メインメニューを開く

鹿野川ダム(かのがわダム)は、愛媛県大洲市肱川水系肱川に建設されたダム。高さ61メートル重力式コンクリートダムで、洪水調節発電を目的とする、国土交通省直轄多目的ダムである。ダム湖(人造湖)の名は鹿野川湖(かのがわこ)という[2]

鹿野川ダム
Kanogawa dam.jpg
クレストゲート更新(2010年撮影)
左岸所在地 愛媛県大洲市肱川町宇和川598-2
位置
河川 肱川水系肱川
ダム湖 鹿野川湖
ダム諸元
ダム型式 重力式コンクリートダム
堤高 61 m
堤頂長 167.9 m
堤体積 161,000
流域面積 513 km²
湛水面積 232 ha
総貯水容量 48,200,000 m³
有効貯水容量 29,800,000(→36,200,000) m³
利用目的 洪水調節発電
(→洪水調節・不特定利水・発電)
事業主体 国土交通省四国地方整備局
電気事業者 愛媛県公営企業管理局
発電所名
(認可出力)
肱川発電所 (10,400kW)
施工業者 清水建設
着手年/竣工年 1953年/1958年
出典 [1]
テンプレートを表示

歴史編集

建設編集

愛媛県南部、約100キロメートルにわたって流れる肱川は、数百本もの支流を持ち、流域面積が約1,200平方キロメートルに達する、愛媛県内最大の河川である。下流は大洲市の市街地が広がりを見せているが、川幅の狭い区間が存在するため水害に悩まされてきた。建設省(当時)は1953年昭和28年)10月、肱川の治水・利水を目的とした「肱川総合開発事業」の一環として鹿野川ダムの建設に着手した[3]

鹿野川ダムは肱川の河口から約35キロメートル上流にさかのぼった場所に位置する。計画洪水流量を大洲地点で4,250立方メートル毎秒、ダム地点で2,750立方メートル毎秒に設定。これをダムで洪水調節することで、大洲地点の流量を750立方メートル毎秒減少させる。合わせて愛媛県営のダム式水力発電所を併設し、最大1万400キロワット電力を発生、年間では5,612万1,000キロワット時電力量を発生させる[3]

工事は1956年(昭和31年)6月に着工。地質不良により基礎掘削量の増加を余儀なくされ、さらに1958年(昭和33年)12月の中間湛水時には湖畔の大地・栗ノ木・坂石の3地区で地すべりの発生が確認された。ダムは1959年(昭和34年)3月に完成し、地すべりも翌4月には沈静化した[3]。地すべり対策工事を終え、同年11月にダム水位を常時満水位まで上昇。地すべりの兆候は見られなかったものの、発電所付近で漏水が確認されたため、急きょ止水グラウト工事を実施した。1960年(昭和35年)2月1日、ダムの管理を建設省から愛媛県へと移管。同年6月に全事業を完了した[4]

再開発編集

2018年7月5日から7日にかけての雨雲の動き(右が肱川流域)

鹿野川ダムの完成により水害の頻度は減少したが、1970年(昭和45年)8月の台風10号1982年(昭和57年)8月の台風13号1995年(平成7年)の梅雨前線豪雨、2004年(平成16年)の台風18号と、依然として肱川流域では水害に見舞われている[5]。2018年の集中豪雨平成30年7月豪雨)では上流域平均総雨量367.4ミリを観測し、鹿野川ダムでは流入量3,800立方メートル毎秒、放流量が3,742立方メートル毎秒と過去最大を記録。肱川橋での河川水位は過去最高の8.11メートルまで上昇した[6]。大洲市内では約2800戸が浸水し、4人が死亡[7]。鹿野川ダム直下の県営肱川発電所も浸水し、倉庫で保管していた有害物質ポリ塩化ビフェニル (PCB) を含んだ廃棄物の一部が所在不明となった。県は謝罪し情報提供を呼びかけるとともに、低濃度かつ少量のため影響は少ないと説明した[8]

1996年(平成8年)には中小規模の洪水に対応できるようダム操作規則を改定したが、大規模な洪水で被害が生じると、マスメディアは規則の改定が裏目に出たと批判した。2004年の台風16号では洪水が収まりつつあった中で放流ゲートを閉めていったところ、水が放流ゲートの上部を越えて流出するという弱点も露呈。地元住民からは厳しい目が向けられている[9]

