盆地
盆地(ぼんち、英語: basin)とは、周囲を山地や丘陵に囲まれた、周辺よりも低く平らな地形である[1]。



概要 編集
盆地の規模は大小様々だが、盆地の大部分は地盤の相対的沈下によって生じる[2]。周囲の土地が隆起し、静止していた部分が結果的に盆地となる場合もある。
盆地はその成因によって侵食盆地と構造盆地に分類され、構造盆地はさらに、撓曲盆地と断層盆地に分類される[3]。火山活動によりできるカルデラも盆地の一種である[3]。
- 侵食盆地
- 地層や岩石の軟らかい所が選択的に侵食されて、周囲よりも低くなったもの[2]。盆状の海湾が隆起し、湾内だった部分の堆積層が流出するケースや、平坦面に新しい堆積物が層を作った後、その一部が盆地状に曲降し、侵食によって盆地床の中の堆積物が残るケースなど、その生成過程は様々である[2]。侵食盆地の底が平坦地になることは稀で、丘陵地になることのほうが多い[2]。
特に石灰岩地域に発達するものは溶食盆地(ポリエ)とよばれ、カルスト地形の一種である。
また、盆地または盆地内の状態によって、次の4つに分類される[2]。
特徴 編集
盆地の気候的な特徴としては、大陸と海洋の比熱の差の影響で沿岸部よりも気温の日較差や年較差が大きいこと、海洋とは山によって隔離されているために空気が比較的乾燥しており降水量が少ないこと、そしてフェーン現象などが挙げられる。また、盆地内では風が弱く空気が同じ場所にとどまるため、大気汚染の原因となるような物質が放出されてもただちに拡散されず、実際にメキシコシティなどで問題となっている。盆地は防御の面に優れていることや、平坦な土地であることから、内陸都市が立地することもある。
日本における盆地 編集
日本の辞書や教科書に「盆地」が現れたのは大正時代に入ってのことであり、その定義は国内の盆地内にある平野や都市に視座を置いた人文地理的なものとなっていた[4]。戦後に文部省地理調査所によって定められた上記の定義も、それを継承したものとなっている。山に囲まれた低い平坦地という日本の風土を想定して定められた「盆地」は、地形学の学術用語であるBasinやValleyの訳語に当てられたが、Basinは山地に属する盆状地質構造、海盆、流域などを指す、外縁や地質などを含めた窪んだ地形全体を捉えた用語であり、盆地床の地形について規定していない[4][5]。このため、周囲に山がないパリ盆地や、海に面した流域であるアマゾン盆地など、日本の定義では盆地とは言えない場所を「盆地」と呼んでいる例は多く、国際的な自然地域名称と乖離する場合もある[5]。
一説に丹波国・但馬国は盆地を意味する「谷」に由来するといわれている。
日本の主な盆地 編集
- 北海道地方
- 東北地方
- 北上盆地(岩手県)
- 鷹巣盆地(秋田県)
- 大館盆地(秋田県)
- 横手盆地(秋田県)
- 仙北盆地(秋田県)
- 新庄盆地(山形県)
- 小国盆地(山形県)
- 尾花沢盆地(山形県)
- 山形盆地(山形県)
- 上山盆地(山形県)
- 長井盆地(山形県)
- 米沢盆地(山形県)
- 福島盆地(福島県)
- 会津盆地(福島県)
- 猪苗代盆地(福島県)
- 郡山盆地(福島県)
- 白河盆地(福島県)
- 関東地方
- 笠間盆地(茨城県)
- 八郷盆地(茨城県)
- 沼田盆地(群馬県)
- 中之条盆地(群馬県)
- 中山盆地(群馬県)
- 富岡盆地(群馬県)
- 秩父盆地(埼玉県)
- 小川盆地(埼玉県)
- 八王子盆地(東京都)
- 秦野盆地(神奈川県)
- 中部地方
- 近畿地方
- 上野盆地(三重県)
- 近江盆地(滋賀県)
- 山科盆地(京都府)
- 京都盆地(京都府)
- 亀岡盆地(京都府)
- 福知山盆地(京都府)
- 奈良盆地(奈良県)
- 三田盆地(兵庫県)
- 篠山盆地(兵庫県)
- 豊岡盆地(兵庫県)
- 中国・四国地方
- 九州地方
- 筑豊盆地
- 黒木盆地(福岡県)
- 多久盆地(佐賀県)
- 武雄盆地(佐賀県)
- 嬉野盆地(佐賀県)
- 山内盆地 (長崎県)
- 由布院盆地(大分県)
- 日田盆地(大分県)
- 安心院盆地(大分県)
- 田染盆地(大分県)
- 竹田盆地(大分県)
- 三重盆地(大分県)
- 緒方盆地(大分県) - 「緒方平野」とも呼ばれる。
- 玖珠盆地 ( 大分県)
- 菊鹿盆地(熊本県)
- 阿蘇盆地(阿蘇谷、南郷谷)(熊本県)
- 人吉盆地(熊本県)
- 田野盆地(宮崎県)
- 飫肥盆地(宮崎県)
- 加久藤盆地(宮崎県)
- 小林盆地(宮崎県)
- 都城盆地(宮崎県・鹿児島県)
- 高千穂盆地(宮崎県)
- 鹿川盆地(宮崎県)
- 大口盆地(鹿児島県)
- 栗野盆地(鹿児島県)
- 伊集院盆地(鹿児島県)
- 川内盆地(鹿児島県) - 「川内平野」とも呼ばれる。
- 喜瀬武原盆地(沖縄県)
日本国外の主な盆地 編集
- アジア
- 四川(スーチョワン)盆地(中華人民共和国)
- 準噶爾(ジュンガル)盆地(中華人民共和国)
- 塔里木(タリム)盆地(中華人民共和国)
- 柴達木(ツァイダム)盆地(中華人民共和国)
- 大邱盆地(大韓民国)
- アフリカ
- ヨーロッパ
地球外の主な盆地 編集
脚注 編集
- ^ 浮田ほか 2004, p. 256.
- ^ a b c d e f g h i 岡山 2014, pp. 229–243.
- ^ a b 西川有司『地形の科学』 <おもしろサイエンス> 日刊工業新聞社 2019年 ISBN 978-4-526-07965-8 p.85.
- ^ a b 米地文夫「自然地域名「北上盆地」と「北上平野」 : 地理教育における自然地理用語と自然地域名の問題(1)」『岩手大学教育学部研究年報』51(1) 岩手大学教育学部 doi:10.15113/00011679 2008-03-07 pp.105-118 .
- ^ a b 米地文夫「広々とした渓谷と山々に囲まれない盆地:地形景観用語における日本と世界のずれ」『季刊地理学』53(4) 東北地理学会 doi:10.5190/tga.53.257 2001 pp.257-261.
参考文献 編集
- 浮田典良 編『最新地理学用語辞典』(改訂版)原書房、2004年。ISBN 4-562-09054-5。
- 岡山俊雄『自然地理学(地形)』(第11刷)法政大学 通信教育部、2014年。