927年8月に資格取得)。戦後は及位野衣らと日本婦人航空協会を設立。1980年没。
- 前田あさの(龍あさの)[25] - 奈良県出身。1925年12月に4人目の女性飛行家となる。1979年没。
- 今井小まつ(西原小まつ)[26] - 京都府出身。1927年12月、木部に続いて二等飛行機操縦士。航空作家としても活動。1984年没。
- 松本キク(西崎キク)[27] - 埼玉県出身。女性水上飛行機操縦士第1号。1934年、海外に飛行した初の女性飛行士の一人。1979年没。
- 馬淵テフ子[28] - 秋田県鹿角郡出身(出生地は青森県弘前市)。1934年、秋田に郷土飛行。海外に飛行した初の女性飛行士の一人。1985年没。
- 及位野衣[29] - 秋田県山本郡生まれ、角館町で幼少期を過ごし、山形県で成長。戦後も飛行士として活動。2005年没。
その他 編集
ドラマに登場する複葉機の「利根号」は木村秀政が設計した[1]。
『ふたりっ子』の初期では、主人公の野田家で朝、登場人物が「雲のじゅうたん」を視聴している設定のシーンがあった。また、『カムカムエヴリバディ』の第69話でも、主人公の大月家で家族3人[注釈 4]が視聴するシーンが描かれている。
作品中で、『へば』(秋田地方の方言)が使用されているので、”へばちゃん”がブームとなる。主人公役の方が、へばちゃんと呼ばれ、親しまれる。
脚注 編集
注釈 編集
- ^ 1977年10月(当初は1977年7月からの予定であった[5])から1978年3月まで、東京12チャンネル(現・テレビ東京)の月 - 土8時30分 - 8時55分に放送(『風見鶏』放送直後)。東京12チャンネルはそれまで9時00分から放送を開始していたが、この時より開始時刻が7時45分と早くなったため、本作が編成された。
- ^ 民放で再放送されたNHKドラマとしては1967年に東京12チャンネルで放送された『おはなはん』『横堀川』『文五捕物絵図』が先である。このときは経営危機にあった同局を支援するための無償提供だった[5][6][7][8]
- ^ 『ヒコーキ野郎』1977年6月号掲載の「戦前の女性飛行士一覧表」(日本婦人航空協会監修)によれば27名である[19](二等飛行機操縦士20人・三等飛行機操縦士7人[20]。パイロットを職業とするために必要な一等飛行機操縦士の受験資格は女性にはなかった[21])。ただし北村兼子が記されていないなど、この「一覧表」には遺漏もあるとみられる。
- ^ 大月るい(演 - 深津絵里)と夫の錠一郎(演 - オダギリジョー)、娘のひなた(演 - 新津ちせ)の3人によるシーン。なお、ひなた役は1983年の場面から川栄李奈が演じる。大月家はこの後、長男の桃太郎(演 - 青木柚)が誕生する。
出典 編集
- ^ a b c 「テレフィルム 「雲のじゅうたん」撮影始末記 / 森谷定政」『映画テレビ技術 = The motion picture & TV engineering』第289号、日本映画テレビ技術協会、1976年9月1日、16 - 19頁、NDLJP:4433070/9。
- ^ 「NHK放送史『朝ドラ100』」の「ご当地マップ『秋田』」を参照。
- ^ 下関市立近代先人顕彰館 田中絹代ぶんか館 名誉館長のつぶや記43
- ^ ビデオリサーチ NHK朝の連続テレビ小説【関東地区】より。
- ^ a b c 「放送デスクメモ――77・五~六 / 編集部」『マスコミ市民 : ジャーナリストと市民を結ぶ情報誌』第119号、日本マスコミ市民会議、1977年11月1日、59 - 63頁、NDLJP:3463789/31。
- ^ 金子明雄『東京12チャンネルの挑戦 300チャンネル時代への視点』三一書房、1998年、p.58
- ^ 荒俣宏『TV博物誌』小学館、1997年、p.355
