カエデ

ムクロジ科カエデ属の落葉高木の総称

カエデ(楓、槭樹、鶏冠木、蛙手)とはムクロジ科(旧カエデ科)カエデ属 (Acer) の落葉高木の総称。名前の由来は、葉の形がカエルの手「蝦手 (かへるで)」に似ていることから、呼び方を略してカエデとなった[1][2]

カエデ属
ハウチワカエデ
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : バラ類 Rosids
: ムクロジ目 Sapindales
: ムクロジ科 Sapindaceae
: カエデ属 Acer

モミジ(紅葉、椛)とも呼ばれるが、葉の切れ込みが深いものを「モミジ」、葉の切れ込みが浅いものを「カエデ」と呼んでいる(植物学的には同じ系統)[3]など様々な色合いを持つ為、童謡では色を錦と表現している。また、英語圏では一般にMaple(メイプル、メープル)と称する。カエデ属の学名ラテン語 acer とドイツ語名 Ahorn は、英語の edge と同じく「尖った、鋭い」を意味する印欧語の共通の語根に由来し、葉が尖っていることからの命名であろう[4]

特徴

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落葉前の紅葉

世界におよそ130種が存在する[3]。その多くはアジアに自生している。他にヨーロッパ、北アフリカ、北アメリカに存在する。南半球に自生するものはダダープティノキマレー語: kayu dadah petih; 学名: Acer laurinum; シノニム: A. niveum[5]1種のみである[6]

日本は世界有数の多品種のカエデが見られる国で自生種は27種が存在する(園芸種は120種以上)[3]。日本のカエデとして代表されるのはイロハモミジである。福島県以南の山野に自生しているほか、古くから栽培も行われている。園芸種として複数の栽培品種があり、葉が緑色から赤に紅葉するものや最初から紫色に近い葉を持ったものもある。

一般に高木になる。落葉樹が多く落葉広葉樹林の主要構成種であるが、沖縄に自生するクスノハカエデ(学名: A. oblongum)のように常緑樹もある。葉は対生し、葉の形は掌状に切れ込んだものが多く、カエデの和名もこれに由来する(下記#和名参照)。しかし、三出複葉(メグスリノキ)や単葉(ヒトツバカエデチドリノキ、クスノハカエデ)のものもある。

風媒花で、花弁は目立たなく小さい。果実は、片翼の翼果が二つずつ(稀に三つのこともある)種子側で密着した姿でつく。脱落するときは空気の抵抗を受けて回転し、滞空時間を稼いで風に運ばれやすくなっている。

カエデが受けやすい病害虫として、病害にはうどんこ病や胴枯れ病、虫害にはヒロヘリアオイラガゴマダラカミキリによるものがある[7]

主な種

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文化との関わり

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カナダの国旗

和名

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カエデの名称の由来は、カエルの手に似ていることから「カエルデ」と呼ばれ、それが転訛したものとされている。

大伴田村大嬢和歌に「わが宿に もみつかへる手見るごとに 妹をかけつつ 恋ひぬ日はなし」(『万葉集』1623番)がある[2]

日本ではカエデを通例「楓」と書くが、中国ではカエデに「槭」の字をあて、「楓」はマンサク科フウを指す。フウとカエデは葉の形が似ているが、カエデの葉は対生、フウの葉は互生につき、異なる植物である[8]。かつてはカエデ科の木には「槭」が用いられていたが、この字は常用漢字に含まれず、替わって「楓」が充てられることが多くなった。

「楓」は日本人人名としても用いられることが多い。古くから使われており、源平合戦で活躍した佐藤継信の妻の名が楓であったと伝わっている[9]。主に女性名であるが、男性にも名付けられることがある。

その他

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アイヌ

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北海道アイヌイタヤカエデをトペニ、トペンニ(アイヌ語: topeni, topen'ni)と呼称した。これは乳汁を意味するtopeと木を意味するniを語源とする。一方で樺太アイヌはニㇱテニやオニㇱテニ(樺太アイヌ語: nisiteni, onisteni)と呼び習わした。これらはどちらも堅い(niste-, oniste-)木(ni)を意味する[10]

アイヌ文化では樹液はそのまま飲む、飴にする、アイスキャンディーにするなど甘味料としての利用が図られた。 また、木材としても良質なため、炉鍵や器具の柄、マキㇼ(小刀)の鞘などの彫刻を伴う品にも使われた[10]

西洋

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カナダの国旗は、サトウカエデの葉をデザインしたものである。カナダにはある夫婦がメープルシロップを発見した伝説が伝わっている。夫が狩りで仕留めた大鹿を料理しようとした妻が、水汲み場が遠いため、サトウカエデの木に穴をあけ、その樹液で肉を煮たところ、肉は焦げ、食べられなくなっていた。帰宅した夫が鍋に指をいれたところ、それは甘くておいしかった。こうしてメープルシロップが発見されたという[11]