上流では野村ダムが建設されたほか、支流・河辺川では山鳥坂ダムが建設中である。さらに、鹿野川ダム自体も再開発が実施されることとなった。ダム右岸側にトンネル式の放流設備を増設するとともに、貯水池配分の見直し、湖底の堆砂の除去、選択取水設備の設置による冷水・濁水対策、曝気循環施設の設置による水質悪化(アオコ)対策といった事業が進められている。大洲地点での目標流量は5,000立方メートル毎秒であるが、これらの諸対策によって最終的には3,900立方メートル毎秒に抑制できる見通しである[5]。再開発実施に伴い、鹿野川ダムの管理は2006年(平成18年)度から愛媛県から再び国土交通省へと移管[10]2019年(平成31年)3月12日、住民など300人が見守る中、新しい放流設備の試験放流を実施[11]。同年(令和元年)6月9日肱川風の博物館で鹿野川ダム再開発全事業完成式が催された[12]。これに先立ち、鹿野川・野村両ダムの操作規則が同年6月6日付けで改訂されている[13]。なお、2018年の水害で被災した肱川発電所については2023年1月の運転再開を目指して復旧工事が進められている。まず崩壊した進入路の復旧から着手し、建物の建て替え工事および水車発電機の更新を行う計画である[14]

周辺編集

ダム湖の鹿野川湖はヘラブナ釣りの名所として知られる。になると3,000羽ものオシドリの大群が当地で冬を越す。は湖畔のが咲く[2]。周辺は肱川県立自然公園に指定されており、豊かな自然環境が保護されている[15]

交通アクセス編集

公共交通機関
JR予讃線伊予大洲駅から路線バス宇和島バス・大成行)に乗車、バス停「鹿野川大橋」にて下車[16]
自家用自動車
大洲市中心市街地から国道197号肱川町方面へ。自動車で約30分間[16]

脚注編集

[ヘルプ]
  1. ^ 電気事業者・発電所名は「水力発電所データベース」、その他は「ダム便覧」による再開発前の諸元を中心とし、再開発後の変更分を「ダム便覧」より括弧書きで示した(2018年8月13日閲覧)。
  2. ^ a b ダム便覧 鹿野川ダム(元)”. 日本ダム協会 (2012年). 2018年8月13日閲覧。
  3. ^ a b c 甲藤次郎「愛媛県肱川,鹿野川ダム地点の地質と湛水池周辺地域の地すべりについて」『高知大学学術研究報告 1 自然科学』第12巻第4号、高知大学、1964年3月31日、 27 - 39頁、 NAID 120001389906
  4. ^ 建設省四国地方建設局監修『四国地方建設局十年史』建設省四国地方建設局、1968年、165ページ。
  5. ^ a b ダムの書誌あれこれ 鹿野川ダムの建設 野村ダムの建設”. 日本ダム協会. 2018年8月13日閲覧。
  6. ^ 肱川・矢落川出水状況(速報版)肱川(大洲第二水位観測所)で観測史上最大の水位を記録”. 大洲河川国道事務所・山鳥坂ダム工事事務所・野村ダム管理所 (2018年7月7日). 2018年8月13日閲覧。
  7. ^ “豪雨ダム放流の検証始まる 国「適切」、住民に怒り”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2018年7月19日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33167890Z10C18A7CC1000/ 2018年8月13日閲覧。 
  8. ^ “大洲・肱川発電所、4点のPCB廃棄物流出か”. 愛媛新聞ONLINE (愛媛新聞社). (2018年7月26日). https://www.ehime-np.co.jp/article/news201807260065 2018年8月13日閲覧。 
  9. ^ 座談会 平成16,17年異常洪水対応と課題 洪水調節経験ダム管理所長等」『リザバー』第9巻、ダム水源地環境整備センター、2006年3月、 3 - 8頁。
  10. ^ 西澤洋行・三宅和志・原田隆史・吉岡修一・尾嶋百合香「鹿野川ダム改造事業の概要 選択取水関連工事状況(中間報告)」『土木技術資料』第56巻第2号、土木研究センター、2014年、 30頁。
  11. ^ “鹿野川ダム試験放流、被害軽減めざす”. 産経ニュース (産業経済新聞社). (2019年3月14日). https://www.sankei.com/life/news/190314/lif1903140011-n1.html 2019年6月10日閲覧。 
  12. ^ “鹿野川ダム改造、全事業完成 大洲で式典”. 愛媛新聞ONLINE (愛媛新聞社). (2019年6月9日). https://www.ehime-np.co.jp/article/news201906090053 2019年6月10日閲覧。 
  13. ^ “ダム新操作規則運用開始”. 愛媛新聞ONLINE (愛媛新聞社). (2019年6月8日). https://www.ehime-np.co.jp/article/news201906080012 2019年6月10日閲覧。 
  14. ^ “肱川発電所 23年1月に復旧予定 公営企業管理者 新建屋を建築”. 愛媛新聞ONLINE (愛媛新聞社). (2018年12月11日). https://www.ehime-np.co.jp/article/news201812110137 2019年6月10日閲覧。 
  15. ^ 自然公園”. 愛媛県 (2017年1月13日). 2018年8月15日閲覧。
  16. ^ a b アクセス”. 山鳥坂ダム工事事務所. 2018年8月15日閲覧。

関連項目編集

外部リンク編集

関連文献編集