- ^ a b 「NHK 『雲のじゅうたん』を売る 副収入へ初の“商売” 買い手は民放 全編で2500万円前後」『中日新聞』1977年6月11日付
- ^ a b c d e f g h i j 放送ライブラリー program番号:177834
- ^ 浅茅陽子 - NHK人物録
- ^ 「夢いつぱいの青空を目指して / 浅茅陽子」『婦人生活』第30巻第6号、婦人生活社、1976年5月1日、77 - 79頁、NDLJP:2324554/25。
- ^ 「雲のじゅうたんと私 / 幸田弘子」『道路と自然』第4巻第1号、道路緑化保全協会、1976年7月25日、17頁、NDLJP:3237026/12。
- ^ 志垣太郎 - NHK人物録
- ^ 風間杜夫 - NHK人物録
- ^ NHKテレビドラマカタログ―ドラマ番組放送記録+カテゴリー小史 1953~2011[リンク切れ]
- ^ a b 佐藤正「秋田の真琴たち」『あきた』第172号、秋田県、1976年9月1日、2021年5月7日閲覧。
- ^ “東北が舞台の連続テレビ小説”. NHKアーカイブス. NHK. 2021年5月9日閲覧。
- ^ “兵頭精”. 20世紀日本人名事典. 2021年5月9日閲覧。
- ^ 村山茂代 2007, p. 45.
- ^ 村山茂代 2007, p. 47.
- ^ a b 村山茂代 2007, p. 48.
- ^ “兵頭精”. デジタル版 日本人名大辞典+Plus. 2021年5月9日閲覧。
- ^ “兵頭精”. 20世紀日本人名事典. 2021年5月9日閲覧。
- ^ “木部シゲノ”. 豊前の先人たち. 豊前市. 2021年5月9日閲覧。
- ^ “竜あさの”. 20世紀日本人名事典. 2021年5月9日閲覧。
- ^ “西原小まつ”. デジタル版 日本人名大辞典+Plus. 2021年5月9日閲覧。
- ^ “地域にあって”. 郷土の偉人・西﨑キク. 上里町. 2021年5月9日閲覧。
- ^ 鹿角市先人顕彰館研究員(編) 2020, p. 165.
- ^ “及位ヤヱ”. デジタル版 日本人名大辞典+Plus. 2021年5月9日閲覧。
参考文献 編集
- 秦郁彦『太平洋戦争航空史話』下(中公文庫、1995年) ISBN 4-12-202371-8 第十六章 「雲のじゅうたん」考 女流飛行家第一号の周辺 11~31ページ
- 村山茂代「飛行士をめざした卒業生 : 馬渕てふ子と長山きよ子」『日本女子体育大学紀要』第37巻、2007年、2021年5月7日閲覧。
- 鹿角市先人顕彰館研究員(編)『江戸期から平成期の 鹿角人物事典』鹿角市教育委員会、2020年 。2021年5月9日閲覧。
関連項目 編集
- 舞いあがれ! - 2022年度下半期に放送された朝ドラ。本作と同様、ヒロインがパイロットを目指す。
外部リンク 編集
- 連続テレビ小説 雲のじゅうたん - NHK放送史
- 連続テレビ小説「雲のじゅうたん」 - NHKドラマ
- 兵頭精、空を飛びます
- 郷土の偉人西崎キク
NHK 連続テレビ小説 | ||
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前番組 | 番組名 | 次番組 |
おはようさん
(1975年度下半期) |
雲のじゅうたん
(1976年度上半期) |
火の国に
(1976年度下半期) |
東京12チャンネル 月 - 土8:30 - 8:55枠 | ||
(休止中)
|
雲のじゅうたん
(再放送) |
毎日が日曜日
※8:30 - 9:00 |
東京12チャンネル 土曜8:30 - 8:55枠 | ||
(休止中)
|
雲のじゅうたん
(再放送) |
早指し将棋選手権
※8:00 - 8:55 |
NHK BS2 連続テレビ小説・アンコール | ||
本日も晴天なり
(1999年度上半期) |
雲のじゅうたん
(1999年度下半期) |
鮎のうた
(2000年度上半期) |