用途

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カエデの盆栽
 
カエデの一枚板テーブル

園芸

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日本では鮮やかな紅葉が観賞の対象とされ、庭木盆栽に利用するために種の選抜および、品種改良が行われた。諸外国では木材や砂糖の採取、薬用に利用されるのみであったが、明治時代以後に西洋に日本のカエデが紹介されると、ガーデニング素材として人気を博し、西洋の美意識による品種も作られ、日本に「西洋カエデ」として逆輸入されている。

食用

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サトウカエデといわれる種は樹液が甘いので、これを採集し煮詰めてメープルシロップを作ることで知られている。

まれなケースとしては、愛知県の香嵐渓で、落葉したカエデの葉を1年間塩漬けにして灰汁抜きをしたものを天ぷらにして食すことがある。香嵐渓の場合は砂糖を入れた衣にくぐらせて揚げる。その他、大阪府箕面市でもカエデの葉に甘い衣をつけて揚げたものが土産品として売られている。ただし、ここで使われているカエデは食用に栽培された特殊なもので自然のものではない。さらに香嵐渓と同じような下処理をしている。

薬用

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メグスリノキは、苦味成分のロドデノール視神経を活発化させる作用がある)が多く含まれている。また、古来より漢方薬として利用されており、葉や樹皮を煎じて飲用したり洗眼薬にしていたのでこの名前がついている。なお、山地に自生している。

木材

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スパルト材の部分

カエデは木材として用いられ、国産のものは楓材、西洋から輸入されたものはメイプル材と呼ばれて流通することが多い。また、ヨーロッパ産のメイプル材はシカモアメイプル、北アメリカ産のメイプル材は、品種によってハードメイプルとソフトメイプルに区別される。ハードメイプルはソフトメイプルよりも25%硬いとされる。

ハードメイプル
サトウカエデのこと。北米、カナダ産出。重硬で肌目は緻密で衝撃にも強い。心材は硬く、辺材が用いられることが多い。鳥眼杢(バーズアイ)が現れることがある。建築材、家具、ボウリングレーンやピン・楽器・野球のバットバリー・ボンズが使いはじめたことにより広まった)に使用される。
ソフトメイプル
レッドメイプル英語版シルバーメイプル英語版ボックスエルダービッグリーフメイプル英語版などの総称。加工性が良く、狂いも少ないが虫害に弱い。だが、時に虫穴からバクテリアによる汚れが入ったために暗い縞模様を呈したものがスパルト材(スポルト材)と呼ばれ、銘木として賞用に用いられる(詳細はen:Spaltingを参照)。用途はハードメイプルとほぼ同じ。

脚注

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  1. ^ 語源由来辞典「楓」 2019年10月11日閲覧
  2. ^ a b 吉海直人「かえで」の古今東西2020/11/06,同志社女子大学
  3. ^ a b c 札幌市 緑のセンターだよりNo.235”. 札幌市公園緑化協会. 2021年9月3日閲覧。
  4. ^ Duden.Bd.7: Herkunftswörterbuch, Bibliographisches Institut, Mannheim/ Wien/Zürich, 1963 (ISBN 3-411-00907-1), S. 15, unter >Ahorn< und S. 126, unter >Ecke<. - Susanne Fischer-Rizzi : Blätter von Bäumen II. Hukusuisha. = 喜多尾道冬・林捷編『続・ドイツの樹の文化誌』白水社1994年(ISBN 4-560-01590-2)5-10頁、特に6-7頁。
  5. ^ 熱帯植物研究会 編『熱帯植物要覧』(第4版)養賢堂、1996年、274頁。ISBN 4-924395-03-X 
  6. ^ Crowley, D., Barstow, M. & Rivers, M.C. (2018). Acer laurinum. The IUCN Red List of Threatened Species 2018: e.T33284A2836036. doi:10.2305/IUCN.UK.2018-1.RLTS.T33284A2836036.en Downloaded on 09 May 2019.
  7. ^ 樹木が受ける障害”. 国土技術政策総合研究所. 2021年9月3日閲覧。
  8. ^ 緒方健「カエデ科」、『週刊朝日百科 植物の世界』33、1994年、258頁。
  9. ^ “源義経に従い戦死 佐藤継信・忠信兄弟 830年の時越え妻と再会”. 河北新報. (2014年6月8日). http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201406/20140608_15019.html 2015年2月14日閲覧。 
  10. ^ a b アイヌ語辞典 植物編 §146 イタヤ イタヤカエデ Acer Mono Maxim.”. 国立アイヌ民族博物館. アイヌ民族文化財団. 2024年10月3日閲覧。
  11. ^ 瀧井康勝『366日誕生花の本』日本ヴォーグ社、1990年11月30日、280頁。 

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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